バランサーの公明は「改憲」で外されるか
海江田氏は経済評論家から政治家に転身した人物で、高い知名度を誇る。一方、選挙区の東京1区ではライバルだった与謝野馨氏にたびたび敗れていて、必ずしも強固な地盤をもつわけではなかった。そこで、自民党は「人物ブランド」において、海江田氏と差別化できる候補を立てた。候補者に選ばれた山田美樹氏は、40歳の女性で、経済産業省から外資系コンサルティング会社を経て、ファッションブランド勤務という人物。80年代に野末陳平氏の秘書として「税金党」の結党に関わり、地元の商店主などに経済通のビジネスマンとして知られてきた海江田氏のお株を、完全に奪うキャラクターである。結果、海江田氏は落選。民主党代表を辞任することになった。海江田氏は特に安全保障政策において左派と目されていたため、今後、民主党の右派がまとまりやすくなり、自民党としては改憲でのアライアンスがつくりやすくなるはずだ。
自民党はこの手の「人物ブランド」の差別化戦略を意識していると思われる。たとえば東大法学部卒で公募出身の中堅幹部には、同じ東大法学部卒の公募候補をぶつけている。前者は転勤族で都内の私立高校を出ているが、後者は高校まで地元だ。「落下傘」対「地元」という構図がつくられた結果、民主党の中でも選挙が強かったこの中堅幹部も最近は比例復活が精一杯である。安倍政権が憲法改正を目指すのであれば、今後も、政党レベルではなく、議員レベルでマーケティング戦略を立ててくるのではないかと予想される。
一方、将来、民主党とのアライアンスを視野に入れると、現在のパートナーである公明党の動きが重要である。公明党は様々な政策において安倍政権に対するバランサーというポジションをとっている。今回、公明党は議席数を増やしたほか、自民党への選挙協力にも応じ、要党としての存在感を高めた。その点で公明党の交渉力は上がったといえるだろう。しかしここに「戦略のパラドックス」がある。実は、アライアンスパートナーとして強くなりすぎるとアライアンス瓦解のリスクも高まるのである。
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