知念さんの詩は、県平和祈念資料館が募った「平和の詩」2274点の中から選ばれた。祖父の姉は、沖縄戦で夫を亡くしたが、その遺骨はみつからず、小石を墓に納めるしかなかった。その悲しみに「少しでも寄り添えれば」と題材にしたという。

 〈夫の足跡を 夫のぬくもりを 求め探しまわった〉

 〈彼女のもとには 戦死を報(しら)せる紙一枚〉

 〈亀甲墓に納められた骨壺(こつつぼ)には 彼女が拾った小さな石〉

 知念さんの祖父の姉は戦後、再婚しなかった。詩では、高齢になり、認知症を患いながらも夫を思う姿と、戦後70年の社会で進む戦争の記憶の風化とを重ねて表現した。

 〈無慈悲にも自然の摂理は 彼女の記憶を風の中へと消してゆく〉

 そして、〈刻まれた礎(いしじ)に 私は問う〉〈六月二十三日の世界に 私は問う〉〈戦争の恐ろしさを知らぬ私に 私は問う〉と繰り返した上で、〈しかし忘れてはならぬ 彼女の記憶を 戦争の惨めさを〉〈伝えねばならぬ 彼女の哀(かな)しさを 平和の尊さを〉と決意を示した。

 知念さんは「それぞれの人が心に問いかけ、何かを感じ取ってもらえたら」と話している。(朝日新聞)

      戦争の恐ろしさの感・もの足りなさ