子どもの頃、少しの小遣い銭をもらっては近くの駄菓子屋で、アメなどいつも買っていた。少し高価だったが、グリコのキャラメルも時々奮発して一箱買った。箱の上に付いていた小さな景品のおもちゃが楽しみだった。また、それと一緒にプレゼント引き換え券が入ってる時もあった。何枚集めたかは覚えもいないが、引き換えできる枚数集まったので早速送ることにした。博多にあったグリコの会社に郵送したのを覚えている。しばらくすると十姉妹(じゅうしまつ)の引換券が届いた。喜んで川近くにあった百貨店に早速引き換えに行った。希望していたつがいの十姉妹がもらえた。白色の中に少し褐色の色が混じった羽の可愛い小鳥だった。小さな紙の箱に入れてもらい、家に帰る時、うれしくてたまらなかった。
家の中で飼ってたりしてたが、そのうち庭の柿の木の先の、小さな家の壁ぎわで飼うことになった。稗や粟の混じった餌、水、菜っ葉などをあげた。口でフーフーと吹いて餌入れの中の殻を飛ばしたりして楽しく飼っていた。十姉妹はどんどん増えていき5、6羽になった。十姉妹の入れ物は木のりんご箱に金網を張り、横に出入り口の付いたものだった。りんご箱の中には止まり木、丸い藁の巣、餌や水入れの白い瓶などを入れて飼ってた。
ある日、りんご箱の十姉妹たちがバタバタと騒いでいた。見ると箱の中にちょっと青くて、こげ茶色っぽい大きなヘビが入っていた。あわてて、鳥を見ると何羽か少ないのだ。これはヘビにやられたととっさに思い、裏の薪置き場へ走った。薪でヘビを殺そうと思ったのだ。戻ると網の間からちょうど逃げようとしている時だった。悔しくてそのヘビを薪で思い切りたたいた。地面に落ち、逃げようとするのを叩きつづけた。ヘビの頭から少し離れたあたりの腹が少し大きくなっている。爺様たちもその膨れてるところは飲まれた十姉妹に違いないと言う。自分も間違いなくそう思った。薪でさらにぶちつづけてヘビを殺した。悔しいので薪でその大きくなった腹のところから口もとへ押さえながら何度も固いものを吐き出させるようにした。やっと、大きく開いたヘビの口から濡れたような鳥の死骸が出てきた。羽がべっとりしていてとても小さかった。でも嘴や足があるようで黒っぽくなった十姉妹とわかった。ほかにはもう死骸は出てこなかった。仇をとったとは思ったが、地面の上の小さな死骸をみつめていると哀しく、とても悔しかった。また余談になるが、そのころやってきた動物博覧会でのこと、ニシキヘビの小屋に残酷にも餌としてニワトリが一羽じっと怖そうに立っていたのを見たことがある。それと同じで、きっと逃げられない十姉妹も怖かったことだろう・・。
よく、家ヘビとも呼んだが、青大将というヘビが十姉妹を襲ったのだ。この青大将というヘビは家の近くによく生息し、ネズミ、小鳥、雛、卵などを呑んだりするようだ。それまでも何度か見たが、大きいものは2メートル近くあった。殺したヘビは七、八十センチ位だった。券でやっと引き換えたつがいの小鳥が卵を産み、その小さな卵から雛、そして成鳥へと育っていくのをいつも見ていた。ヘビにあんなことをしつこくしたのも、やはり、ほんとに飲まれたのは十姉妹なのか自分で確かめたかったからだ。そのあと青大将の死骸をどう処理したのか少しも覚えていない。そんな悲しい十姉妹と青大将の思い出だ。
全く、いくつ、生き物の命を奪えば気の済む、腕白な子どもでもあったんだろう・・・・。まだまだ少年の頃の思い出は尽きそうにもない。早く次の年代(青春篇?)に入りたい感じもするのだが。でも飲んだくれたりしてて、ハチャメチャで、小っ恥ずかしいから止めて、楽しい良い思い出だけ、そのまま心にずっとしまっておきたいし・・。これからも随筆がもっと先へ進むことになるんだろうか分りもしない。人生は長いようで短いし、短いようで長いのだろう。まだまだ「人生を語らず」なんて若い頃の吉田拓郎の歌もあったっけなー。そんな訳で今回は故郷での子どもの頃の悲しい話なのだ。
私も十姉妹のメスを2子ヘビ(すじヘビという小さいやつです)を飲まれた体験がありますので、お気持ちもの凄くわかりました。
食後の昼寝を満足そうにしていたヘビを、日溜りの外に出して首をちょん切りました。かわいそうでしたが、復讐と、放って置いたら再びやって来る。。。と感じたもので。やっぱり自然のおきてとは言っても後味は悪かったですね。
ヘビは夏場水分が少なかったので、水を求めて来たついでに、どうやらそのままエアコンの水はけの細いホースから、顔を突っ込んで部屋まで入って来たようです。
実はもう一匹同じ種類のヘビが、数日後エアコンの送風口から部屋に入って来たのに、私自身が遭遇したのです。ビックリしました。
もしかしたらこの2匹は夫婦だったのかもしれません。こっちの方も同じ理由で殺したのですが(今度は熱湯をかけて。。。残酷なことをしました。)、こっちもさらに後味が悪かったです。
いずれにせよ鳥や爬虫類には、彼らの世界があるのだな。。。と、なんか始めて思い知らされた経験となりました。
山梨 ふじあきお