「脳の健康を守り、平均寿命を伸ばす」
70代になったら積極的に食べたほうがいい
"3つの食べ物"
■頭をよくするビタミンCの「抗酸化作用」
ビタミンCが頭をよくする理由は、酸化を防ぐ抗酸化作用にあります。
脳細胞の酸化が進み、傷つくと、脳全体の働きが弱ってしまいます。
また、血管内で酸化が進んでも、脳に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなってしまいます。
そのため、脳や血管の酸化は、認知症全体の約7割を占めるアルツハイマー型認知症の原因の
ひとつとされているのですが、ビタミンCには、それを防ぐ力があるのです。
ビタミンCには、酸化の逆である還元作用を起こす力があります。
その作用によって酸化を防ぎ、脳細胞や血管を守るのです。
むろん、ビタミンCは、脳や血管だけでなく、体全体にとっても必要です。
老後、新鮮な野菜やフルーツをたっぷり食べている人は、
男性で6年、女性で1年、寿命が伸びるというデータもあります。
ご承知のように、ビタミンCは、野菜や果物に含まれていますが、
サプリメントで補給することもできます。ビタミンCは、
古くから「健康にいい」と注目されてきたため、早い時期から、錠剤が作られ、
その値段はサプリメントの中でも、最安値の部類に入ります。大いに利用しましょう。
■やっぱり「酒」と「たばこ」は健康に良くない
常識的なことではありますが、70歳前後ともなれば、飲酒は、ほどほどを心がけることです。
酒は、ストレスの発散効果があるとはいえ、基本的には脳にダメージを与える物質です。
大酒を飲んだとき、記憶がなくなるのも、脳内で記憶に関して重要な役割を果たしている
「海馬」という部位が麻痺するために起きる現象です。
脳には、「血液脳関門」という有害物質の侵入を阻止する“関所”が設けられているのですが、
アルコール類はその関所を突破して、脳内に入り込みます。
そうして、海馬を麻痺させてしまうのです。
一時的な“記憶喪失”は、酒からさめれば解消されるとしても、
毎日のように大酒を吞(の)んでいると、前頭葉が確実に萎縮していきます。
実際、アルコール依存症患者の脳を調べると、
前頭葉と海馬が萎縮しているケースがひじょうに多いのです。
とりわけ怖いのは「ひとり吞み」で、アルコール依存症のリスクが大きく高まります。
一方、タバコも、やめるに越したことはありません。脳への影響についていうと、
ニコチンは血管を縮めるため、体内の血のめぐりが悪くなるうえ、
脳に流入する血液量が減っていきます。
すると、脳はたえず酸素不足の状態に陥り、うまく機能しなくなってしまうのです。
いわば、ヘビースモーカーの脳は、つねに酸素不足で、
いわば金魚が口をパクパクしているような状態。
そんな状態では、脳の衰えを防ぐことはできません。
ただ、最近の研究では、ニコチンにはアルツハイマー型認知症を防ぐ効果もあるとされています。
どうしても禁煙できないという人は、酸素不足の起こりにくい電子タバコでがまんするのが、
現実的な解決法といえるかもしれません。
■「食べる」ことと「噛む」ことは健康に大きく影響している
「食べる」ことに関連して、「噛む」ことの重要性について述べておきたいと思います。
以前、「ガム」に関して、次のような記憶力テストが行われたことがあります。
対象は、小学生。色付きボードの配置を30秒間で覚え、その通りにカードを並べ直すという
テストです。このテスト、ガムを噛みながら行うと、正解率が2倍にもアップしたのです。
そこで、ガムを噛んでいるときの、脳の状態を調べると、
血流量が増えていることがわかりました。とりわけ、記憶を司(つかさど)る
海馬の血流量が増えていたのです。そのメカニズムは、以下の通りです。
ガムを噛むと、あごの「咬筋(こうきん)」が動きますが、
その咬筋は三叉(さんさ)神経によって脳とつながっています。
そのため、咬筋を動かしたことによる信号が、大脳や扁桃体(へんとうたい)など、
認知機能を司る部位を刺激し、血流が増えるという仕組みです。
加えて、ガムを噛むと、歯の歯根膜(しこんまく)が圧力を受けます。
歯根膜への刺激も脳に信号として伝わり、脳を刺激します。
これもまた、脳の活性化につながるのです。
逆にいうと、歯が悪いことは、認知症の原因になります。
■ガムやスルメを食べるだけで脳の衰えを防ぐことができる
その理由は2つあって、第一には、噛む回数が減ることで、脳への刺激が減り、
認知機能が衰えること。第二には、噛む力が衰えると、生野菜などの硬い食べ物を避けて、
麺類など、やわらかいものを食べる機会が増えることです。
すると、ビタミン不足に陥り、これもまた、認知症の発生リスクを高めるのです。
実際、歯が20本以上ある人に対して、歯のほとんどない人は、
認知症の発症率が1.85倍も高いというデータもあります。
また、アルツハイマー型認知症の患者は、野菜の摂取量が少ないこともわかっています。
私は、健康に長生きしたければ、義歯やインプラントなど、
歯にはお金をかけたほうがいいと思います。
なお、脳を刺激するには、咬筋を動かせばいいのですから、
噛むものは、ガムではなく、スルメでもOK。
私も、ときおり昔懐かしい「都こんぶ」を買ってきては、噛んでいます。
というわけで三度の食事をとるときは、若いとき以上に、
よく噛んで食べるようにしたいものです。
それだけのことで、脳の衰えを防ぐことができるのです。
和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医・国際医療福祉大学赤坂心理学科教授 1960年大阪市生まれ。
1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科、老人科、神経内科にて研修、
現在、国際医療福祉大学赤坂心理学科教授、川崎幸病院顧問、
一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。
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