40代、60代、80代…ずっと健康的に過ごすために
知りたい年代別「食べ方」の正解
歳を重ね、体が変化するのに合わせて「食べ方」も変える必要がある。
では、具体的にはどうアップデートしていけばいいのか?
100冊の健康書のなかから、疲労回復、疲れにくい体づくりにつながるメソッドを厳選した
『疲労回復の専門医が選ぶ健康本ベストセラー100冊「すごい回復」を1冊にまとめた本』
出版したばかりの東京疲労・睡眠クリニック院長・梶本修身先生が解説する。
40歳は切り替えが必要な年代
歳を重ねるにつれ、疲れ方や心身の悩みは少しずつ変わります。
年齢とともに当然、体も変化していきます。
食べ方も、体の変化に合わせてアップデートしていく必要があります。
最初に意識していただきたいターニングポイントが、40歳です。
「人生100年時代」といわれると、40歳なんてまだ通過点どころか、
折り返し地点にも達していないので、まだまだ若いと感じているかもしれません。
でも、自律神経の機能は、40代になると、10代、20代の頃のだいたい半分ほどに低下します。
3分の1になれば野生の動物であれば生きられません。
自律神経の機能が半分になるのは、動物であれば死ぬ間際というタイミングです。
ですから40代は今までと同じというわけにはいかない、
切り替えなければいけない年代なのです。
だから、でしょう。「40歳」というキーワードがタイトルに入った健康本をしばしば見かけます。
そのなかでもベストセラーとなった一つが、医師の済陽高穂先生の
『40歳からは食べ方を変えなさい! 』。
済陽先生はもともと外科医としてがん治療を行っていたものの、
手術だけでは完治できないことに悩み、食事療法も研究するようになった先生です。
40歳前後から、代謝が急激に下がる。食の不摂生があると代謝はさらに落ち、
代謝が低下すると体のさまざまな働きも落ちていく、と語ります。
実際、40歳を超えたあたりから高血圧や糖尿病といった生活習慣病が増え、
健康診断の結果を気にする人たちが増えますよね。病気がより身近になる年代なのです。
済陽先生は、「まずは『体の糖化』に気をつけよう」と指摘します。
糖化とは、血液中にあふれた糖が血管からしみだし、
タンパク質にくっついて起こる現象のことをいいます。
活性酸素による酸化とともに、老化を進め、健康寿命を縮める元凶です。
糖化を防ぐために気をつけたいのは、やっぱり炭水化物(糖質)との付き合い方です。
済陽高穂先生は、主食の白いごはんのコントロールが大事になる、といいます。
といっても、主食を極端に減らしなさいといっているわけではありません。
むしろ、糖質を極端に減らすのは注意が必要、と警鐘を鳴らします。
私も極端な低糖質ダイエットには反対です。糖質を制限して体内で糖が足りなくなると、
代わりにケトン体というものが増えるのですが、ケトン体が増えすぎると
ケトアシドーシスといって、体が酸性にかたむき、危険だからです。
済陽高穂先生が推奨するのは、1食1膳に制限し、週2回は玄米や胚芽米にすることと、
食後の血糖値の乱高下を防ぐことです。 また、揚げ物も食べすぎないように、
と済陽高穂先生はいいます。体を構成する細胞などのタンパク質が糖とくっつき、
「メイラード反応」と呼ばれるコゲつきを起こすと、
「AGEs(終末糖化産物)」という物質に変わります。
揚げ物や炒め物は、このAGEs を多く含むのです。
AGEs が体内に増えると、老化が進みやすくなります。
AGEs の蓄積を防ぐには、AGEs 量の多い食品を控えることと、
ゆるやかな糖質制限で血糖値を上げない食べ方を意識することです。
60歳からの「肉・魚ファースト」
続いて、60歳になると、自律神経の機能は若い頃の4分の1以下に。
腸内バランスも悪化しやすいのがこの頃です。
この年代の食事の仕方について書かれているのが、
管理栄養士の森由香子さんの『60歳から食事を変えなさい』。
クリニックで患者さんに栄養指導を行っている森由香子さんは、
60歳を目安に、年齢による変化に合わせた食べ方を
レクチャーするように心がけている、といいます。
その一つは、「60代からは、野菜ファーストではなく、肉・魚ファースト」にすること。
60歳以上の方の場合、野菜を先に食べると、それでお腹が満足してしまい、
肉や卵などのタンパク質が食べられなくなってしまう人が意外と多いから、とのこと。
日々の食事では、たんぱく質の摂取量をまず確保しないと、
筋肉の量や質が低下し、「フレイル」を招きやすくなります。
フレイルとは、英語で「虚弱」を表す言葉です。 世界共通基準はまだないのですが、
体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度の低下、身体活動の低下など、
さまざまな症状がいくつも重なっているような状態のことをいいます。
『60歳から食事を変えなさい』より
60歳前後になると、多くの方が以前より疲れやすくなった、
体力がなくなったと感じるものの、それは、筋肉量の減少が背景にあることが多い、
と森由香子さんは指摘します。だからこそ60歳からはタンパク質をとることがより大事。
また、認知症予防という点でも、肉を食べることをすすめています。
それは、血液検査でアルブミン値が低い人ほど認知機能が低下しやすいとのデータもあるから。
アルブミン値は血しょう中のタンパク質の濃度で、
値が低くなる大きな要因の一つが肉を食べないことなのです。
そして、食べ方にも工夫が。噛むという行為は脳を刺激するので、認知症予防にもなるのです。
そのため、ぜひ噛みごたえのある食事をとってほしいそう。食材はあえて大きく切ることで
噛みごたえが増し、噛む回数が増えるとのアドバイスもいいですね。
コレステロール値にしても、70歳以上では高い人ほど長生きしているとのデータもあります。
若い人の場合、肉の食べすぎが肥満につながり生活習慣病リスクを上げてしまう懸念が
ありますが、60歳からは肉を食べている人のほうが長生きすることは確かだと思います。
80歳からは体の声を大切に
80歳を超えたら食事は我慢しない、食べたいものを食べる、と言い切るのが、
『80歳の壁』の和田秀樹先生。高齢者専門の精神科医として多くの高齢者を診てきた、
老年医学の専門家です。 高齢になると臓器の働きが落ちていく。
「食べたい」と思うのは、体が求めているのかもしれないと、次のように語ります。
60 代くらいまでは、塩分の摂り過ぎも太り過ぎも、健康を損なう原因になるかもしれません。
しかし80 歳も目前の幸齢者になったのなら、その常識は一度忘れたほうがいいと思います。
「 食べたいものを我慢してダイエット」など、自ら寿命を縮める行為です。
栄養不足は、確実に老化を進めるからです。 体の声を素直に聞く。
80 歳を過ぎた幸齢者には、これが一番の健康法です。
『80歳の壁』より 一部省略
※「幸齢者」とは、高齢者よりも希望の持てる呼び方を、という著者の造語
また、「噛めば噛むほどに、体と脳はイキイキする」とも。脳への刺激になることのほか、
よく噛むことで、加齢とともに弱った胃腸の働きを補ってくれる、
虫歯や歯周病、誤嚥性肺炎の予防にもなる、と和田秀樹先生はいいます。
80歳を超えてくると昨日までできていたことが今日できないという事態に
たびたび遭遇するもの。この本には、老いや衰えを受け入れつつ、
まだ残っている機能を衰えさせない、80歳からの生き方のヒントが散りばめられています。
生涯現役だからこそ元気
健康長寿のお手本ともいえるのが、105歳で亡くなられた日野原重明先生です。
100歳を超えてからも現役の医師として診療を続け、
全国を飛び回って講演活動をされていました。
そんな日野原重明先生が90歳を迎えた2001年に出版された『生きかた上手 新訂版』では、
年齢や健康基準といった数値にふり回されないのも生き方のコツ、とつづっています。
90歳になる私の心臓を念入りに調べたなら、動脈硬化はあるに決まっています。
それでも私はどんな朝も爽やかに目覚めます。すがすがしいほどの健康感があります。
それで十分であり、それこそが大切なのです。 『生きかた上手 新訂版』より
日野原重明先生とは何度かお会いしていますが、高齢になってもずっとお元気でした。
だから生涯現役で活動することができたとも考えられますが、私は逆のような気がします。
生涯現役で活動されていたからこそ、お元気だったのではないでしょうか。
『生きかた上手』は、そうした日野原重明先生の佇まいが伝わってくる本です。
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