はずれの映画辞典

映画とは生きものの記録です、この世に生きる者が、こうして生きようじゃないかと訴えます。惚れた映画を毎日連載します。

韓国ドラマ05ーアスファルトの男02

2007-09-29 08:31:33 | Weblog

物語

 1~7話

 カン・ドンジュの父親は、長年運送会社に勤務していた、年中故障ばかりしていたトラックから、中古のタクシーを買い、これで生活は安定して一安心という所で事故に会い足を怪我して、車は大破してしまう。
 車好きのドンジュを大学へ入れるために父親は必死で働き、母親が居ない父子家庭、父が溺愛するドンジュには姉のドンヒと、弟のドンソクが居る。

 姉のドンヒはアメリカの基地の近くに住んでいた事から、マイケルという米兵と親しくなり、サニーという子供が出来る、そこで父親はドンヒを勘当して家から追い出す、ドンヒと仲の良い弟のドンソクは、喧嘩早く短気で喧嘩ばかりしてその度に警察のご厄介になり、示談の金を工面して、父親はこの弟も毛嫌いしていた。

 ドンジュは小さい時から、車に憧れて、父親の思うとおりの子供に育った、大学卒業の時に、車のデザインコンクールに参加したが、この時、優勝に自信があった、しかし、オ・ハリヨンという女性に優勝をさらわれた
 そして、優秀な成績で大学を卒業した。 父親は、小銭をためてドンジュを留学させたいと土地を買っておいた、その金で留学しろという父親だったが。

 アメリカの兵隊マイケルの子供を生んだドンヒは、マイケルとアメリカへ渡った、姉思いの弟はこのマイケルが酒癖が悪く気に食わず再三喧嘩して、最後に自暴自棄になりバーの中であばれ火をつけて逃走した。
 しかし、捕まってしまいその倍償金をドンジユが留学のために取っておいた土地を売り支払った

 アメリカのサンフランシスコへ渡ったドンヒは、マイケルと生活を始めるが、マイケルの酒癖に困って居た。
 正気になると大人しくて、ペンキ屋の仕事に出ていた、そんなある日の事、弟のドンソクが姉を頼ってやってくるそして居候、サニーの子守をしていた。喧嘩が昔から強いドンソクは、町の賭けボクシングでもチャンピオンになった、少々の金は入るが姉のドンヒは怪我ばかりするドンソクの生き方に好意を持たなかった。

 大学は卒業し弟のために留学を断念したドンジュは、地元の自動車会社のキリヨン自動車に就職した、同時に其処へデザインコンクールで優勝したオ・ハリヨンも新入社員として入ってきた。
 仕事は二人とも車のデザインを作り出す仕事を命じられた。その頃、キリヨンのライバル会社セリュン自動車では、”カーデンジャー”という国産車を出して売り出そうとしていたが、キリヨンは自社製の車は無く、日本車のホンダの”ミラージュ”を輸入して売る作戦に出ていた。
 セリュンに勝つには何が何でも自社製の車が欲しい所、そこで新人のドンジュとハリヨンは新しい車のデザインを早急に作り出せと命ぜられる、その中で、二人はお互いに好意を持ち始める。

 寝る暇もなくデザインを考え”ファイター”という車を作ったが、会社はあくまでもミラージュで勝負するといいその車は没になった、また、ライバル会社のセリュン社製”カーデンジャー”はエンジンが爆発する事故が起きた、それをキリオンは、粗製乱造の自社製国産車とマスコミで宣伝しミラージュを売り込んだ。

 づづきはほーむP「はずれの映画辞典」

韓国ドラマシリーズ05-アスファルトの男01

2007-09-28 08:57:30 | Weblog

アスファルトの男

 監督 イ・ジャンス、主演 イ・ビヨンホン1995年                   
16回連続 ’05年3月25日 DVD発売

解説

 この作品は、イ・ジャンスが監督して’95年にイ・ビヨンホンが主役で制作した比較的古いドラマである。
 監督のイ・ジャンスはこのあと、’97年「美しい彼女」’01年「美しき日々」’03年「天国の階段」(クオン・サンウ、チエ・ジウ)’05年「悲しき恋歌」(クオン・サンウ)と大作を出し、全てが大ヒットしている。

 一方、イ・ビヨンホンは、彼が主演するDVD化されて日本にお目見えした作品の中では最も古くこのあと「美しい彼女」「白夜」「Happy/Together]「ひまわり」などなどヒット作を出してスターダムにのし上がった。

 日本では、「冬のソナタ」で、韓国ドラマが注目を集め、この時から韓国映画やドラマが次々にDVD化されて日本へやってきた、不思議な事に年代の新しい物からDVD化されてお目見えしてこれが一番最近入って来た古い部類の作品である。

 また、このドラマの第九話の冒頭には、ソウル放送(株)の謝罪公告があり、そこには次のような文面が載って居る。

 1 このドラマでは、鈍器で頭を殴るなどの暴力シーンが出ていること。

 2 特定商号の書かれた自動車を長時間露出した。
 3 毎回線路を舞台とした場面を長時間演出した。

 これは、暴力描写、間接公告、等の放送審議規定に違反し、視聴者への謝罪命令を受けたとして謝罪の公告が出ている。

 確かに、日本のホンダ自動車とか、ミラージュとか、実名の物を出している神経は戴けない、まして三菱のミラージュなどはこのドラマの後に発売になった、それも後にリコール騒ぎになったあのミラージュが。

 従って、このドラマは何処でも放映はされないだろう。

 韓国では、もうとうに忘れられたドラマだが、日本ではこのイ・ジャンヌ監督作品とイ・ビヨンホンの映画やドラマはますます人気を得る事だろう。なお、この時代の作品は、現在の特設の撮影所等の設備は無く、スタジオでの撮影もなく、全てがロケで撮影されたというから、可也の手間隙がかかった事だろう。

 ドラマは、国産車の開発に情熱を注ぐ大学を出たばかりのカン・ドンジュ(イ・ビヨンホン)がライバル会社セリヨンのレーサーとなった仲の良かった最愛の弟と、最後にカーデザイナーから独自の夢だった自動車会社を設立し、世界的なレーサーとなった弟と出会うという映画である。

 全般的にスリルとスピード感に溢れた映像は迫力があり、男臭さがドラマを惹き付ける大作である。

明日につづく

韓国ドラマシリーズ04-夏の香り

2007-09-27 08:48:35 | Weblog

 夏の香り  監督 ユン・ソクホ 2003年制作   20回連続

 出演 ソン・スンホン ソン・イエジン ハン・ジヘ リュ・ジン

 解説

 韓ドラファンなら言わずと知れた冬ソナのユン・ソクホ監督が「秋の童話」「冬のソナタ」の後の3作目に撮りあげた作品。交通事故で恋人を亡くしたユ・ミンウと、山で出会った恋人にそっつくりなシム・へウオンとへウオンの幼馴染の婚約者パク・チョンジエ、その妹のパク・チョンア、チョンアはユ・ミンウが好き、でこの四人の四つ巴のラブストーリー。

 物語

 フラワーアーテイストのへウオンは高校時代から好き合っていたチョンジエが居て婚約した。
 その直後、へウオンと同居しているジャンミと山登りに出かける、へウオンは昔心臓が悪く移植手術を受けてあまり山登りが得意ではない、山道でジャンミは先に目的地へ向かう、一人になったへウオンはゆつくり歩きながら登るが、途中で道に迷う、藪の中へ転げ落ちて助けを呼んでいると、ミンウがその声を聞いて助けに来る。

 日がとっぷりと暮れ二人は山小屋に泊まる、ミンウはラーメンなどを持っていて二人でそれを食べる。
 翌朝へウオンは助けてくれたミンウの寂しそうな背中を見て魅かれる。心臓が他人事のようにどきどきとした。

 翌日二人で山を下りるが、ミンウは、イタリアから帰って来たばかりの建築家で、恋人を自動車事故で亡くして寂しさから山登りをしていた。そしてへウオンが前の恋人に良く似て居るので魅かれる。

その後二人は、リゾート開発の仕事で再会する、そしてこの四人はお互い色々な思いを持ちながら仕事をせざるを得なくなる。

 つづきは「はずれの映画辞典」

 感想

 このドラマの底に流れているもの、それは、心臓の移植手術を受けたへウオンが、その前まではおとなしい気弱な女性だったが、性格が変ったように明るくなった。その心臓を持つヘウオンは自分ともう一人の心臓を持つ人が居るような感覚になり、気持ちの変動が激しい。その女性がドラマを面白くしている。

 それに、この監督は、人間の心理を事細かに表現させる木目の細かい表現をする、それが、好きな人どうしの表現、振られた人の表現、それらの心理描写を巧みに表現する。どこか。日本の「大竹しのぶ」のキャラクターに似たヒロインが素晴らしい、盛り上げる音楽も素敵だが、一つ難点は、既製の音楽を「秋の童話」と同様に使っている所が残念だ。

 そして、話の筋は四角関係という事で、話の展開などが大体見えてくるので物語としては難がある。・・・ 退屈である。

 感じた度 ★★☆

韓国ドラマシリーズ03-ガラスの華

2007-09-26 09:11:09 | Weblog

ガラスの華 18回連続 2005年 主演 キム・ハヌル イ・ドンゴン

解説

 05年2月に韓国では放送が終了したばかりの最新ドラマ。主演のキム・ハヌルは連ドラ「ロマンス」で年上の先生と生徒の恋物語を演じ、「秘密」ではリウ・シウオンと気丈なアバレルショップの人を演じた、一目見て嘘のつけない目をしている魅力的な女優だ。イ・ドンゴンは、第二のヨン様と騒がれても良いようなヨン様似の若い俳優で、「パリの恋人」ではパク・シ二ヤンの恋敵を演じ人気が出た。

 この魅力的な二人が演ずる今にも壊れそうなガラスの華の物語。 

物語

 親に捨てられ、孤児院で育ったギデ(キム・ソンス)とドンジエ(イ・ドンゴン)はかけがえの無い親友。それもただの親友でなくて、ギデの肝臓をドンジェは貰っている仲。二人の通う学校へジス(キム・ハヌル)という少女が転校してくる。3人は意気投合して、どんな事があってもジスを守るという誓約を交わす。

 ある日、ジスのオカリナが川の中へ落ちてしまいそれを捜しに川の中へ飛び込んだドンジエはそのまま行方不明になってしまう。

 15年後、ジスは偶然にドンジエに出会い、3人は二人が育った教会で再び出会う。 ドンジエは日本で韓国人の父親と、日本人の母親に育てられていた、そしてギデは、ある財閥の妾の子供となっていた。

 ドンジエの居ない間ジスの面倒を見てきたギデは面倒が恋心となり、偶然再会したドンジエとジスは幼い時からの淡い恋心が大人の愛となってうずき出す。ジスを巡って二人の親友は恋敵となる。妾の子のギデ、妾の母親は密かに本妻の座を狙っている、本妻の長男さえ居なければ跡継ぎはギデ、そこで何か策略が?どうも本妻の長男の死因が事故死扱いだが不透明。

 また、ドンジエは、生命保険のネット販売で成功した在日韓国人の父親に拾われてその跡継ぎとなっている、ある日、義理の日本人の母親とジスとは面会する、そしてドンジエは結婚を決意する、12年間その思いを秘めていた川へ落としたオカリナをジスに返しながら結婚を申し込むが、こちらは、ジスと父親の関係が不透明になってくる。

 三角関係は、微妙に様々な思惑を含んで進んでゆく。 

感想

 この物語の根底にある物は、深い子供の時からの友情である、この友情は後に二人の幼馴染のジスの奪い合いになる、男と女の間には友情は無い。その間に挟まれて苦悶するジス、何処までが友情で何処までが恋心なのかが自分自身明白でない。大人になってもどちらも大会社の御曹司、このいらいらがだらだらと続くので面白くない、途中で飽きてしまう、「三角関係」それしかないドラマは、韓ドラファンには期待はずれのドラマ。

 感じた度 ★☆☆

韓国ドラマ02-チャングムの誓い

2007-09-25 08:57:03 | Weblog
 
 宮廷女官チャングムの誓い  2003~2004年
 
 監督 イ・ビヨンフン  脚本 キム・ヨンヒヨン  

  主演 イ・ヨンエ、チ・ジニ

  解説

 冬ソナ以上に韓国ではテレビで人気の在ったドラマである。NHKbs2でアンコール放送が2005年12月に終わった。
 このドラマは、韓国で放映した時に50%を越える高い視聴率を得たとかで神話が残っている、そしてそれは先ずは台湾で大好評だったようで、ヒロインのミン文官役のチ・ジニが大ブレイク、ミーテイングツアーを記録したそうである。

 日本でも2005年には「美しき日々」で45000人の韓流ファンがこの各地を廻ったツアーに集まったとか。イ・ビヨンホンとチエ・ジヌが人気だった。「チャングムの誓い」ツアーはこれから始まるらしいがどうなる事やら。

 この物語は実在の女性をモデルにした時代劇で、唐辛子がまだ朝鮮へ渡っていない時代の宮廷料理や韓薬(韓国の漢方薬)の解説などが話題になったのだそうだ。 日本では、女性だけでなく男性も宮中の男たちの動きが現役の会社に似たところがあるらしく、冬ソナよりも視聴率は良いらしい。

 この映画の見所は、封建社会の中、儒教思想の中の女性の地位の問題を大きく取り扱った所にある。

 現在韓国の女性は強い、これは、封建的な規律の中で、押し込められてきた女性たちが、男たちの抑圧の中で母は子を思い、娘を思い何の恐れも無く我が子を愛した、それは、文章など読めない男性だけの教育の中で、母親たちは娘に嫁いだ先の嫁さんの作法などを書き物にしたためてそっと渡したそうだが、その書付を見て嫁さんは辛い時に母を思ったそうで、そういう情愛が女性を強くしたんだとか、ドラマの中でも伺える。

 ドラマの歴史的背景 14世紀、中国には民が建国され元は北に追いやられた、この政治情勢の時に、時の高麗の武将として北の防衛に当っていた李成桂(イ・ソンケ)は、軍事クーデターを起こし高麗の政権を我が物にした、そして王位に着いたのが1392年。
 太祖・李成桂は1393年、国号を朝鮮と改名し翌年都を漢陽(ソウル)に遷し新国家を作った。初期の王様の中でも大王と呼ばれた第四代国王・世宗(セジョン、即位は1418年ー1450年)は名君として名高い。

 この時代にハングル文字という朝鮮固有の文字が使われ、近年まで続く身分制度や社会習慣が形成された。そして、文官(東班)と武官(西班)をあわせた両班(ヤンバン)が最上位に君臨し、中人や常民とよばれる商人や農民を支配した。


 1592年、この朝鮮王朝の平安を揺るがしたのは豊臣秀吉軍の侵攻だった、日本では室町の時代である、
文禄・慶長の役1592と1597年の二度にわたる侵攻で朝鮮王朝は滅びて戦国の時代を迎える。
 初期の朝鮮王朝はこの1392年から、1597年の二百年間続いていた。

新連載・韓国ドラマシリーズ01ーバリでの出来事

2007-09-24 08:59:01 | Weblog

バリでの出来事 監督イ・ムンソク                  

出演ハ・シウオン、ソ・ジソプ 2004年 20回連続

解説

 不遇な生い立ちに育つ貧困層代表のスジョンとイヌク、苦労知らずのP財団の御曹司ジェミンと婚約者のヨンジュ、社会の両極端な生活環境で生きてきた4人が、嫉妬や、野心、プライドや自己愛、それぞれが幸せを求めて揺れ動くドラマである。

 関係図

 カン・イヌク(サラリーマン)→元恋人→チエ・ヨンジュ(財閥の娘)←(婚約)チョン・シェミン→イヌク(好き) →イ・スジョン←(一目ぼれ)チョン・シェミン(P財団御曹司) 

 物語 →「はずれの映画辞典」
    感想

 ドラマの中で、カン・イヌクがスジョンに言う台詞がある、それは、「グラムシのヘゲモニー理論」という理論である、この理論とは世の中には階級があり、二つの階級は相まみえると”不幸を呼ぶ”、つまり、金持ちの階級の人は金持ち同士がお付き合いして結婚する、貧乏人は貧乏人同士が結びつくのが宜しいのだという理論である、差別を肯定する理論である。このドラマはこの理論から作られたドラマである。したがって、・結末は・・・言わないでおこう。

 韓ドラと言えば、難病、交通事故、と言うのが常識としてあるが、このドラマには家父長制度、階級制度、四角関係はあるがこの二つが出てこない、したがって、難病や、突然起きる交通事故などで物語が急展開することがない、ということは、ドラマの色付けがないという事、ドラマの山場がなくて引き込まれる要素が無く、淡々と好きだの嫌いダの早くドッチかにしろよと言いたくなるぐらい退屈である。一時間のドラマで充分なドラマを20時間も延々とやるので可也退屈なドラマである。しかし、出てくる俳優が素晴らしい演技を見せるのでそこが見所なのだろう。特にカン・イヌク(ソ・ジソプ)が、無口なそして謎を秘めた物腰が見る人をひき付ける。

 ちなみに、イ・ジソプは、「遠い道」「ガラスの靴」に出演している。

 感じた度  ★★☆

隠し剣・鬼の爪ー山田洋次傑作選

2007-09-19 09:05:30 | Weblog

隠し剣・鬼の爪 2005年 出演 長瀬正敏、松たか子、 

 解説

 世界をも感動させたという前作の「たそがれ清兵衛」に続いて、藤沢周平の世界の続編。スタッフも同じメンバー、今回も下級武士の哀歓を美しい映像で描く。なお、藤沢周平の作品は監督が違うが、「蝉しぐれ」でおなじ下級藩士の作品がある。

 物語

 狭間弥一郎が江戸行きの舟に乗る、見送りに来たのが片桐宗蔵(片瀬正敏)、奴が江戸で出世出来るかどうかどうも不安だ、という片桐。

 時は幕末、所は山形宗方藩、片桐の家、奉公人のきえ(松たか子)が居る、なかなかの美人である。 やがて、きえは伊勢屋と言う商家へ嫁ぐ。
 三年後、行きの降りしきる町、よろず小間物と書いた店の前で片桐はきえを見かける、久々に再会してこえをかける、やせてあまり健康そうでない、半襟をプレゼントするが、幸せか?と聞くと、頷きながら泣いている一寸病気したからという。

 家に帰ると、片桐は母親にその事を話す、どうもきえの事が気になって仕方が無い宗蔵だった。

 幕末ともなると、武士は道場で訓練だけはするのだが、長い間武士が刀を使うような出来事は起きない、
そして刀の威力より、エゲレスより輸入されたという新式の銃、火縄銃でない引き金を引くと発砲する銃が藩の中に使われ始め、武士たちはその訓練に暇がない。
 片桐も刀の手入れ以外は刀を抜いた事が無いという。

 ある日、江戸で幕府に対する反政府勢力が謀反を起こした、捕まった武士たちは殆どが切腹となったが、その中に狭間弥一郎の名前が挙がった、そして彼は切腹でなくて、蝦夷への島送りの刑だった、そこへ藤丸籠で送られる途中わが藩を通るというしらせが入る。

 大目付が、この家中で、狭間と親しい仲の者は誰かを調べている、そこで槍玉に上ったのが片桐だった。 やがて、狭間が牢を破って百姓屋へ逃げ込んだというじけんがおきる、・・・。

 感想

 徳川幕府の独裁的な、そして差別のある時代が長く続くと、悪人の高級武士がはびこる、私利私欲に走る代官、水戸黄門がいくら全国行脚しても悪の道は絶えない。
 現代も同じ、戦争の無い時代が続くと、世間を欺いて、庶民を誤魔化して金儲けに専念する、金だけが世間を左右する考えが世間を堕落させる、というのは同じこと、清く正しく美しく生きようとする下級武士と庶民、それらの犠牲の基に理不尽な闘いが起きる、社会の底辺を見せつける、山田、藤沢のコンビのこの二作は見ごたえがある。

 感じた度 ★★★ 

武士の一分ー山田洋次傑作集

2007-09-18 09:00:48 | Weblog

武士の一分 2006年12月  監督 山田洋次 主演 木村拓哉

解説

 山田洋次、藤沢周平の「たそがれ精兵衛」「隠し剣・鬼の爪」につづく第三部作がこの作品。

 主演は木村拓哉、壇ふみ、例にって藤沢周平の武家物、東北の或る藩の下級武士の物語、山田洋次と藤沢周平についてはその項を参照。

 武士の一分(いちぶん)とは、武士として自分を支える柱のようなもの、同じような作品の「たそがれ精兵衛」より武士の魂が本題だけに色濃く出ていて三部作の中では一番面白い。

  物語

 木村拓哉演じる侍三村新之丞は近習組に勤める三十石の下級武士、城下の道場で剣術を習い秀才的な剣術使い。

 しかし、現在のお役目は殿様の食べる食事の毒見役、何のために剣術など習ったのか、愛する妻の加世と愚痴りながらも幸せな生活を送っていた。

 ある日、藩主の昼飯の毒見をしていたところ食べた後にすぐさま食べたものを吐き倒れる、すわ一大事と大騒ぎになる、毒見をしたのは、赤壷貝、さては藩主の暗殺を企てた者が居るのではないかと調べたが、不審な者は居ない、どうやらこの時期に赤貝が持っている毒気にやられたようである。

 材料を吟味した厨房の侍は責任を感じて切腹する。この時代には当然といえば当然な事であった。

 当の新之丞は、熱が出て三日三晩意識不明で寝たきり、目が覚めたが、どうも目が開かない
医者は妻の加世にそっと彼の目が永久に見えない事を告げる。

 しかし加世はそのことを新之丞に言い出せないで居るが、新之丞はその事に気がつき、刀を持って来いと死ぬ覚悟である、加世はそこで新之丞を思いとどまらせる、「私は貴方のためだけに生きている」貴方が死んだら私も死にたいという、武士の女房の一分である。

 そんな時に、加世に昔から一目ぼれしていた島田という武士が居た、この男が加世に近ずきなんでも困った事があったら相談に来なさいと親切にしてくれた。  目が見えない身体で藩の勤めは出来ない、家もお取りつぶしになる、それを心配した加世は新之丞に内緒で、何とか家名返上だけは止めて欲しいと島田にお願いする、・・・。  やがてお城から沙汰があり、三十石と家のお取りつぶしは免れたが、加世は島田に身体を奪われ武士の妻に有ってはならない姦通の罪の意識に苛まれる。

感想

 XXのためにとガムバッテ来たが、”実はそれは談合という罪なのだ”というように地方自治体の首長の汚職を最近良く耳にするが、自治体のために談合する事は悪くないがその時に生じる贈賄は良くない、首長が首長たるものの一分を心得ていれば何の咎めも無かった、何事も起きなかった、しかし、・・・という事例もある。

 映画の中で、なるほど武士道とはそういう生きるための支えが有ったのかと感心するが、武道の道を極めた武士は、そうせざるを得なかったとしか言いようの無い道理をこの映画は華麗なまでに見せて面白い。

 感じた度 ★★★

たそがれ精兵衛ー山田洋次傑作集

2007-09-17 08:53:07 | Weblog

「たそがれ清兵衛」

 2004年  原作 藤沢周平 監督 山田洋次  真田広之 宮沢りエ

解説
 2004年のアカデミー男優賞にラスト・侍の渡辺 謙がノミネートさたが落選した、この映画も候補に上がったが落選、日本映画は今かなりの危機状態だ、そんな中で頑張っている作品、山田洋二監督の庶民性がにじみ出る時代劇だ。話は、50石という安い賃金で身分を護っている会津藩の侍、家の面倒を見なければならないので黄昏には家に帰らねばならないので、たそがれ清兵と名が付いた。その貧乏侍の物語である。

 物語

 長患いのはてに母が亡くなったのは私が5歳の時だった、と語りから始まる、話は、山形県庄内郡、宗方藩の城下町、明治維新の前頃、番所の仕事が終るとすぐ家に帰らなくてはならない侍の井口清兵は、たそがれ清兵と言われた、二人の姉妹と痴呆のばあさんの面倒を見なければならなかったので付き合いは出来なかった。

 あてがいぶちは50石、なんやかんやで30石じゃ内職をしなければ食えなかった。
 ある時叔父が縁談を持ってきた、しかし断る、娘が育って行く様子を見ているだけで幸せですと答える、飢え死にした百姓の死体が川を流れてゆく、作物が不作で食えない人がたくさん居た。

 そんな時武士の友人飯沼が京都から帰ってきて、混乱した幕末の様子を話してくれた、天下が大きく変ろうとする情勢を語る。そして、その友人は妹を嫁がせたがそこの1200石の亭主幸田が大酒のみで暴力を振るうというので離縁させた、そして今は家に居るという。

 ある日清べいが勤めを終えて家に帰ると、その飯沼の妹の巴(宮沢リエ)が待っていた、二人は幼馴染であった、清べいが巴を小さいときに助けてやった事も有ったと娘達に幼い頃の話をする、娘達は家の中がぱーっと明るくなった、食事の支度をして皆で楽しく夕食を食べた。

 その夜、巴を家に送り届けると、家に別れた夫幸田が酒を飲んで暴れていた、その喧嘩を止める清べい、その男と其処では勝負が出来ないので明日の8ッ、般若寺の裏の河原で勝負をつけようということで騒ぎは治まった。

 その翌日、清べいは般若寺の裏へ出かける、飯沼が代わって相手をするところだった、相手は剣術の指南役だ、とうてい叶う相手ではない、棒切れで切り合いが始まる、幸田は清べいの棒切れの一撃でその場に倒れる。その昔、清べいは戸田仁斎の門下生で小太刀を少々やっていたという。

 そのことがあってから巴は清べいの家に掃除洗濯をしにやってくるようになった、二人の娘達はそれを喜んでいた、ある日飯沼は、お前が良ければ巴を嫁さんに貰ってくれないかという、清べいはなんせ50石取りの侍と、飯沼家四百石のお嬢様じゃとうてい無理だ、苦しい生活について行けそうに無いだろうといい断る。 しかし、その日から巴は清べいの家に来なくなってしまった。

感想

 洋冶らしいほのぼのする結末だが、清べいの真田が好演でなかなか面白い。

 感じた度 ★★☆

学校Ⅲー山田洋次傑作集

2007-09-15 08:49:17 | Weblog

学校 Ⅲ  2005年DVD発売 

出演 大竹しのぶ、田中邦衛、富田勲、朝間義隆                               

解説

 学校Ⅲは東京都の職業訓練校、ボイラーマン養成の訓練校での話
時は、バブルの崩壊でバブル期の企業戦士が大手の会社でもリストラが盛んに行われ、50歳以上の失業者が溢れていた。

 知的障害の息子を持つ紗和子(大竹しのぶ)も例外なくリストラされた、知的障害の子供を持つ和子はパートではなく定年まで働ける仕事を見つけようと職安で紹介してくれたボイラーマン養成の職業訓練校を受験した、和子の夫は10年前過労死で亡くなっていたので、どうしてもその希望を叶えたかったのだ。

 パートⅢはこの学校の同期の仲間との友情の物語を描く。

 物語

 障害児の息子を持つ紗和子は、再就職に必要な資格を得るために訓練校に入学、そこにはリストラにあった中年男達が大勢居て、その中でも最も偏屈な高野(小林念侍)と心を通じ合わせるなるが、・・・。

 感想

 夜間中学、知的障害者、今回は職業訓練校と様々な形態の学校を舞台にした映画、三作目は最も身近に起きているバブル崩壊後の社会状況の中での学校である。
 過労死で夫を10年前に亡くしたという紗和子を大竹しのぶが主演のこの物語は、男達が必死に生きようと頑張っている中で、障害児を持つ未亡人が必死に生きようとする姿を捉えて、山田ヒューマニズムが炸裂した名作である。

 感じた度 ★★★