はずれの映画辞典

映画とは生きものの記録です、この世に生きる者が、こうして生きようじゃないかと訴えます。惚れた映画を毎日連載します。

風の伝説

2010-08-28 07:52:18 | Weblog


    2004年  パク・チョンウ監督  イ・ソンジェ パク・ソルミ

 解説
 
 ダンスが好きになった男が居る、この男は、自分を芸術家だと自称している、この男とダンスをすると女はその幸福感がたまらない、そして男が困って居ると聞くと、多額の金をこの男のためならと出してくれる、それが、女をだます詐欺だと警察は追う。しかし、男は本当に踊る事が好きなだけだった。

 物語

 ヨンファは女の刑事だ、非番なのに呼び出されてパク・プンシク(イ・ソンジェ)という男を調べて証拠を見つけ出し逮捕しろ、そのためには、彼が入院している病院へ仮病で入院しろという命令が出る。

 ヨンファはそっと彼に近づく。そして彼のこれまでの話を聞く。
 フトしたきっかけでダンスの魅力に取り付かれたと彼は過去を話し始める、5年間妻と子供をほっとらかしてダンスの修行を積んだ。しかし、社交ダンスをするところはない、仕方なし邪道だと信じて居たが、キャバレーへ出かける、そこで、相手のいない寂しい女性を見つけてダンスを踊る、そこである女性を見つけて親しくなる。
 しかし、金が無くそう何時も其処へ行けるわけが無い、そこでその女性に連絡しないで居る。

 女はそのダンスに魅了されてパク・プンシクが好きになる、夫はそんな楽しみを味あわせてくれないという。プンシクは自分の事業がうまく行かないで居たので、金策に駆けずり回り、ダンスどころじゃないとその女性に話す、女性は彼に事業の建て直しの金だと大金を貸してやる、そしてこれでこれまでの関係を絶つ事にする。ダンスはそのぐらい女性には魅力が有るものらしい。そういう事を何度も繰り返して来たのだと語る。

 ヨンファもダンスとはそれほど面白い物なのかと彼に教えて貰うが、やっぱり女性としてはうっとりとして良いものらしい、彼女までも虜になる、しかし、其処は刑事、ミイラ取りがミイラにはならない、あなたのやっている事は、単なる女のヒモじゃないかとなじる。

 しかし、そうでない事実が次に起きる、そして話は意外な展開をする。

 感想

 ダンスという韓ドラには珍しい分野だ、冬ソナにチェリン役で出ていたヨンファ刑事が素晴らしいダンスを踊るが、他の俳優も素晴らしいダンスを見せてくれる、韓国の役者の層の厚さを見た。
 物語もなかなか面白く見せるのでダンスと共に楽しい映画である。

 感じた度  ★★☆

ジェニ&ジュノー  

2010-08-27 08:16:15 | Weblog

  2005 DVD 主演 キム・ヒエソン、パク・ミンジ

 解説


 この映画を見ると、年と共に韓国の映画作りも段々とアメリカナイズされたと言いたくなる。
 物語の内容も、韓国ドラマに見られるような古い体質の韓国の儒教思想の矛盾の追及から、一歩脱脚して映画が、「若者の感覚」へと変わって行く内容の映画が出てきて当然だが、そんなDVDが出ている事に注目だ、大手の販売ルートに乗らないから、DVDが先行して巷に出る。
 この映画は、高校生の高校生による高校生の生き方総集編とも言うべき、これまでのパターンをかなり打ち破った所で作られている所が注目だ。

 物語
 ジェニとジュノーは、高校生だが、ある日ジェニの家にジュノーが遊びに来て、その時のセックスでジェニは妊娠してしまう。
 日がたつにつれてこれは冗談でなく本物、二人はますます愛し合うようになり、ジュノーは彼女をいたわる様になってしまう、クラスでも二人の仲は公然とした恋人同士になる。
 やがて、二人の両親に知られる事になるが、下ろせ、とは言わないが25歳までは二人の仲を隠してアメリカで生むなどと、子供が出来た事を大人たちは隠そうとするが、の驚きを他所に、二人はその愛を公然と主張して子供を育てる事を宣言して、クラスの友達までもがこれには協力するようになるという物語。

 感想
 大抵は、高校生の妊娠となると、これまでは婚約もしない、結婚式もしないのに、セックスするとは罪悪、まして妊娠とはまたこれ罪悪、更に子供を育てる経済的な資格も無いのに子供を育てるという罪悪、良い事は一つも無いのだとこれまでは親は反対した、しかし、二人の愛があれば子供は育てられる、罪悪ではないという感覚がなんだか清清しい。

 感じた度  ★★☆


春夏秋冬そして春

2010-08-25 08:30:20 | Weblog


   コリアピクチャー2004年  キム・ギドク脚本・監督作品

 解説

 じっくり人を追う映画、登場人物の名前さえ無い。ある俗世間から遠く離れた山の中に素晴らしい自然に囲まれた素晴らしい湖があり、その湖の中に浮かぶように小さな庵がある、このお寺へ行くには岸の門からボートで渡らなければ行けない。そこで起きた和尚様と小坊主の話である。タイトルどうりに、これは春のソナタとでも言うべきか。

 物語

 素晴らしく綺麗な風景の湖に、浮かぶようにして小さな庵がある、其処には和尚と、小さな子供の小坊主が住んでいる。「春」の部はこうした素晴らしい背景の所から始まる。
 ある時、小坊主は薬草を取りに行くと言い和尚と二人で岸辺へ、小坊主は悪戯さかりの幼稚園児ぐらいの年齢である、清流の中で魚を捕まえてその魚をヒモで縛り、その先に石を繋げて水の中へ放してやると、魚は不自由な体で泳ぎ回る、今度は蛙を見つけて同じようにして、蛇も捕まえて紐でしばりその先に石を縛り付ける。
 その悪戯を和尚は物陰からじっと見ている。

 やがて和尚は小坊主に説教をする、寝ている小坊主の体に大きな石を縛りつけ、目がさめて自分の体に大きな石が縛りつけてあるので不審に思い訪ねると、昨日お前がした事は、今のお前と同じ事をしたのだぞ、その石を背負って昨日苛めた魚や、蛙や、蛇を探してヒモを解いてやれという、小坊主は言われたとおりにやる、もし死んでいたらお経を唱えて来いといわれ、死んだ魚を弔う
つまり、お前のした事は、お前が背負うんだという教えだ、という。

 夏、高校生ぐらいになっている、ある時そこへ母親と年頃の娘がやってきて祈祷してくれという、娘は精神的なものの悩みが有るらしい。自然の摂理で小坊主はこの娘に一目ぼれするが、渓流つりでもするような清流のほとりで、素っ裸で二人は重なり合う、これも自然の摂理なんだろう。それから俗世間に返り、大変なドラマが始まる。
 和尚は言う、「欲望は欲求を呼びさます、そして欲求は殺意ををも呼び起こすのだ、」と。
あとは見てのお楽しみ。

 感想

 韓国映画では、一つは人気サイドの俳優演ずるドラマや映画などが有るが、この作品のように出てくる人間が少なくて、画像が、音楽が、しっかりとテーマを捕らえて、人の心理を刻銘に描き出すいうなれば演劇のような映画の傾向、最近では、映画を映画館で見るのではなくて、自宅のDVDなどで一人で見るという傾向が強まっているが、この作品は、勿論大勢で見るという共感的な見方も出来るこのような作品が面白い。

 感じた度  ★★★

情事

2010-08-23 08:24:27 | Weblog


    監督 イ・ジエヨン主演 イ・ジョンジエ イ・ミスク  1998年制作

 解説

 イ・ジエヨン監督の作品といえば、最近ではぺ・ヨンジュン主演の「スキャンダル」という映画が’04年に日本では上映された。こと情事にかけてはネットリとした愛の描写を見せるのが特徴。この「スキャンダル」でかのヨン様の妻役をやっていたイ・ミスクが、ここではイ・ジョンジエの相手役を演じ、ネットリトした女を感じさせる浮気する妻を演じる。

 物語

 建築家の夫と10才になる息子に囲まれて、恵まれた生活を送っている主婦のソヒヨンだが、アメリカに住む妹が結婚する事になり、妹が来られないので、フィアンセのイ・ソヨンとソヒヨンは新居を捜して歩いたり、話をしたりしている間にいつか好き合う仲になってしまう。

 一度許したセックスは度重なる、度重なる度に二人の関係は離れがたい物になってゆく。そして、妹が結婚のためにフィアンセの所へやってきたが、どうも彼の様子がおかしい、式を延ばそうと彼は言う。

 建築会社の夫もまた妻の知り合いと浮気をしている、夫とソヒョンの居る所で、ソヨンは聞く、結婚して奥さんは幸せですか?と、夫は幸せな結婚生活なんて物は、此処にある水槽の魚のような物で、丁度良い温度の中で、腹が減れば餌を与えてもらい生きて居る、そんなものさ、昔はホットだったけど、という。

 しかし、妻のソヨンは、生まれて初めて熱烈な愛をソヨンに感じている、39歳、女の一番熟した年代である、ソヨンの顔を見ただけで身体が彼の物を欲しがっている、理性も限界に来ているのだ。ソヨンもまたソヒヨンを抱きたくてしょうがない、道ならぬ恋だからこそ燃えるのかも知れない。
 やがて二人は・・・。

 感想

 切ない恋の物語をおしまいまで良くも見る気がするもんだ良い年して、と考えるけど、人の恋路がどうなったかを見たい、しびれるようなHのシーンを見たい、なんて気持ちが最後まで見る結果となるのだけど、あのやるせない気持ちが面白いんだろうな不倫と言うのは。
 
 最後に、妹が姉のフィアンセとの浮気を知って水槽を壊してしまうシーンがなんともいえない爽快感を見せる。それまでは、ねちねちと二人の関係を見せているからだろうが、あの爽快感と言うのはなんなんだろう。大人の、沸きあがる熱い恋の灯、盛り上げる音楽がまた宜しい。

 感じた度 ★★☆
 

祝祭

2010-08-21 08:29:04 | Weblog

   監督 イム・グォンテク  主演アン・ソンギ、オ・ジョンへ 1996年制作

 解説

 この映画の監督は「キムソドム、再会のとき」と同じ監督である。韓国の人間ドラマ、日本で言えば、「お葬式」という映画があったが、おばあちゃんの死から韓国の伝統的な葬式の情景の中で、人間の生と死について、また家族のあり方について語っている映画である。

 物語

 著名な作家のジュンソプの母親は、年取って老人性痴呆症になった、老人性痴呆症とは、自分が歩んできた人生を過去に遡って生きる、老婆が40年前に亡くなった夫を捜すときには、二人で新しい家庭を築いていた頃に、嫁に来たばかりの新妻の頃に、包みを持って出かける時には嫁入り前の少女の頃に回帰するのだ。

 ジュンソブの娘がいる、ジュンソブの両親は孫娘に話して聞かせる、家のおばあちゃんは、私より14倍も年を取っている、70才を過ぎる頃から背が小さくなって居るように見えてきた、両親は、おばあちゃんが小さくなった分、お前が一つずつ大きくなって行くんだという、そして、やがては、おばあちゃんの知恵は、愛情となってお前の心の中に入り込んで行くんだと言い聞かせる。
 80歳でなくなる時、もうこれ以上おばあちゃんから貰うのよそうと思った時おばあちゃんは亡くなった、と娘の声。

 母親の葬儀には、親戚や近所の人、ジュソプの仕事の関係者が集まってくる、酒を酌み交わし、歌と踊りで死者を送る、酒を飲んで喧嘩をする者も居れば、花札に興じる者も居る、何しに来ているのか解らないような弔問客たち。
 最後に、この作家の書いた童話が雑誌の記者によって紹介される、雨鳥と言う鳥が居る、この鳥は雨が降ると居場所が無くなって木の上を渡り歩いて巣を換える、おばあちゃんは他所へ出てった娘がこの雨鳥の如くに心配だと書いてある。貧困を生き抜いた老婆の一生が語られるが、家族が一同そろって記念撮影するラストにおばあちゃんの余韻が残る。

 感想

 このお婆ちゃん、一度死んだが、知らせを受けて集まった家族の前で生き返り、みんなが死んだ知らせを聞いてどう反応するかを知るために生き返ったのではないかと思わせる、せっかく遠くから来たのに、死ななかったのかとがっかりする家族、大喜びする家族、しかし死んでやっぱりホッとする家族。痴呆症で一番苦労した嫁が一番可哀想だと泣きじゃくる。人の心理をよく読んで表現する、弔いの客は、酒を飲みに来たのか、騒ぎに来たのか、悲しみには全く関係無しに死者を弔っている、義理があるからである。
 やっぱり、本当に弔っているのは家族である。

 感じた度  ★★☆

白い部屋

2010-08-20 08:28:30 | Weblog

    監督 イ・ヨンジェ  主演 イ・ウンジュ  2002年

 解説

 自殺したイ・ウンジュ主演の曰くありげな映画、ホラー映画である。

 物語

 ハン・スジン(イ・ウジン)は某テレビ局のドキュメンタリー番組の記者で、彼の恋人はニュースキャスターの売れっ子ジンソク。
 ある日、パソコンのネットで、あるサイトを見ると、自分が死ぬシーンが出てきて、そのHPを見た人は必ず死ぬという連続殺人が起きる。被害者は妊娠中の女性である。
 そのサイトは、聖メアリ産婦人科。このサイトで、自分が死ぬ所を見て、15日後にはその人は死んでいる。

 スジンは身体の具合がどうも妊娠したらしいのでたまたまこの産婦人科にかかるが診察では、妊娠していないという、しかし、自分では確認できる。恋人にも相談するが、売れっ子のニュースキャスターだけに、結婚式もしていないのに妊娠したとあっては人気が落ちる、是非とも降ろしてくれという、スジンは生みたいのだが。

 そこでこのサイトを見たら、自分が死ぬ所の映像を見てしまった。
 ある友人ユシルが妊娠したが、男は降ろせというが私は生みたいという、仕方なし、聖メアリ産婦人科で降ろして、降ろした子供が欲しいとその手術した子供を貰って帰る。

 同じアパートに住むそのHPの管理人に聞くと、彼女は霊に取り付かれているという、そして15日後には彼女は殺された。ユシルが住んでいた1308号室を調べるスジン、今度は自分の番らしいので真剣だ。やがて、・・・。あとは見てのお楽しみ。

 感想

 イ・ウンジュの自殺した日は、05年2月22日、彼女が死ぬ予定日がこの映画だと2月22日。なにか因果関係が有るのかと映画を見たが、たまたま重なったのではなくて予定の自殺だったように感じる。彼女の映画は「死」にまつわる映画が二つ目だ。自殺の原因はノイローゼだというが。ホラー映画としては良く出来ている。美人薄命というが、惜しい俳優を殺した、ご冥福をお祈り致します。

 感じた度 ★★☆

 

知り合いの女

2010-08-19 07:58:23 | Weblog
   2004年 未公開 チャン・ジン監督 チョン・ジェヨン

 解説

 この主人公は、病気であと3ヶ月の命と診断されるプロ野球の選手で、ポジションは投手、学生時代には活躍してしていたが今は故障がちで、出番があまりない、その主人公が、死ぬ前に愛と言うものは何であるのかを疑問におもい捜して歩くドラマ。

 物語

 恋愛中の男女は、多分愛が最高なものであると満喫しているに違いない、その愛とは何なのだ
ある男が、女と別れる話をしている、女のほうが別れる話を持ち出している、男は女を愛する事を知らないらしい。こんなことは初めてではない、振られると鼻血が出る癖がある。
 名前をトン・チソン(チョン・ジソン)と名乗り、今九月だが、今年で生命が亡くなるだろうと医者が言う。彼は、野球の選手で昔は優秀な選手だったが、今は故障がちで出番が無い。
 あと3ヶ月しか生きられないと宣告されたら、まず酒を飲む、彼は飲めないのだが。

 ある日、酒を飲んで泥酔して気がつくと、ホテルの部屋に寝ていた、傍には見知らぬ女が一人居た、その女の言う事には、泥酔した彼を、箱に入れてこのホテルまで担ぎ込んだのだという。
 二人の会話で、彼はその女にいう、俺は、みんなが持っているもので、自分が持っていないものが3ツある、それは、愛、来年、酒癖だという。そして野球をやっていて、一番面白いのは、逆転して勝つ時と、相手の間抜けな選手のエラーで勝つということだ。
 彼女は、近くに住む女性で、彼が高校時代、野球の選手であったことから淡い恋心を抱いていた。

 ある日、残りの人生を楽しむために銀行へ住宅ローンの申し込みに行くが、丁度そのときに、
銀行強盗がその銀行を襲う、他の者はみんな伏せて顔を隠すが、彼は隠さない、強盗はかれに銃を向ける、彼は、今殺さないでくれ、死ぬために金を借りているところなんだから、という、すると強盗は、俺達は生きるために強盗をやるんだという。

 またある日、例の彼女知り合いの女がラジオのクイズで携帯電話が当たったからと彼に携帯電話をプレゼントする、その後、彼は鼻血を出して倒れ見知らぬ女は彼を病院へ連れて行き看病する。二人の仲はだんだんと深まって行く、やがて、・・・最後に逆転勝ちの面白い出来事が出来たか否か、3つの人に無いものはカバーされたか?それは見てのお楽しみ。

 感想

 なるほど、とこの台本良く考えたもんだ、とおもう、見終わった後、何かほっとした物を感じる。

 感じた度  ★★☆

実祭状況

2010-08-18 08:25:44 | Weblog


  2005 キム・ギドク監督  主演 チュ・ジンモ

 解説

 キム・ギドク監督の映画は異例な映画が多い、シュール・リアリズムな映画が多いのだ、だから私は好きだ。ここで紹介したものには、「春夏秋冬そして春」「悪い男」「魚と寝る女」「空き家」この中でも特に「空き家」が面白い。
 ギドクの作品は、説明は要らない。

 物語

 何事の残虐な侮辱にも耐えうる力を持つ、兵役を終わった強い人間が居る、彼は公園で似顔絵を描いている。描いた絵が似顔絵でないと客が金を払わない、本人にしてみれば可也の侮辱だ。

 ある女が、描いて貰って、その謝礼は別な所で払うという、ついて行くとある男が居た、その男は、お前の人生は憎悪に満ちている、お前に自由をやろう、と言う、自由のためには、先ずは苦痛が必要だ、そこで男はその絵描きを殴るケルの暴行をする、まだまだこの程度では苦痛とはいえない、本当の苦痛とは痛みではない、痛みとは人生そのものだ、という、苦痛を与える奴は、それを忘れておき楽な物なんだ、復讐をしたければ、俺を殺してからにしろとピストルを渡す、そして、屈辱的な事を言われた時にそのピストルの引き金を引け、という。
 
 幾つか屈辱的な事をその絵描きに浴びせて、そのつどピストルを撃つ、そのピストルは空砲だった。
絵描きは、それならと撃ち続けるが、最後に実弾が出て教えた男は死ぬ。その時から絵描きは人が変わってしまう、そして、過去の復讐をして歩く。

 感想

 実際状況、山形県と秋田の県境の静かな町で小学生が殺された事件が起きた。殺した犯人は女性で、自分の娘が死んだのは殺されたのだと警察に言うが、警察は娘は、殺されたのではない川で溺れた事故死だ、と調査をしないで取調べは終わった。後日、この母親は娘を橋の欄干から川へ落とすという前代未聞の事件だったが、・・・。
 彼女は、近くに住んでいる子供を見ると、憎らしくなってついに他人の子供を殺してしまう。

 子育てから解放されるために、おき楽になるために採った殺人だ。
 これは、映画ではない実際に起きた事件である。
本当の苦しみとは、生きてゆく人生そのもの、娘の夫と別れた悔しさを抱きかかえて生きて行く心の痛さなのだ。
 この償いをし終わったとき、彼女は気楽になるんだろうな。

 感じた度 ★★★
 

四月の雪

2010-08-17 08:28:53 | Weblog

     
   監督 ホ・ジュノ  主演 ぺ・ヨンジュン ソン・イエジン  2005春

 解説

 解説するまでもないが、有名俳優二人の共演の映画である、特にソン・イエジンはこの秋公開された「私の頭の中の消しゴム」で日本ではこの映画に続いて好評だった、日本人に一番馴染みやすい顔立ちをしている。

 韓国を代表するぺ・ヨンジュンと、韓国映画の宝石と呼ばれているソン・イエジンの話題作、そこへ監督のホ・ジュノとくれば、「八月のクリスマス」で見せたあのデリケートな女性のやるせなさ、この映画でもそれは更に倍加されて素晴らしい。

 物語

 妻の交通事故の知らせを聞き病院へ飛んで来たインス(ぺ・ヨンジュン)は妻と同時に事故に会ったソヨン(ソン・イエジン)と待合室で出会う。
 どうやら二人は不倫関係にあって車で事故を起したらしい。
 その病院で、二人は共に看病をしながら親しい仲となり、恋人同士となってこちらも不倫してしまう。

 しかし、ソヨンの夫は長い意識不明が続いた後で死亡する、インスの妻は意識を取り戻し、快方に向かう、途方にくれるソヨン。
 華やかな花に春の雪が冷たく降り注ぐ四月の雪は無情だった。
 何処へ行くのかしら私達。

 感想

 余りにも有名な俳優が、そして監督が作っている映画と言うのは、出来るまでの間にレポートの情報が多すぎて、中味が見ないうちからわかってしまう、四月の雪といえば、春なのになんと冷たい雪なんだろう桜が可哀想に、と結末までもが分かり抜いてしまう映画、・・・だから、美味しい物を後で食べるようにとっておく。
 何の概念も無く、「八月のクリスマス」を初めて見た時の様な感動は無いが、やはり中々宜しい映画である。ジッくりと構えたカメラアングルがよろしい。

 感じた度  ★★☆

 

サラン・ハムネダ~愛は天の川を越えて

2010-08-07 07:53:32 | Weblog


   2003年
              
       監督チエ・イソプ 出演チエ・ガンホ、リュ・スヨン

 解説

 2002年に釜山で行われたアジア大会を取材に来たジャーナリストと、北朝鮮の応援の女性とのJSAを越えた恋、織り姫と彦星のに見た立てて描いた恋物語。
 この映画は、朝鮮戦争終戦50周年を記念して作られた。
 
 物語

 チョン・テヨンは韓国の新聞記者、2002年のアジア大会へ取材にやってきたが、仕事は北朝鮮の仲間にインタビューをして記事を書く事、そこで、応援に来ていたリ・ヨンジョンという若い女子大学生にインタビューをする、驚いたのは南の人たちが一人一人携帯電話を持ち歩いて居ることだという、なるほど。

 南の人に何かおことずけ等は有りませんかと訪ねると、実は探している人が居るという、一目惚れしたテヨンはなんとかして大会が終わるまでに話をしようとするが、北の責任者が目を光らせて南の民間人との対話をさせないようにしている。

 取材をするフリをして二人はスタンドの片隅でそっと話をするがその態度を監視されてついに話も出来なくなってしまった。
 そこで、テヨンは、携帯をヨンジョンにそっと渡し、夜の11時になったらベルは鳴らさないから電話に出ろという。しかし、携帯と、人探しなどは禁止事項となり、見つかったら強制送還となるのでこの携帯は捨てますという。

 しかし、国どうしは敵対関係にあるかもしれないが、俺たちはそんな事を考えた事は無い、友達として話を聞いてあげる、探している人を捜してあげるという。
 その人は、母親が北で死に際に、南の父に一目合い、ごめんなさいと言いたかったというので、南の父に会いたいのだ、消息は、78年頃、東京大学へ留学していた人だ、という。

 その電話をしている時に宿舎の室長に見つかり、翌日すぐに強制送還となる命令が下る。
 この期を逃したら二度と南へ来る事は無いだろうと考えたジョンジュンは、最終日までには帰るからと書置きして宿舎にしている大きな船から海へ飛び込む、そして陸で待っていたテヨンの車へ飛び乗る。  第一部終わり。

 第二部は、テヨンら二人の逃亡と、父親探し、それをおう警察。あとは見てのお楽しみ。

 感想

 お国訛りは違っても同じ言葉を話す国民が別れて居るということは、50年経っても悲しい事実である。相互に行き来できないばかりか、南の人が北の人を南へ脱北する手伝いをしただけでも国家保安法違反として刑罰があり、北からの脱北者は捕まれば死刑で、これは50年経っても風化はしていないという事実から悲しい事である。日本では考えられない。この大きな渡れない川の恋物語、深刻にならざるを得ない。

 結びでは、「成せばなる、成さねばならぬ何事も」少しずつ努力して二つは一つになる努力をしなければならないと結んでいる、感動作だ。

 感じた度  ★★☆