はずれの映画辞典

映画とは生きものの記録です、この世に生きる者が、こうして生きようじゃないかと訴えます。惚れた映画を毎日連載します。

青い春

2009-06-30 09:43:09 | Weblog



 青い春 2005年 

  出演 松田龍平、新井浩之 原作 松本太陽(ビックコミック連載)

 解説

 ビックコミック連載の、学園物を映画にした作品。学園物といえば元祖は「ビーバップ・ハイスクール」が’80年代に出て、その時の主演俳優が「中村トオル」だから、随分と経っている。

 学園物といえば大抵は番長物、”未来が見えない若者達”というのが定番、それも大体が暴力的なものだが、これは物語の解決が喧嘩のカッコよさから、”死”という事の”カッコよさ”に変わって来ている、これは人間の生命のタブーにせまる話で、見る人の取り様によってあまり喜ばしいことではない、韓国のボブちゃんこと、クオン・サンウの学園物で、喧嘩のカッコよさならなんとか見過ごせるんだけど。

 物語

 朝日高校の三年、ここの番長は、校舎の屋上でやる度胸試しの遊戯で番長が決まるらしい、手すりに捕まって落ちそうになるのを如何に落ちないで耐える事が出来るかで決まる。
 したがってその番長は、子分を引き連れて弱いもの虐めしてグループでの番を張るなんて番長じゃない。

 したがって、そんな番長に不満な部下が居る、すると、部下は、アノ番長は度胸が無いので何も出来ないと馬鹿にする、そして番長を脅かす、すると、番長は何時も番長で居たい、そういう威張る部下を殺して警察につかまる。

 そうかと思えば、ヤクザに目を付けられて、その世界にはいってしまう、・・・。

 感想

 何処を取っても、番長のカッコよさは見られない、低俗な映画となっている、従って取り上げてみた。

 こんな映画や漫画がデフォのように人気になるから、15階から子供を投げたりが平気で出来るようになり、人を殺す事によって得た勇気を、自分を殺すつまり”自殺する勇気”に変化させようと試みるのだが、その事さえ出来ない自分を嘆いたりする、こうした生きる事に軟弱な人間が出来てしまうのだ。映画がその事にまで言及して見せてくれればこの映画は素晴らしいのだが、・・・

 大体漫画は、読む人の感覚に任せるから、未熟な人間は作者の意図が読めない所で読み捨てられ、印象の強い所だけ記憶に残る。

 感じた度 ☆☆☆

ロリータ

2009-06-29 08:50:23 | Weblog


  ロリータ 1962年米(モノクロ) 

    監督 スタンリー・キューブリック 

    出演 ジェームス・メイソン、ピーター・セラーズ、スー・リオン

 解説

 この映画は公開されてから、ロリータコンプレックスいわゆる”ロリコン”という名前の語源となった映画である。少女に対する偏執的な愛の事。
 原作はウラディミール・ナボコフ。当時では珍しい小説としてベストセラーになった。

 解説

 ハンプシャー州ラムズデイルを訪れたハンバードは、陽気な少女ロリータに心の底から魅了された。ロリータの傍に居たいがためにその母親シャーロットと結婚するが、シャーロットはある日自動車事故で死亡する、ロリータはその時学校のキャンプに出かけていて留守だったが、ハンバードはロリータを迎えに行き禁断のセックスレスの生活をしながら旅をしようともちかける、・・・。

 感想

 この映画よりも、ロリコンという言葉の方がその後有名になり、AV等で売れだした。
 ロリコンというからよほど小さな子供かと思いきや、それはAVの中の少女で、本物のロリータは立派な高校生、親父の年齢でもセックスしたくなるほどの女性だった。

 感じた度 ★☆☆

ローマの休日

2009-06-27 08:27:33 | Weblog

 
 ローマの休日 1954年  A・ヘップバーン

 解説

 普段映画を見ない人でもこの映画はテレビ等で何度も上映されているので知らない人は居ない。グレゴリーぺックとオウドリー・ヘプバーンの映画だ。

 物語

 外国訪問中のイギリスのアン王女が、毎日の決まりきった表敬訪問に嫌気が差し、夜中に宿泊しているホテルを飛び出す
 道端で寝ている所を新聞記者のグレゴリーペックが介護し彼のアパートへ連れてきてしまう。
 翌日になって、新聞でこの女がアン王女であることに気づき、新聞社の特種になるとローマ中を案内する。

 お互いに嘘の身分を紹介しながら、友達のカメラマンに写真も撮らせてローマを案内するうちに二人は恋に陥る。
 しかし、叶わぬ恋、最後にアン王女の新聞記者会見で、お互いの身分がみんな分かってしまう。この旅で一番楽しかった所は何処でしたかという記者の質問にローマと答える。

 感想

 この映画は、1953年ごろ、終戦から7年ぐらい経った頃の映画だと思う、始めてみたのが18歳ぐらいの時だからもう50年近くもなる。キスをする俳優を見てびっくりしたもんだ、白黒の映画だがカラーの様な感じがする。
 なんせ、石原慎太郎の「太陽の季節」という芥川賞の映画がでる以前の話だから古い。

 何処が素晴らしいかはもう語りつくされて居るのでいうまでも無い。
 ラストエンペラーの様に、オえらい方というのは自由がなくて不自由だが、グレイトブリテインのためには恋に陥る訳にはいかぬのだ、とアン王女がいう所が悲劇にも取れた。

 感じた度 ★★★

ロスト・イン・トランスレイション

2009-06-26 09:07:00 | Weblog



ロスト・イン・トランスレイション  Bill Murray  Scarlett Jonhansson

 解説

 このタイトルだと、「代役」とTranslateするんだろうか、フト出来た中年の男の心の隙間、と結婚したばかりだが、仕事に忙しすぎる愛する夫がいる新妻、結婚したばかりの夫との甘い生活に失望する寸前の、異国でのチョットの間に出来た心の隙間、そこに男と女の友情が芽生えるが、・・・。良くありそうな危険な関係をスケッチ風にまとめた小作品だ。
 出張先での、とある女性に抱いた淡い恋心、経験のある人には面白い。

 物語

 ボブ・ハリスはその昔ハリウッドでは売れた俳優だった、しかし今は中年、200万ドルの契約でサントリーのコマーシャルフイルムを撮影に日本へやって来る。東京の同じホテルにカメラマンの夫と結婚して2年のシャーロットが滞在している、夫は仕事が忙しくて妻と話している時間も無い、シャーロットは何の仕事もしていない、ホテルのバーでボブとシャーロットは気が合う、お互い愛する人を持つ身、浮気をする気持ちは無いが、なんか大東京の喧騒に負けそう。

 感想
 経験が有ったなそういうことが旅先で、今は唯楽しかった思い出と、なんだか申し訳ないような気持ちが残っているけど。

 感じた度  ★★☆
 

冷静と愛情のあいだ  

2009-06-25 08:37:24 | Weblog



 冷静と愛情のあいだ  日仏合作映画 2001年 監督 中江功  
                      
   出演 竹野内 豊、ケリー・チャン、 U輔・サンタマリア、


 解説

 このドラマは、絵を修復する工房を開いている所へ勉強に出かけた、あがた・ジュンセイという男と、亡くなったイタリアの父親を持つ、アオイという女性の恋物語だが、絵を修復するように、物語がすべて後付けで出てくる事が多いので、全てが、あ、そだったのか、そうか、・・・で出てくる、すべてを見終わった時になるほどという完成した物語である事が分かる映画で、これを普通に順を追って話をしたら単なる恋物語で、なんだ、となってしまうところに監督の映画の作りの面白さがある。

 物語

 1996年、イタリアのフィレンツエ、アルノ川のほとりに、有名な絵画を修理する工房がある、そこへ日本人の純正と名乗る男が修行に入る。
 先生はジョバンナと呼んだ、先生のアトリエで純正はそこで裸になれと言われ、ヌードになるそしてジョバンナは純正の裸体画を描く。純正には、イタリア語の勉強に留学して来ている恵美という女性が居る。
 イタリアには、ミラノにその昔純正と愛を誓い合った、アオイという女性がいる、ミラノのジュエリー店で働いている、マーブという男が居るが、今はわけ合って母方のイタリアに住んでいる。
 
 ある日、チーゴリの名画の修復を純正は先生に任される、純正はお爺さんが県青磁(アガタ・セイジ)という有名な画家であることから先生のジョバンナが選んでくれたらしい。
 ある日のこと、純正とアオイはミラノで会う。
 しかしその後、修復する事になっていたチーゴリの絵画が何者かに破られてしまう、犯人を誰も特定できなくなって、工房はつぶれ、先生は引退する。そして純正も日本へ帰ってくる。
 
 1999年春、純正はアオイに長いラブレターをかいてアオイとの決別を決意するが、・・・。
後から、色々な事が出てくる、・・・。

 感想

 解説に書いたように、このドラマは、あとから言い訳が出てくる物語だから引きずられて見てしまうが、普通な作りだったら、なんだ、となる。そこいらへんがおもしろい。

 感じた度  ★★☆

ルイーズに訪れた恋は・

2009-06-24 08:18:01 | Weblog



 ルイーズに訪れた恋は・・・ 2006米 

       監督 ローラ・リニートファ・グレイス

       出演 ガブリエル・バーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン

 
解説と物語

 ルイーズ(ローラ・リリー)は、別れた夫ピーターと友人関係を続けている、そうする事によって一定の安心感を得ているバツ一、彼女はコロンビア大学の入学選考部で部長を務める、39歳、ピーターとは同じ大学でピーターは教授である。
 ある日、ある男が入学願書を出してくる、名前を見ると高校時代の初恋の相手、それは交通事故で亡くなったスコットと同じ名前だった。

 名前をみてその男に会いたくなって会うが、それだけでセックスしたくなって、別の部屋で昼休みスカートを捲り上げたままセックスをやってしまう、まるで動物的だ。

 大学の中で夫と出あって話をすると、ピーターは君と別れる少し前から、麻薬をやっていて、女遊びの中毒にもなって泥沼に嵌まっていると告白、君と会わせる顔が無かったが、今度こそやり直せないかという。
 ルイーズには、学生時代からの親友の女性がいるが、彼女がピーターとセックスしたというのだ、・・・はてさてこの関係はどうなる事やら、・・・。

 感想

 アメリカの女性と言うのは顔見て気に入ればすぐさまセックスに走る、まるで貞操観念なんてのは無いんだろうか、野良犬みたいに、匂いの良い相手なら誰でもかまわず、相手に男がいようが居まいがやってしまった方が勝ち、という気持ちらしい。そんな中で愛だの恋だの失恋だのって言われてもピント来ない、これって日本人には判らない文化の違いかな、面白くない。
 日本じゃ売れない映画だな。

 感じた度 ☆☆☆

ランドリー

2009-06-23 08:38:03 | Weblog


 ランドリー 2001年 監督 森淳一  

       出演 窪塚洋一、小雪、内藤剛史、田辺謙一郎

 解説

 どういう風に解説して良いのやら分かりにくいのだが、文字には書けなくても映画の内容は頭の中に染み込んでいて出て行かないだろう・・・、という映画。
 洗濯物が盗まれないように監視する人より少し知能が遅れた二十歳の青年と、有る時恋人にふられて、窃盗を働いた、そして捕まりネクラになった女性、生きる希望を見出せなくて死のうとさえ考えている女性。

 その二人が出会って二人が希望を持った生き方に変わって行くその姿を、まるで川が流れて行くようにゆったりと山もなく急な流れもなくしかし、少しずつ変化して流れてゆく、そんな二人の葛藤を描いている映画である。

 物語

 おばあちゃんの経営するコインランドリーには色々な人がやってくるが、そこに洗濯物が盗まれないように監視している20歳になるテル(窪塚洋介)がいる。テルは子供の時にマンホールへ落ちて頭に大きな傷跡があり、その後遺症から知能が少し遅れている、靴の紐が結べない言葉が少し変だ。

 ある日、コインランドリーへ来た女性が初めての人だが、ワンピースを取り忘れて居たので追いかけて行きその女性のアパートへ上がり込んで話をする、彼女の名前は山田水絵と名乗った。
 水絵はテルの少し変わった所に興味を持つ。

 水絵は、花屋に勤めていたが毎日来る郵便配達の青年が花屋に来て、この人に花を届けてくれと名前を見ると自分の名前が書いてあった事から、二人はデイトするようになった、しかし、郵便配達には妻がいて二人の仲は何処にでもある単なる浮気のようなそうでないような仲で有った。

 それが分かった時に水絵は落胆した、東京へ出てきて初めて好きになった人が妻子のある人だったとわ、・・・。
それから万引きをするようになりそれが常習化してしまった、そんな自分に嫌気がさして死のうとしたが、そんなときにテルと出会う事によって考え方が変わる。

 感想

 この物語は、物が盗まれないように監視する正直青年と、万引の常習犯の女性がなぜか仲良くなり、万引き女が正直者に成りきって正直青年と仲良くなる、万引き女は正直青年をだましてやろうなんていう魂胆ではなく、正直者に惹かれて仲良くなっている所が面白い。
 普通は蛇の道は蛇、万引きが悪なら人をだますのも同じ事、とナルところなのだが。

 中ほどで登場してくる男が、夜眠ると、今の幸せが目が覚めた時に無くなって居るんじゃないかと眠れない事があるという不安があるという、そう誰にでもそういう時期があるもんだ。

 眠れないというのは悩み事があってそれを考え事していて眠れないというのが通例だが、今の生活が幸せで、目が覚めたら不幸がやってくるんじゃないかと眠れないなんて人もいる。
 つまり、物は考えようで通例の事ばかりではないのだ。

 頭を打って少し知恵おくれというと、社会生活にすぐさま影響を及ぼして働く所がないという風になるのが通例だが、テルはこの少し抜けた所が、また正直な所が人の心を動かして生活には困らない仕事にありつく。


 感じた度 ★★☆

LOVE SONG 

2009-06-22 08:49:51 | Weblog


 LOVE SONG 2001年 監督 佐藤信介 

主演 仲間由紀恵 伊藤英明

 解説

 2001年が没後10周年にあたる尾崎豊をキーワードにして、若者たちの恋愛が綴られて行くドラマ。

 監督は自主映画界で名をはせた佐藤信介の劇場用映画の処女監督作品である。
 何かに向かい何かに挫折する、本来の自分の姿ではない現状の生活から、どう抜け出すかと苦悶する青春時代、それはまた尾崎豊の歌の世界でもあった、尾崎豊の世界は現状に挫折するあるいは満足しない若者たちが好んで心酔した世界であり、青春そのものだったあの歌声、それをドラマに作り上げた青春映画の佳作。
 苦悶する伊藤英明が素晴らしい。

 物語

 時は1985年、北海道のあるレコード店、高校生の彰子(仲間由紀恵)は尾崎豊のアルバム「十七歳の地図」を店員岡崎(伊藤英明)に出してもらう。
 その後間もなく岡崎はそのレコード店をやめて東京へ。
 二年後、高校三年の夏休み、彰子はそろそろ進路を考えなくてはならない、その前に以前出合った岡崎に会いたくなった、そこで友人の哲矢(一条俊)の助けをかりて東京へ岡崎を探しに行く旅に出る。

 一方岡崎は、北海道から出てきて、友人と下北沢にレコード店をオープンするが、直ぐに閉店してしまう、共同経営の同僚が店の金を持ち逃げしてしまい金に困ったからである。
 それから女性宅を転々とし、今では親友の世話で親友の会社で昼は掃除、夜は夜警の仕事をやって生活している、つまり挫折した生活を送り、希望は無い。
 そんな岡崎を彰子と哲矢は探し回っている。

 感想

 尾崎豊の歌の世界は、挫折した人生の中、つまりは光の見えない影の世界での愛情を切なく語りかけるように歌う、その心を映画は岡崎に託して見せている。
 他に登場する人物は、苦しい道ではあるが光を求めてがむしゃらに突き進んでいる若者たちを描き、岡崎をクローズアップさせた演出は見事である。
 惜しむらくは、もう少し尾崎豊の曲を聞かせてほしかった。

 感じた度 ★★☆

私たちの幸せな時間

2009-06-20 08:50:13 | Weblog



 私たちの幸せな時間 2007ー8月  監督 ソン・へソン
                  
               主演 カン・ドンウオン、イ・ナヨン 

 解説

* 韓国で九月14日公開され話題になった映画、DVDが発売されている。
* 監督のソン・へソンは「力道山」「ラブレター」「ホワイトクリスマス」などの作品がある。
* 主演のカン・ドンウオンは韓国のイケメン俳優、「狼の誘惑」「彼女を信じないで下さい」など
* イ・ナヨンは、「愛の群像」などドラマでもペヨンジュンの妹役などで人気がある。
* これだけのお膳立てがある韓国映画は、見どころもある。
* この作品は、コン・ジョンの書いた同名のベストセラー小説の映画化。
 
 内容は、三人を殺した死刑囚と、三回自殺を試み失敗したインテリ女性との出会いを描いた映画である。世間を恨み、死だけを考えながら生きてきた二人の男女が、刑務所の面会室で会うごとにお互いの傷跡を癒しあいながら、生きてきた世間を見つめなおす過程を見せる。
 

 物語

 ムン・ユジョンは自殺を三回も企て、失敗してそのたびに母親から愛情のない目で見られている。
自殺の原因を話すとネタばれになって面白くないから書かない。
 刑務所に、チョン・ユンス(カン・ドンウオン)という男がいる、ユンスは仲間と三人の人殺しをしてその罪を一人で被って、死刑が確定している、死刑を待つ死刑囚。
 連日この道30年もやっているシスターのモニカが刑務所の面会室へやってくる、ユンスは、シスターの、ひたすら”祈れ”という親切心の強要ばかりで、罪を償えとは言わない説経に飽き飽きしている、本人は罪の意識にさいなまれている、それは解決してくれない、お前の親切なんか聞きたくないと受け入れようとしない。
 何度目かの面会のときに、ムン・ユジョンはこのシスターと面会室へやってくる。

 この死刑囚が、やがて自殺を三回も未遂した女性と話しながら変わってゆく。

 感想
 
 ”男尊女卑”の韓国の社会、お年よりの間にはまだそれが昔からの根強い風習として残っている。
例えば、女性がレイプされたとする、そのレイプの罪は、女性が男に色目を使った、レイプしたくなるような仕草をした”女性に罪がある”と思っている年寄りがいる。
 この年寄り女性が、自分の母親だった場合、子娘が男にレイプされたと母親に泣きついたら、母親は、その娘にお前が色目を使ったからお前が悪いと言うんだろうか、子供の母親への信頼はどうなるのだろうか。
 娘は母への信頼をなくし、母を母と思わなくなる、最も信頼している人に裏切られて寂しい思いを募らせるだろう。

 死刑囚のユンスは、子供の時に母親に兄弟二人で捨てられ、孤児院での生活を強いられた。
それでも必死に生きて、恋人が出来たが、その恋人が金のかかる病気になった、貸した金を返してくれと友達に言うが金はない、その代わり、最後の仕事で金貸しを殺して金を奪おう、と計画し、罪を犯してしまう。
 二人の境遇は”母親”の「子供に対する認識不足」という点で共通する物を持っている、とすれば、二人がもっと母親との愛情を持った”意思の疎通”をしていれば悲劇にはならなかった問題。
 ”情”の無くなった現代を痛烈にむき出して見せて素晴らしい作品である。
 人は、非日常を見て日常を学ぶ、これは人生観を変える素晴らしい映画だ。

 感じた度 ★★★
 

やさしくキスをして 

2009-06-19 08:50:02 | Weblog



 やさしくキスをして 2005年公開  英・伊・独・西
                  
         監督 ケン・ローチ 
         出演 エバ・バーシッスル、アッタ・ヤクブ

 解説

 男と女が出会い愛し合うそしてその愛が結婚に結びつくには個人の感情以上に複雑な多くの難関を越えなければならない、いやこれ日本ならばそんなに難しい話ではないが、こと宗教の違い、人種の違いとなると困難な事が多い、しかし、男と女が好きになるという現象は、そんなものを問わない。

 この映画はこれらの難関をどうしたかという映画である、イギリスへ移住したインド人、パキスタン人にとっては、白人には判らない歴史があり、何よりも強い民族の誇りがある、それは、移民二世、三世の今の時代になって尾を引いている。アイルランドのカトリックの女性と、イスラム教のパキスタン人の男性とのそんな恋物語を描く。
 このケン・ローチという監督は、労働者の所得格差とか、人種問題などをモチーフに英国社会に深く切り込んだ作品の傾向が伺える。

 物語

 教室の生徒の前で話をするタハラ、・・・考えてみて、キリスト教も、ブッシュも、ローマ法王もトップ・アスリートも唯の人間だと思うの。
 西欧はイスラム教徒を誤解している、世界中のイスラム教徒がみな同じだと思ったら大間違いだ、私の家族の場合、妹はイスラム教徒だけど、政治的な面を知ってから自分を黒人と偽っている、パパは、この国に来て40年になるけど、生粋のパキスタン人で、自分でもそう思っている。
 多くの国家テロを除外している西欧のテロの定義は間違っている、私は西欧の主張に反対だ、・・・。
 私はスコットランドのグラスゴー市民で、パキスタン人でイスラム教徒です、だけど、カトリック系の学校の一員なのよ、・・・。
 アイルランドのロワザン・ハンロンは、カトリックの高校で音楽の講師をしているが、ある日教え子タハラの兄のカシムと出会い恋仲になる。
 しかし、カシムの父は厳格なイスラム教徒で、同じイスラム教徒の従兄弟、ジャスミンを結婚相手に決めていたロワザンに事実を打ち明けたカシムは、ロワザンの取り乱した姿を見て愛を改めて確信するが、その前に立ちはだかった難問をどうするかで悩んだ、・・・。

 感想

 結末が知れてしまうが、愛よお前は何よりも強かった。何よりも未来を生きるのは愛している二人なのだ。

 感じた度 ★★☆