9月2日 雨のち晴れ
ペンキとパレットの大きいやつ購入。
壁紙は見本を自宅に持ち帰ってよいという。
1週間の貸し出し。
4本借りた。同じ柄で2本ずつ、色を決めかねたため。
窓枠の養生を済ます。
ローマ8月2日 5日目の事件

事件しょっぱなは、ボルケーゼ美術館の予約ミス。
電話で埒が明かず、ホテルのバカはインターネットで予約すると、間違いを教える。
で、5日目のきょうになって現地へ。
まあホテルから近かったし、もしかしたらユリア荘を見ようかとも考えた。
受付は列ができていて20分ほど待った。
火曜日の1時か5時なら空いていて予約できると言われた。
帰国前日、ぎりぎりセーフである。
ローマパスを持っている、と言ったら「その場合は電話予約しなければいけない」と言われた。
じゃあ、電話しようと、その場で予約せずに帰った。
これがまずかった。
パスは最初の美術館2つが無料になる。
だが、パスを持っているからといって、何もボルケーゼで使う必要はなかった。
ひとつをボルケーゼで使うと決めていたせいで、つい電話しようと決めたのだ。
火曜日なら空いている、と言われたし。
しかし、その日、ホテルのフロントのバカに電話させると、バカが空きはもうない、と言った。
万事休す。
ボルケーゼの受付で、予約してしまえばよかったのだ。
じつはフロントのバカには、到着日に相談していた。
バカは知りもしないのに、インターネットでなければとか何とかアホを言った。
このバカを信用した自分が悪い。
時間に追われて泥縄、という事情もあった。
到着翌日から3日続けてオプショナルツアーを決めていた。
到着日に電話がつながらなかったこと、曜日の関係などもあって失敗した。

次の事件はスリに遭遇である。
マッシモ宮殿でニオベを見てから、アルテンプス宮殿までバスを使った。
このバスでスリにあった。
バスは混雑していた。
出入り口付近で立っていると、小太りの親父が人を押しのけて奥から出てきた。
なのに、次のバス停で降りない。
新たに客が入ってきても奥にやり過ごし、彼はわたしのそばから離れない。
すでにおかしい。
するともう一人、ソクラテスをアホにしたようなひげ男が右隣にきて立った。
小太りとソクラテスから挟み撃ちにあうような形になった。
ふたりは、私の方を見ようとはしない。
わたしは携帯バッグのチャックを開けていた。
ガイドブックを取り出しやすくするためだった。
財布とパスポートはジーンズの前ポケットに入っている。
ふたりがたとえスリだとしても、こちらは何の不安もなかった。
むしろ、これが有名なビッグポケットか、と面白がるところがあった。
小太りは、私の頭の横に黄色いバッグがくるように、バスの手すりをつかんだりした。
バッグはソクラテスと私の間にあって、私にはソクラテスの顔が見えない。
バッグが上がったり下がったりするので、ソクラテスの手元も見えない。
これは、もう間違いない。
スリ似顔
4,5駅目くらいだったろうか。
わたしはフロントガラスから、見覚えのある場所はないか目で探していた。
手首に何かがふれたように感じた。
ソクラテスの手だった。
ソクラテスが、私のバッグの中へ手か指先を差し入れようとしていた。
What are you doing?
Hands off me!
なにしてるんだ、手を引け、と言ったつもり。
大きめの声で、周囲にも聞こえるように言った。
ソクラテスはあわてた。
あわてて右手を上にあげ、こちらを見ようとはせず、なにもしていないと言う風を装った。
こちらも深追いはしない。
ほんとにやばい二人組だったら、どうなるかわからないもの。
が、二人組は次の駅でそそくさと降りた。
ふたりが降りた後、近くにいた老婦人がジェスチャーで、バッグを閉めろと注意した。
構わないのだが、夫人のためにチャックを閉めて安心させた。
得難い体験だけで実害なし。
まあ、この程度で済んでよかった。
ところが翌日、またこの二人組を見かけた。
地下鉄コロッセオ駅の出口。
観光客で混雑している駅前に、ふたりそろって立ち、カモを物色というようすだった。
おもわず、声を掛けそうになってしまった。
こんどはうまくやれよ、と。
スリの次は女優に遭遇した。
アルテンプス宮殿最寄駅で降り、まずは昼食をとることにした。
ナボナ広場の一つ裏通り、道端にテーブルを並べているレストランに入った。
メニューにはなかったが、ぺペロンチーノを注文した。
オーナーだか給仕長は、気のよさそうな男だった。
裏通りなので観光客より常連が多いようだった。
食事をしていると、様子のよさそうな中年の婦人がひとりきて、テーブルに座った。
気品のある物腰。やさしそうな笑顔。
ボルサリーノ系の、ソフトな白い帽子を目深にして、眩しげに目じりを下げるのが、ちょっと
コケティッシュな感じだった。
オーナーが、さっそく笑顔で迎え、奥からコックを呼んで歓談。
同席して写真まで撮った。
さすが、ベニスの夏の日、イタリア男、ローマの夏の日も負けてはいない。
で、戻ってきたオーナーに聞いた。
あの方は有名人か、と。
「ええ、女優さんですよ。ドイツのね。人気のテレビシリーズに出演していて、もう何年も
続けていますよ。もちろん、うちによくくるお客さんです」
というようなことを聞き、午後酒の酔いもあって食事後、彼女のテーブルに行った。
女優なのですか。
ええ、と笑顔だったので、写真を撮ってもかまわないかと聞いた。
驚くことに、少しはにかんで「いいわ」と答えた。

よくもまあ、そんなことをしたものだと、振り返って自分にも驚いている。
イタリアの夏の日は、国籍を超えて男を大胆にするのだろうか。