夜 2020-08-10 21:33:23 | 言葉 足もとから伸びた影が見せた とまどい外灯のせいだろうかぬるい風のせいだろうかもう一人のわたしは頼りなさげに揺れている今にも消えてしまいそうに夜だけが深まる深々 シンシンと影を塗りつぶすように時間が 降り積もる夜色のアスファルトに佇むわたしの中で揺らいだかたち無きものがきしんでいる
夢の森 2020-08-10 09:04:31 | 言葉 夢の森でシロヤナギの声を聴いた細い葉が陽を浴びて薫りしゃらしゃらと擦れあうあのしずかな囁きなぜわたしはあの場所に行ったのか何を思って大木の腕の下に立ったのか夢の森は胸の内にある問いには何ひとつ答えなかったがとにかく話したいことがたくさん たくさん あるのだ二百年以上生きたおまえとしか話せないさまざまな事柄についてたとえば誰にも話せないひとりでは抱えきれないうつわからあふれ出る哀しみについて―夢の森でシロヤナギの声を聴いていたその森にはただ一本の大木があるだけのけれどもそこはたしかな森でありわたしにとっての大きな おおきな 隠れ家であった