ろうげつ

花より男子&有閑倶楽部の二次小説ブログ。CP :あきつく、魅悠メイン。そういった類いが苦手な方はご退室願います。

慕情残火(あきつく) 1

2020-03-30 23:59:00 | 慕情残火(あきつく)
暴漢に襲われた事により、私に関する記憶だけ失った道明寺とは綺麗サッパリ別れる事が出来た。
本当はもっと、この恋を引きずるんじゃないかと危惧していたのだけど、そんな心配は全くの無用だった。
あれだけ私という存在を否定し、威嚇し続け、海ちゃんを傍に置く道明寺を見ていたら、怒りや悲しみよりも諦めといった感情の方が先に走った。
いや、諦めというよりは「どうでもいい」という心情に近いのかもしれない。
言うなれば無関心。
この言葉が一番しっくりくる。
だから思いの外、立ち直るのが早かったのかもしれない。

それともう一つ。
とある人の存在が大きかった。
付かず離れず一定の距離を保ちながら常に私を見守り、励まし、寄り添ってくれた心優しき私のヒーロー、美作さん。

道明寺への恋や未練を断ち切り、一歩前進できたのは間違いなく美作さんのお陰。
だから私は、自分自身を止められなかった。
美作さんに寄せる信頼、安心、衷情(ちゅうじょう)、そして恋心を。
そう、止められなかったんだ。
道明寺との恋にケジメをつけてから1年経つか経たないかで、次の恋にいこうとする私を美作さんが知ったらどう思うだろうか。
軽蔑する?それとも失望?
変心した私に嫌悪感を抱く?

「あれだけ周囲を巻き込んだのに、そんな簡単に次の恋に走るのか。司に対する想いは、そんな薄っぺらいものだったのか」

なんて事を冷たい目をして言われたら、絶対に立ち直れない。
道明寺に忘れ去られた時よりも傷付く。
あの美作さんがそんな事を言うとは思えないけど、でも100%とは言いきれない。
だから私はこの恋心を本人に知られる前に、事前親告してから逃亡する事に決めた。
黙って姿を消すと、花沢類や西門さんと一緒になって私の行方を探そうとするだろうから。

「少しね、みんなと距離を置きたいんだ」

「距離?」

「うん。良くも悪くも目立つでしょ?私。F3と仲良いし、道明寺と付き合ってたし」

だからせめて、大学生活は静かで穏やかな日々を過ごしたいなと思って。
ごく普通の学生生活を送りたいのよと切々と訴えた私は、美作さんに隙を見せる事なく言葉を続けた。

「実はね、四月から地方の国公立大に入学する事が決まってるの」

「はっ!?」

「みんなに内緒でセンター試験受けてたんだ。で、見事に合格したの。だから、その大学に通うんだよね」

「通うって・・・」

「新しく住む場所も見つかったし」

「見つかった?」

「うん。明日、引っ越すの」

「明日!?」

ほら、善は急げって言うし、明日は大安吉日だしさ。
新しい門出を踏み出すには、最高のタイミングじゃない。でしょ!?
と、力説する私に対し美作さんはと言うと、若干押され気味の引き気味だった。
けど、そこは腐っても鯛というか何と言うか、F4の一員とあって立ち直りも早く、あれやこれやと問い質してきた。

「地方の国公立大って、どこの地方の何ていう大学だ?」

「言う訳ないじゃん。言ったら最後、アンタ達が遊びに来ちゃうじゃん。絶対に」

「牧野が来るなって言うなら行かないよ。牧野が嫌がる事をして、嫌われたくないからな。そもそも、俺が牧野の嫌がる事をするか?」

「しない・・・かな?」

「疑問符はいらないだろ」

「あ、うん」

「だからさ、俺にだけ教えてくれる?」

アイツらには言わないって約束するから。
なんて、甘い言葉を口にする美作さんに思わずよろめきかけたけど、ここはグッと堪えた。

美作さんに対する想いを、誰にも悟られたくないが為に東京から離れる決心をしたのに、その張本人に教えようとして何考えてんの!?私。
しっかりしろ、牧野つくし!と、心の中で自分を叱咤した私は、燃ゆる瞳をこちらに向けじっと見やる美作さんに対し、拒絶の意を示した。

「美作さんを信じてないとか、そういう事ではないの。みんなに言わないでってお願いしたら、絶対に言わないでくれるだろうなって分かってるから」

「だったら───」

「一度、リセットしたいの」

「リセット?」

「うん。F4と関わらない生活を送りたいんだ。こう見えても私、案外弱い部分があるから。このままだと、みんなに依存し過ぎちゃう。それが怖いの。みんなが傍にいないと生けていけないってくらい近くにいるのは、自分にとってよくないから」

甘える事に馴れるのが一番怖い。
いつでも心を欲してしまうのが何より怖い。
まあ、みんなにと言うのは方便で、本当のところは美作さん限定なんだけど。
でも、そんな心情は吐露せずきっちり心の奥底に仕舞いこむ。
鍵を何重にもかけて。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、尚も美作さんはしつこく喰い下がってきた。

「せめて、どこの地方に行くのかくらいは教えてくれよ」

「それは・・・」

「じゃないと、強引な手を使ってでも調べるぞ?」

「そんな!」

「けど、それはしないよ。牧野に嫌われたくないからな。牧野に嫌われたら浮上できなくなる」

だから教えてくれ。
そもそもフェアじゃないだろ。
牧野は俺が東京にいるって分かってるのに、俺の方は牧野の居場所を知らないだなんて。
不公平だと思わないか?思うよな。
俺は牧野を気にかける事すらしちゃいけないのか?
そんなのあんまりだ。ひでぇよ牧野。

なんて、怒涛の如くまくし立ててくるから、つい勢いに負けて言っちゃったわよ。
関西圏の大学に入るって。

「どのエリアの関西圏?」

「えっとね・・・って、言う訳ないでしょ!」

「じゃあさ、進学するのは国立?公立?どっち」

「それはね・・・って、だから言わないっつーの!」

「チッ!思いの外、ガード固ぇな」

あのねぇ、そんなバレバレの誘導尋問にはひっかからないっての。
っつうか、品のない舌打ちは止めなさいよ。
日本有数の大企業の御曹司なんだから。
と、言いたいのを我慢した私は、これ以上ダンマリを決め込むのは得策じゃないと判断し、一つの妥協案を提示した。

「毎年必ず年賀状だすから。ね?」

「年賀状は消印押さないから、居場所もバレなくて済むな。牧野にしては、よく考えたじゃないか」

「ま、まあね」

「・・・なんて、俺が納得して引き下がるとでも?」

「ゔっ!」

そんなんで騙されるほど、俺はお人好しじゃない。
こりゃやっぱり、類や総二郎たちと捜索隊を結成して牧野の家を探すしかねぇな。
なんて脅しをかけてくるもんだから、仕方なしに譲歩したわよ。

「美作さんの誕生日に、バースデーカード送るから」

「それだけ?」

「それだけ・・・って」

「仕方ない。捜索隊───」

「分かった分かった!暑中見舞の葉書も送ります!それで勘弁して」

「・・・ま、いいだろ」

不承不承ながらも一応は納得してくれた美作さんに、私は思わず胸を撫で下ろした。
って言うかさ、何で上から目線なわけ!?
何で私、譲歩しちゃってんのよ。
これも、惚れた弱味ってやつ・・・なのかな!?





慕情残火(あきつく) はじめに

2020-03-29 22:40:15 | 慕情残火(あきつく)
こちらの話は、つくしの大学時代がメインとなります。
話の構成上、オリキャラがそれなりに登場します。
(あきらと総ちゃんも、ちゃんと登場しますよ。類くんは今のところ不明ですが・・・)
ですので、オリキャラが苦手な方は回れ右でお願いします。

六花の軌跡【魅悠】 序章

2020-03-26 08:57:01 | 六花の軌跡【魅悠】
都心に広がる曇天を見上げ、夜更けには雪になるかなと独り呟く女の瞳は、何かを映している様で、実は何も映していなかった。
ビル群から足早に立ち去る人も、お洒落な店で買い物する人も、街のイルミネーションを見やる人も、女の瞳には何一つ残らない。
街の喧騒も何一つ耳に残らない。
吐く息が白くなる程の寒さも感じない。

そんな女の瞳に映るは・・・いや、映したものは、最愛の伴侶の凛々しい姿であり、耳に残るは伴侶が過去に愛した女の言葉であり、感じたものは己の胸の痛み。
過去に犯した一つの罪に怯え、後ろめたさに何も言えず、それをいい事に愛する伴侶の傍に今日(こんにち)まで居続け、幸せを享受してきた報いが今になって襲ってきた。

「あの時、本当の事を言ってたら結果は違ってたのかな」

最愛の男の妻という座を、射止める事は出来なかっただろうか?
ずっと、マブダチという関係が続いていたのだろうか?
それとも、

「恋愛に発展して、今みたいな関係に落ち着いたのかな」

そう口にして思わず自嘲した女は、軽く頭を左右に振ると再度、鉛色の空を見上げた。

「本当の事を言っても許してくれるかな。妻のまま傍にいさせてくれるかな。いさせて・・・欲しいな」

心根が真っ直ぐで、曲がった事が大嫌いな情けに厚い伴侶は、真実を知っても許してくれるのか、それとも侮蔑した瞳で見つめ突き放すのか。
どちらにせよ、審判を下すのは伴侶であり自分ではない。
それだけは、はっきりしている。

「家・・・帰りたくないな」

帰宅して伴侶と顔を合わせれば、何かが終わる。
そんか気が女にはしていた。

「帰りたくないけど、あそこしか帰る場所がない」

こんな都心の真ん中で、いつまでも突っ立っている訳にはいかない。
遅かれ早かれ、決着はつけねばならぬのだから。

「仕方ない。覚悟を決めて帰───」

「まぁ!悠理じゃありませんこと?」

帰ろうという言葉を口にしようとするも、それを遮られ出鼻をくじかれた女、悠理は、声をかけられた方へと視線を向けた。
するとそこにいたのは、

「・・・野梨子」

茶道白鹿流の次期家元であり、悠理の仲間である白鹿野梨子だった。
仕事中なのか仕事帰りなのか、高級な着物を身にまとい笑顔を浮かべている。
そんな野梨子の姿を目にした悠理は、思わず涙ぐむと彼女の小さな手を握りしめ、そして、

「・・・助けて」

「悠理!?」

消え入りそうな声で、ただひたすら乞いすがった。





六花の軌跡【魅悠】 はじめに

2020-03-26 08:39:43 | 六花の軌跡【魅悠】
倶楽部内でのカップリングは魅録×悠理だけです。
他のメンバーは其々、オリキャラや既存キャラと家庭を築いています。
ですので、倶楽部内でのカップリングをお好みの方やオリキャラが苦手な方は、回避願います。




沈め屋(花男CPナシ) 後篇

2020-03-23 10:33:40 | CPナシ(花男)
※この話は、2017/6/20にヤフーブログ「たゆたふ」、2019/4/6「たゆたふ弐」でアップしたものです。


浮気した彼氏に詰め寄ったところ、逆上され殺されてしまったという若い女性。
その女性が住んでいた部屋で、二ヶ月ほど暮らす事になったつくしであるが早速、初日から怪奇現象の洗礼を浴びる羽目になった。

まずは手始めにラップ音が部屋中に響き渡り、次に電気が突然消える。
そして日が経つにつれ、閉めたはずの扉や襖(ふすま)が自然と開いたり、洗面所の水がいきなり流れたり、人を引きずる様な音が聞こえてきたりと、不可解な出来事が続いた。

さすがのつくしも、これには薄気味悪いものを感じたが、おいそれと逃げ出す訳にもいかず、バイト代を手に入れる為、我慢して住み続けた。
そんな中、遂につくしは遭遇してしまう。
そう。
この部屋で殺された前の住人である、若い女性に。

「・・・うっ!」

あまりの息苦しさに目を覚ましたつくしは、信じられない光景を目の当たりにする。

恨みがましい瞳をこちらに向けながら、死ね死ねと連呼し、自分に馬乗りになって首をギュウギュウ絞め上げてくる女性の霊。
その目は狂気に満ち満ちており、普通の人間ならば悲鳴を上げ失神するところだろうが、生憎つくしは普通の人間・・・いや、精神状態ではなかった。

昼間、街中で偶然見かけた元彼とその相手女性の幸せそうな姿。
自分一人を不幸にし、何喰わぬ顔で日々を過ごす元彼に、言い知れぬ怒りを覚えた。

---許せない。絶対に。このヤロウ。ふざけんな。

ドロドロとした怒りのマグマを胸の内に納め、やり場の無い思いを持て余していたつくしは、霊に首を絞められた事により、何かが弾けた。

右手を握りしめ拳を作り、それを、


「つくしパーンチ!」


自分の首を絞め上げる霊の顔面に向け、思いきりグーパンチをお見舞いしたのだ。
当然ながら、意表を突かれた霊は、驚愕した面持ちでつくしを見つめる。
しかしつくしは全く意に介する事なく、怒りの丈を霊にぶつけた。


「何すんねんワレェ!苦しいやろがアホンダラ!」

『・・・』

「何でウチがアンタに首絞められなアカンねん。関係あらへんやんけ。恨むならワシやなく、アンタを裏切った男ちゃうんけ!?」

『・・・ハイ』

「こっちは親が借金作ってトンズラするは、勤務先が倒産するは、彼氏が浮気相手を妊娠させて結婚するはで、踏んだり蹴ったりや。恨みたいのはウチの方や!ボケ!カスゥ!」


そう言うや否や、枕をむんずと掴んだつくしは、それを霊にめがけ思いきり投げつけた。

余談ではあるが、何故つくしが関西弁を話すかというと、大学時代からの親友がコテコテの関西弁を口にし、それがうつったからである。
おまけに、浮気した元彼や倒産した会社の上司が関西出身で、常日頃から関西弁を使っていた為、自然とつくしも関西弁をマスターしてしまったのだ。
ちなみに、コテコテの関西弁を話す親友は、あきらの妻の座に君臨している。

さて、話を戻そう。

思いきり枕を投げつけられ『痛い』と呟く霊に、つくしはベッドから下り、仁王立ちしながら更にまくし立てた。

「殺されて悔しいのは分かるけど、恨む相手間違えんなや。浮気した彼と相手の女に取り憑きなはれ。ほんで、その二人を気が済むまで懲らしめたら、成仏しぃや。いつまでもコッチの世界にいたらアカン。ええな!?」

『・・・ハイ』

「分かったなら、サッサとここから去(い)ねや」

『ス、スミマセンデシタ』

あまりのつくしの剣幕に恐れをなした霊は、ブルブル震えながらこの部屋から去っていった。

牧野つくし、後厄。
職ナシ金ナシ男ナシの三拍子揃った崖っぷち。
この出来事をキッカケに、次々と事故物件に住む仕事が舞い込む様になり、伝説の女となる。

人呼んで「沈め屋」・・・そう、霊を「鎮める」のではなく、グーパンチで「沈める」という意味の「沈め屋」である。



〈あとがき〉

久々にコメディを書きたくなったので、こんな話を書いてみました。
書いていて、「霊って痛みを感じるのか?」と思いつつ、感じる事を前提に進めました。


〈あとがき2〉

この「ろうげつ」でも、沈め屋つくしチャンを書いていこうと思ってます。
コメディのつくしチャンは、やっぱりこういったパワフルな女じゃないとね(笑)