花日和 Hana-biyori

九月姫とウグイス

『九月姫とウグイス』文:サマセット・モーム/訳:光吉夏弥/絵:武井武雄/岩波こどもの本



人間の「エゴ」をこれでもかと子ども向けのお話でぶつけつつ、エゴに打ち克つ思いやりの美しさを描いた本だと思いました私は。

あらすじ> タイが舞台の昔話風創作童話です。王さまに9人の娘が生まれますが、王様は娘が増えるたびにセットで語呂のいい名前をつけたがり、長女などは何度も名前を変えられてすっかりひねくれてしまいます。名前を変えられたことのない末娘の九月姫は素直で優しく美しいという設定です。

 * * *

サマセット モームが文ということを知らずに読みましたが、凄い話だ…。王様のワガママ、女の嫉妬、人の悪いところを暴きつつウグイスとの交流にじんわりさせられます。とりわけこの文章はなかなか子ども向けの絵本では出会わない表現ですが、美しくて素敵です。

――ウグイスは羽をひろげて、まっすぐに、あおい空へととんでいきました。
 お姫さまは、わっと、なきだしました。じぶんのしあわせよりも、じぶんのすきなひとのしあわせを、だいいちにかんがえるのは、とても、むずかしいことだからです。


一方、いじわるな姉たちは容赦ない待遇をされて終わります。一瞬、子ども向けにはどうよと思いましたが、昔の絵本はわりとこんな感じで、はっきりした勧善懲悪ではありますね。

大人からみるとここまでしなくても…そもそも九月姫贔屓されてるし!とかは思っちゃいますけどね。皮肉が効きすぎてるところがやはりモームだなと。訳も絵も格調高く素晴らしいものでした。
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