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花日和 Hana-biyori

『飛ぶ教室』読書会【前編】

先週17日に『飛ぶ教室』の読書会でした。
参加者は7人だったのですが、私はPCトラブルで大きく出遅れ、お二人の感想を聞き逃したのが痛恨の極み。それでも、好きな本の話をずっとみんなでお喋りしてていいっていうのはやっぱり貴重な時間でした。

ずいぶん時間が経ってしまったのですが、どうもこれは記録しておきたいぞ…ということが多く、まとめるのに時間がかかってしまいました。メモと覚えている範囲から、みなさんの感想(長いので前後編で)はこちらになります。(※ネタバレあり)

■風太さん

(自分の)子供たちが小さい時に読んで泣くほど感激した話。むしろ大人になってから読んだから良かったのかも。正義先生と禁煙さんの話はできすぎてるなと思ったりするけど、やっぱり「泣くこと厳禁」でボロ泣きしました。子供たちの群像劇としてそれぞれの事情がよく書かれていていいなと思いました。

地元の読書会(20人くらい)で、どんな素晴らしい感想が出るかと思ってワクワクしながら行ったら、みんな「面白くない」って言っててすごいショックだった。文体がわかりにくいとか、ややこしいとか言われて。

当時、高橋健二さん訳と、国土社のひどい訳のものがあって、多分その訳のせいもあったのかなと思う。1人だけこれは読みやすかった、良かったと言ってくれた人が、みんな読んだ訳が悪かったのではと言ってくれて。訳によってこんなに違うのかと思った。で、やっぱり私は高橋健二さんの訳が好きです。

はづきさん

ケストナー作品で1番好き。今もとても好きな児童書として位置を占めて20年ぐらい。大学の時に読み返して、好きだなってしみじみ思った記憶があります。当時、高橋健二訳と山口四郎訳(講談社)で読んだと思う。

ただ、ケストナーの児童書って人によっては道徳の教科書みたいに思うかも。飛ぶ教室をいまの子供たちが読んで面白いのかは、ちょっと不安な面もある。この先、児童文学のスタンダードとして残っていくかどうかなと。

しかし、むしろ大人が読んでノスタルジーを感じたり、子供のいじらしさに涙したり、しっかりした大人が登場するので自分たちもしっかりしなきゃと思ったり。そういう枠になっていくのかも。

「大人が読んでしみじみ枠」で言うなら、本書が1933年ドイツでナチスが政権を取った年に出版されたことから、時代背景を鑑みて噛みしめる読み方もある。特に前書きの23ページ、勇気と賢さの話ですね。

「賢さのない勇気は、乱暴にすぎない。勇気のない賢さは、冗談に過ぎない。世界の歴史には、勇気はあるけれど馬鹿な人間や、賢いけれど臆病な人間がたくさんいた。それはおかしな状態だった」

あとは後半の128ページ。書き取りのクロイツカム先生がみんなに言う、

どんな迷惑行為も、それをやった者にだけ責任があるのではなく、それを止めなかったものにも責任がある」

こういう言葉が、時代背景を考えると結構大事になってくる。

*マルティンがお金がなくて帰省できないことを悲しむ後半のエピソードについて

あと、これ本当に見事なクリスマスの話で。要約すると「クリスマスに現金もらって大団円」って話ではある

このお金を渡されるという、ある意味即物的なところが私は結構好きで。日本だとみんなが寄付するとか人情話にしちゃいそうなところを、“こそっとお金あげる”で解決する。お金って大事なものだし、別に汚いものでもなんでもないという価値観が出てるのが好きだなと。

あと、キリスト教圏ではこういう「施しの受け止め方」が、もしかしたら自分たちとは違う感覚なのかもしれない。

今回読み返すとあまり施しという感じはせず、ベック先生とマルティンが結構対等なんだなと思った。たとえば日本だと正月に家族と過ごせず1人だと孤独感がすごいというものがある。

同じような感覚がキリスト教圏だとクリスマスに当たると考えると、ベック先生とマルティンは、クリスマスに家族あるいは親しい人(禁煙さん)と過ごすことを贈り合ったといえる。その意味では対等なのかなと。(ベック先生は6年前に母親を亡くしていて、自分でも今年はローベルトとクリスマスを祝うと言っているので)

*やっぱり高橋健二訳「君は旅費でもないのかい」がいいという話

自分としては高橋健二訳で好きになったので、(マルティンの言葉は)「泣いちゃダメ。絶対」じゃなくて、「泣くこと厳禁」なんですよね。あとほかに、本書では「ひょっとして交通費のせい?」ってベック先生がこそっと聞く場面がありますけど、これは高橋健二訳では「君は旅費でもないのかい?」って言うんですよ。“木立にすら聞かれないように、そっと小声で”「君は旅費でもないのかな?」って言ってくれるのがいい。

しかし、他にわけの分からないちょっと変チクリンなところもあり、そこも含めて高橋健二訳が好きなので、もし他の訳にも興味を持った場合は、山口四郎訳(一番読みやすい)か高橋健二訳をおすすめします。


岩波書店版、高橋健二訳

***

私もはづきさんのおっしゃる通り、愚かさと勇気の話やクロイツカム先生の言葉が刺さります。むしろ大人になってからドイツの歴史はもちろん、人間というものの愚かさやふがいなさを実感した上で響く言葉かなと思います。

(長いので分けます。後編へ)

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