写真の情報しかないので定かではないが奇妙な違和感を抱く。
「スプレー」というものは液状のものを対象物に放射し塗布するものである。
タイトルが「スプレー」であれば、スプレー本体か等しい(納得できる)景を提示すべきものである。しかし、台の上に広げられた紙面にコップを置き、その周りにコップの彩色と同じ類の彩色が広がっている、あたかもコップに塗布しその周りに飛散した彩色という具合である。
どの位置、方向からのスプレーだったのか、コップの周りを見ると真上からのような放射(飛散)である。にもかかわらずコップの内側は白(少なくとも塗布した彩色は見えない)。
不条理である。
成り行きに道筋が伴わない。
スプレー、コップ、敷かれた紙面、台座などは、各それぞれ寄せ合わされた物ではないか。必然、条理を外した提示に鑑賞者は戸惑いを隠せないが、情報を駆使してこの領域を総括しようとする、この危うい景は警告でもある、奇妙(不可思議)を肯定しようとする心理への警告である。
違和感、つまり積み重ねられた情報の集積(観念、常識)に照合すべき点が欠落していることは、逆からの証明と言えるかも知れない。
写真は日経「はみ出す作品」冨井大祐より