言いたいことは言ったはずなのになぜか心の中はすっきりしていなかった
啓太が・・・・あまりにも聞き訳がよすぎて逆に調子が狂ってしまったような
そんな なんとも言えない気持ちだった
“エリー明日誕生日だったよね?だから、明日ほんの少しでいいから僕に時間をくれないか?
渡したいものがあるんだ、誕生日プレゼントくらい受け取ってくれるだろう?”
別れ際そんな風に言われた
断るのも変だと思い“わざわざありがとう じゃぁまた明日電話ちょうだい” と言って帰ってきた
なんだかぼんやりしていた
私の本当の気持ちは一体どこにあるんだろう?
総一郎のことを本当に好きなのだろうか “いつかは結婚してもいいくらい?”
啓太のことはもう忘れてもいいのだろうか “このまま本当に会わなくても?”
お盆休みを早めにもらっていたのでしばらく会社も行かないし
アサコ先輩にでも聞いてもらおうか?
それとも明日啓太と会った後久しぶりに京都へ帰ってみようか
今から新幹線のチケット取れるかな・・・・?
などといろんなことを考えて頭の中が整理できなかった
「・・・・絵里ちゃん!!? いるん? 聞こえてる~?」
叔母が呼んでいるのが聞こえた ずい分慌てた様子だ
「なに~? いるよ~ちょっと考え事しててん ごめんなさい 晩ご飯の用意手伝うわ~」
と言いながらリビングに入った私に、叔母はちょっと興奮した様子で
「ほら! 絵里ちゃん 見て見て!! 飛行機が落ちたんやて 怖いなぁ~やっぱし飛行機は・・・
私は陸がええわ・・・空は怖い怖い・・・」
この日起こった悲惨な事故を映し出すTVを見ながら興奮していた
「いや・・・ホンマ、怖いなぁ 私今年のお盆は久々に大文字さん 見に帰ろうかと
思ったりしてたとこやねん 新幹線の切符買えるかな~」
叔母と興味津々でTVを見ながらのんきな会話をしていた
まさかこの大事故が啓太に大きく関わることだとは、この時は全く知る由もなかった

やはり、というか総一郎が電話して来た 明日の誕生日を一緒に過ごそうという提案だ
“京都に帰ろうかと思っている”と話すと、自分も京都に行きたいと言いだした
修学旅行以来京都には行ったことがなく、私の住んでいた街を見たいというのだ
出来れば親にも会って正式に付き合いのことを話したいという
私は少しだけ慌てた
一緒に京都へ行くのはいいが、親に話すというのが嫌だった
うちの親は、男の人を連れて帰った娘がすぐに結婚するつもりはなく
“しばらく仕事を続けたいと思っている” などと言う話を素直に聞くはずがない
そんな人がいるならさっさと結婚しろと言うに決まっている
そんなのはお断りだ 勘弁してほしい 私は、姉のように素直にお嫁になんて行くつもりはない
総一郎には親に会うのはもう少し後にして欲しいとお願いした
総一郎は不服そうだった
男として“けじめをつけた付き合いだ”と言いたかったようだ
完全に引き下がった様子ではなかったが、とにかく“親に会うと言うなら一緒には行かない!”
と言った私の言葉にしぶしぶ応じたようだった
チケットは自分に任せてほしいと言ってくれた
次の日総一郎の指定した時間が近くなっても啓太からは、何の連絡もなかった
私から連絡するのもどうかと思ったので、啓太には悪いが
夕方の新幹線で京都へと向かう為 総一郎の待つ場所へと急いで出かけた