昨日NHKの報道番組で、体育の授業中に突然の心肺停止で亡くなった12歳の少女を悼み、「AEDによって救える命」という特集が放送されました。「もっとAEDを普及させ、心臓突然死を防ごう」という全国的なキャンペーンの一環です。
わが国では年間約7万人の方が心臓突然死で亡くなっていると言われています。心臓突然死の多くは心室細動と呼ばれる不整脈が原因です。これはAED(automated external defibrillator)で救える不整脈です。何かの原因(高齢者では心筋梗塞が最も多く、若年者では心臓内の電流異常が多い)で心臓のいたるところで電気回路が形成され、心筋の細胞が勝手気ままに収縮を始めて心臓がポンプとして機能しなくなった状態が心室細動です。心室細動では血液は心臓から全く駆出されず、物理的に心停止と同じ状態になります。5分以上心室細動が続くと、脳は不可逆的な障害を受けます。近年、いろいろな施設でAED が設置されているのは、この心室細動を治すためです。
AEDを含めて、もっと心肺蘇生を普及させようという動きが活発になっています。AEDがなくても心室細動の患者さんを救命することは可能です。現場に居合わせた人が立会人(バイスタンダー;bystander)として心肺蘇生を開始することです。これを一次救命処置 (basic life support; BLS)と呼んでいます。これまでBLSは、マウスツーマウス補助換気+胸骨圧迫 (いわゆる心臓マッサージ)が推奨されていました。しかし、マウスツーマウス補助換気がバイスタンダー心肺蘇生の障壁になっていたことは否めません。最近の研究から、胸骨圧迫のみでも従来のマウスツーマウス補助換気+胸骨圧迫と遜色のない救命効果が得られることがわかっています。これは、たとえ肺で酸素加されていない静脈血であっても、脳に循環させることが大切であることを意味しています。静脈血の酸素は乏しいですが、ブドウ糖が含まれています。正常動脈血の1% の酸素が血液中にあれば、ブドウ糖を利用して脳のミトコンドリアは働くことができるからです。
現在、心室細動患者さんの予後は3極化しています。かつて、救命医療が普及していなかった頃には病院外で心室細動の患者さんが救命されることはまずありませんでした。最近は、救命救急士による心肺蘇生が確立されているので、救命救急士が到着する前にバイスタンダー心肺蘇生によって有効な胸骨圧迫が施行されていれば、心室細動の患者さんもほとんど障害を残すことなく社会復帰を遂げています。総務省消防庁によれば、わが国では電話で通報してから現場に救急車が到着する平均時間は8分とのことです。これは驚くべき早さと言わなければなりません。しかし、残念ながらバイスタンダー心肺蘇生がなければ、心肺停止からたとえ8分後に救命救急士が到着しても多くの場合は重篤な脳障害を残し、回復しても植物状態となって社会復帰が困難となるケースがほとんどです。もし、バイスタンダー心肺蘇生がなく、30分以上たっても救命救急士が現場に到着しなければ、残念ながら救命の可能性はほとんどありません。すなわち、患者さんの運命を左右するのは医療従事者ではなく、その場に居合わせた家人、友人、隣人、または見ず知らずの赤の他人なのです。
たとえAEDが設置されていても、心肺蘇生がきちんと行われず、AEDの使い方がわからなければ宝の持ち腐れです。わが国では1年間に5万人以上の人が突然の心肺停止で亡くなっていると言われています。その中で、半分以上の人は、正しい心肺蘇生で社会復帰ができるはずです。必要なことは、誰もが躊躇せず心肺蘇生に着手できる社会的な環境を整備することです。最近では、医療従事者のみならず、一般の方々を対象としたBLSの実施方法やAEDの使用法を指導する講習会が盛んに開催されています。しかし、残念ながらまだBLSが社会に広く認識されているとは言えません。日本中のすべての人が勇気を持って心肺蘇生法を実践できれば、1年間に何万人もの命が救えるのです。義務教育期間中にBLSを必修とするカリキュラムの作成が急がれます。
わが国では年間約7万人の方が心臓突然死で亡くなっていると言われています。心臓突然死の多くは心室細動と呼ばれる不整脈が原因です。これはAED(automated external defibrillator)で救える不整脈です。何かの原因(高齢者では心筋梗塞が最も多く、若年者では心臓内の電流異常が多い)で心臓のいたるところで電気回路が形成され、心筋の細胞が勝手気ままに収縮を始めて心臓がポンプとして機能しなくなった状態が心室細動です。心室細動では血液は心臓から全く駆出されず、物理的に心停止と同じ状態になります。5分以上心室細動が続くと、脳は不可逆的な障害を受けます。近年、いろいろな施設でAED が設置されているのは、この心室細動を治すためです。
AEDを含めて、もっと心肺蘇生を普及させようという動きが活発になっています。AEDがなくても心室細動の患者さんを救命することは可能です。現場に居合わせた人が立会人(バイスタンダー;bystander)として心肺蘇生を開始することです。これを一次救命処置 (basic life support; BLS)と呼んでいます。これまでBLSは、マウスツーマウス補助換気+胸骨圧迫 (いわゆる心臓マッサージ)が推奨されていました。しかし、マウスツーマウス補助換気がバイスタンダー心肺蘇生の障壁になっていたことは否めません。最近の研究から、胸骨圧迫のみでも従来のマウスツーマウス補助換気+胸骨圧迫と遜色のない救命効果が得られることがわかっています。これは、たとえ肺で酸素加されていない静脈血であっても、脳に循環させることが大切であることを意味しています。静脈血の酸素は乏しいですが、ブドウ糖が含まれています。正常動脈血の1% の酸素が血液中にあれば、ブドウ糖を利用して脳のミトコンドリアは働くことができるからです。
現在、心室細動患者さんの予後は3極化しています。かつて、救命医療が普及していなかった頃には病院外で心室細動の患者さんが救命されることはまずありませんでした。最近は、救命救急士による心肺蘇生が確立されているので、救命救急士が到着する前にバイスタンダー心肺蘇生によって有効な胸骨圧迫が施行されていれば、心室細動の患者さんもほとんど障害を残すことなく社会復帰を遂げています。総務省消防庁によれば、わが国では電話で通報してから現場に救急車が到着する平均時間は8分とのことです。これは驚くべき早さと言わなければなりません。しかし、残念ながらバイスタンダー心肺蘇生がなければ、心肺停止からたとえ8分後に救命救急士が到着しても多くの場合は重篤な脳障害を残し、回復しても植物状態となって社会復帰が困難となるケースがほとんどです。もし、バイスタンダー心肺蘇生がなく、30分以上たっても救命救急士が現場に到着しなければ、残念ながら救命の可能性はほとんどありません。すなわち、患者さんの運命を左右するのは医療従事者ではなく、その場に居合わせた家人、友人、隣人、または見ず知らずの赤の他人なのです。
たとえAEDが設置されていても、心肺蘇生がきちんと行われず、AEDの使い方がわからなければ宝の持ち腐れです。わが国では1年間に5万人以上の人が突然の心肺停止で亡くなっていると言われています。その中で、半分以上の人は、正しい心肺蘇生で社会復帰ができるはずです。必要なことは、誰もが躊躇せず心肺蘇生に着手できる社会的な環境を整備することです。最近では、医療従事者のみならず、一般の方々を対象としたBLSの実施方法やAEDの使用法を指導する講習会が盛んに開催されています。しかし、残念ながらまだBLSが社会に広く認識されているとは言えません。日本中のすべての人が勇気を持って心肺蘇生法を実践できれば、1年間に何万人もの命が救えるのです。義務教育期間中にBLSを必修とするカリキュラムの作成が急がれます。
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