怠惰なひな菊

漫画家・萩原玲二(はぎわられいじ)の怠惰なブログ(2006~2019)

Bombardment of Kagoshima

2018-03-29 04:07:35 | 
写真師たちの幕末維新 日本初の写真史家・梅本貞雄の世界

忘れ去られていたまぼろしの写真史家が克明に描くわが国写真界黎明期の姿。上野彦馬、下岡蓮杖らの活躍した幕末維新期の写真界の現場を実地的に調査した考察の数々―編者による懇切な解説とともに初の書籍化。

国書刊行会


↑の図書館で借りてきた『写真師たちの幕末維新 日本初の写真史家・梅本貞雄の世界』という書物に、

 わが国で初めて戦争写真が撮られたのは、文久三年〔一八六三〕六月の薩英戦争であろう。キューバ提督のひきいるイギリス支那艦隊の旗艦ユリアラス号の甲板上より、イギリスの士官が撮影したものである。のちに横浜五十一番館のハーケルが、この写真を鶏卵紙印画として売り出し、新聞広告までしたらしい。筆者は残念ながら見ていないが、その撮影目録はちゃんと残っている。(41ページ)


とあり、初耳!である。

その写真が、現在散逸し消滅してしまったのにせよ、薩英戦争の写真の存在は初耳!なのだった。

ただ、この梅本貞雄(1900~1961)というまぼろしの写真史家は、編者の緒川直人氏によると、

 本書は、この民間学者・写真史家梅本貞雄の日本写真史研究にかかわる論考の‥‥‥論集である。‥‥‥梅本の写真史論考の問題点に留意を促しておきたい。梅本の場合、‥‥‥尊大な自負も手伝い、情熱と博識は時に思い込みを抱えこむ。それが論考の誤謬や社会における写真史認識のミスリードをもたらす。‥‥‥梅本論考には調査・考証不足や、典拠資料の記載の不正確‥‥‥不用意な部分も見受けられる。(386ページ)


とあり、目を輝かせての鵜呑みは危険であろう。

自分のような素人がざっと読んでも、本書にはそれは違くない?という言及がけっこう散見される。

そもそも薩英戦争は台風?というか暴風雨のさなかの砲撃戦で、甲板上は揺れに揺れただろうし、とても戦闘中の撮影が当時の湿版写真の技法で可能だったとは思えないので、その前後ではあったろうにせよ、本当に撮影され現存していたとしたらすこぶる興味深いブツであることは、言を俟たないのだった。