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「春期限定いちごタルト事件」 米澤穂信

2005年01月16日 | 読書
僕は最近まで知らなかったのですが、コージー・ミステリーという分野があるそうですね。
うちの奥さんとコージー・ミステリーの定義についていろいろと話したのですが、その印象から、コージー・ミステリーというのは、こういうものですと迂闊に説明すると、「その定義はおかしい。」という手厳しい意見をいただきそうで、ちょっと書きづらいのですが。
居心地のいい比較的狭い空間の中で展開されるミステリーって感じなのでしょうか。
代表格は、若竹七海とか、北村薫とか。で、さらに北村薫は、そこからもう一歩進め、死体の登場しないミステリーを連作しています。
かつてのミステリーというのが、ホラーとかサスペンスも含んでいたのに対し(今でもミステリーチャンネルでたまに怪奇物をやっていますね。)、よく晴れた日曜日の午後にお茶でもしながら謎解きを楽しむという優雅な雰囲気が漂っています。

で、この作品。これは、ライトノベルなのですが、このミステリーの系譜の上に成り立っています。主人公は、親しい女性の同級生(小佐内さん)とともに、小市民でありたいと願う男子高校生の小鳩君。そういう願いを持つのは、過去にそういう難事件を解決して、ついうっかり有名になってしまったため。にも関わらず、彼の目の前には、探偵心をくすぐる新たな謎が....

「名探偵、みなを集めて、さてと言い」という言葉がありますが、なんだかあの瞬間の得意そうな感じは、確かにちょっと鼻白むところがありますね。
ライトノベルと言いながら、こういった登場人物達の微妙な屈折ぶりが面白いです。
謎解きはまあまあ、というか、「さてと言う」シーンの前にタネがわかったというのは、ほとんどなくて、ちょっと悔しかったですが。
この本を読んで、いろいろとひっかかることがあったのですが、ライトノベルなもので、そういう面倒くさそうなネタは軽く流しておく「良心」も見事です。

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