よんたまな日々

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「肉食屋敷」 小林泰三

2007年09月09日 | 読書
またまた、角川ホラー文庫の小林泰三です。今年は「呪怨」の最新作が映画化されているので、角川ホラーもあちらこちらの本屋で見かけるのですね。
おかげで林巧と小林泰三がいっぱい読めてうれしいです。

これは4つのジャンルの異なる短編からなる短編集です。
表題作の「肉食屋敷」は、「玩具修理者」から「AΩ」につながる、スプラッタ系怪獣モノとでも言うべき作品。「AΩ」がウルトラマンやデビルマンを意識しているとすれば、こちらはジュラシックパークを意識しています。というか、作品中でも、「ジュラシックパーク」がどこまで実現可能なのか検証している場面があって、なかなか面白いです。最後のオチも、小林泰三らしい気持ち悪さですが、まあ、今回は何となくオチの予想がついてしまうところは、愛嬌ということで。

二作目の「ジャンク」も、かなりイマジネーションを刺激される作品です。解説を書いている作家の人も、西部劇でゾンビというネタは自分も考えていたが先を越されたと言ってますが、「能なしワニ」シリーズとか、ゲームで言えば「ワイルドアームス」みたいな感じで、ちょっと昔の勧善懲悪物っぽいのですが、人間や馬の死体をパーツとして売買し、違法ジャンク屋でそれらを組み合わせて生体ロボットを組み立ててしまうという道具立て。それらを巡って無法者やゾンビが争う(残念ながら保安官は出てこない(笑))というなかなか楽しくもグロテスクなセッティングです。
主な筋書きは、典型的なあだ討ち物でありながら、SF作家らしき一ひねりもよく効いています。

三作目の「妻への三通の告白」はちょっとした心理トリックですが、相変わらず最後に明かされる真相がグロテスクです。

四作目「獣の記憶」。これは、「密室・殺人」にも似た、一見本格ミステリー仕立ての作品で、多重人格ネタと見せかけて実は....というのが、ひねくれ者の小林泰三らしいのですが、最後のネタの明かし方がやや不親切なところが、他の作家のミステリーに比べて不満の残るところです。

全体的に面白いのですが、何だか小林泰三の他の作品との関連の中でこの辺の位置付けかなと整理できてしまうところが、予想の範囲内という感じで、大きく意表を付かれることがなく、そこがちょっと残念。


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