横須賀うわまち病院心臓血管外科

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高度石灰化した冠動脈への冠動脈バイパス術

2019-11-25 09:17:59 | 虚血性心疾患
 動脈硬化は粥腫によるソフトプラークだけでなく、動脈壁の石灰化も伴うことが多く、こうした石灰化は外科医泣かせの病変でもあります。石灰化はすなわち骨のように固い石灰化した板状の病変のため、遮断したり切開、縫合など全ての外科的な吻合作業を不可能にします。これは大動脈壁の場合は人工血管置換術の際に針が通らず、また人工血管とのフィッティングも悪くなるので吻合を困難にしますが、冠動脈バイパス術の際には吻合できる場所が見つからない自体に陥る可能性があります。
 術前のCTで高度の石灰化がある場合は、それを予測した上で手術に臨む必要があります。石灰化がひどい場所を切開すると冠動脈壁を壊してしまった上、吻合できないので術前よりも血流状態を悪化させるリスクがあります。冠動脈バイパス術のカテーテル治療に対する優位性として、病変部位を触らずに健常な部位に吻合することですので、健常な部位が見当たらない患者さんには有効なバイパス術が出来ません。術前の患者さんへの説明で、もしかしたらつなげる場所がないかもしれない、ということも伝えておく必要があります。

 経験的には心臓は常に拍動しているので、その拍動にあわせて冠動脈も動きます。この動きを可能にするために、固い部分と固い部分の間には間接のように必ず柔らかい部分があり、この関節部分ならなんとか吻合可能なことが多く、今まで予定の枝を石灰化のために血行再建できないということはありませんでした。関節部分がなくとも、心尖部には石灰化していない部分が見つかることも多々あります。
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