(応接室に案内され、私たちには豪華そうな出前寿司、自動人形と五郎と六郎にはアルコールが振る舞われた。有名で成功した方、さんざん自慢話を聞かされるのではと覚悟していたが、それは前座の数分だけ。なめられないようにとの演説のみだった。その後は、こちらのことをしつこく聞いてくる。)
高橋。世界中を回られた。
奈良。学会発表なら。仕事です。
高橋。有名なの?。
奈良。いいえ。
イチ。動物行動学では、名が知られている。知っている学者は多い。
高橋。じゃあ、有名よ。よかったわ、有名人とお話しできて。それじゃあ、動物の心が分かる。
奈良。ある程度は。でも、分かったと思い込むと、裏切られることがある。完全に理解するのは無理。
高橋。おほほ、そんなの人間が相手だって無理よ。もしかして、ロボットの心理状態が分かるとか。
イチ。奈良さんはぼくたちに心をくれたんだ。だから、ボクもよく分かる。
高橋。自分と同じ能力を、ロボットに与えたのね。素敵な話。
奈良。簡単なしくみ。かわいそうだが、何も分かっていない。私たちを観察して、適当に仕草をしたり、しゃべったりするだけ。
高橋。あら、とても大切なこと。
奈良。分かっているつもりなのは人間の側。心通わない機械。
高橋。あなたが言っちゃだめよ。大切な機械なんでしょ?。
奈良。ええ、私にとっては。かけがえのない、大切なロボット。
高橋。かわいく振る舞ってくれるじゃない。それで充分。
(小鹿氏は、次は伊勢に聞き始めた。伊勢はこの手の人間をあまり好かないのだが、知識に対して尊敬している態度が見られたので、普通に相手している。イチが私をフォローしてくれたように、レイが合いの手を打っている。どちらも先鋭的なので、レイがいなかったら多分、けんか腰だ。
次は鈴鹿。最初から普通に話しているのはいいのだが、こいつは演技ができない。知っていることをぺらぺらしゃべる。さすがに、社の秘密とかIFFの秘密まではしゃべらないけど…。)
高橋。じゃあ、あなた、007みたいなことをしている。
鈴鹿。調査のために潜入する点は同じ。
エレキ。合法の範囲内で。
高橋。暗殺も請け負う。
鈴鹿。まだやったことない。
マグネ。調査だけだ。衝突しそうになったら、逃げるのだ。
高橋。武器を携帯しているの?。
鈴鹿。普段はしていない。
エレキ。武器が無くても、少し弱くなるだけ。普通の男では太刀打ちできない。
鈴鹿。あんたたち、さっきから何ちょっかい出しているのよ。
高橋。フォローのつもりらしいわよ。いい男じゃない。そうか、くの一。本物は初めて見た。
マグネ。単なる警備とくの一の違いは何だ。
高橋。もちろん、作戦遂行のためなら、何でもする。殺人でもお色気でも。
エレキ。そんなお芝居をしたのか。
高橋。やってみたいわ。いつも人情もののお笑いばかり。
マグネ。敵方のあっぱれ美人ボス。
高橋。おほほほー、そんなのがいい。で、あんたたちみたいなのが正義の味方で出てくる。
エレキ。陰謀は粉砕。
マグネ。敵の中枢に迫る。
高橋。そして、すんでのところで私は優雅に逃げる。おほほほー、今回は負けてやったわ。でも、次は必ず思い知らせてやる。よく覚えておくことよ。
(ふー、お芝居の話だったらしい。と思ったら、甘かった。)
高橋。ぜひやらなくちゃ。展示会があるんでしょ?。
奈良。よくご存じで。この自動人形たちと日本のサイボーグ計画の展示会。
高橋。お芝居をしたことは。
イチ。過去に何度もある。お笑いの。
レイ。イチっ、何つられてしゃべってるのよ。
高橋。おほほほほー。ちょうどいい。ライターの港先生を呼んでくださる?。
お付き1。この時間にですか?。
高橋。さっさと呼びなさい。
奈良。本番は明後日。
高橋。だから、急がせるのよ。
記者。何かお芝居を。
高橋。できればしたいところだけど、間に合いそうもない。
奈良、記者。ほっ。
高橋。だから、私が歌を歌う。その前座にコントのある。
エレキ。寸劇も芝居は芝居だ。
マグネ。失敗は許されない。
高橋。私に恥をかかせたら、承知しないわよ。稽古は厳しいわ。そうね、時代は江戸時代の大坂。
エレキ。浪速(なにわ)捜査網。
マグネ。必殺商人(あきんど)。
高橋。こっちでは、庶民の方がお上より強いのよ。
奈良。想像もつかない。
高橋。任せなさい。悪いようにはしないわ。
高橋。世界中を回られた。
奈良。学会発表なら。仕事です。
高橋。有名なの?。
奈良。いいえ。
イチ。動物行動学では、名が知られている。知っている学者は多い。
高橋。じゃあ、有名よ。よかったわ、有名人とお話しできて。それじゃあ、動物の心が分かる。
奈良。ある程度は。でも、分かったと思い込むと、裏切られることがある。完全に理解するのは無理。
高橋。おほほ、そんなの人間が相手だって無理よ。もしかして、ロボットの心理状態が分かるとか。
イチ。奈良さんはぼくたちに心をくれたんだ。だから、ボクもよく分かる。
高橋。自分と同じ能力を、ロボットに与えたのね。素敵な話。
奈良。簡単なしくみ。かわいそうだが、何も分かっていない。私たちを観察して、適当に仕草をしたり、しゃべったりするだけ。
高橋。あら、とても大切なこと。
奈良。分かっているつもりなのは人間の側。心通わない機械。
高橋。あなたが言っちゃだめよ。大切な機械なんでしょ?。
奈良。ええ、私にとっては。かけがえのない、大切なロボット。
高橋。かわいく振る舞ってくれるじゃない。それで充分。
(小鹿氏は、次は伊勢に聞き始めた。伊勢はこの手の人間をあまり好かないのだが、知識に対して尊敬している態度が見られたので、普通に相手している。イチが私をフォローしてくれたように、レイが合いの手を打っている。どちらも先鋭的なので、レイがいなかったら多分、けんか腰だ。
次は鈴鹿。最初から普通に話しているのはいいのだが、こいつは演技ができない。知っていることをぺらぺらしゃべる。さすがに、社の秘密とかIFFの秘密まではしゃべらないけど…。)
高橋。じゃあ、あなた、007みたいなことをしている。
鈴鹿。調査のために潜入する点は同じ。
エレキ。合法の範囲内で。
高橋。暗殺も請け負う。
鈴鹿。まだやったことない。
マグネ。調査だけだ。衝突しそうになったら、逃げるのだ。
高橋。武器を携帯しているの?。
鈴鹿。普段はしていない。
エレキ。武器が無くても、少し弱くなるだけ。普通の男では太刀打ちできない。
鈴鹿。あんたたち、さっきから何ちょっかい出しているのよ。
高橋。フォローのつもりらしいわよ。いい男じゃない。そうか、くの一。本物は初めて見た。
マグネ。単なる警備とくの一の違いは何だ。
高橋。もちろん、作戦遂行のためなら、何でもする。殺人でもお色気でも。
エレキ。そんなお芝居をしたのか。
高橋。やってみたいわ。いつも人情もののお笑いばかり。
マグネ。敵方のあっぱれ美人ボス。
高橋。おほほほー、そんなのがいい。で、あんたたちみたいなのが正義の味方で出てくる。
エレキ。陰謀は粉砕。
マグネ。敵の中枢に迫る。
高橋。そして、すんでのところで私は優雅に逃げる。おほほほー、今回は負けてやったわ。でも、次は必ず思い知らせてやる。よく覚えておくことよ。
(ふー、お芝居の話だったらしい。と思ったら、甘かった。)
高橋。ぜひやらなくちゃ。展示会があるんでしょ?。
奈良。よくご存じで。この自動人形たちと日本のサイボーグ計画の展示会。
高橋。お芝居をしたことは。
イチ。過去に何度もある。お笑いの。
レイ。イチっ、何つられてしゃべってるのよ。
高橋。おほほほほー。ちょうどいい。ライターの港先生を呼んでくださる?。
お付き1。この時間にですか?。
高橋。さっさと呼びなさい。
奈良。本番は明後日。
高橋。だから、急がせるのよ。
記者。何かお芝居を。
高橋。できればしたいところだけど、間に合いそうもない。
奈良、記者。ほっ。
高橋。だから、私が歌を歌う。その前座にコントのある。
エレキ。寸劇も芝居は芝居だ。
マグネ。失敗は許されない。
高橋。私に恥をかかせたら、承知しないわよ。稽古は厳しいわ。そうね、時代は江戸時代の大坂。
エレキ。浪速(なにわ)捜査網。
マグネ。必殺商人(あきんど)。
高橋。こっちでは、庶民の方がお上より強いのよ。
奈良。想像もつかない。
高橋。任せなさい。悪いようにはしないわ。