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Turningpoint

-skyclip-篠塚優人の転換点だらけの日常
杏と玲愛と鈴と佳奈多とたまひよとなのはとフェイトとアスナは俺の嫁

Familienmitglieder 3-4

2005-01-08 02:30:10 | お話
 登る時あれほど強い決心が必要だった坂道を、たやすく下っていく。ためらいなど、ほとんど存在しない。

「下るのは早いわね……」

 横を並んで歩く杏も感じ取っていたようだった。わずかに手をはためかせて答える。

「まあ、下りだからな」

 答えてから、手持ちのビニール袋内の緑茶缶を思い出し、ガサゴソと二本取り出し一本を杏に渡す。

「ほれ、お茶」
「ほれお茶って、そんなの見ればわかるわよ。で、これは何なの?」
「ん、まあその、付き合ってもらった分のお礼、かな?」
「安くて温いお礼ね……」

 口ではきつい言い方をしているが、顔の他の部分を見る限りは満更でもないようだった。軽く吐き出すように白い息を空に浮かべてから、俺も一本取り出し、プルタブを開ける。既に温さすらも失っていた緑茶だが、乾いた喉を潤すにはちょうど良かった。

「さっきはありがとな」

 喉が潤ったためか、正直な気持ちが口をついて出た。

「へ?」

 唐突な言葉だったためか、杏はキョトンとした顔でこちらを見ていた。少し、間抜けだ。

「渚と向かい合ってるときに背中押してくれただろ? それのお礼」
「あ、ああそういうことね。あのままだと、渚だって困ってたと思うし」
「そりゃそうだな」

 少しだけ恥ずかしくなって、誤魔化しついでに緑茶をもう一口。先程よりも冷たさの増した緑茶は、一種の熱さを冷ましてくれる。喉元過ぎれば熱さも、とはちょっと違うか。
 更に誤魔化しついでに、空を見上げる。

「……お」

 わずかに見える、小さな粒。
 白い妖精たちが数名、ゆっくりと、地表に舞い降り始めていた。
 つられて杏も空を見上げる。

「……あ、雪……」
「雪、だな……」

 重たい空から、静かに舞い降りてくる雪たち。その降り始めは、儚く、しかし可憐だった。手を伸ばしてもまだ届かない位置なのに、思わず腕を差し出してしまう。
 やがて、一番のりを果たした妖精が、掌にそっと着地し、瞬く間に消え失せる。
 それがシグナルだったのか。

「……本格的に降り出したわね」

 空一面がステージと化す。妖精たちは広大な舞台の上で所狭しと舞を披露し、ひらひらと地上に降りてくる。
 手を差し出せば、幾つもの結晶が積もっては消えていく。
 息を吐けば、その白さは雪に吸い取られたように見えなくなって。

「きっと、渚からの祝福よ。登って、降り始める事ができた朋也への」
「……だと、いいな」

 最後の呟きも、雪の中に消えていった。
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X’masには・中編(くら・杏SS)

2004-12-26 01:25:08 | お話
 家の中に音を立てずに忍び込む。玄関にてあいつのお父さんがいないことは確認しているので、誰にも顔を合わせることなく台所まで侵入できた。ビニール袋から手早く冷蔵庫に食材を移し、ひとまずの作業は終了。続いて、あいつを起こしに行くミッションに移る。

 階段を抜き足差し足で登っていく。ここまでしてもし起きてたりしたら恥ずかしいなあ、と思いながらも、寝ている可能性が高いので静かに動くことだけはやめられない。問題のドアの前に立ち、一つ小さく呼吸して、そっと開ける。

 部屋の中は弱い光に包まれていた。カーテン越しに入り込んでくる光は夏とは違い強くないが、それでもねぼすけなこの部屋の主を柔らかく包んでいた。足音を立てず、ベッドサイドまで歩み寄り、かがみ込んで寝顔を見てみる。普段はむすっとしてどこと無く不機嫌そうな雰囲気を纏っている表情だが、寝ているときだけは歳相応のあどけない寝顔を見せている。きっと、気持ちよく寝ていることだろう。

 ふと、あたしはここにこいつのために料理を作りに朝早く起きて買い物に行って、という苦労を味わったことを思い出す。それからもう一度、気持ちよさそうに寝ているこいつを見る。

 ……何故だろう。少しだけ、むっと来た。

 考えていた起こし方を変更。凄い起こし方はやめにして、スゴイ起こし方にしよう。



「なあ、杏」
「あらおはよう」
「ああおはよう、ってそうじゃなくて」

 起こし方を実行してから階下に降りてきて、何事も無かったように料理を始めてきっかり10分。まだ、下ごしらえの下の字も進んでない。

「……なんで俺の胸の上に広辞苑が乗ってたんだ?」
「気のせいよ」
「気のせいなわけあるかっ! おかげで巨大化したボタンに押しつぶされる夢を見たぞっ!!」

 テーブルにあたしの置いた辞書を放り出して、それほど不愉快なようには見えない不愉快顔を朋也は見せる。

「いい目覚めでしょ?」
「全然よくないっ」

 それだけ言い残して、あいつは再び階上へ戻ってしまう。寝巻き姿だったからきっと着替えて戻ってくるのだろう。気にせずに、下ごしらえに戻ることにした。



 足音がしたので振り返ってみると、朋也が身支度を整えてむっつり顔で椅子に座っている光景が見えた。どうやら、今日の起こし方はあいつ的に相当気に入らなかったらしい。
 普段から不機嫌そうな顔をしているので分かりにくいが、朋也は本当に不機嫌な時はあまり表情を出さない。おまけに、そういう時は大体不機嫌にした方に非があるので、謝られるまではなかなか機嫌よくなってくれない。今回はあたしが全面的に悪いので(寝ている朋也も朋也だけど)先に謝ることにする。

「朋也、ごめん。今回はちょっとふざけすぎたわ」

 昔のあたしだったら先に謝ることなんてなかった。人は変われるものである。

「ん」

 短い返答を返して、あいつは席を立ち冷蔵庫から牛乳を取り出してそのまま飲み干した。
 再び上がった顔は、いつもの朋也の顔だった。折角の日なのに気まずいまま過ごすことにならなくて、内心で一安心する。

「そういや、俺がケーキ買って来るんだっけ?」
「そうよ。あ、もうちょっとしたらあたしも手が空くから、一緒に買いに行こうかしら」
「……何か、その光景を想像しただけで恥ずかしいんだけど」
「何よ、折角のクリスマスなのに彼女と街を歩くのが嫌なわけ?」
「いや、ただ恥ずかしいなあって。まあいっか、もう慣れたし」

 さり気なく朋也は凄いことを行っているような気がするけど、あえて指摘するとあたしも恥ずかしくなるので言わないことにする。
 雑談を交わしながら、下ごしらえを進めていく。帰ってきたとき、火を通して盛り付ければ完成となるように、鶏肉には下味をつけ、野菜は適当な大きさに切りそろえ、他にもあれやこれやと仕上げていく。

 15時ちょっと前になって、ようやく準備が終わった。

「あたしは準備終わったわよ?」
「こっちはいつでもオーケイだ。さ、行くか」

 二人で靴を履き、揃って家の外へ飛び出す。
 空を見上げると、先程よりもより雲が垂れ込めていた。この分だと今日は本当にホワイト・クリスマスになるかもしれない……

「さ、行くわよ」
「う、あ、ってちょっと待て!」

 あたしは自然に朋也の腕を取り、街へと繰り出した。


-中書き-

 バイトが残業じゃなきゃ終わるはずだったのに……
 ちなみにあと2500字程度の予定。うん、終わるわけ無いな。
 予定だと月曜に。うん、もうクリスマスじゃないがな。
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X’masには・前編(くら・杏SS)

2004-12-25 01:12:53 | お話
 空を見上げれば、少し泣き出しそうな曇り空だった。天気予報では夕方から雪交じりの雨とのことだったので、もしかしたら雪が降るかもしれない。
 ……なんだ、どうりで。
 吐く息はいつも以上に白く、身を刺す寒さはいつも以上に厳しい。雪が降る前の、あの何ともいえない寒さなのだ、今の状況は。

 はあ、と息を吐けば、あたしの熱の篭った空気が白く濁り、空へと消えていく。思えば、息には水蒸気が含まれてるのだから、その水蒸気が雪になったとき、あたしの雪が生まれたといえる。ちょっとだけメルヘンかもしれない。
 だけど、その辺のいかにも小汚いオヤジの息までが雪となってあたしに降りかかってくると思い直したら、メルヘンな気分は一瞬で吹き飛ぶ。浮かれて余計なことを考えた自爆だった。

 甘くてまずい空想世界を振り払って、歩くことに専念する。
 右手にはビニール袋。中身は色々で一口にはいえないけど、主に鶏肉と、野菜が色々。要するに料理の材料。やっぱり今日という日には鶏肉がいい。
 さすがにケーキまで作る気にはなれなかったので、あいつに買いに行ってもらうことになっている。ケーキ作りはスポンジから作ると非常に面倒だし、かといってスポンジは市販だと味気ないし。だったら最初から売られてるものを買ったほうがいい、と椋に行ったら「お姉ちゃんそういうところだけ現実主義だよね」と返ってきた。流石に、試行錯誤してケーキらしきものを作っている椋にそれ以上言い返すことはできなかった。柊さん、頑張れ。

 色々考えながら歩いていると、気付けば目的地に辿り着いていた。考えながら歩いていて気付けば、というのは色々危ないと思うけどこの際気にしない。
 さて、あいつは起きてるだろうか。12時を回ってるからいくらなんでも起きていると思うけど、でもあいつは寝てるときがあるから侮れない。
 合鍵は貰ってある。合鍵なんて持ってると、どことなく不思議な(もしくは恥ずかしいような)気分になるけど、それもこの際封じ込めて。
 チャイムはならさないで、静かにドアを開けよう。そして、もし寝てたら、凄い起こし方をしてあげよう。

 鍵は、開かれた。

-中書き-

 もう寝る時間なのさ……また明日に後編を。
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