モントリオール世界映画祭で深津絵里が最優秀女優賞を獲った映画「悪人」(公式サイト)を見てきた
ストーリーは・・・
長崎郊外のさびれた漁村で生まれ育った清水祐一(妻夫木聰)
恋人も友人もなく、祖父母の面倒を見ながら暮らしている祐一は、車だけが唯一の趣味で、
何を楽しみに生きているのか分からなかった
大叔父の経営する建物解体会社で働いている
福岡のOL・石橋佳乃(満島ひかり)と出会い系サイトで知り合った祐一は、長崎から猛スピードで車を走らせ
友人たちと食事をしている佳乃と待ち合わせていた
待ち合わせ場所で車に乗って待っている祐一の前で、佳乃は地元の裕福な大学生・増尾圭吾(岡田将生)と
偶然会い、増尾の車に乗って行ってしまう
二人の車を追跡した祐一は、峠で車から蹴り出されガードレールに頭を強打して倒れている佳乃を見つける
佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代(深津絵里)は妹と二人暮らし
アパートと職場の往復だけの退屈な毎日を送っていた
出会い系サイトで知り合った祐一と、かつてメール交換をしたことがあった
やがて、佳乃の絞殺死体が福岡と佐賀県境の三瀬峠で発見され、当日夜に会っていた増尾に容疑がかかる
増尾は福岡から逃げて行方が分からなくなっていた
佳乃の発見後、夜も寝られず体調を崩していた祐一は、再びメールで連絡してきた光代に会いに
愛車スカイラインGT-Rを飛ばして佐賀に出かける
どこに出かけようか、昼食は何にする?と喜ぶ光代に、「ホテルに行こう」と言う祐一
そして・・・コトが済み、待ち合わせ場所の佐賀駅前に光代を送ってきた祐一
「これだけしかない・・・」と四つ折りのお札を光代に渡した祐一・・・
「本気だったのに・・・・」言って車を降りていく光代・・・
「本気で誰かに出会いたかった」と思っていた祐一は、光代に謝るために再び職場に現れた
逃げていた増尾が警察に拘束され、DNA鑑定から犯人でないことが判明し、新たな容疑者として
金髪の男=清水祐一が浮上した
光代をアパートに送った帰り道、祖母・房枝(樹木希林)からの電話で警察が家に来ていることを聞く祐一
アパートに戻った祐一は光代を連れ出して車に乗せ走り去る
房枝はマスコミに追い立てられるようになる
幼い頃母親に捨てられた祐一をわが子同然に育ててきた房枝は、孫の犯した罪に動揺する
警察の追跡を逃れた祐一は光代に、佳乃を殺めたことを打ち明け、警察に自首すると言う
光代は衝撃を受けるが、思わず祐一を引き止める
殺人犯と分かっても、生まれて初めて人を愛する喜びを知った光代は祐一とともに絶望的な逃避行へと向かう
やがて、地の果てとも思える灯台に逃げ込んだ二人
つかの間の幸せなひと時を過ごす二人・・・
その逃避行が生んだ波紋は、被害者家族、加害者の家族の人生をも飲み込んでいく・・・・・
予告編
深津絵里さんは、まさに“最優秀女優賞”に値すると思える演技だった
でも、私は祖母役の樹木希林さんの、少ない台詞なのに存在感がとてもある演技のほうに見入ってしまった
実は祖母・房枝は悪徳業者(松尾スズキ)に騙され大金を払わされる詐欺にあっている
加害者家族でありながら、悪質な詐欺の被害者でもある
前者は無言を通し、後者では「お金を返してぇ~!」と悲痛な叫びをあげている・・・
難しい役どころをリアルに演じているところに私は感心してしまった
もう一人、佳乃の父親役の柄本明も素晴らしい演技だった
娘が出会い系サイトに頻繁にアクセスし、複数の男性に売春まがいの行為をしていたことを知り、
その事実を受け入れられず、愛娘を失った悲しみから、山に置き去りにした増尾に憤りを感じ
彼を追い詰めていく父親・・・もう一人加害者が出るのではないかと本当に心配してしまった
映画をずっと見ていて、終盤、タイトルの「悪人」って誰なんだろう?と気になった
もちろん、佳乃を殺害した祐一が“悪人”であることは言うまでもない・・・
でも、増尾に罵倒され、あとをつけてきた祐一に自分の惨めな姿を見られて怒りをぶつける佳乃も悪い
自分の実家の老舗旅館の若女将を夢見る佳乃に、「仲居なら雇ってやってもいい」と
傲慢な物言いをし、佳乃の人格を否定して山中に置き去りにする増尾も悪い
しかし、やはり私の中では光代が“悪人”だ
やはり、この映画は大きなタイトルを受賞した深津絵里さんが主人公であることは否定できない・・・・
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