一陽来復

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「去年マリエンバードで」

2007-01-04 22:48:36 | 映画
 以前書いたブログの2本立てのもう一方の作品「去年マリエンバードで」について。
 実を言うとこっちが目当てで映画館へは足を運んだ次第です(結果「24時間の情事」も当たりでしたが)。

 おおまかな粗筋は「とあるホテルの宿泊客である女性に向かって見知らぬ男が話しかけてきた『去年ここマリエンバードで出会って私たちは愛し合った。私はあなたを迎えに来た』しかし彼女は男を知らないのでこれはゲームに違いないと適当にあしらう。しかし男は執拗に事細かに去年の出来事を語り始める。女性には連れ(おそらくは夫)がいて、その男の常に冷静な、ある意味冷めた目の監視の中、次第に女性は、本当に去年この男性と愛し合っていたかのように気がしてくる。そしてついに女性は男と駆け落ちする決心をしてしまう・・・・」という感じです。

 この映画のポイントは「真実が不明なまま終わること」
この男の語る去年のマリエンバードでの出来事は真実なのか、妄想なのかはついに作中で明らかになることはなく、また彼女は男の話を信じたのか思い出したのか、嘘と知っていてついていったのか、もついに語られず終い。なんとも不思議な映画でした。

 ところで一般に女性の方が嘘がうまいと言われていますが、私自身が思うその理由について。女性は自分の嘘を真実と本気で思い込むことが可能な生物なんです(少なくとも私は)嘘の下手な男性は嘘をつきつつ『これは嘘なんだ』と理性の部分で思ってませんか?少なくとも私は嘘をつくときは『嘘ついるんだよ』とは微塵も思わないで嘘ついてます

 だからこの作品の彼女は男性の嘘(彼女は嘘と思っているという前提に基づいて)に乗っかって、それを真実ということにして(この時は本気で去年男性と愛し合っていたと思っている)夫の前から逃げ出してしまった、と解釈してみましたが・・・どうでしょうか?

 それにしても・・内容といい映像といい非常に印象深い作品でした。

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寺山修司の遺作「さらば箱舟」

2006-12-22 23:02:09 | 映画
 前回「草迷宮」の紹介でちらっと書いたのですが、寺山修司氏の遺作「さらば箱舟」を20年ぶり(くらい?)に観ることができました。あの当時ほどの興奮はなかったですが、でもやっぱり良い映画でした。
 原作はガルシア・マルケスの「百年の孤独」なんですが、たしかその題を使う許可がおりなくてこのタイトルになったと聞きました。
 原作もまたなんとも言えずすごく不思議でリアルな話でした。同作家の「ママ・グランデの葬儀」でもあったのですが、空から黄色い花が降るシーン、「さらば箱舟」でも一番圧巻なシーンです。
 実は私は原作でそのシーンを読んでから気になって気になって、以来20年それがテーマの作品を作り続けている始末です

 先日観たおり、当時はまったく気にならなかった俳優さんがけっこう気になってしかたなかったりします(当時の方が純粋に映画を楽しんでいたということか)。
 しつこく書きまくっている三上博史さんも健在でしたし(でも途中でおぼれ死ぬ役ですが)、そのおぼれ死ぬ原因となった不思議な少女チグサは高橋ひとみさんなんですよね。まったく記憶になかったのでびっくりでした。『再放送してほしいドラマ』で書いた「それでも家を買いました」で共演してますし、最近よくきく腐子女(腐女子だったっけ?)の妄想が加熱してしまいました

生も死もいっしょくたになって存在しているこの作品が寺山修司氏の遺作というのも暗示的な気がしてならないです。

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「スペーストラベラーズ」

2006-12-16 18:27:57 | 映画
 スカパーで夏頃放映されていたのを録画して、つい最近見た次第
あ、でもすごく面白かったですよこの映画、ラスト以外
 仲良し3人組が銀行強盗を企てるんだけど、支店長と警備員が金庫の中から扉を閉めてしまいお金を手に入れ損ない、警察にも知られて回りを囲まれてしまう。その上人質の1人が元テロリストで、そのことから警察は「テロ事件」と勘違いして大騒ぎになってしまう。事態に窮した彼らは人質を自分達の仲間に思わせようと、彼らの1人がはまっているアニメ「スペーストラベラーズ」のキャラに人質を割り振り警察かく乱を目論む。そしていつしか犯人達と人質達との間に仲間意識と友情が芽生えはじめていく・・・、といったストーリー展開でした。

 最初は本当に面白かったです。犯人が犯人ぽくなくてまったく悪びれてなくて、そのため人質も最初から気楽な感じで犯人に接していて。
 俳優も豪華で、犯人役に金城武、人質役に深津絵里、筧利夫、鈴木砂羽(この人は「相棒」の亀山夫人ですねけっこう前から出ていた方だったんですね。私がこの人を始めて知ったのは「新撰組!」の明里でした)、そして元軍人でテロリスト役に渡辺謙といった具合です。

 でもラストがなんともいただけなかったです
 ここまでコミカル路線で来たのに、なんで最後で殺しちゃうんでしょ。「ありえない展開」でけっこうなので彼ら犯人は生かしておいて欲しかったです。そうすれば後味すっきりの映画になったのに残念です

 ところで劇中で放送されていたアニメ「スペーストラベラー」を一本別作品で制作していたのにはびっくりでした。こちらはちゃんと大団円で良かったです

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勘違いされそうな邦題(2)「ピエロ・ル・フ」

2006-12-05 19:26:40 | 映画
 現在この映画の邦題は原題の音読み「ピエロ・ル・フ」なんですが、私が映画館で見た当時、この映画のタイトルは「気狂いピエロ」だったんです。ま「PIEROT LE FOU」の訳そのままなのでタイトルの「勘違い」は正確には当てはまらないんですが、きっとこのタイトルそのままこのブログタイトルにしたらNGワードで新着に乗らないかもしれません(以前タイトルに「残酷」と入れたら×でした)。
 監督はマニアな人気を誇るジャン・リュック・ゴダールです。
 ストーリーはジャン・ポール・ベルモンド扮する男がアンナ・カリーナ扮する謎めいた女に唆されて転落の道へまっしぐらに進んでいくというもの。
 
 特に印象に残っているのは美しい「原色の風景」と、きれいな「引用」。シビアで観念的で判りにくいストーリーに比べて、景色はわかりやすい原色が多用されてました。「赤い布」「黄色いダイナマイト」「顔に塗った青いペンキ」「緑の草原」・・・
 「引用」はパンフレットを見て初めて「引用」と知ったのですが、ベルモントのモノローグシーンで使われた「ベラスケスの光」の話とか、ラストの詩とか、なんか雰囲気たっぷりで大人な気分で映画館を後にしましたっけ(私は影響をモロ受けやすいタイプなんです)

 余談ですが、当時好きだった小説、平井和正の「狼男」シリーズの犬神明の容姿の引用によくベルモントが使われてましたので(曰く「痩せたジャン・ポール・ベルモント」)、私の中で「=大人なヒーロー」的なイメージが固まっていたかもしれません。

 ラストの詩はランボーの「地獄の季節」の一節だそうです。真っ青な海が広がる風景に死んだ2人のモノローグで
 「みつかった!
  何が?
  永遠が!
  海に融けこむ
  太陽が!」
のセリフでFIN
・・・かっこ良かったなぁ

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「草迷宮」・寺山修司

2006-11-29 16:13:34 | 映画
 寺山修司作品を始めて見たのは実家のNHKBSで「田園に死す」でした。なんかものすごい衝撃的な映画でした。意味不明な舞台装置に意味不明な登場人物。それでいて意味深なセリフと設定。音楽もものすごく印象的で(ある意味音楽が個人評価で50%くらい占めてます)、ニコウ(今のアルタ、確かニコウだったと思いますが違っていたらすみません)前のラストシーンはすごかったなぁ・・・
 寺山修司の代表作としてその後も1-2回放送されDVDにダビングすることができてうれしいかぎりです。
 そしてつい最近、寺山修司の最後の作品「さらば箱舟」もスカパで放映されました。それ以前から好きだった「百年の孤独」をベースにした話で、こちらも良かったです。
 私がファンになったのは遅ればせながら丁度寺山さんが死んだ直後だったのではと思います。なので舞台は一度も見ていないのですが(「万有引力」の方は何公演か観ることができました)、映画館で「実験映画」が上映され見に行くことができました。
 ただ、短編が中心でR指定されるような内容のものもあったので、その後テレビで放映されたという話は聞いていません。
 その「実験映画」の中の目玉と思われる作品が「草迷宮」でした。原作は泉鏡花で現在の自分(青年)と過去の自分(少年)と母親が同一時間上(あるいは回想)で交差していく話でした。
 3日連続での出演になりますが、主演の1人・少年役は三上博史で、青年役は若松武(「相棒」がらみで注釈するとseazon2「消えた死体」にサラ金社長で出演していた方です)でした。
 結局少年は母親に殺されてしまうんですが、とすると今いる青年は?となかなか複雑怪奇な話でした。映像も原色が多用され、妖怪変化が跋扈してにぎやかな映画でした。
 でも昔のことなのでストーリーもかなりあいまいになってしまいました。できればもう一度、じっくりゆっくり観たいものです。
 「草迷宮」どこかで(できればスカパーで)放映されないかなぁと、切に願っています。
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「地獄に堕ちた勇者ども」

2006-11-19 14:31:56 | 映画
 我が家はスカパー契約をしています。観ているのはほとんど私だけなんですが、他に何も使っていないんだからいいよね
 「スーパードラマTV」と「時代劇専門ch」ははずせませんが、もうひとつお気に入りは「シネフィル・イマジカ」ちょっと古めの洋画専門chです。
・・・ちょっと古め、すなわち私が月に10本くらい見ていた時代に3本立て映画館で上映されていた作品が、ここで再び見られるわけです。

 古いまんがを2000冊以上所蔵していたり、gooレトロに惹かれたり、スパイ大作戦補完計画を実行中だったりと、過去に執着のない人にとっては(※うちの相方を代表とした)人生の貴重な時間の無駄遣いにしか思われない行為なんだろうなぁ、とは自覚してはいるんですが、こればかりはしょうがないです

 表題の「地獄に堕ちた勇者ども」も先日そのシネフィルイマジカで久々に観ることができた懐かしい作品のひとつです。
 あまりに有名なイタリアを代表するルキノ・ヴィスコンティ監督の代表作ですが(でも実は私はフェリーニ監督作品の方が好き)、当時はまったく知りませんでした。
 当時、美術予備校で浪人生をやっていた私は友達に誘われてこれと「ベニスに死す」の2本立てを授業さぼって見に行きました。・・・そういった意味でも思い出深い作品です

 主演は(一応)ダーク・ボガードだと思うんですが、ヘルムート・バーガー演じるマルチンに全部持ってかれたような気がしますが、どうでしょう。ロリコンでマザコンで最初の出番から女装で歌いまくり、最後は「ハイル・ヒトラー」で決めた新人俳優。さぞ衝撃のデビューだったと思います。
 時代はヒトラーが権力をにぎり始めてきた頃のドイツ。ルール地方の巨大製鉄会社の総帥が何者かに殺された事から、後継者をめぐって陰謀や殺戮が起きていく、という話です。聞くところによるとベースはシェイクスピアの「マクベス」らしいですね。
 2時間30分あまりの長編ですが、機会があったら是非みてください
 オススメです。

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勘違いされそうな邦題(1)「24時間の情事」

2006-11-15 10:58:46 | 映画
 80年代はまんがとMSXにあけくれてましたが、映画にもあけくれてました(こう考えるとやっぱり学生の時が一番時間がありましたよね)。
 と言っても時間はあってもお金はないので単館ロードショーなんて無理。3本立て800円の三鷹オスカーとか(今でも存在しているのかなぁ・・・)に通って月大体10本くらい見てました。
 見たい映画があれば2-3時間の移動なんて「へ」でもなく出かけてました・・・今の私の100倍くらいガッツがあったなぁ

 で、およそ5年くらいの間で見た映画の中で印象深かった作品について書きます。作られたのは1959年とえらく古いのですが、アラン・レネ監督の「24時間の情事」はとても良かったです。原題は「HIROSHIMA MON AMOUR(ヒロシマ・モナムール)」と言うんですが、併映の「去年マリエンバードで」を目当てで行った私はてっきり「ポルノ映画(今でもそう言うんでしょうか?)」だと思い込んでました。
 反戦映画の撮影に来たフランスの女優と日本人男性とのゆきずりの恋の話なんですが、次第に彼女の過去があきらかになってきて・・・というストーリー展開なんですが「ヌヴェールで気が狂ったことがあるの・・」というセリフが衝撃的でした。日本人男性役は故・岡田英次さんなんですが・・・外国人出演者達にひけをとらないかっこよさでした
 第二次世界大戦中敵国のドイツ兵と愛し合った事で村中から非難され丸坊主にされて地下牢に閉じ込められたという彼女の過去は現実のヒロシマの場面よりも強烈でした(「愛と悲しみのボレロ」でもそういうシーンがあった記憶があるんですが・・勘違いかな)。
 「人は忘れることによって生かされている」という気がする映画でした。
・・・・しかし、この邦題はもう少し何とかならなかったのかな

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