『 生産付加価値分析 』
今回は、「クロス分析チャート」を通じて経営トップへのアプローチを
研究します。
クロス分析について知りたい方は、弊社 http://www.c-farm.co.jp/ で
解説しています。
書籍「図解21チャートを活用した実践バランス・スコアカード」日刊工業
新聞社刊(好評発売中)では21枚の分析・戦略チャートを解説していますが、
4/22号から22,23枚目の新作チャートをご紹介しています。
■生産付加価値分析
製品を製造する部門においては、なるべく低いコストで、高品質のものを
大量に製造することが求められる。
しかし、企業活動の上では必ずしもこのような業績評価が有用であるとは
言えないのではないのだろうか。
企業活動の上では、当然のことながら売れる製品を売れる量だけ製造する
ことで製品在庫高を意識しつつ売上をあげる。
また、低コスト・高品質に製造することで粗利益率を上げつつ顧客満足を
得ねばならない。
この生産付加価値分析においては、在庫高およびコスト面からの視点を
製造部門に対する業務視点に導入することで、企業利益の更なる追求と
製造部門の意識改革を図ることを目的としている。
X軸:生産高
Y軸:製品在庫高
円の面積:製品別外部購入価値(仕入額と外注費の合計)
分析単位:製品
ベストポジション:第3象限
外部購入価値は付加価値分析の考え方で定義されているが、部品や材料などの
仕入額と外注費の合計である。生産高(期間内の製造原価)を投入して、
製品在庫高を出来るだけ少なくして売上に計上できたかを判断する。
売れる製品をどれだけ一定期間に生産できたかが業績評価のポイントになる。
その際、生産高に外部購入価値が含まれるが、生産高に占める外部購入価値の
比率が少ないほど内部の生産付加価値が高まる。
・生産付加価値=生産高-外部購入価値(仕入額と外注費の合計)
の関係を基に分析をする。
以下に各象限ごとの戦略を示す。
【第1象限】
当月生産高>当月売上高の場合、月初製品在庫高<月末製品在庫高になる。
在庫高を適切な範囲内に押さえるためには、月初製品在庫高と当月売上高(予定)
から月末製品在庫を見越した生産量を設定しなくてはならない。
この象限に位置する場合は、月初製品在庫高と当月売上高(予定)に対応した
生産量が計画されていないといえる。
製品の売上高の推移をライフサイクルの上で将来に向かって把握した上での
計画生産高を設定する業務システムの導入し、計画生産高を減らして製品在庫高を
圧縮する必要がある。
また、この象限で外部購入価値(仕入額と外注費の合計)が大きい場合は生産高に
対して仕入・外注費が多いと判断できる。換言すれば外部購入価値の比率が大きい
場合は取引先の仕入分を月末製品在庫分として抱え込んだことになる。取引先との
関係の見直しを検討することも視野に入れておくべきである。
【第2象限】
製品在庫高が高いため、第1象限と同様に「当月生産高>当月売上高の場合、
月初製品在庫高<月末製品在庫高 」の関係が成り立つと考えられる。計画生産高を
減らして製品在庫高を圧縮する必要がある。
ただし第1象限に比べて生産高が大きく、売れ筋商品分析などの営業環境に
注目するより生産性を重視したプロダクトアウト指向(生産したものを販売する)
に陥っている可能性がある。その場合は、将来に向けて顧客を獲得していくために
顧客ニーズを重視し、如何に売れる製品を作るかというマーケットイン指向への
変革が重要である。
【第3象限】
生産高が増え製品在庫高が減るベストポジションである。
「当月生産高<当月売上高」つまり「月初製品在庫高>月末製品在庫高」の
関係が成り立っていると推測される。計画生産高を設定する際に売れ筋情報を
的確に盛り込むことができていると考えられ、マーケットイン指向への変革が
進んだ結果であるとも言える。
製品のライフサイクル上では成長期に当る製品に対して計画生産高を適切に
設定できている状態であるが、製品別利益貢献度分析を参考に衰退期へ入る
時期の見極めを行うことが重要である。
【第4象限】
製品在庫高が減っているため、第3象限と同様に「当月生産高<当月売上高」
つまり、「月初製品在庫高>月末製品在庫高」の関係が成り立っていると言える。
戦略としては第3象限と同様、継続したマーケティングによるライフサイクルの
把握が必要である。
その場合、生産高も低いにもかかわらず製品在庫高が減っており、既に衰退期に
入っている製品であるとも考えられる。
以上