日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

正解は、こちら。

2006年09月18日 | 五行歌な日々
コメントを下さったみなさま、ロムされて、少しでも考えてくださったみなさま、お付き合いくださり、ありがとうございました。

正解は、歌B(下記記載)・状況B(ケータイの方、この写真です)です。


         スプーンの上に
         お砂糖を
         入れ足してしまった
         雪をかき分ければ
         死体のごとく横たわってて


     ★

歌Aの「入れたしちゃったっっ」を最初に送った翌日、
このブログについている、「gooメール」というので、
歌を送ったのだが、
いつもとアドレスが違うので、
芦屋歌会の歌を集めている須賀さんが、
歌の受け取りの電話をわざわざ下さった。

それまでは、
この歌については、なんとも思っていなかった。

が、

「どんな歌だったっけ?」と、
放火犯が、まるで現場に戻ってくるような気分(なのか?)になって、
送信した歌を見てみると、

「『入れたしちゃったっっ』で、
十分あわてている感じが出ているのに、
『あわてて』って言葉入れるか?
それに、この『死体発見』も、
あわてている割には、
かえって落ち着いているような気もするし。
それに、最後の体言止って、
よくあるパターンて気もしてきたぞ」

と、ぐらついた。

で、この歌でどういうことを言いたかったんだろうか、
と改めて考え直していくと、

・お砂糖の中にスプーンが埋もれて、それが、
 「雪の中に死体」に見えたのが面白かった。
 (だって、スプーンが仰向けに寝ている人に見えたんだもん……)
 そのギャップを自分でクスクス笑ったように、
 人にも無理なくクスクス笑っていただきたい。

と、

・その「雪の中に死体」を見た瞬間の瞬間の瞬間の……
 の一瞬の錯覚の「真空」を、
 切り取りたい。

なんだけど、
推敲後の、
提出した歌Bでは、特に後者の方を意識して
五行目に「横たわってて」が出たので、
「こっちにしよう」と決めたんだけれど。

並列して読み比べると、
ひとつひとつの言葉がどうとかいうよりも、
五行のカタマリとしてみた場合、
「入れちゃったっっ」のほうが、いいですね。

これは「葉にこだわって、森を見ず」という、
推敲の典型的な失敗(笑)

そういえば、「実際に声に出して読み直す」といった、
推敲の最終手順を、今回は(それこそあわててたので・笑)
サボったことを思い出す。

これをやっていたら、「ま、いっか。こっちで」
と、推敲しなおしはしなかったかもしれません
(まぁ、わかんないけど、確率は高かったと思います)。

歌会でも、
「前の歌のほうがいい!」と思ってくださっていた、
須賀さんの計らいで、
「入れちゃったっっ」の歌も、
ホワイトボードに書いて下さったんだけど、
「そのほうが意味がとおる」と大半の人が仰った(笑)

また、増田幸三さんが、
「『横たわってて』のほうになると、
まさに、死体が装束を着ているようで云々……」と
仰っていたのも、印象に残った。

(純ちんの言ってた、『雪』という比喩のスンナリ度も、深くうなづきました)

人に言われたからということで、どうこうって訳じゃないけれど、
ちょっと反省。

もし、歌誌の方に送るとしたら、
『入れちゃったっっ』のほうにするか、
もう少し寝かせてから、
見直すことになると思います。

私と歌との間の対話が、もう少し必要でした。

     ★

次に状況のお話。

推敲しなおした歌を送った後、
夕方に須賀さんは、
今度はケータイのメールで、作品の受け取りを、
連絡してくださった。

そこで、「前のほうが好きだなぁ~」に始まって、
2,3度メールのやり取りをしたのだが、
最後に「死体が何か楽しみ~」とあって、

「あれ?死体はスプーンなんですけど~」と、
胸の中でつぶやいた。
歌会で言えばいい話だ、と思ったので、言葉にして送らなかった。

(ちなみに、歌会当日の朝に、
「死体はスプーンですね」と須賀さんからメールがありました)

で、実際の歌会。

点数を入れてくださった方々は、
歌を読んで、私と同じ状況の解釈をしてくださってたのだが、

須賀さんが、状況Aのような解釈をお話されたとき、
今度は点数を入れなかった方々が、うなづいて。

つまり、
「調味料容器で起こった事件(?)」とは、
思っていなかったご様子で。

驚いた。

こういう歌って、成立する前提に、

「こういうおっちょこちょいって、
誰でもしやすい、おっちょこちょいだよな」

という認識が必要だ
(だから、いなもとさんのコメントには勇気付けられました・笑)。

ところが、
須賀さんは、
「お砂糖を入れ足すときは、ついでに、
中のスプーンを取り出して洗う派(?)」なのだそうで、
習慣的に、スプーンが埋まるということは、
起こりえないことなのだそうだ。

……私は多分、洗ったことない。そのスプーン。

主婦的に新鮮な習慣(笑)

他の芦屋歌会の人たちも、
「洗う」とか「洗わない」とか、
ごちゃごちゃと私語が飛び交って。

黒一点の増田さんだけが、
状況を見渡しているといったような感じで(笑)

だから、私は、
「スプーンの上に砂糖を入れ足してしまった」という言葉の中の、
特に「入れ足す」という言葉(行為)で、
「調味料容器」という言葉を入れなくても、
「調味料容器」が思い描けるだろうと思っていた。

「つぎ足す」とは言ってないんだし、と思っていた。

が、
そういうおっちょこちょいがありえない人には、
私の歌の言葉では、

例えば、
調理の過程じゃなくても、
コーヒーのスティックシュガーを、
固定的に持ったスプーンの上(匙)に
だばだばだばっと、入れるような、
状況の画(構図)になったようで。

(だから「死体」がなんのことだか、わからなくって、
点数が入れられないってことになって)

……面白い。面白すぎる。

ひとりひとりの性格が反映される。

お砂糖とスプーンを鏡に、
芦屋歌会の人々が、
それぞれにご自分の台所風景に思いを馳せて、
照らし合わせていた姿が、キラキラしていた。

そういう人たちを見ながら、
歌の解釈が合う合わないとか以上の、
歌が書けることと、読んでもらえることの、
シンプルな幸福さを味わっていた。

面白かったです。

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6 コメント

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入れ足すとつぎ足す (須賀知子)
2006-09-21 09:50:52
キーワードはこのタイトルなんだけど、ちょっと待ってね(笑)

まず、最初の提出歌が来た時に、「入れ足す」に少々?だった。だけど、私の中では「お砂糖、」の「、」が正に入れようとする寸前の絶妙の間だし、「入れ足しちゃったっっ」はあわててるというよりは予想外の驚きみたいに取れて、「あわてて・・」にスムーズに且つスピード感を持って繋がり、意外な結末へと・・という感じでした。

沙久良湖さんが仰るように、写真でみればおかしいって思うのですが(笑)そこは言葉で来てるので、おおっ、ミクロの世界でのことか!!って受け入れ状況が自分のなかで出来上がっちゃった。ウィ~ィ、ヒック、ヒック

死体を何だと思ったかは恥ずかしいから聞かないでネ(笑)



歌の解釈はさておいて、AとBの歌を受けた時の感覚はこんなだった。

さあ、稲田劇場の始まりだよ~って感じで幕開きを待ってるわくわく状態だったと思ってくだされ。だって

キッチンにいて銀河を見せてもらった観客としては、

期待しますよ(笑)

それが、差し替えが来て、止め止め、さぁ~お子ちゃまは帰った帰ったって言われてるような感じになっちゃったんだから(ってどんな出し物やねん・笑)つまんな~い。って気持ちが、ついね、Aの歌の方が好き

って言わせてた。



ごめんなさい、しばしお休みを・・・
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は~い◆\(^○^)/◆ (いなだっち)
2006-09-21 14:09:32
はい。どうぞ、ご自分のペースで、
返信する
入れ足すとつぎ足すⅡ (須賀知子)
2006-10-01 07:14:12
ただいまぁ~。ようやく消滅事故の傷も癒え(笑)

戻って参りました。

さて、もうお解かりのことと思いますが(笑)、私は、写真Bのような状況を「つぎ足す」と言っています。「入れ足す」という言葉を使うとすれば、写真Aのような状況かなと・・。お塩でもお砂糖でもお醤油

でも、まだ残っている状態で足す行為を「つぎ足す」

と言ってますねぇ。



お塩やお砂糖がベタついてくるのが嫌なので、きりのいいところで、調味料入れもスプーンも洗います。食卓用の醤油差しも使いきって洗いたいけれど、夫婦喧嘩の口火になりそうで、がまん、がまん(笑)

でも、レンジ台なんかはベタついてて当然と思ってるからベタついてるのよん、勝手なもんだ(笑)



勝手といえば、歌会のプリントにも思い入れがあってね(笑)。その思い入れを遂行したいがため(大袈裟・笑)稲ちゃんに「死体はスプーンね」とメールしたようなもので・・。AとBを書いて並べた時点で謎は解けたのだけど、歌会で、稲ちゃんの歌に私が「ちょっと一言」と言うに決まってる。その後の展開はどこまで行く???

稲ちゃんの歌をラストにすれば何の憂いもないのだけれど・・私の久々の思い入れは・・せめて、私の言いたい分を端折って時間稼ぎと。端折ったことになっていたのかどうか、ハハッ



初秋の桔梗の歌に始まって、晩夏に詠まれたトマトで終わる。いかがでしたか?



っとまあ、それこそかなり端折った感じですが、こんなところでしょうか。

去っていった文字は日々に疎しで・・・







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入れ足す・つぎ足す・書き足す(笑) (いなだっち)
2006-10-02 09:52:03
まず、昨日の東大阪歌会、

雨の中、ありがとうございました。



その歌会でも、この歌のお話は、

脱線のお話の中でも、

させてもらいましたが、



「入れ足す・つぎ足す」微妙ですね。うふっっ!



解釈が一致する、一致しないということよりも、

ほんの少し方向性が違う動作にも、

別々の言葉があてがわれているということの、

面白さを、不思議さを、

この一首をめぐって、学べたなぁ~と思います。



「そうじゃないんだ。そうじゃないんだ。

じゃあどういえばいい」



そのもどかしさが、

言葉を派生させていっている。

その原始的なルーツを垣間見た気分になりました。



それから、主婦の生態も(笑)



「料理をする」と、ひとくくりにはできない、

個々人の、こだわりや、大雑把さ(笑)がわかって、

芦屋歌会の方々の反応を見ても、

とても豊かな気分になりました。



それにしても、

歌会の歌の順番にも、ドラマが(笑)



初秋で始まり、トマトで終わるには、

気づかなかったなぁ~(笑)



でも、いつもいつも、

須賀さんの歌会プリントには、

何らかの仕掛けがありますよね

苦労されながらも、

楽しんでる感じが、

その仕掛けをばらすときにあふれてて、

こちらまで、ニコニコしてしまいます。



今度の歌会は、1周年の記念歌会。

準備が大変でしょうけれど、

体には、くれぐれも、気をつけてくださいませ。

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書き足す・書き足す・笑い足す (須賀知子)
2006-10-11 16:20:35
東大阪歌会、久しぶりに楽しかった~。

おしゃべりは言うに及ばず(笑)ここって、提出歌の未消化な部分を確実に言い当てられてしまう、それがかえって心地よい歌会ですよね。そして話し合うなかで、感覚が言葉に置き換えられていくのを味わえて、なかなかにグッドなのです。

さあ、芦屋記念歌会も間近。二次会の場所も決まり、あとは歌だけ(ってこれが一番の難問ですわ・笑)

 そうそう、歌といえば一人歩きしていくものだけれど。稲ちゃんのこのAの歌、初めてお料理をする、あるいはお菓子を作ってるカワイイ女の子の歌に思えて仕方がないのよね(笑)

作者はぶっ飛んでしまって・・・(いろんな意味でごめん・笑)

 それでは、歌会、楽しみにお待ちしています。

芦屋だから、絶対に晴れ!!



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足す足す・だす。 (いなだっち)
2006-10-12 09:49:29
あ、今、芦屋歌会の歌送りました



いいです。いいです。

歌は、人に見せた瞬間から、

半分以上は読み手のものです。



砂糖の中に人がいようと

作者以上に初々しい女の子が言っていようと



今度の歌会は大人数ですね。

皆さんの歌と、

歌の並び方と

楽しみにしています。



晴れるんだったら、着物着ようかなぁ~

今度は袷で
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