日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

稲田「区準(苦渋)」子

2006年09月26日 | その他の日々
奈良歌会へは、高校や大学へ通っているときに使っていた、
近鉄線で行った。

と、ここで、筆名の話に一気に飛ぶ。

     ★

筆名の「稲田準子」の「準子」の部分は、
この近鉄線が関係している。

私の最寄り駅は、電車の準急が止まる。

が、高校の最寄り駅は、
各駅電車しか止まらない駅。

ある日、
高校へ行くのに間違えて、
準急に乗った。

もちろん、高校の最寄り駅をスルーして電車はいく。
スルーして、奈良と大阪を隔てる山を登っていく。

登った先にある駅に着くまでに
車窓から見える大阪平野の景色は、
とてもインパクトのあるもので。

それ以来、
一時間目が、数学だったり、英語だったりした場合、
わざと準急に乗って、
学校をサボったりした。

で、遅刻して行って、
その度に友達に、
「いやぁ~間違えて、準急に乗ったんで」
と、わざとらしく言い訳しているうちに、
「準急の準子」とふざけて呼ばれるようになった。

だから、私にとって、「準子」の「準」の字には、
「次点」という意味合いのほかに、
「休む・サボる」の意味合いが込められているんだけれど。

もう、20年近く、その名を名乗っている、
親しみ深い名前である。

……と、ネタフリをはさんだところで、
奈良歌会へ向かう途中の話に、場面を戻まして。

     ★

近鉄の駅のホームへ上がったら、
準急は行った後だったようで、15分待ちだった。

……いや、「準急」とは書いていない。
「区準」となっていた。

区準!?なんじゃそりゃ!?
そんなもん、今までなかったぞ!?

あたりを見回すと、停車駅が書いてある表を見つけた。

「区準」とは「区間準急」のこと。

なんと、私の最寄り駅の次に、
いくつか飛ばした後、
私の通っていた高校の最寄り駅に止まって、
そこから以遠の奈良駅まで、各駅停車になっていた。

なんですと!?

また、「区準」とは別に、
ちゃんと「準急」っていうのもあったけど、
それでも、
「準急」は、私の高校の最寄り駅に止まって、
しばらくまた飛ばして、山のふもとの駅に止まるようになっていた。

なんですと!?

     ★

高校の頃、
準急やら、急行やらが、
自分の最寄り駅に止まるかどうかというのは、
住んでいるところが、都会かどうかの、
目安になったりしていた。

ステイタスシンボルになっていた。

だから、奈良と大阪を隔てる山手に住んでいる子と、
「や~い、田舎モン!」とか、
「準急程度で、言われたないわ!」とか、
そんな会話を飛び交わせていた。

その感覚が、体に染み付いているもんだから、
「区準」の、停車駅を見ていたら、

「うわ~、うちの最寄り駅、格下げになってしもうた……」

と、愕然とした。

また、「区準」も「準急」も、
高校の最寄り駅には止まることを知り、

「なんかわからんけど、く、屈辱的……」と思ってしまう。

高校でバンドを組んでいたとき、
高校の最寄り駅が、
各駅しか止まらない駅であることを茶化して、
ある歌の替え歌を作って、歌っていたことだとかまで思い出して、

「へ、変なことまで思い出させやがって!!
バッファローズを売るだけじゃ、まだもの足りんというんか!?」

と、顔を赤くして、逆恨みまでしてしまう始末。

それに、

「これが、20年前にあったら、
あの時、遅刻せんですんでんやんか!?」

と思ったり、まぁでも、

「サボることを学習しない、まじめすぎる高校生になっていたか……。
それも、息苦しい話やなぁ……」

と、思い直したり、さらに、

「『準子』と呼ばれることもなかったんかも……」

と、進んで、うなってしまった。むむむ……。

実に複雑な気持ちだ……。

     ★

あれこれ思っていたので、
15分はあっという間だった。

「区準」に乗る。

しばらくすっ飛ばした後、
何年かぶりに止まった、高校の最寄り駅は、
「ケンタッキー」をはじめとする食べ物屋さん関係が
駅前に進出していたりしたけれど、
やっぱり垢抜けていなかった。

高校生ラグビーの聖地らしいけれど、
甲子園ほどパッとしない。

そこから一駅ずつ、山の手に向かって止まっていく。

その駅に止まるたびに、
同級生のどの子が住んでいたとか、思い出したりもして。

今はどこにいるのやら。年賀状の付き合いさえなくなった。

「準急の準子やぁ~!」と、最初に呼んだ子なんて、
どこに住んでいたかすら、思い出せなかった。

自分の薄情さを思い知らせるように、
電車はひと駅ひと駅、踏みしめて、
奈良へ奈良へと進んでいった。

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