北岸にて 〜 シドニーの北郊・ノースショアから想う日本のこと、世界のこと。

〜シドニーの北郊・ノースショアから想う日本のこと、世界のこと。

パシフィック・ハイウェイ

2020-06-28 20:03:18 | 日々のこと
昨晩、Youtubeの動画を観ていたら、「移動時間は人生の中で生産性がもっとも低い時間だ」ということを評論家の勝間和代さんが語っていたので、つい見てしまいました。

確かに移動中はアクセスできる資料が限られてますし、家でできるようなアウトプット作業ができませんから生産性が低いと言われればそうなんでしょうね~。でも自分の日常から移動時間がなくなってしまうと、毎日の生活が味気ないものになるだろうなーとも思ったわけです。自分にとって移動時間というと通勤時間ということになりますが、家を出て車を走らせれば違う風景が目に入って眠気も覚めますし、仕事に煮詰まった後でも、ランチ休憩で外に食べにいけばいい気分転換になります。運がよければ会社帰りにビルの間からきれいな夕焼けが見れるかもしれません。ですからこの時間がなくなると正直、精神的にはキツいだろうなーとは思いますね。

今住んでいるマンションはパシフィック・ハイウェイ(Pacific Highway)沿いにあります。ハイウェイと名前がついていますが、高速道路ではなく日本の国道のようなものです(こちらでは高速道路はMotorwayと呼ばれます)。この道路沿いをシティーレイル(市電)も走っていまして、駅周辺にある商店街など脇に見ることができます。駅から吐き出されてきた通勤客や小中学生などが大勢で道を渡ったりするようなとても生活感がある道路なんですね。それで自分も仕事帰りに路上駐車して、駅前のサブウェイでサンドウィッチやローストチキンなんかを買ったり。。。なんとなくこういう日常の風景を見れることで正気を保てるってこともあると思うのです。


昔、こちらに来たばかりの頃、ある友人が、このパシフィックハイウェイをずっと北に行けばブリスベンまで行けるんだよ、と教えてくれたことがあります。えーこんなに生活感のある道路なのに、ブリスベンまで続いてるんだ、と驚きました。クィーンズランドの州都ブリスベンまではおよそ1000km近くありますが、そんなに遠くまでこの一本道で行けるとは。。。仕事帰りでもそんな風に考えただけで、旅情を誘われて気分が良くなります。そういうのを考えると、やはり自分は移動時間というのも大事にしたいと思いますね。



本能寺とラブホテル

2020-06-21 19:03:14 | 旅の雑感
大河ドラマの「麒麟がくる」の放送が一時休止とのニュースを聞いて、思い出したことがありました。

去年京都を旅行した時に、亀岡市にある湯の花温泉の旅館に滞在しました。予算がタイトだったので、ウチの家族の中で京都観光と温泉と2つのニーズを同時に満たすにはどうするか知恵を絞った結果、京都市内での宿泊をあきらめ、周辺の温泉宿に滞在しながら、市内へはレンタカーを使って観光しようとなった訳です。とくに日本風の情緒のある貸し切りの露天風呂があるという条件で見つけたのが、湯の花温泉でした。

予約を入れてから温泉地の周辺をいろいろ調べてみると、この亀岡の地というのは明智光秀が織田信長を討つべく、全軍を本能寺に向けて出陣させた所だったのですね。今からおよそ400年前に光秀は亀岡を出発し、沓掛の別れ道から西国ではなく京都に向けて軍を進め、夜明けとともに本能寺の信長を急襲したわけです。旅程は午後の新幹線で京都駅に着き、レンタカーを借りてこの明智軍のルートのほぼ逆を辿って亀岡へ行くというものでした。当日、実際に車を走らせてみるとよく晴れた京都の街は平和そのもので、血なまぐさい400年前の事件を想像させるものは何もありません。国道を走っているとセブンイレブンやらケンタッキー・フライドチキンなどのチェーン店が目につきます。それらを横目にみながら、桂川を越える頃まではシドニーの街を走っているのとそう違いはありませんでした。

しかし沓掛を過ぎて、老ノ坂峠へさしかかる頃には、山の木々が夕陽をさえぎるようになり、道にも暗い影が落ちるようになります。寂れた道路脇のラブホテルを何軒か過ぎる頃には、気分が深夜の峠を進軍していた兵士の気持ちに寄り添うようになりました。明智軍の兵士達にも妻や恋人がいたことでしょう。そして戦場に出かける前には、その若い男女が別れを惜しむように抱き合っていたことでしょう。村上春樹の小説の中にもある兵士が死を目前にして、「出征する前に一度だけ抱いた女性のことを思い出しました」というような一節があります。女性の中にはよく「あの男は私とは遊びだったのよ!」みたいに言う人がいますけれども(笑)、男にとってはどの経験も死ぬまで心に残るものだと思います。話がそれましたが、その古く寂れたラブホテルが、明智軍が通った峠の道にあることがとても自然に思われたんですね。

そしてその暗い気持ちは、田園風景が広がる亀岡に入っても続きました。暗い気持ちといっても、悲壮感というと少しニュアンスが違います。ただ戦国時代からあったであろう里山やそれに囲まれた田畑を見ると、むかし人々が「一尺五寸に切った火縄」の銃を担いで京都まで歩き、そこで生死を賭けた合戦をしていたということが、なんとなく事実として腑に落ちるというだけです。



車中で過ごす

2020-06-14 17:15:13 | 日々のこと
家では集中できないという話は、前回しました。
それでここ2,3か月のコロナの期間中はどうしていたかというと、車の中で過ごすということが多かったです。車の中にさえいれば、他の人との接触はありませんから、感染の心配はありませんね。買い物の後で、家族を家の前まで送ってから自分の気に入った駐車場に車をとめて、時間を過ごすというのが休日のルーティーンになってました。
車を止めてから、近くにあるセブン・イレブンに行って冷たいアイスコーヒーを買い、車内に戻ってそれを飲みながらYoutubeやNetflixにある映画を観るというのはとてもいいです。2ドルと安いですが、このアイスコーヒーがまた暑い日はとてもうまいです。一度、読書をしようとしたんですが、うまく集中できませんでした。僕の場合、読書は午前中でないとはかどりません。特に難しい本なんかをじっくり読んでいくのは朝のうち、嫁がまだ寝ている8-9時くらいにするようにしています。家で唯一集中できるとしたら、この時間だけですね。逆にYoutubeや映画など早口のセリフを聞き取ったりというようなことは、午後のほうがしっくりきますね。頭のエンジンがかかるのが遅いのかもしれません(笑)。考えてみれば、仕事でも難しい案件を腰をすえて処理するのは午前中で、顧客への電話や細かい打ち合わせは午後にするようにしてますね。朝一番に、電話とかemailから仕事を始めると、どうにもリズムに乗れないです。こういうのは人それぞれ違うんでしょうね。
下の写真は、気に入っている駐車場のひとつでマッコーリーセンターの屋上の駐車場です。運が良いときは、このような夕焼けを見ながら車中で過ごすことができます。ウイルスの影響で、駐車場は無料で何時間でも駐車できる状態です。

最近は寒くなってきたので、マクドナルドのホットコーヒーを選ぶことも多くなりました。



カフェが再開

2020-06-08 12:05:51 | 日々のこと
コロナ禍によって閉店していたシドニー市内のレストランやカフェが先々週から再開しました。

昔から家でのんびり過ごすのは好きですが、集中して何かをするのは家の中では苦手です。苦手というより出来ないといっていいですね、家ではなぜか集中できません。ですので勉強したり映画を集中して見るようなことは、もっぱら図書館や近所のカフェでするようにしてきました。自分では不便な性格だとは思います。家には座り心地の良いテーブルと椅子もありますし、お気に入りのエスプレッソポットでコーヒーを入れることもできます。それをわざわざ着替えて、学生の時なんかは重い辞書をバックに入れて外出しなければならなかったわけです。

大学の時は4年間京都で過ごしましたが、夏は暑かったですねー。その中を重いバックをカゴに入れて自転車で図書館に行くわけですから、よくやったと思います。それで試験勉強の合間に'The Bridges of Madison County' (マディソン郡の橋)を原文で読んだりして、途中から勉強よりもこの小説を読み終えることが目的になってしまい、試験が終わっても図書館に通いました。原文で1冊読み通したのはこれが初めてでしたね。

こういうわけで静かで居心地のいいカフェや図書館を見つけると言うのは、自分にとっては大げさに言うと喫緊の課題と言うことになります。シドニーに来たばかりの頃は、カフェの椅子が木製やプラスティックばかりだったので困ったことがありました。今考えてみると、お客の回転率を上げるため椅子はわざと固くしなさい、とかいうような経営論が既にあったんでしょう。資本主義が行き過ぎても困ったものです(笑)。贔屓にしているカフェでは、コーヒーのほかにケーキなどを一品オーダーしていますし、長くいても2時間くらいですのでなるべく迷惑な客にはならないようにしているつもりです。

ちなみに日本で1番多く通ったコーヒー・チェーンはルノアールです。椅子の座り心地、ひじ掛けの柔らかさ、メニュー構成、内装のシンプルさ、そして何よりもあの落ち着いた雰囲気。。。特に自分が通っていた駅東口にあった店舗では、初老の男性が調理から会計、カップを下げるところまで1人で切り盛りしてらしたのですが、物静かで手際が良くとても感じが良い方でした。将来こういうカフェのオーナーになりたいとさえ思ったくらいです。スタバは自分には少し混みすぎている気がしますね。

と言うことで今週末はカフェに行ってきました。まだ人数制限等ありますから、長居はせずランチだけで済ませました。図書館が再開するのはもう少し先のようです。