続・退屈シノギニ…

どっかの日記のサイトの続きから発展したような主として簡素な感想文等

「800」(川島誠)

2005-10-31 22:22:58 | 読書
数年前から、やたらと角川文庫が少年少女達にプッシュしてるみたいなので
気にはなっていた。

で、今年の文庫百選にも選ばれてたので読んでみることにした。

青春小説。
対照的な2人の高校男児の一人称で交互に語られる話。

陸上競技である800メートル競走が核となる。
スポーツの爽やかさ、快感の描写は経験者ならではの筆致。
加えて、恋や愛やらセックスやら生きる上での哲学的要素やらの
小説では避けれないトピックスの数々。

また湘南に行ったことがある方ならば、
湘南を舞台にしたこの小説が、さらに良く思えてくるだろう。

あとがきを読めば分かると思うが、
この小説は作者の経験が多く含まれているのだろう。
その分、陸上にも湘南にも彼の思い入れが良い意味で現れている。

中高生が夏休みに読んで悔いることは決してない、
様々なトピックスが濃縮された好小説。

それ以上の人が読んだら、さすがに切なくなって寂しくなってしまうかも。

「下流社会 新たな階層集団の出現」(三浦展)

2005-10-29 19:14:00 | 読書
最近の日経ビジネスも日本における階級の分離を煽ってるが、
よく行く本屋も、この本をプッシュしまっくてるので久々に新書を手にした。

まあ、最近言われている日本において大部分を占めてきた中流階級が
上流と下流に分かれていく。
それも中流階級が減り、その分が下流階級へと流れていくって話。

正直、この本に言われなくても街中を歩いてたらそうなると思う。
その加速スピードがどうであれ、すでに大衆(マス)なんてものは分断化してる。
階級だけでなく価値観まで多様化してるから、マーケティングも大変です。

本書では、データを駆使してそういう分析をしてますが数字の羅列がウザい。
ってか薄っぺらい。あんま意味をなさない気さえする。

最初と最後、あとがきを読めば大意が掴めます。
ただコラムは面白かった。
作者がバカにしてる「SPA!」とかに載っててもおかしくない感じだけど。

あと筆者一押しの「ドラゴン桜」がモーニング連載じゃなくて
ヤンマガとかに載ってたら、もっと下流社会の人々への啓蒙になるのに…。
筆者の訴える東大無料化という対策よりも現実的かと。

「猟奇的な彼女」

2005-10-28 17:13:50 | 映画
いやあ、良かった。
「僕の彼女を紹介します」よりも話もストレートで面白かった。
ヒットした理由が分かります。
テンポよくシーンが変わるから、退屈なところが無かった。

そして主役の女の子を演じるチョン・ジヒョンがかなりカワイイ。
彼氏を引っ張りまわす女の子を好演してました。

あと、随所に笑える場面があったのも特筆すべき点。
一番笑ったのは、地下鉄内での軍隊が行進してくるシーン。
思わず笑ってしまった…。

「凍える牙」(乃南アサ)

2005-10-27 17:06:01 | 読書
直木賞らしいし、ミステリーぽいので手に取る。
話はやや長い印象を受けるが、文章は読みやすかった。

警察と言う男社会の中で奮闘する女性刑事と、
その相棒となった中年男性刑事の2人の視点が交互になりながら
物語は進んでいく。

ただミステリーと言うよりも、警察と殺人事件を舞台にした
人の内面を描くことに力を入れた小説のような印象を受けた。

ゆえに宮部みゆきや横山秀夫や高村薫とジャンルがかぶってくるが、
彼らの代表的な小説には劣る気がした。

そこは動物をテーマに絡ませたのが敗因か。
あそこで主人公と動物をシンクロさせるとリアリティーに欠ける気がする。
どうしても読めと人に薦めれるものではない。

「インファナル・アフェア」

2005-10-23 23:25:45 | 映画
ずっと前からの話題作であり、
取り敢えず第一作をDVDで借りてきて見る。

話は言うまでもなく、
マフィアなのにスパイとして警察官になった男と、
警察官なのに潜入捜査のためにマフィアになった男の話。

冒頭の導入部分が分かりにくくて、
「うん?」って感じになるが、
上記の物語設定を知っていれば何とかなる。

あとは複雑に絡む(まあそれほどでもないのかも?)ストーリーを
見ていくだけ。

後半の展開は予想と異なる感じになっていくため、意外性があった。
香港映画ってジャッキー・チェンを小さい頃から見ていたためか、
単純な印象があったが、これはそういう感じではなかった。

正義と悪の狭間で揺れる男の心がうまく演出されている。
今後、ⅡとⅢがあるので見ていきたいと思う。

「パレード」(吉田修一)

2005-10-19 21:56:56 | 読書
最近、諸事情重なってなかなか本を読めなかったが、
ようやく一段落着いたので2日で読破。

同じ作者でも前に読んだ「パークライフ」よりも面白く、
また印象に残る小説となった。

2002年の東京は千歳烏山を舞台に
ルームシェアする若者4人+途中から加わる1人の物語。
5人それぞれが各章の主人公として、一人称で話が進む。
大元で5人は緩やかにつながっており、各章でも登場する。
しかし、登場人物の本質的な心情は主人公となる章でしか吐露されない。

そのため、客観的かつ主体的にこの5人の関係を読者は見ることが出来る。
5人の誰かには共感できるだろうし、5人の誰かには共感できないだろう。
それくらい、5人の登場人物の描き方がリアルだ。
設定は全然リアルじゃないのに。
現代に生きる、東京に生きるってことをボンヤリ考えてしまった。

ちなみに合間合間に出てくる登場人物の科白(作中の漢字変換に合わせた)や
文章がこれまた秀逸。
思わずハッとさせられたこと多数。

あと川上弘美の解説はしつこ過ぎなので、気になさらぬよう。