続・退屈シノギニ…

どっかの日記のサイトの続きから発展したような主として簡素な感想文等

「イノセントワールド」(桜井亜美)

2005-11-20 17:12:20 | 読書
読み進めていくうちに、
どっかで聞いたこと或る話だなぁってのと、
何か今、巷の女子高生辺りで流行ってる人の小説ぽいなぁって思った。

17歳の試験官ベイビーが援助交際に近親相姦にレイプに…って話。

そのストーリーの中で、主人公の女の子の気持ちを
やたらと難しい方向に書こうとしてる気がした。
それはブンガク的なのかもしれないし、共感も出来る人もいるだろう。

本当に、何も考えずに援助交際をしてる人がいるのかは知らない。
そういう事をする人には、する人なりに色々考えることもあると思う。

ただ、そういう人がこういう小説はなかなか書けないと思う。

だからこそ作者は天才なのか、
それともそこそこの頭脳の持ち主である高学歴者なのかと疑ってしまう。

どっかで聞いたこと或る話だなぁと思ったのは、
昔、映画化されたものを見たことがあったからでした。

ちなみに、主人公は竹内結子。
脚本が変更されてて、竹内結子がレイプされたりすることはありませんでした。
意外と爽やか路線、だけど少し重かった記憶があります。

「天使の卵」(村山由佳)

2005-11-17 22:53:55 | 読書
その昔、週刊少年ジャンプを毎週購入して読んでいた頃、
ノベルジャンプみたいな雑誌も創刊されて「スラムダンク」まで
小説化されていたものだ。

ジャンプの広告ページに、カワイイ女の子が描かれて大きく宣伝されていたのが
村山由佳の「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズの第一作であった。

ノベルジャンプにスラムダンクや両さんの小説版と共に連載されていたが、
そのオリジナル小説への集英社のプッシュぶりに
子供は気になるのであった。(笑)

とか言いつつも、このシリーズも村山作品も読むことなく時は過ぎた。
が、直木賞まで取ったということで一冊辺りは読まねばっと思い、
今更ながら(いつものことだが)デビュー作を手にした。

とある姉妹と浪人生(主人公)の恋物語。
名前の付け方が、やや同人系の匂いが感じられてウンザリする。
話のあらすじも展開もありがちな感じだ。
最後、どうなっていくのだろうと思ったら、いつもの感じかーみたいな。

ただ、その心理描写や切なさはありがちじゃない。
作者は女性なのに、主人公の描写もほぼ的確が。
少年諸君が読むべきような正統派の恋愛小説だ。

さすが週刊少年ジャンプに大きく宣伝されただけの小説家である。

「ロックンロールミシン」(鈴木清剛)

2005-11-14 01:28:22 | 読書
入社2年目のリーマンが脱サラして、
インディーズのファッションブランドを立ち上げる旧友を手伝う話。
作者自らの経験が多分に影響しているんだろうって思う。

話は短いので、あっさりいけます。
ショートフィルムの原作ぽい感じがしたら、
ちゃんと映画化もされてました。

文章中に出てくる、
リーマンであった自分とファッション命の仲間達との『バカの壁』。
こういう経験がある人には、分かる描写があります。

この新宿系リーマン的主人公と原宿系専門学校生的友人達との
関係が核となっている青春小説。

どちら側に近い人が読んでも共感できるんじゃないですか。
それが自身に深く受けとめれるか、は別だとして。

「青空チェリー」(豊島ミホ)

2005-11-08 23:01:30 | 読書
横山秀夫から一転、ライトな文体の青春小説を手にする。
若手女性作家が手がけた計3篇の短編集である。

「ハニィ、空が灼けているよ。」はエヴァチックな近未来(現代?)小説。
非現実を現実的に描く。
その現実的な非現実の中に出てくる登場人物の描写が巧い。
心理描写に切なくなってしまう。
3篇の中で、最も良く出来ていると思う。

「青空チェリー」は作者のデビュー作。
試験の現実逃避に書いたとのことだが、爽やかにエロく書かれている。
浪人経験者なら、何となく分かるかも。

「誓いじゃないけど僕は思った」は、
中学生時代の好きだった女の子を引きずる大学生(♂)の話。
分からんでもないが、やや粘着し過ぎの印象。
男で、こういう人間はほとんどいないと思う。

サクサク読めた割には、中身もそこそこ詰まってた良質の短編集だったと思う。

「半落ち」(横山秀夫)

2005-11-05 15:06:08 | 読書
文庫化されたベストセラーかつ話題作。
これは読まないわけにはいかないでしょ。

一人の警部の妻殺し後、2日間の空白の謎に迫るミステリー。
刑事、判事、新聞記者、弁護士、裁判官、刑務官の6人の視点から
謎は解き明かされていく。

この人の書く文章は基本的に読みやすい。
そして描写が巧いから、グングン読める。

ただミステリーとして、謎解きの要素は薄い。
人間を描くヒューマン的な感覚で捉えてた方がいいのかも。
泣く、泣けないは別にしても。

直木賞受賞を逸し、直木賞への決別を宣言した作品でもある。
その受賞に至らなかった理由は、
どこぞで検索してもらうとして、
その実力が下手な受賞作家よりも上であることは間違いない。

「ビッグボーナス」(ハセベバクシンオー)

2005-11-03 22:42:42 | 読書
日本初のパチスロ・ミステリー小説らしい。

個人的にギャンブルは全くしない。
だが、親友がパチスロ狂である。
本当に暇があれば、パチスロをやっている。

そのため、このパチスロをテーマにした小説を読んでみることにした。
このミスで良い評価も受けたみたいだし、話自体もハズレじゃないとも思って。

パチスロのことが分からなくても、
解説してくれるため心配は御無用。
だから実際に少しはパチスロのことを知ることも出来た。
だが、やっぱりパチスロはする気はしないが。

お話はパチスロをテーマにしつつも、
若者が主役のノワールちっくなミステリー小説。
(本格ミステリーとはほど遠いが…)

だが解説の茶木則雄も書いてるように、
ノワールちっくな話を現代若者用語を駆使しつつ明るく描けるのは、
稀な才能だと思う。

話自体も悪くないまとまり方だし。

「800」(川島誠)

2005-10-31 22:22:58 | 読書
数年前から、やたらと角川文庫が少年少女達にプッシュしてるみたいなので
気にはなっていた。

で、今年の文庫百選にも選ばれてたので読んでみることにした。

青春小説。
対照的な2人の高校男児の一人称で交互に語られる話。

陸上競技である800メートル競走が核となる。
スポーツの爽やかさ、快感の描写は経験者ならではの筆致。
加えて、恋や愛やらセックスやら生きる上での哲学的要素やらの
小説では避けれないトピックスの数々。

また湘南に行ったことがある方ならば、
湘南を舞台にしたこの小説が、さらに良く思えてくるだろう。

あとがきを読めば分かると思うが、
この小説は作者の経験が多く含まれているのだろう。
その分、陸上にも湘南にも彼の思い入れが良い意味で現れている。

中高生が夏休みに読んで悔いることは決してない、
様々なトピックスが濃縮された好小説。

それ以上の人が読んだら、さすがに切なくなって寂しくなってしまうかも。

「下流社会 新たな階層集団の出現」(三浦展)

2005-10-29 19:14:00 | 読書
最近の日経ビジネスも日本における階級の分離を煽ってるが、
よく行く本屋も、この本をプッシュしまっくてるので久々に新書を手にした。

まあ、最近言われている日本において大部分を占めてきた中流階級が
上流と下流に分かれていく。
それも中流階級が減り、その分が下流階級へと流れていくって話。

正直、この本に言われなくても街中を歩いてたらそうなると思う。
その加速スピードがどうであれ、すでに大衆(マス)なんてものは分断化してる。
階級だけでなく価値観まで多様化してるから、マーケティングも大変です。

本書では、データを駆使してそういう分析をしてますが数字の羅列がウザい。
ってか薄っぺらい。あんま意味をなさない気さえする。

最初と最後、あとがきを読めば大意が掴めます。
ただコラムは面白かった。
作者がバカにしてる「SPA!」とかに載っててもおかしくない感じだけど。

あと筆者一押しの「ドラゴン桜」がモーニング連載じゃなくて
ヤンマガとかに載ってたら、もっと下流社会の人々への啓蒙になるのに…。
筆者の訴える東大無料化という対策よりも現実的かと。

「凍える牙」(乃南アサ)

2005-10-27 17:06:01 | 読書
直木賞らしいし、ミステリーぽいので手に取る。
話はやや長い印象を受けるが、文章は読みやすかった。

警察と言う男社会の中で奮闘する女性刑事と、
その相棒となった中年男性刑事の2人の視点が交互になりながら
物語は進んでいく。

ただミステリーと言うよりも、警察と殺人事件を舞台にした
人の内面を描くことに力を入れた小説のような印象を受けた。

ゆえに宮部みゆきや横山秀夫や高村薫とジャンルがかぶってくるが、
彼らの代表的な小説には劣る気がした。

そこは動物をテーマに絡ませたのが敗因か。
あそこで主人公と動物をシンクロさせるとリアリティーに欠ける気がする。
どうしても読めと人に薦めれるものではない。

「パレード」(吉田修一)

2005-10-19 21:56:56 | 読書
最近、諸事情重なってなかなか本を読めなかったが、
ようやく一段落着いたので2日で読破。

同じ作者でも前に読んだ「パークライフ」よりも面白く、
また印象に残る小説となった。

2002年の東京は千歳烏山を舞台に
ルームシェアする若者4人+途中から加わる1人の物語。
5人それぞれが各章の主人公として、一人称で話が進む。
大元で5人は緩やかにつながっており、各章でも登場する。
しかし、登場人物の本質的な心情は主人公となる章でしか吐露されない。

そのため、客観的かつ主体的にこの5人の関係を読者は見ることが出来る。
5人の誰かには共感できるだろうし、5人の誰かには共感できないだろう。
それくらい、5人の登場人物の描き方がリアルだ。
設定は全然リアルじゃないのに。
現代に生きる、東京に生きるってことをボンヤリ考えてしまった。

ちなみに合間合間に出てくる登場人物の科白(作中の漢字変換に合わせた)や
文章がこれまた秀逸。
思わずハッとさせられたこと多数。

あと川上弘美の解説はしつこ過ぎなので、気になさらぬよう。