グローカル雑記帳

異文化理解や国際交流、中国のこと、日本の地方創生などについて。
また、日々の思ったことなど。自戒も込めた記録です。

国際人材、グローバル人材とは ――カルロス・ゴーン氏が気付かせてくれたこと

2019年02月08日 | 国際交流や国際理解
 先日もカルロス・ゴーン氏に触れましたので、今回もゴーン氏に関連することを。現在のゴーン氏の状況がどうであろうとも、私にはゴーン氏を信じたい気持ちがあります。それは、ゴーン氏から受けた衝撃が、これからもずっと、私の中から消えないと思うからです。

 その衝撃とは、ゴーン氏の日本語でした。
 確か、2007年か2008年だったと思いますが、私は偶然、ゴーン氏が日本語でスピーチしているのを耳にしました。「この世界的な経営者が日本語を!?」、その時の驚きは、本当に大きいものでした。その理由は、だんだんと分かるようになりました。

 ゴーン氏の姿に反して、私の頭に去来するのは、大連にいる日本人の会社員でした。私が大連に渡ったのは2006年。当時、中国語のできる日本人は、非常に珍しい存在でした。実のところ、大連には日本語人材が豊富ですので、中国語ができなくても仕事はできます。社内も、日本語で通用する場合が多々あります。

 あのゴーン氏が、日本の社員へ日本語で語りかけているのに、大連で現地の社員へ中国語で語りかけようとしている人は、何人いるだろうか……
 ゴーン氏と日本人会社員の違いは、いったい何なのか……

 日本から来ている会社員が中国語を覚えないのは、前述した大連の優れた日本語環境も影響していると思います。中国語ができなくても、特に困らないのは事実です。
 また、企業のグローバル化の発展段階には、「本国志向」(重要な意思決定は全て本国の親会社が行う)、「現地志向」(戦略的な意思決定は本国が行い、些末な決定は現地でできる)、「地域志向」(主要な意思決定も、現地で行える)、「世界志向」(本国の親会社と世界各地の子会社はパートナー関係)という4段階があり、「本国志向」から「世界志向」へ発展していくという考えがあるそうです。
 大連には「本国志向」や「現地志向」の段階にある日系企業が多いと思います。また、中国法人の本社は上海や北京にあり、大連はその下に位置し、決定権は上海か北京にあるという例も見られます。つまり、現地の言葉を覚えて積極的に取り組もうと思っても、決定権がなく、日本や上海、北京の命令下でしか動けないのであれば、士気も低下し、言葉を覚える気にはならないかもしれません。帰任の日まで何もなく過ぎてくれればと、消極的になってしまっても、仕方ないかもしれません。

 ですが、悲しいことに、差別意識、あるいは優越意識から中国語を学ぼうとしていないと思える人もいました。そういった人たちは、全てを日本の基準で判断し、違いがあると「日本のやり方が正しい。中国のやり方が間違っている」と常に考えています。順調に進まないことがあると、「ここは中国だから」と原因を述べます(実際は、原因を指摘しているのではなく、事実を述べているだけですが)。
 最近は変わってきていると思いますが、以前は中国のGDPが日本よりも下でしたので、見下しの意識は強かったと思います。「自分に合わせろ。日本のやり方が正しい」という態度でいれば、現地の人たちが自分に合わせて日本語をしゃべるのも、当たり前と思えてくるのでしょう。意思疎通の問題は、現地社員の日本語力の問題という甚だしい考えも生まれます。

 眼前にはこの様な事実があるため、ゴーン氏の日本語がずっと忘れられなくなっていたのです。またゴーン氏は、自著の中で「自分たちは宣教師でない」とも語っています。この言葉は、ルノーから日産へ出向する社員たちへ語ったものです。日産には、自分たちのやり方(宗教)を広めに行くのではないと、自文化至上の考え方を戒めているのだと感じます。そして、ゴーン氏自身は、日本語で日本の社員へ語りかける。ゴーン氏が差別意識を持って日本を見下していれば、日本語など話さないはずです。

 「国際人材」や「グローバル人材」という言葉は、よく言われています。これらの言葉の定義は何でしょうか。
 私は、「相手に歩み寄る姿勢」が、絶対条件の1つだと思います。このことを体現し、私に気付かせてくれたのが、正にゴーン氏でした。
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