5回目のパリ個展、今回のテーマは"MEMOIRE PERDU"
1966年生、東京総合写真専門学校卒 写真をクリックすると拡大されます。
失われた記憶
記憶力:自分の記憶力を嘆くべし―そしてときには記憶力の悪さを誇るべし……
ギュスターヴ・フロベール 紋切型辞典(小倉孝誠訳 岩波文庫 2000年)
記憶の再生は常に失敗する。
それが忘れがたいものである時は特に。
自分自身で撮影した写真であるにもかかわらず、自分の記憶からそれらのイメージを再生できないことがよくあるのだ。
つまるところ写真は記憶をとどめるものではなく、反対に記憶を失わせるものなのかもれない。
もちろん、≪それは-かつて-あった≫(バルト)と言えるだろう。しかし≪それは-かつて-なかった≫とも言えるのではないか。
そしてむしろそのささやかな混乱が私を魅了する。≪それは-かつて-あった≫と
≪それは-かつて-なかった≫との狭間で揺れ動きながら、わたしは断片をつなぎ合わせて別の世界を構築する。
その時、記憶はわたしから離れ、わたしの知らない場所へと彷徨い始める。 外久保恵子