医薬ビジランスセンター Editional 医薬品評価と不正
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薬のチェック JUL. 2024/Vol.24 No.114
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Editional 医薬品評価と不正
自動車業界では、ダイハツ自動車による安全性能の認証試験の不正に端を発し、トヨタ、マツダ、スズキなどの5社でも不正が報道された。
医薬品業界では、ジェネリックメーカーの小林化工(紅麹の小林製薬とは 異なる)の内服抗真菌剤(水虫用剤)に睡眠剤が混入し2人が死亡した事件以降、他社でも不正が発覚し、合計8社が業務停止処分を受けた。そのあおりを受けて、医薬品の供給不足の問題が起こってきた。
製造過程のミス自体重大だが、医薬品業界には、さらに重大な不正問題がある。
医薬品による重大な害を害と認めない不正(タミフルやHPVワクチン、SARS-CoV-2ワクチンの害)、ランダム化比較試験(RCT)で対照群に比べて有利な背景を持つ試験や遮蔽が外れていると推察される欠陥試験で、多くの薬剤が安全、有効として承認されていることも科学的不正である。健康者接種バイアスを無視してワクチンを有効安全と主張する行為は、国と企業と学者が連携した「不正」であり、チェック機能が働いていない。
さらに今号では、医師国家試験問題(80頁)を契機に、慢性腎臓病に対 する効果を認めたとするSGLT2 阻害剤のRCTを詳しく吟味・検証した結果(76 頁)、新たな形の不正が浮かび上がってきた。試験計画書(プロトコル)に「免除事象」なる用語が登場する。「腎臓病を扱う試験で、腎臓病の進行があった場合、もとの腎臓病が悪化したものだから試験製剤による害とは考えない」つまり害として扱うのを免除する、というのである。
タミフルをインフルエンザの治療に用いた試験では、インフルエンザのために熱せん妄をよく起こすので、精神症状は有害事象として扱わないとプロトコルに規定されていた。このため、治療の臨床試験で精神症状をとらえにくかった。タミフルのRCTでは「免除事象」という用語は使われなかったが、その概念による有害事象外しはすでに行われていた。
認証試験や製造過程の不正は一般にも理解しやすいが、医薬品の効力・有効性・害の評価にまつわる不正は、一般の人だけでなく、専門家にもわかりにくく、ますます複雑なものになってきている。しかし、これらを検証して分かりやすく情報を提供するのが本誌の使命と心得ている。
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