ビタミンAと感染
ビタミンAと感染に関しては、
スザンヌ・ハンフリーズ (著),ワクチン神話捏造の歴史
のp.350からにも書かれています。
A.ノーベル賞を2回受賞されたライナス・ポーリング博士の研究所のビタミンAの記事
Linus Pauling Institute » 微量栄養素情報センター
日本微量栄養素情報センターは、ライナスポーリング研究所と新潟薬科大学の共同研究事業です。
ビタミンA
免疫
ビタミンAは、免疫系の正常な機能に必要なため、一般に抗感染性ビタミンといわれる (4)。
皮膚と粘膜細胞(気道、消化器官及び尿路を覆う細胞)は、バリアーとして働き、感染に対する生体内の最初の防御ラインを形成する。レチノールとその代謝物は、これらの細胞の完全性と機能性の維持に必要である (5)。
ビタミンA及びレチノイン酸(RA)は、免疫反応に重要な役割を持つリンパ球などの白血球細胞の発生や分化に中心的役割を果たす。免疫系の主な制御細胞であるT-リンパ球の活性化が、RARのall-trans-RA結合に必要と考えられる (3)。
ビタミンA欠乏と感染症
ビタミンA欠乏は、栄養的な後天性免疫不全疾患とみなすことができる (15)。ごく軽度のビタミンA不足の子供でさえ、ビタミンA供給が十分な子供と比較して、感染症による高い死亡率のみならず、呼吸器疾患や下痢などの高い罹患率を示す (16)。
ビタミンA補給は、ビタミンA欠乏が日常的な途上国における下痢やはしかに関連する重症度や死亡率を減少させることが認められている (17)。
感染が発症すると極めて速やかに血中のレチノール濃度が低下する。この現象は、一般に、肝臓によるレチノール結合タンパク質(RBP)の合成低下に関係するといわれている。このように、ビタミンAの不十分な栄養状態が、感染症からの重症度や死亡確率を高めることと関係するため、感染が悪循環を亢進する。
一方で、最近の4つの研究レビューから、ビタミンA補給は、母親から子へのHIV伝染の抑制には効果がないと結論付けられた (19)。ある研究では、ビタミンAが欠乏しているHIV感染女性が、乳児へ3~4倍HIVを伝染させやすいことが認められた (20)。
安全性
毒性
ビタミンA毒性により起こる症状は、「ビタミンA過剰症」と呼ばれる。これは、カロテノイドではなく既成ビタミンAの過剰摂取により起こされる。既成ビタミンAは速やかに吸収され、体内からの排泄は遅い。したがって、既成ビタミンAによる毒性は、実際には、短期間の高用量曝露またはかなり低い摂取量による慢性曝露から起こる (2)。急性のビタミンA毒性は比較的まれで、症状には、吐き気、頭痛、倦怠感、食欲不振、めまい、皮膚乾燥(乾燥肌)、落屑(外側皮膚の喪失)及び脳水腫などである。慢性毒性の徴候は、かゆみを伴う皮膚乾燥、落屑、食欲不振、頭痛、脳水腫及び骨・間接の痛みなどである。また、乳児におけるビタミンAの毒性症状は、泉門(胎児・乳児の頭蓋骨にある膜でおおわれた間隙)の隆起である。ビタミンA過剰症が重度の場合、肝障害、出血及び昏睡を起こす可能性がある。概して、毒性の徴候は、RDAの10倍(8、000~10、000 μg/日、または25、000~33、000 IU)以上のビタミンAの長期摂取に関係している。しかしながら、潜在性(無症状性)のビタミンA毒性が特定集団に懸念があるかどうか判断するためには、さらに研究が必要である (37)。高齢者、慢性アルコール摂取者及び高コレステロールに対する遺伝的素因をもつ人々など、いくつかの集団が、比較的低用量で毒性を受けやすい可能性があるとの証拠がある (8)。2001年1月に、米国医学研究所の食品・栄養委員会(FNB)は、成人に対するビタミンAの耐容上限摂取量(UL)を、既成ビタミンAとして3、000 μg(10、000 IU)/日に設定した (21)。
表4 既成ビタミンA(レチノール)に対する耐容上限摂取量(UL) |
||
年齢群 |
UL μg/日 |
IU/日* |
乳児 0-12ヵ月 |
600 |
2,000 |
子供 1-3歳 |
600 |
2,000 |
子供 4-8歳 |
900 |
3,000 |
子供 9-13歳 |
1,700 |
5,667 |
青少年 14-18歳 |
2,800 |
9,333 |
成人 19歳以上 |
3,000 |
10,000 |
*1 IUは、レチノール 0.3 μgに相当し、レチノール 1 μgは、レチノールの3.33 IUに相当する。 |
妊娠中の安全性
正常な胎児発育には十分なビタミンA摂取量が必要であるが、妊娠中の過剰な既成ビタミンA(レチノール)摂取は、先天性異常を誘発するといわれている。3、000 μg/日(10、000 IU/日)未満の用量でのサプリメントからの既成ビタミンAでは、ビタミンAに関係する先天性異常のリスク増加は認められていない (21)。米国における多数の商品に既成ビタミンAが添加されているため、妊娠女性は、1、500 μg(5、000 IU)以上のビタミンAを含むマルチビタミンまたは出産前サプリメントを避けるべきである。β-カロテン由来のビタミンAが、先天性異常のリスクを高めることは知られていない。レチノールの合成誘導体であるエトレチネートやイソトレチノイン(アキュテイン)は、重い先天異常を誘発することが知られ、妊娠時または妊娠する可能性がある場合、摂取してはいけない (38)。もう一つのレチノール誘導体のトレチノイン(レチン-A)は、皮膚に塗布する局所剤として処方されている。局所からのトレチノインが全身吸収される可能性があるため、妊娠中での使用は推奨されない。
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B.日本人のビタミンA摂取量の推奨値
国立健康・栄養研究所 ビタミンA https://hfnet.nibiohn.go.jp/vitamin/detail171/
ビタミンA
分類:脂溶性
更新日:2020/11/05
もくじ
ビタミンAとは
ビタミンA (レチノール)は水にとけにくく油にとけやすい脂溶性ビタミンの1つです。おもに動物性食品に含まれ、体内ではレチノール、レチナール、レチノイン酸といった3種の形で作用します。ビタミンAは目の正常な機能の維持、皮膚や粘膜の正常保持、成長および分化に関与しているため、不足すると夜盲症、皮膚や粘膜の乾燥、成長障害、胎児の奇形などを引き起こすおそれがあります (1) 。ビタミンAは、レチノールとして食品から摂取する以外に、プロビタミンA (ビタミンAの前駆体) としても摂取されます。
プロビタミンAについて
プロビタミンAは生体内でビタミンA効力を示す物質に変換されるものの総称です。おもに小腸で変換されます。植物性食品に含まれている赤や黄色の色素であるカロテノイドがよく知られています。プロビタミンAカロテノイドは約50種類程度で、中でもβ-カロテンは、他のカロテノイドに比べて効率よくレチノールに変換されます (1) 。また、β-カロテンはプロビタミンAとしての働き以外に抗酸化作用を持っており、β-カロテンの吸収を高めるには、加熱料理が適していることが知られています (2) (3) (4) 。
おもなプロビタミンA
- α-カロテン
- β-カロテン
- γ-カロテン
- β-クリプトキサンチン
食品中のビタミンAや一日に摂取するビタミンAの基準値は、体内でのプロビタミンAの変換効率を考慮したレチノール活性当量 (μgRAE) という単位で表され、以下の式によって求められます。
レチノール活性当量 (μgRAE) =レチノール (μg) +β-カロテン (μg) ×1/12+α-カロテン (μg) ×1/24+β-クリプトキサンチン (μg) ×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド (μg) ×1/24
μgRAEは以前までは、ビタミンA効力 (国際単位:IU) で表されていました。サプリメントや強化食品などに添加されるビタミンAの場合、IUからμgRAEへ換算するときはIU×0.3で計算することができます (5) 。
ビタミンAの不足と欠乏症
一般に、よほど長期にわたってビタミンAを含まない食事に偏らないかぎり、不足する危険性は低いようです (1) 。しかし、不足した場合の一番の問題は視覚障害です。ビタミンAが不足すると目の角膜や粘膜がダメージを受け、症状が悪化すると視力が落ち、失明する場合もあります (1) 。発展途上国では、多くの子どもがビタミンA不足により失明しています (1) 。また、過度のアルコール摂取は、貯蔵されているビタミンAを消耗します。比較的軽微な症状としては、夜盲症や免疫機能の低下などがあります。
ビタミンAの過剰摂取と過剰症
ビタミンAは脂溶性のため、とりすぎると体内に蓄積され、さまざまな健康障害を引き起こすおそれがあります。しかし、β-カロテンなどのプロビタミンAの場合、体内でビタミンAが不足すると必要量だけがビタミンAに変換され、変換されないβ-カロテンは脂肪組織に蓄えられるか、または排泄されます。そのため、通常の食事から摂取するぶんには、多量に摂取した際に生じる柑皮症を除き、プロビタミンAとしての過剰症は知られていません。一方で、サプリメントからβ-カロテンを大量に摂取した場合には有害な作用も報告されているため避けた方が良いようです。
成人が過剰摂取した場合、短期間では吐き気、頭痛、めまい、目のかすみなどが起こります (1) (6)。長期間では中枢神経系への影響、肝臓の異常、骨や皮膚の変化が起こります。子どもが過剰摂取した場合は、長期間では頭蓋内や骨格の異常が見られます (1) 。また、妊婦では胎児の奇形が知られています。
日本人の摂取状況と摂取基準
2019 (令和元) 年の国民健康・栄養調査では、男性では平均552μgRE/日、女性では平均518μgRE/日摂取していました (REはレチノール当量。日本人の食事摂取基準2010年版までの単位) (7) 。
『日本人の食事摂取基準』では、ビタミンAについて推奨量(1歳以上)、目安量 (1歳未満) 、耐容上限量が示されています。各年齢別のビタミンAの食事摂取基準 (『日本人の食事摂取基準 2020 年版』) は以下の通りです。
ビタミンAの食事摂取基準 (μgRAE/日) 1
性別 |
男性 |
女性 |
||||
年齢等 |
推奨量2 |
目安量3 |
耐容 |
推奨量2 |
目安量3 |
耐容 |
0~5 (月) |
– |
300 |
600 |
– |
300 |
600 |
6~11 (月) |
– |
400 |
600 |
– |
400 |
600 |
1~2 (歳) |
400 |
– |
600 |
350 |
– |
600 |
3~5 (歳) |
450 |
– |
700 |
500 |
– |
850 |
6~7 (歳) |
400 |
– |
950 |
400 |
– |
1,200 |
8~9 (歳) |
500 |
– |
1,200 |
500 |
– |
1,500 |
10~11 (歳) |
600 |
– |
1,500 |
600 |
– |
1,900 |
12~14 (歳) |
800 |
– |
2,100 |
700 |
– |
2,500 |
15~17 (歳) |
900 |
– |
2,500 |
650 |
– |
2,800 |
18~29 (歳) |
850 |
– |
2,700 |
650 |
– |
2,700 |
30~49 (歳) |
900 |
– |
2,700 |
700 |
– |
2,700 |
50~64 (歳) |
900 |
– |
2,700 |
700 |
– |
2,700 |
65~74 (歳) |
850 |
– |
2,700 |
700 |
– |
2,700 |
75以上 (歳) |
800 |
– |
2,700 |
650 |
– |
2,700 |
妊婦 (付加量) |
||||||
|
+0 |
– |
– |
|||
授乳婦 (付加量) |
+450 |
– |
– |
推奨量 (RDA,recommended dietary allowance)
ある性・年齢階級に属する人々のほとんど (97~98%) が1日の必要量を充たすと推定される1日の摂取量。
目安量 (AI,adequate intake)
ある性・年齢階級に属する人々が、ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量。
(特定の集団において不足状態を示す人がほとんど観察されない量)
耐容上限量 (UL,tolerable upper intake level)
ある性・年齢階級に属するほとんど全ての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことがないとみなされる習慣的な摂取量の上限。
1:レチノール活性当量 (μgRAE)
2:プロビタミンAカロテノイドを含む。
3:プロビタミンAカロテノイドを含まない。
ビタミンAを多く含む食品
ビタミンA (レチノール) は動物性食品 (とくに肝臓や卵) に多く、プロビタミンA のカロテノイドは植物性食品 (とくに濃い色の野菜 (緑黄色野菜) や果物) に多く含まれています (8) 。
植物性食品
食品名 |
1食あたり |
ビタミンA(μgRAE) |
|
1食あたり |
100gあたり |
||
にんじんジュース |
200 |
740 |
370 |
ほうれん草 (ゆで) |
80 |
360 |
450 |
西洋かぼちゃ (ゆで) |
100 |
330 |
330 |
春菊 (ゆで) |
50 |
220 |
440 |
小松菜 (ゆで) |
80 |
208 |
260 |
にんじん (皮なし、ゆで) |
20 |
146 |
730 |
すいか (赤肉種) |
200 |
138 |
69 |
にら (油炒め) |
30 |
114 |
380 |
みかん |
100 |
84 |
84 |
味付けのり |
3 |
81 |
2,700 |
(「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用)
動物性食品
食品名 |
1食あたり |
ビタミンA(μgRAE) |
|
1食あたり |
100gあたり |
||
鶏レバー |
40 |
5,600 |
14,000 |
豚レバー |
40 |
5,200 |
13,000 |
うなぎ (かば焼き) |
80 |
1,200 |
1,500 |
ぎんだら(水煮) |
70 |
1,260 |
1,800 |
ほたるいか (ゆで) |
30 |
570 |
1,900 |
くろまぐろ 赤身 |
70 |
588 |
840 |
くろまぐろ 脂身 |
50 |
135 |
270 |
鶏卵 卵黄 (ゆで) |
20 |
104 |
520 |
鶏卵 全卵 (ゆで) |
55 |
94 |
170 |
アイスクリーム(高脂肪) |
90 |
90 |
100 |
※くろまぐろ 別名 本まぐろ
(「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」のデータより引用)
栄養機能食品
ビタミンAは基準値を満たした場合に栄養機能食品として表示することができます。
- 下限値:231μg、上限値:600μg
- 栄養機能表示
「ビタミンAは、夜間の視力の維持を助ける栄養素です。」
「ビタミンAは、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。」 - 注意喚起表示
「本品は、多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません。1日の摂取目安量を守ってください。」
「妊娠3か月以内又は妊娠を希望する女性は過剰摂取にならないように注意してください。」
栄養機能食品の表示に関する基準の詳細についてはこちらの資料をご参照ください。
関連情報
- ビタミンAはがんのリスクの軽減などの効果が期待されていますが、個々の研究結果については「素材情報データベース【ビタミンA (レチノール) 】」をご覧ください。
- ビタミンについての解説:一覧
- ミネラルについての解説:一覧
参考文献
- ビタミン総合事典:朝倉書店
2. コツと化学の調理事典(第3版):医歯薬出版
3. (PMID:9209178)Am J Clin Nutr 1997;66(1);116-22.
4. (PMID:10801917)J Nutr 2000;130(5);1189-96.
5. U.S. Food and Drug Administration 「Converting Units of Measure for Folate, Niacin, and Vitamins A, D, and E on the Nutrition and Supplement Facts Labels: Guidance for Industry」
6. 日本人の食事摂取基準 2020年版
7. 令和元年 国民健康・栄養調査報告
8. 日本食品標準成分表2020年版 (八訂)
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