地獄医療ジェノサイド: 糖尿病 血圧 コレステロール治療
要約
(1) 高糖質食による糖尿病3大合併症への追い込み
現行の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)による害
日本糖尿病学会『第56回日本糖尿病学会年次学術集会』熊本宣言2013
『糖尿病合併症で苦しむ患者さんの数は今なお減少していません。
糖尿病腎症で透析になる人が年間16000人以上。
糖尿病網膜症で失明する人が年間3000人以上。
糖尿病足病変で切断する人が年間3000人以上。』
(2)血圧・コレステロール
国民健康・栄養調査の結果では、一四年には成人の二八%が降圧剤を服用していました ので、実際に降圧剤を服用している人は、二八〇〇万人に達していると推定されます。
し たがって、年間約七・六万人が余計に死亡する可能性があります。
〇九年には、さらに多 くの人に降圧剤を使用するように、ガイドラインが改訂されました。
ガイドラインどおり に治療すると、一三万人が余計に死亡することになりかねません。
これは、コレステロー ル低下剤による推定死亡者数(一万~三万人)よりも確実に多く、ぞっとするような数字 です。
ブログ著者備考
(1)この本には年間7.6万人、13万人が死亡する血圧の値がはっきり書かれていません。この点は問題です。
この本の前の方の部分の書き方から推測して、上130/下85未満、上140/下90未満付近まで降圧剤で下げると、年間7.6万人~13万人が死亡する計算になると理解しておけば良いと思います。
(2)この本のp.64の記載によれば、LDL 140mg/dL以上は脂質異常症という基準で、コレステロー ル低下剤による推定死亡者数(一万~三万人)と計算されると推定されます。
(備考終わり)
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1.高糖質食による糖尿病3大合併症への追い込み
出典
「糖尿病徒然日記 」として糖尿病治療や予防などをテーマに、私なりの意見や情報を発信していきたいと思います。
Author:ドクター江部
江部康二です。京都の高雄病院で勤務しています。
(日本の糖質制限の第一人者)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-6231.html
日本糖尿病学会への提言(2)
2023年03月16日 (木)
こんばんは。
日本糖尿病学会への提言(2)
糖尿病合併症とカロリー制限食の弊害
です。
日本糖尿病学会『第56回日本糖尿病学会年次学術集会』熊本宣言2013
の記載が以下です。
『糖尿病合併症で苦しむ患者さんの数は今なお減少していません。
糖尿病腎症で透析になる人が年間16000人以上。
糖尿病網膜症で失明する人が年間3000人以上。
糖尿病足病変で切断する人が年間3000人以上。』
ここで疑問が出てきます。
これらの方々は、全て医師や栄養士の言うことを聞かずに、
薬もまともに内服せずに暴飲・暴食をしたのでしょうか?
いえいえそんなことはありません。
ほとんどの方は、医師や栄養士の言うとおりに、
つらくとも我慢してカロリー制限食を実践し、
酒も飲まず、運動もし、血糖コントロールが徐々に悪くなれば、
経口糖尿病薬が増えていき、それでも効果が良くならなければ、
インスリン注射を導入して、清く正しく頑張ってきたにもかかわらず、
糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病壊疽、心筋梗塞、脳卒中・・・を合併してきてしまったのです。
日本では、ほとんどの糖尿病患者さんが
糖質摂取比率50~60%の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)を指導されています。
この高糖質食を糖尿病患者さんが摂取すれば、
<食後高血糖、血糖値の乱高下、平均血糖変動幅増大>を必ず生じます。
これでは、糖尿病合併症が、減らないのも当たり前としか言いようがありません。
即ち、糖尿病患者さんに罪はないのです。
罪は一重に、現行の糖尿病食(カロリー制限・高糖質食)にあるのです。
この食事を食べる限りは、
かなり運が良くない限り糖尿病合併症から免れることは至難の技です。
何故なら、糖質を摂取する限り、
「食後高血糖」と「平均血糖変動幅の増大」を必ず生じるからです。
食後高血糖と平均血糖変動幅増大は、糖尿病合併症の最も大きな要因です。
食後高血糖と平均血糖変動幅増大を防ぐことこそが
合併症予防の優先順位の一番なのです。
そして糖質制限食が唯一、食後高血糖を防ぐ治療食なのです。
★ACCORD(RCT研究論文)よれば、
「糖質を普通に摂取しながら、強力な糖尿病の薬物治療を行えばかえって総死亡率が上昇する」
という、明白なエビデンスが存在します。
以下の本ブログ記事をご参照頂ければ幸いです。
ACCORD後の血糖管理・推奨HbA1cは? 2011年米国糖尿病学会
2011年07月20日 (水)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1743.html
私は一人の医師であり、一人の糖尿病患者です。
医師としてそして一糖尿病患者として、日本糖尿病学会に、提言します。
1)
ACCORDなどの明白なエビデンスを無視せずに、現実を認めて、ワンパターンの食事療法(カロリー制限・高糖質食)の見直しに着手するのが、糖尿病専門医として科学的な態度と言えるのではないでしょうか?
2)
また、従来の日本の糖尿病治療(カロリー制限・高糖質食と薬物療法)で、糖尿病網膜症で失明、糖尿病腎症で透析、糖尿病壊疽で下肢を切断、心筋梗塞、脳梗塞・・・といった糖尿病合併症が毎年多数発症している現状を、どのようにとらえておられるのでしょうか?
現実に多くの糖尿病患者さんを苦しめてきたという反省はないのでしょうか?
是非、冷静に日本の糖尿病治療と合併症の現状を検討して頂きたいと思います。
3)
さらに、糖尿病専門医が推奨するカロリー制限食(高糖質・低脂質食)では、「食後高血糖」と「平均血糖変動幅の増大」を生じ、酸化ストレスリスクを決して防げないという生理学的事実を、糖尿病患者さんに、どう説明し、納得してもらうおつもりなのでしょう。
短期的に破滅的に効果が悪い食事療法(カロリー制限・高糖質食)を、長期間にわたり糖尿病患者さんに推奨するなら、倫理的にも科学的根拠を示す義務があります。糖尿病専門医として、科学的思考をされることを切に望むものです。
4)
農耕開始前の人類約700万年間の進化の歴史は狩猟・採集であり、農耕開始(穀物摂取開始)は約1万年前からに過ぎないことを、認識してください。
5)
日本人も旧石器時時代と縄文時代の約35000年間は狩猟・採集であり、農耕開始(米摂取開始)は弥生時代以降の約3000年間に過ぎないことを、認識してください。
★ACCORD
Effects of Intensive Glucose Lowering in Type 2 Diabetes
The Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group
N Engl J Med 2008; 358:2545-2559
江部康二
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https://www.medical-confidential.com/2018/11/15/post-8381/
第105回 薬物で血糖正常化は死亡を増加
集中出版 2018年11月11日
医薬ビジランスセンター
米国内科学会(ACP)が2018年3月、糖尿病の薬物療法に関して、良いガイダンス声明1)を発表した。ACCORD試験2)などの結果を重視して、糖尿病治療に関する各種ガイドラインを精査し、糖尿病患者の薬物による血糖コントロールは、1)HbA1cで7.0〜8.0%の間にあればよい、2)6.5%を下回るようなら、もっと緩やかな血糖コントロールになるようにすべき、3)生命予後が10年未満の人には利益よりも害が上回るので血糖コントロールは目指さず、症状の改善のみを図る、などがその内容である。
一方、日本の糖尿病学会では、2016年の改訂まで(GL2010まで)は、血糖値のコントロール目標値としてHbA1cで6.2%未満としていた。2016年の改訂(GL2016)で、少しばかり緩めたものの、HbA1cでなお7.0%未満を目標としている。薬のチェックTIP3)では、これら糖尿病学会ガイドラインに従って薬物療法を実施すると低血糖が多発し、心血管疾患死、総死亡が増加するため、薬物で血糖値を正常化することを目標にしないように呼び掛けた。その概要を紹介する。
「優、良」は「不十分、不良」より死亡22%増
日本糖尿病学会ガイドライン2010年版(GL2010)の「優」(HbA1c6.2%未満)に薬物で血糖コントロールした場合はもちろん、「良」(GL20016の合併症予防目標:HbA1c7.0%未満)でも低血糖発作、心血管疾患病が多発し寿命が縮まる。これは、ACCORD試験2)が明瞭に示している。ACCORD試験はHbA1cで6.0%未満を目標にした厳格群と7.0〜7.9%を目標にした緩和療法群(GL2010では不十分〜不良)を比較したランダム化比較試験(RCT)である。HbA1cで6.0%未満を目標にしても、4分の3は達成できず、半数の人はHbA1c6.4%以下しか達成できなかった。一方、緩和目標はおおむね4分の3の人が達成できた(達成HbA1c中央値7.5%)。そして、心血管病の発症は、ハザード比(HR)でみて、厳格群が緩和群に比べて35%増加し、総死亡も22%増加していた。3.5年間厳格治療をすると緩和治療した人より95人に1人が余計に死亡するという恐ろしい結果が得られた(NNTH=95)。
学会ガイドラインなら4〜7倍追加治療を要す
ACPガイダンスに従えば、日本の糖尿病患者の11.6%に追加治療が必要なだけだが、GL2010に従うと84.6%、GL2016では46%と、ACPガイダンスによる場合のそれぞれ7.3倍、3.8倍の糖尿病の人に追加治療が必要となる。ACPガイダンスに従えば、HbA1cが7%未満なら薬物による血糖コントロールを緩めてもよく、6.5%未満なら薬物治療を緩めるべきなので、それぞれ糖尿病者の27%が緩めてよく、糖尿病者の7.5%の人は緩めるべきだ。
実地診療では
2型糖尿病は、過剰な糖質摂取を続けることに加え、睡眠不足など強いストレスが持続すること、それに不良な植物油脂の摂取で発症し悪化する。糖尿病の程度に応じた糖質制限食を基本とし、睡眠剤に頼らない十分な睡眠時間を確保し、強いストレスの原因を見つけてその解消を図るとともに、良質な油脂を摂取することで、薬剤に頼らない糖尿病治療が可能となる3)。薬物中、有用な薬剤は、インスリンのみである3, 4)。
参考文献
1) Qaseem A et al. Ann Intern Med 2018; 168:569-76
2) ACCORD investigator N Engl J Med 2010; 362: 1575–85
3) 薬のチェックTIP、2018:18(80):134-138
4) 浜六郎、脂質栄養学. 2017: 26(1):59-74.
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2.降圧剤・コレステロール低下剤による大量虐殺
出典
のんではいけない薬大事典
浜 六郎 (著)
出版社 : 金曜日 (2017/6/27)
p.71
降圧剤
薬で下げたらあかん!
「薬をのまないと脳卒中になる!」と降圧剤をのんでいる人は、二〇一四年現在約二八〇〇万人に達します。
一九九二年には一三〇〇万人程度でしたから、この間に二倍以上になっています。
確かに、脳卒中や心臓病などを防ぐため、血圧をコントロールすることはとても大切なことです。
しかし、生活習慣を改善しても上の収縮期血圧が160mmHg、下の拡張期血圧が95mmHg以上が続く場合にのみ治療の対象だった基準が、日本では二〇〇〇年の新ガイドラインで、上130mmHg/下85mmHg未満を目標に血圧を下げることが勧められるようになりました(新たに三〇〇〇万人以上が降圧剤を必要とする「患者」とみなされることになった)。
一四年には少し緩められましたが、上140/下90未満が目標です。
高血圧の薬は、血圧を下げる作用があるので降圧剤と呼ばれます。私は、『下げたら、あ
p.72
かん! コレステロールと血圧』(日本評論社刊)や「高血圧は薬で下げるな!』(角川書店 刊)という本を書きましたが、「血圧を下げたらあかん」など、常識では「とんでもない」 ことでしょう。
けれども「あかん」証拠は揃っています。そもそも、いまの学会の基準を もとに血圧を下げるのは、とても危ないことなのです。降圧剤を使う基準(上140/下90 未満)そのものが、レッドカードの対象なのです。四つの調査に基づいて、どんなにいまの 基準が有害であるかを、お話ししましょう。
1一九八〇年に日本で実施された国民栄養調査の対象者を、血圧の値別に降圧剤を服用していたかどうかで分け、一四年後、自分で身の回りのことができる人(自立者) の割合を見た調査の結果
「降圧剤なし」の人は、下が90~99までの人で自立者の割合がもっとも高く、 降圧剤の服用者より、のんでいなかった人のほうが軒並み割合が高かった。また上 が180未満なら、降圧剤を服用していなかった人は、降圧剤服用者のどの値の人 よりも、自立者の割合が高かった。
2九二~九八年に日本で実施されたランダム化比較試験(公平振分け二重目隠し試験)
七〇歳以上の高齢者は上が160~179ならば、降圧剤(カルシウム拮抗剤) を使用しないほうが健康だった(脳卒中や心筋梗塞にかかる率に差はなく、がんになった 人が少なかった)。
3九二~九七年に実施され、九八年に発表された、日本だけでなく、世界的に採用さ れている治療目標値(130/85未満)を決める根拠となった、欧米で実施されたラ ンダム化比較試験、HOT研究
130/95未満でよかったのは、心筋梗塞にかかる人が減ったことだけで、下 の血圧を80近くまで下げると、90未満を目標に下げるよりも、死亡率が高くなっ た。二〇〇〇年の新ガイドラインは、主にこのHOT研究を根拠にしていたが、そ の根拠がないことを認め、一四年の改訂で上130/下55という数字を撤回した。
4日本で実施されたランダム化比較試験のJATOS試験
収縮期血圧160以上で、平均172/89程度の高齢者(六五~八五歳) 四四一八人を、カルシウム拮抗剤を用いて140未満を目標とする厳格群と、 140~160未満を目標に緩やかに下げる緩和介入群に分けて、二年間追跡した 結果
p.74
二年後の血圧は厳格群で平均36程度下がり136/15に、緩和介入群は平均25 程度下がり146/78となった。
脳梗塞の発生 (三六人対三〇人) や、 心筋梗塞 (六人 ずつ)には差がなく、総死亡は厳格群が五四人、緩和介入群が四二人だった。統計学 的には有意の差ではないが、厳格群が緩和介入群より、三割近く死亡が多かった。 この差が本当にあるとすれば、三七〇人を厳格に降圧すれば、年に一人ずつ降圧剤 のために余計に死亡する、ということになる。
国民健康・栄養調査の結果では、一四年には成人の二八%が降圧剤を服用していました ので、実際に降圧剤を服用している人は、二八〇〇万人に達していると推定されます。
し たがって、年間約七・六万人が余計に死亡する可能性があります。
〇九年には、さらに多 くの人に降圧剤を使用するように、ガイドラインが改訂されました。
ガイドラインどおり に治療すると、一三万人が余計に死亡することになりかねません。
これは、コレステロー ル低下剤による推定死亡者数(一万~三万人)よりも確実に多く、ぞっとするような数字 です。
ブログ著者備考
(1)この本には年間7.6万人、13万人が死亡する血圧の値がはっきり書かれていません。この点は問題です。
この本の前の方の部分の書き方から推測して、上130/下85未満、上140/下90未満付近まで降圧剤で下げると、年間7.6万人~13万人が死亡する計算になると理解しておけば良いと思います。
(2)この本のp.64の記載によれば、LDL140mg/dL以上は脂質異常症という基準で、コレステロー ル低下剤による推定死亡者数(一万~三万人)と計算されると推定されます。
(備考終わり)
血圧が高くなるのは、必要があってのことです。
p.75
生命の危機に際しては、アドレナリンが分泌され、体の筋肉や心臓など、必要なところに十分に血液を送り込む必要がありま す。必要なのに血圧が下がれば、酸素や栄養分が不足して、不都合が生じることにもなりかねません。
高齢者はもちろん、若い人でも180/ 110程度までなら、薬を使う必要はありません。
むしろ、血圧が上がっている理由を見つけ、取り除くことができる原因 があれば、それを取り除くことこそが、本当に必要なことなのです。血圧を上げる原因が 取り除かれれば、自然に血圧は下がってきます。まずは、ご自分の行動パターンや身辺の ストレスの原因などを、見直すことからはじめましょう。
種類とその特徴は?
代表的な降圧剤は、五種類あります。大きく分けると、短期では害作用がやや目立つが 長期では安全なもの、短期で害作用は目立ちにくいが長期にじわじわと問題が出るもの、 があります。
前者は利尿剤やβ遮断剤、ACE阻害剤(アンジオテンシン変換酵素阻害剤) です。後者はカルシウム拮抗剤と、ARB(アンジオテンシンII容体拮抗剤)です。
高血圧の重要な原因の一つは、「塩分」です。塩分とともに水を排泄させるチアジド (サイアザイド)系降圧利尿剤がもっとも安全に使えて寿命の延長も確認され、しかも安価
p.76
です。交感神経が興奮すると血管は細くなり、心臓が強く収縮して、血圧を上げます。ドキドキ興奮しやすい人は、交感神経の興奮を抑え、心臓の収縮力を抑えるβ遮断剤や、 血管を広げるACE阻害剤が、長期の効果が確認されていて、よい降圧剤です。
一方、カルシウム拮抗剤は、短期には副作用が目立たなく使いやすいのですが、長期で延長は証明されておらず、むしろ心臓に負担がかかり、心不全が増え、がんもできやすくなります。
日本でもっとも多くの費用が使われているARBも、短期には咳など の副作用が少ないですが、長期的に心不全の患者さんに使った比較試験の結果、ACE阻害剤に比べると、突然死が多く起こりました。 一〇年に発表された総合解析の結果では、がんを一一%増やすことが示されました。 私の再解析では、一四%増でした。重症感染症の敗血症や、それによる死亡も約五割増えました。 がんも敗血症も、 ARBの免疫抑制作用のためです。 カルシウム拮抗剤やARBが多用されている現状は大変心配です。
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https://www.medical-confidential.com/2018/08/19/8051/
第102回 スタチン剤の害とガイドライン
集中出版 2018年8月17日
医薬ビジランスセンター
総合健診では、コレステロール値のみ異常とされる人が少なくない。日本動脈硬化学会ガイドライン(動脈硬化GL)の基準値のためだ。薬のチェックTIP78号(2018年7月)では、日本脂質栄養学会の「長寿のためのコレステロールガイドライン(長寿GL)」と、動脈硬化GLを対比しながら、コレステロール値を下げる必要はないこと、スタチン剤には様々な害作用があることを指摘した1-3)。その概略を紹介する。
「寿命延長」が目標なら低下剤は不要
数ある診療ガイドライン中、長寿GLは、「寿命の延長」を目標に作られた優れたガイドラインである。長寿GLによれば、多数のエビデンスに基づき、総コレステロール値、LDL-コレステロール値が高めは長寿の指標だ。特に60歳以上では、LDL-コレステロール高値の人の総死亡率は、低値の人の約2分の1であった。従って、スタチン剤などコレステロール低下剤は必要がなく、害を考慮し使用しないよう勧めている。
動脈硬化GLでは成人の40%近くが要治療
一方、2017年版動脈硬化GLは、総死亡はもとより、心疾患死亡の減少をも目標とせず、LDLコレステロールを薬剤で下げることのみを目標としたガイドラインである。
他にリスクがなくとも、60歳以上、というだけで、総コレステロール値220以上(LDL-コレステロール値140以上)は治療の対象、65歳未満でも、同240(160)以上は治療対象とされる。
既にコレステロール低下剤を用いている人と、これらの新たな対象者を含めると、女性では成人人口の42%が低下剤服用対象者になる。そして、薬剤費だけで現在でも3500億円を消費しているが、医療費全体では1兆円をくだらない。動脈硬化GLに従えば、さらにこれらは膨らむ。
スタチン剤は動脈硬化を防止せず、様々な害
スタチン剤は、膜構造に必須のコレステロールの不足、ならびに、プレニル中間体から合成される種々の重要な生体物質の不足を招き、細胞毒となり、生体に対して様々な害を及ぼす。
その結果、抗炎症作用があるものの、感染症を増加し、発がん性がある。
スタチン剤は動脈硬化を防止せず、むしろ動脈硬化を促進する。また、糖尿病を悪化させる。その機序も、上記の通り明瞭である。
スタチン剤は筋傷害を起こす。家族性高コレステロール血症のスポーツ選手にスタチン剤を用いると、90%以上で耐えられない。
スタチン剤は、末梢神経障害だけでなく、中枢神経障害を起こす。中でも筋委縮性側索硬化症(ALS)を発症させることが疫学調査で明瞭である。
さらに、スタチン剤が、ランダム化比較試験の結果、認知症を誘発することが明らかとなり、これを重視して米国FDAは警告を発している。
結論
動脈硬化GLに基づく診療では、最も健康な人が病人として毒性の強いスタチン剤が処方される。長寿を目標とした長寿GLに従い、スタチン剤などコレステロール低下剤は使わないようにすれば、無駄な医療費を使わずに健康でかつ長寿を達成できる。
参考文献
1) 動脈硬化GL批判、薬のチェックTIP、2018: 18(78):76-81
2) スタチン剤の害、薬のチェックTIP、2018: 18(78):88-90
3) その他参考文献 http://npojip.org/chk_tip/No78-f04.pdf