
船はゆっくり沈んでゆく
沈み行く姿を眺めていると
こちらまで息苦しくなってくる
誰も船には乗っていない
それは明らかだ
波は穏やか
赤ん坊の寝息のように
規則正しく繰り返される運動
ちょうど午前1時を迎える頃
それはしっかりと始まった
なまぬるいとも 肌寒いとも
はっきりしない気温のなか
気持ちをどこかに落ち着けようにも
置き場所は与えられなかった
結局、あきらめてとどまるしかなかった
僕はほんの少し前まで
眠りにつこうと思っていたところだった
何とはなしに ぼんやりと海に目を向けたのだ
船は 静かにゆっくりと
そして確実に沈んでゆく
フェイドアウトで消えるように
沖へ進みながら 見えなくなる
僕に背を向けて
語るべきことは何もないという風に
船は月明かりに照らされて
青白い光を放っているかのよう
ゆらめく波が空気中の闇に溶け出しているみたいに見える
変な確信があるのだが
僕はおそらく
ただ一人の目撃者
誰かを呼びたかったが
これはとんでもないことだという思いと
なんて美しいのかという思いが交錯し
それを思いとどまらせた
船の姿が見えなくなるにつれ
自分の立ち位置が分からなくなってきた
だけど
目の前の出来事から
視線をそらすことはしまいと決めていた
なぜこの場に僕が立ち会うことになったのか
ひょっとすると
誰かが仕組んだことなのだろうか
なんのために?
よくわからない
そんなことを考えているうちにも
淡々と船は沈みゆく
静かに
ゆっくりと
そしてついに
船はすっかり海中へ
姿を消してしまったのだ
沈み行く姿を眺めていると
こちらまで息苦しくなってくる
誰も船には乗っていない
それは明らかだ
波は穏やか
赤ん坊の寝息のように
規則正しく繰り返される運動
ちょうど午前1時を迎える頃
それはしっかりと始まった
なまぬるいとも 肌寒いとも
はっきりしない気温のなか
気持ちをどこかに落ち着けようにも
置き場所は与えられなかった
結局、あきらめてとどまるしかなかった
僕はほんの少し前まで
眠りにつこうと思っていたところだった
何とはなしに ぼんやりと海に目を向けたのだ
船は 静かにゆっくりと
そして確実に沈んでゆく
フェイドアウトで消えるように
沖へ進みながら 見えなくなる
僕に背を向けて
語るべきことは何もないという風に
船は月明かりに照らされて
青白い光を放っているかのよう
ゆらめく波が空気中の闇に溶け出しているみたいに見える
変な確信があるのだが
僕はおそらく
ただ一人の目撃者
誰かを呼びたかったが
これはとんでもないことだという思いと
なんて美しいのかという思いが交錯し
それを思いとどまらせた
船の姿が見えなくなるにつれ
自分の立ち位置が分からなくなってきた
だけど
目の前の出来事から
視線をそらすことはしまいと決めていた
なぜこの場に僕が立ち会うことになったのか
ひょっとすると
誰かが仕組んだことなのだろうか
なんのために?
よくわからない
そんなことを考えているうちにも
淡々と船は沈みゆく
静かに
ゆっくりと
そしてついに
船はすっかり海中へ
姿を消してしまったのだ