訳詞の森365

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月半小夜曲 李克勤

2021-03-23 | 香港ポップス(広東語)


往年のアイドル河合奈保子は、香港では今もかなりの知名度と人気を保ってゐることを、日本では知らない人も多いかも知れない。ジャッキー・チェンとデュエットした曲のヒットなどが今も記憶されてゐるさうだ。この人は作曲の才能があり、アイドルとしてのキャリアの後半はほとんど自分が作曲した歌を歌ってゐた(ことを最近知った)。その曲の一つ『ハーフムーン・セレナーデ』を李克勤が広東語でカバーしてヒットさせてゐる。大変な人気曲で、いくつものカバー版があり、早やスタンダードのやうになってゐる。

この歌の広東語版歌詞は李克勤自身によるものではないが、これも原曲の日本詞よりはるかに素晴らしい。中国語、広東語のポップソングの詞は珠玉の作が実に多い。これは言語自身の力によるところも大きい。現代中国語や広東語は未だに数千年来培って来た生命を可也の程度まで保ってをり、まだ詩を作るだけの精を失ってゐない。生命力を殺がれ片端になってしまった現代日本語を母語とする者としては羨んでも羨みきれない。

 
月半小夜曲  歌:李克勤 作詞:向雪懷 作曲:河合奈保子

眠れぬ夜半よはにただ独り 仰ぐ千尋の星の海
すすり泣く泣く提琴ヴィオロンの 甘き調べに誘はれて 
空に残るは弦月の ただ一片ひとひらが何故今も
その消息も今宵きり 絶へて御跡も尋ねかね
君は夜空の明月か 抱きもならず手にも触れず
思ひのすぢのもつれては 解けもやらずにまた別れ
ただに失意がわが胸の 虚しさうずむばかりなり
今宵最後の口づけも なくて別れの秋の空

千代の契りは偽りと 知らず添ふ気でゐたものを
君は心を片時へんしも去らず 月のかほばせ物言はぬ
秋月の曲を提琴は 焦がれ死ねとぞ歌ひける


月半小夜曲  歌唱:李克勤 作詞:向雪懷 作曲:河合奈保子

仍然倚在失眠夜 望天邊星宿
仍然聽見小提琴 如泣似訴在挑逗
為何只剩一彎月 留在我的天空
這晚以後音訊隔絕
人如天上的明月 是不可擁有
情如曲過只遺留 無可挽救再分别
為何只是失望 填密我的空虚
這晚夜没有吻别

仍在說永久 想不到是藉口
從未意會要分手
但我的心每分每刻仍然被她佔有
她似這月兒仍然是不開口
提琴獨奏獨奏著 明月半倚深秋
我的牽掛 我的渴望 直至以後

紅日 -李克勤(Hacken Lee)

2021-03-10 | 香港ポップス(広東語)


人生が底の底まで沈んだ時、「偶然」この歌に遇ふ。
「運命にうちのめされても挫けないで、僕がいつまでも君のそばにゐるよ」という詞が、苦しみの海に沈んでゐた私を引き揚げた。私の「傍にゐて」くれる人は実際にはゐなかったにも拘らず、そんな人を得たかのやうに、打ちひしがれた心が慰められる。歌の奇跡のやうな力をこの時ほど深く感じたことはない。李克勤には今もって感謝してゐる。

李克勤は香港ポップス「四天王」の一人。『紅日』は大事マンブラザーズ『それが大事』のカバー曲。彼自身も出演するテレビドラマの主題歌に使はれ大ヒットした。広東語版の詞も李克勤自身が書いているが、これが原曲より遥かに素晴らしい。彼は日本の歌謡曲のカバーを多く歌っており、その詞のほとんどを自身で手がけているがどれも名作揃ひである。

その歌唱とパフォーマンスの魅力は、彼の素直な心が歌声を通して聴き手の心を震はせることである。


紅日

作詞:李克勤(Hacken Lee)作曲:立川俊之

運命に迷い 人生に躓き
不条理に打ちのめされて
恐れにすくみ
生きる喜び失くしても

涙しないで あきらめないで
僕が生涯そばにいるよ
永遠に君と共にいるよ

回り道して
初めてわかることがある
道に迷ひ友もなく
独り部屋の片隅に座る
未熟だったあの日の僕は
倒れ伏して 雨の夜
どれほど涙を流したろう

曲がりくねった道を行くうち
いつしか君が傍らに連れ立ち
僕を熱く励まして
赤く燃える日のように
真実の僕に火を点けた
共に行けば
千の山すら越えられる

そよ吹く夜風に
清しい花の香が
君と僕を祝福している

夕星のさやかな光が
君のすべての希望を照らし
その光の雫が僕をも濡らす

運命に迷い 人生に躓き
不条理に打ちのめされて
恐れにすくみ
生きる喜び失くしても

涙しないで あきらめないで
僕が生涯そばにいるよ
永遠に君と共にいるよ


命運就算顛沛流離
命運就算曲折離奇
命運就算恐嚇著你做人沒趣味
別流淚 心酸 更不應捨棄
我願能 一生永遠陪伴你

一生之中兜兜轉轉 那會看清楚
徬徨時我也試過獨坐一角像是沒協助
在某年 那幼小的我
跌倒過幾多幾多落淚在雨夜滂沱

一生之中彎彎曲曲我也要走過
從何時有你有你伴我給我熱烈地拍和
像紅日之火 燃點真的我
結伴行 千山也定能踏過

讓晚風 輕輕吹過
伴送著清幽花香像是在祝福你我
讓晚星 輕輕閃過
閃出你每個希冀如浪花 快要沾濕我

命運就算顛沛流離
命運就算曲折離奇
命運就算恐嚇著你做人沒趣味
別流淚 心酸 更不應捨棄
我願能 一生永遠陪伴你