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「風評」の迷走

2011年06月08日 18時22分45秒 | 社会問題&時事ネタ
いま、「風評被害」という場合の「風評」の定義について社会が揺れています。

「風評」とは、辞書を紐解けば

世間の評判。うわさ。とりざた。風説。「とかくの-がある」(『広辞苑』第五版)

うわさ。ひょうばん。風評・風聞(『漢字源』)

とあり、それに「被害」という文言が付されれば、読んで字の如く「世間の噂や評判により被る被害」と解されましょう。

つまり、ここで言う「世間の噂」や「評判」とは、その正当性を支えるだけの確たる根拠が見当たらない場合、それらがもたらす被害は全て「風評被害」と規定されるのだと思います。なぜなら、その「風評」自体が真実の情報であるならば、それらは「風評被害」ではなく「実害」そのものとなるからです。

この問題を、昨今の福島原発事故による放射性物質漏れの問題と絡めて考えた場合、その文脈の中で語られる「風評被害」という言葉に時に違和感を覚える時があります。

国が示した「暫定」基準値内の農作物を買い控える消費者の行為に対して、世間一般の空気は時に「風評被害」という言葉と絡めて批判をする時があります。

また、震災後に東北に来る観光客の数が激減した現象を指して、それを安易に「風評被害」という言葉を用いて報道される時もあります。

私の立場(被災者)でこのようなことを言うのは本当に心苦しい限りですが、敢えて理性と良心に基づいて本音を述べれば、その世の風潮は「風評被害」という言葉の乱発に映る時もあり、逆に問題を核心から遠ざける要因になっているような気もするのです。

では、幼い子どもたちの身を案じて買い控えをする母親の行為は批判の対象となるのか、また「地産地消」を謳い被災地の農作物を進める農家の方々に罪があるのか?-- 私はどちらも悪くなく、どちらにも罪がないと考えています。逆に、どちらも犠牲者と言えるぐらい居た堪れない気持ちになる時が多々あります。

既述もした辞書の表記からも分かるように、「風評」による被害を抑えるのは、何を隠そう「風評」に勝る「正しい情報」でしかありません。その「正しい情報」があって初めて「真実」と「風評」の違いが明確になり、「安全」と「実害」の境目が共有できるのだと思います。

いまの社会を直視すると、その風評被害を未然に防ぐ「正しい情報」の「正しさ」を支える根拠が喪失しているような気がしてなりません。

誤解を恐れずにさらに言えば、政府の出す情報は本来「信頼」に値する情報でなければならないのに、以前當寮でも取り上げたドタバタ劇に象徴されるように、その政府から出る情報の信憑性が著しく損なわれており、それが原因で「真実」と「風評」の区別が曖昧になっていることが元凶のような気もします。要は、政府の出す情報が信じられないのです。

そのような現実を目の当たりにした国民は、政府から出る情報の信憑性(正しさ)に最初から疑念を抱き、本来安全なるものまで買い控える「風評被害」に拍車をかけ、被災地復興の足枷となる経済の停滞を招いているのだと思います。これは裏を返せば、風評被害の「風評」を政府自らが発信していることに他なりません。

私個人としては、このような問題(福島第一原発の放射性物質もれ事故)が起こってしまった以上、一時的に被災地は冬の時代に突入しようとも、きちんと国際ルールに照らし合わせた安全基準を導入し、どこの場所(農作物)は安全で、どこの場所(農作物)は危険であるという「正確な情報」を世に発信すべきだと思います。

その代わり、そのシワ寄せを喰う被災地や第一次産業従事者(農業・林業・漁業従事者など)に罪はない訳ですから、国による物心両面の支援をピンポイントで当てて補償をすれば良いのです。そうすれば「風評被害」による経済の停滞や、言われなき差別の横行は少しは抑えられるのではないでしょうか。要は、今の政府の情報だと、何が「安全」で何が「危険」なのかが分からぬゆえ、消費者は疑心暗鬼に陥っているのだと思います。

こういう有事の際には、票の獲得を目論む耳触りの良い言葉(情報)よりも、一時的に支持は失うかもしれませんが、我々にとって耳の痛い言葉(情報)と心中できる政治家が求められるのだと思います。そのような胆の据わった政治家は、必ずや歴史がその評価を下すでありましょう。

薬害エイズを追求した時の気概はどこへ行ってしまったのでしょうか--。 この見立ても「風評」による被害であるか否かは読者の方々の判断に任せます。


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