建築家との住まいづくりレシピ館from/for 館長ブログ

建築家との家づくりをお考えの方、自分なりの家づくりを求める方、フロムフォー(掛川市)では建築家との橋渡しします。

プロセス紹介 A邸の場合(11)~家族とともに成長していく住まい~

2011年11月21日 | プロセス紹介(A邸)
今回の家づくりで施工を担当したのは、地元の工務店 株式会社S建設だ。
社長が大工から会社をおこした人だから、木の家づくりに強い。自然素材を活かした家づくりは、若い世代を中心に増えている。

さて、このS建設の社是は「引渡しを以って半ばとする」だ。引渡しでおしまいなのではなく、そこから長いおつきあいが始まるということだが、それはフロムフォーも同じだ。
建築家との住まいづくりレシピ館「フロムフォー」として、また住宅設備の「タツミガス」として、これから長いお付き合いになる。
「火がつかないよ~」
「お湯が出ないよ~」
生活していくうえで出てくる様々なハプニング。その都度、関わっていくことになるわけだが、実はそうして訪問できることをけっこう楽しみにしている。それは、子どもたちが大きくなっていくように、家も成長するからだ。人が暮らすことで、様々な味つけがされ、家も味わい深くなっていく。それを見るのが楽しみなのだ。

奥様同様、Aさんにも「この家に暮らす楽しみ」を聞いてみた。
「会社から家に帰るときが、楽しみかなあ~(笑)」
Aさんには最初から、まだ建築家の誰とも会っていないときから、「こうしたい」というイメージがあった。だから、お仕着せの、最初から形ありきの家づくりでは「何かが違う」と感じたのだ。
建築家との家づくりはエネルギーがいる。与えられるものをそのまま享受する方が楽(ラク)に決まっている。でもAさんは違った。だから、それぞれのプロフェッショナルな関係の中で幸福な家づくりが実現した。

自分の暮らし方は生き方そのもの。
Aさんに出会って、改めて感じたことだ。

さあ、引渡しも終わったことだし、ひとっ走りしてこうようかね。今日の気分はロードバイクかな(笑)。

  

プロセス紹介 A邸の場合(10)~幸せな組み合わせによる家づくり~

2011年11月21日 | プロセス紹介(A邸)
幸せな組み合わせが実現した家づくりだったね、と振り返るのは建築家のTさん。
「施主、建築家、施行業者、そしてフロムフォー、みんなの波長が合ったんでしょうね」
この言葉は嬉しかった。みんなを結びつけたフロムフォーの存在意義そのもののような気がしたからだ。

「Aさんの漠然としたイメージを聞き、平面図をスケッチし、模型を作ったとき、ああ、この家はいい家になるなと思いました。平面のイメージが立体的に立ち上がった瞬間でした」
Tさんは、施主の「こんなふうに暮らしたい」を、生活の具体的な動作までも落とし込んで設計に反映させていくタイプの建築家だ。家事動線をいかにコンパクトにプランニングするのか、そのあたりは、たぶんTさん自身が家事をけっこうしているのにも関係していると思う。主婦感覚がわかるんだと、Tさんは普段から言っているから(笑)。

Tさんの発言で印象的だった言葉。
「三角形の土地を、どう料理しようか」
「この家はコンパクトだけど、家の中を子どもたちが走る距離はとっても長いね」
「設計とは、どうプランニングし、どう生活を作り上げていくかだ」
「生活って、きれいごとだけでは済まされないからね」

最後のひと言は、実感こもってたなあ(笑)。

プロセス紹介 A邸の場合(9)~奥様のラブレター~

2011年11月15日 | プロセス紹介(A邸)
完成見学会当日、奥様が最初に書いたラブレターを建築家のTさんが持ってきた。「自分がどういう暮らしをしたいのかラブレターとして書いて下さい」というTさんの依頼にこたえてのものだ。

B5のノートにびっしり書いてある。一番上に「マル秘」と書かれているのは、ご主人には内緒の「奥様の想い」だからだ。Tさんは、夫婦で話し合う前に、まずそれぞれの暮らしへの想いを言葉にさせる。そこから想いを伝え合い、話し合い、寄り添ったり、ときには妥協し合うことで、夫婦の、そして家族としての想いに進化させていく。

奥様のラブレターの冒頭には、こんな言葉があった。
「『あっ、この家、気持ちいい!』と思える家に住みたい」
「家と外との境界がゆるい家。いつも外を感じられる家」
今、こうして家が形になり、最初の想い、そのままの住まいになった。

奥様に、「これからこの家に住むにあたって何が楽しみ?」と聞いてみた。
「全部!」
答えは明瞭だった。

    

「家を作っていくプロセスの中で、『建築家に頼むなんてすごいね』とよく言われました。私自身も、まさか建築家に家を設計してもらうだなんて、考えてもみなかったんです。建築家に頼むのって、お金持ちだったり有名人だったり、うんとゴージャスな家を建てる人だったり、そういう特別な人たちが依頼するものだってイメージがあり、私たちのようにごくごく普通の家族が頼むようなものではないって、どこかしら思っていたんです。でも、建築家と家づくりをしていく過程で、普通の家だからこそ、お金がうんとあるわけじゃないからこそ、建築家にお願いすることによって自分たちらしい家が作れるんだって実感しました」
そして奥様は、家の中を気持ちよさそうに見まわしながら、こんなふうに言ってくれた。
「敷居が高いと思っていた建築家と引き合わせてくれたフロムフォーに感謝です。『近所だからちょっと寄ってみた』という主人の気軽な行動も、『よくやった!』とうんと褒めてあげたくなりますね(笑)。だってそれが建築家のTさんとめぐり逢い、今、この家があることにつながっているのですから」

プロセス紹介 A邸の場合(8)~完成見学会にて~

2011年11月15日 | プロセス紹介(A邸)
2011年11月5日6日、A邸の完成見学会が行われた。

30代のご夫婦+お子さん2人の住まい。
三角形になった特徴ある土地を活かしながら、
緑に包まれたのどかな環境の中に、
やさしく佇む清々しい木の住まいを、
地域の建築家と一緒に、つくりました。


見学会のチラシに書いた言葉だ。

家づくりは、「どんな暮らしをしたいのか」を常に考えていくプロセスのように思う。少しわかりやすくいえば、何LDKという間取りの上に人が暮らすのではなく、暮らしの上に家の間取りやスタイルがあるということだ。だから、自分たちのスタイルを紐解き、言葉で伝えることが大切になる。
でも、誰もが自分のスタイルを言葉にできるわけではない。漠然としたイメージを持っているくらい。
それを、じかに建築家や施工会社や建築メーカーに形にしてもらおうとすると、どうしても建築家のスタイルや会社の方針に引っ張られることになる。だからこそ、間をつなぐ、フラットな立場のフロムフォーの存在意義があるのかなと思うのだ。
Aさんの場合も、趣味の話から、また何気ない会話での言葉の端々から「Aさんはこの建築家のスタイルと合いそうだな」とか「家づくりのプロセスはこの建築家とマッチしそうだな」といった印象を読み取る。そうしてはじめて、登録建築家のファイルを見たり、家を見に行ったり、という具体的なプロセスに入っていくのだ。

さて、建築家との橋渡しをするようになってもう7年以上が経つが、家づくりの進め方は本当に様々だ。
今回の建築家Tさんは、どんなふうに暮らしたいのかを「まず、ラブレターとして書いてほしい」と依頼する。文章からのインスピレーションも大事にして、形にしていくタイプなのだ。
Aさんは、夫婦別々に「自分はこういう暮らしがしたい」とイメージをしたためた。
そのラブレター、Aさんの了解を得たので公開します(笑)。