建築家との住まいづくりレシピ館from/for 館長ブログ

建築家との家づくりをお考えの方、自分なりの家づくりを求める方、フロムフォー(掛川市)では建築家との橋渡しします。

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第8回「ライフスタイル・リノベーション」(ゲスト:建築家 小澤義一さん)

2012年09月06日 | ライフスタイル・リノベーション

■「ライフスタイル・リノベーション」とは
震災以降、一人一人の生き方や暮らし方が問われている今、では日々の暮らしの器である住まいはどうあるべきか。生活を変えようという生活者に対して、設計、デザイン、住宅設備等について、いま専門家たちは何を考え、何を語るのか――。
この「ライフスタイル・リノベーション」では、地域の建築家8名に出演いただき、全8回(1月~8月)にわたり「生活をデザインする」を考えます。

住まいづくりを検討している方、
近隣の建築家を知りたい方、
建築家との住まいづくりはどんな感じだろうと思っている方、
ぜひ足を運んでみてください。

※「ライフスタイル・リノベーション」はfrom/for(フロムフォー)とTOTOのコラボレーション企画です。このブログでも、8回にわたりレポートしています。

   

■8/25(土)第8回【最終回】の建築家は小澤義一さん(掛川市在住)
最終回となる第8回目のゲストは、有限会社小澤建築設計事務所 所長の小澤義一さんです。店舗兼自宅を17年前に増築された施主の林さんご夫婦にもご登場いただき、「施主とともに住まいづくりを語る―生活とともにある建築―」をテーマに語っていただきました。司会進行は、株式会社川島組の松浦昭満さんです。

「施主とともに住まいづくりを語る―生活とともにある建築―」

出演者:小澤義一さん(建築家)、林さんご夫妻(施主)、松浦さん(司会、「建築が語る~トーキングアーキテクチャー~」主催者)

●住まい手がその家で暮らす姿をイメージする
松浦 はじめに、林さんのお宅のリノベーション概要について説明をお願いします。

小澤 林さんのお宅は、写真館の店舗とスタジオ兼自宅の建築で、鉄骨2階建て、ペントハウスと屋上のある建物です。スタジオがあり、小さな店舗があり、ご両親と一緒の生活の場もあり、そうした店舗兼自宅の空間を増築したいというお話でした。
私の建築は、住み手がその家に暮らすイメージを高めることから始めます。この二人がその家で暮らしている姿や、その家から出てくる姿をイメージしてデザインしていきます。打ち合わせを重ね、この人たちを知り、どんな生活をしたいか一緒に考えていくことで「家」というものを考えていきます。まあ、時間はかかりますね(笑)。

松浦 設計事務所に頼むというのは「敷居が高い」という印象がありますが、林さんはどういう経緯で小澤さんに設計をお願いしたんですか?

 17年程前というと、同世代の友人たちが次々と家を新築していた時期でした。引越しの手伝いや、新居を見に行ったりする機会が増える中で、1軒だけ他の家と違う「いいなあ」と思える雰囲気の家がありました。それが、小澤さんの設計した家でした。
ちょうど、自宅に自分たちのスペースがほしいなと思っていた頃だったので、小澤さんに頼みたいなと思いました。年回りを見ると「今年しかない」ということで(笑)、すぐにお願いに行きました。

松浦 「いいな」と思ったそのお宅は、小澤さんのハトコの方の家で、そこの奥さんが林さんの奥さんと友だちだったということですね。

小澤 建築は縁ですね。縁でつながっているというのを感じますね。

●建築は時間が経つほどに良くなるもの
松浦 では、実際にどんな建築になったのかご紹介下さい。

小澤 林邸のある場所は、掛川の歴史ある通りで、旧東海道の七曲りといわれるところにあります。まちなかですが、建物の北側の景色がきれいなので、景観や歴史を活かした家を建てたいと思いました。
建物自体は、この奥さんの雰囲気に合っている家ですね(笑)。ちょっと洒落た洋風ですが、木の質感と漆喰が“和の感じ”を出している建築です。

室内はスタジオが一段高いところにあるので、スキップフロアにして、中段層の階段を付けて仕切りました。今、スキップフロアはわりと流行りですが、17年前はまだあまりなかったですね。上下の空間が面白くなったと思いますよ。先日もおじゃましましたが、ますます「いい空間」になっていました。

松浦 経年変化を感じられる家ですね。

小澤 建築は、時間が経つほど良くならなければいけないものだと思っています。

 本当に、小澤さんにお願いしてよかったと思います(笑)。

小澤 この奥さんは料理が上手なので、ときどき私も楽しませてもらっているのですが、ゆったりできる空間ですよ。時間の感覚がなくなり、すぐ午前様になってしまう(笑)。普段、飲めない人が飲んで酔っ払ってしまうくらい、リラックスできる空間です(笑)。

     

●本物、スタンダードを目指す
松浦 今、小澤さんの方から林さんのお宅はまちなかの歴史ある通りだというお話がありましたが、まちなかにおける建築のポイントなどをお話いただけますか?

小澤 ちょうどその頃、掛川市では掛川城天守閣が復元され、同時に「城下町風まちづくり」が行われていました。条例をひいて、まちづくりや景観に合った建築をやろうといったのは、掛川がはじめてじゃないかな。
ただ、建築を条例でしばるのはどうかな、と思います。しかし、景観的にバランスは必要だからやらなきゃいけないんだけど、市がやろうとすると、コンサルが絵をかいてゼネコンがつくるものだから、みんな同じようになってしまう。建築はそのまちの個性、そこに住む人の個性を考えてやるべきで、私もまちなかで二軒、和菓子屋さんと八百屋さんを景観条例の中でやったけれど、今も色あせてないと思います。一つ一つ考えてやっていれば、いつまでも光っているということです。

松浦 建築家の設計は“施工者泣かせ”というイメージがありますが、今日はちょうど林邸を施工した会社の専務さんがいらっしゃってますので、ちょっとお話を伺ってみます。

尾崎 施工者泣かせということに関しては、お客さんのイメージと先生のイメージと予算の兼ね合わせが難しいですね。先生は素材を大切にされる方なので、レベルを下げるのではなく、素材の良さを表現しながら同じレベルを維持し、その上でコストを下げるにはどうしたらいいかを考えました。材料自体は安いけれど、精度を要求されます。手間はかかっているけれど、計算上は安くなるので、お客さんにとっては非常にいい展開ですね(笑)。

松浦 その話を聞いて、林さん、いかがですか?

 はじめて聞いたお話ですが、ありがたいですね(笑)。たしかにうちの天井は、釘を使わない合掌で、米松(べいまつ)のピーラーを使っているのですが、大工さんが何日間もずっと天井を見上げながら作業して下さっていたのを思い出しました。ものすごく大変な作業だったと思います。
でも、大工さんも快くやって下さって、今もものすごくいい感じで過ごしています。

小澤 林邸は、天井は米松、床は檜、壁は漆喰です。時間が経つほどにつやが出て、いい色になっていますね。

松浦 小澤さんの設計されるものは、「完成したときから良くなっていく」というコンセプトがあるように思いますが、いかがですか?

小澤 そうだね。例えば車などは、時代とともにデザインがある程度変わり、劣化していく部分があるけれど、建築の場合、ちゃんとしたスタンダードのものを作れば、絶対に劣化しないと私は思っています。
これまで、和風建築の数寄屋も洋風の建築もやってきたけれど、その根本である「本物」「スタンダード」が何かがわかっていれば、和風だろうと洋風だろう鉄筋コンクリートであろうと、その本質は変わらないと思います。同じ匂いがする。それがスタンダードということであり、私が親方から受け継いだものでもあります。

今のプレハブの建築は、カジュアルの服みたいだなと思います。買ったばかりはいいかもしれないが、時間が経つと劣化していく。「流行り」ではなく「スタンダード」が大事です。一生に一度の一番高い買い物ですから、賢くお金を使ってほしいですね。

    

●ライフスタイルを変えなかったら、どんな建築もただの箱
松浦 小澤さんに設計をお願いした場合、家づくりはどんなふうに進んでいくんですか?

小澤 最初にお話したように、一週間に一度程度の打ち合わせをします。あと、いろいろな建築を見ることをします。誰が設計した建物かは言わず、まず見てもらう。安藤忠雄というだけで「ほー」となってはいけないということです。有名、無名は関係ありません。いい建築があっても、見る目がなかったらそれはただの箱ですから。
そして、自分のライフスタイルを考えることです。建物はあくまでキャンパス。生活スタイルを変えなかったら、新しく家を建てても器の空間が変わるだけになってしまいます。それでは意味がない。
だから、設計するときは「どんな生活をするのか?」から始めます。そこに時間をかけます。ゴミだらけの家に住んでいる人は、新しい家になってもゴミだらけ。それではいけない。カルチャーをしなくては。
何か必要で、何が要らないか、ということに建築の面白さがあります。

松浦 林さんは、設計によってライフスタイルが変わったと感じるときがありますか?

 変わったかどうかはわからないのですが、初めて家に入ったとき、幸せな感じはしました。それは今でも変わりません。うちが一番いいな、といつも思います。
あと、小澤さんと話をしていると、漠然とした自分たちの想いが「小澤さんの言葉」を通じてどんどん形になっていった感じがします。

小澤 苦労したけれど、自分たちがゼロから試行錯誤して作ってきた家だから、大事にするんですね。気持ちのこもっていない家に住むと、生活もぞんざいになります。大事な家で、大事に暮らしてほしいですね。

 自分の年齢とともに、飽きのこない生活ができそうです(笑)。

小澤 今回のセミナーはフロムフォーとTOTOの企画です。TOTOさんの前だから言うわけじゃないけれど、日本の設備は優秀です。プレハブの家ではもったいないと思います。
とはいえ、オリジナルな住まいづくりには時間がかかります。建築家が10人いたら10人違うので、出会うのも大変です。しかし、いい人とめぐりあえたら幸せです。だからフロムフォーのようなプロデュースしてくれるところが必要なんです。

セミナーのタイトルを「生活とともにある建築」にしましたが、生活が建築であり、建築にその人の人格や品格が表れます。皆さんも、ご自分のライフスタイルと家を振り返ってみて下さい。面白いですよ(笑)。

   

※セミナー会場には、小澤さんが設計された建築で行われた「建築が語る~トーキングアーキテクチャー~」のパンフレットなども展示されました。トーキングアーキテクチャーは、一般的な完成見学会やオープンハウスではなく、もっと無印的に、空間を使ったコンサートやイベントができないかという企画のもと、主催しているイベントです。これまで「VOL14」まで行われており、コンクリートの打ちっぱなしに影絵を映すなど、地元の芸術家とのコラボレーションや施主と建築家との座談会なども行われています。
◎「建築が語る~トーキングアーキテクチャー~」
http://www.kawashimagumi.co.jp/private/report.html


【全8回を終えて】
地域の建築家8名に出演いただいた「ライフスタイル・リノベーション」も、全8回(1月~8月)を無事に修了することができました。ご参加いただいた皆さま、出演してくださった建築家の皆さま、ありがとうございました。このセミナーが「生活をリノベーションする」きっかけになれば、幸いです。

from/for(フロムフォー)館長 鳥居光

 ※「ライフスタイル・リノベーション」はfrom/for(フロムフォー)とTOTOのコラボレーション企画です。全8回のレポートは、この「from/for(フロムフォー)館長ブログ」にて紹介しています。

※「建築家との住まいづくりレシピ館from/for(フロムフォー)」は、静岡県中西部を中心に様々なタイプの建築家を紹介できるシステムです。現在、登録建築家は14名。お客様のお話を伺い、ご希望や相性を考慮した上で、数名の建築家とお引き合わせいたします。(紹介料はいただいておりません)

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第7回「ライフスタイル・リノベーション」(ゲスト:建築家 高橋雅志さん)

2012年08月01日 | ライフスタイル・リノベーション

 

■「ライフスタイル・リノベーション」とは
震災以降、一人一人の生き方や暮らし方が問われている今、では日々の暮らしの器である住まいはどうあるべきか。生活を変えようという生活者に対して、設計、デザイン、住宅設備等について、いま専門家たちは何を考え、何を語るのか――。
この「ライフスタイル・リノベーション」では、地域の建築家8名に出演いただき、全8回(1月~8月)にわたり「生活をデザインする」を考えます。

住まいづくりを検討している方、
近隣の建築家を知りたい方、
建築家との住まいづくりはどんな感じだろうと思っている方、
ぜひ足を運んでみてください。
(このブログでも8回にわたりレポートします)
※「ライフスタイル・リノベーション」はfrom/for(フロムフォー)とTOTOのコラボレーション企画です。

■7/21(土)第6回目の建築家は高橋雅志さん(掛川市在住)
第7回のゲストは、一級建築士事務所 高橋設計事務所を主宰する高橋雅志さんです。「施主とともに住まいづくりを語る―小さな住まいで大きなくらし―」をテーマに前半は講演、後半は施主である服部さんと対談を行っていただきました。
震災以降、私たちが感じている価値観の見直しを、本質にズバッと食い込むような切り口で語っていただきました。施主の服部さんとの対談も、建築家との住まいづくりがより具体的な形で見え、非常に興味深い内容でした。ぜひ、じっくりお楽しみ下さい。

【第一部 講演】
■はじめに
今日は、住まいづくりについてつねづね考えていること、省エネとか、断熱とか、ソーラーとか、そうしたものはエキスパートにお任せして、私はもっと本質のことをお話したいと思います。
東日本大震災以降、エネルギー問題の見直しが求められていますが、実は、震災以前は「何はともあれオール電化」というようなことを言っていたのを、皆さん、覚えていらっしゃいますか。あれは一体、何だったのでしょうか。私たち生活者は、それが正しいかは別として、マスコミや産業界や公共の声に流され過ぎているのではないでしょうか。今、改めて物事の本質、生活やライフスタイルというものを考えるべきだと思います。

 

■正直な建築
家の形は何が正解か、何から決まるのか、という問いに対して、私の師匠の師匠である吉村順三がこんな言葉を残しています。
「薄皮まんじゅうような建築が本当」
これはつまり、内部の形がそのまま外観にあらわれるということです。
今、世の中を見渡すと、そうではない建物、逆行しているような建物であふれています。差別化を図るためだけにイミテーションのような建築が林立氾濫していていいのか、と思います。

建築物はその土地の地形、自然環境、地域の作法に則って「あるべき姿」があるのではないか、と思うのです。この遠州地域に昔からある民家がどんなところに建っているかを見ると、なだらかな山をおりてくると田んぼがあり、その「山」と「田んぼ」の境に集落があります。今はその田んぼを壊し、それでも足りず山を切り開き、家を建てている。これでいいのか、と思いますね。
自然環境に逆らわない、何百年と培われた作法に則った家づくり、そこに立ち戻るべきだと思います。

■使い勝手の美しさ
「家がほしい」というのは、かつてものがない時代は「箱ものがほしい」と同意語でした。しかし、ライフスタイルが多様化している現代、「箱」がほしいというのは錯覚で、つきつめていくと「思い描くライフスタイル」を手に入れたいがための家づくりなのではないかと思います。
毎日の生活は、きれいごとだけではありません。洗濯物を干し、台所が散らかったまま出かけることもあれば、みっともない格好で家をうろうろすることもある。そういう生活を考えて、オリジナルな住まいとは何かを考えるべきです。

デザインとは設計のことであり、理由があって形があります。ただ面白いから、奇抜だから、というのは、私としては違うかなと思います。もっとも、デザインに対する考え方は人それぞれで、自分はこう思うということなのですが。
アメリカのフランク・ロイド・ライトの師匠であるルイス・サリヴァンはこう言っています。
「形態は機能に従う(form follows function. )」
これがおざなりになっているのではないかという気がします。

 

■足し算の建築、引き算の建築
「足し算の建築」と「引き算の建築」を考えてみたいと思います。
ハウスメーカーにお任せで、どんどん希望を積み上げていく足し算の建築は、尺貫法の現場優先の考え方です。人間の生活や動作から内法(うちのり)寸法かを考えていく手法は、人間優先の考え方です。現場にいると、つい現場優先になりがちですが、建築家はあくまで施主に寄り添い、設計思想やデザインを追求していくべきだと思います。そうすることで初めて「なるほど!」というものができると思います。

■その向こう側にあるもの
今の住宅は、「省エネ」「高気密高断熱」「○○工法」「オール電化」「オートロック」「外から予約」など、わかりやすい言葉と数字が並んでいます。
「より便利に」「より快適に」を目指したハイテクの結集ですが、来年になると古くなるという宿命も持っています。企業の論理として、新しいものを作り続けなければ経済活動が回っていかない仕組みの中で仕方がないという側面もありますが、「本当にそれでいいのか」を考えなければいけません。そうした企業の論理に踊らされる前に、今一度、冷静な目と自分の頭で判断して考えてもらいたいと思います。

ある意味、こうした機能はすべて、お金があればできることです。昔はなかったもの、なくても生活に支障はないものばかりです。優先順位の中で、予算の許す範囲でやればいいことです。
生活者としてもっと本質的なことを考えることです。それが、品格や居心地というもの作り出します。何百年と培われてきた日本の作法というものに、今一度、立ち返るときだと思います。

■小さな住まいで大きな暮らし
新築だけでなく、リフォームにも同じことがいえます。「増築」ではなく「減築」を考えてみたらどうでしょう。物があることが豊かさの象徴だったのが、高度成長とバブル景気を経て「それは違うのではないか」と人は気づき始めています。今、自分のありたい生活がわからなくなっているのではないでしょうか。
もののあふれた貧しい生活、ということをぜひ考えてみて下さい。その考えるヒントになるのが「9坪ハウス」です。ものに縛られない生活を決心しないとなかなか住めませんが、それでも一人7坪、四人家族で28坪の生活を実現したお施主さんがいます。
後半にご登場いただくのは、現在4人家族で、5人が目標の服部さんです。28坪の家を作りました。

  

せまい家は、敷地も小さくてすみ、コストもランニングコストもかかりません。掃除が楽で、手間も省けます。「あったら便利だな」というものは、いらないものです(笑)。
吉田兼好の「家のつくりようは夏をもって旨とすべし、冬はいかようにも」の言葉どおり、生活を別の視点で見ると、豊かな暮らしとはどんなものか、見えてくると思います。

     

【第二部 対談】
出演者:高橋雅志さん(建築家)、服部さん(施主)、佐藤雄一さん(司会、商環境プロデューサー)

  

佐藤 建築家というとやっぱり敷居が高く、直接コンタクトを取るのは勇気がいるとよく聞きますが、服部さんはいかがでしたか?

服部 そうですね。建築家の印象として気難しいイメージがありますから(笑)、直接連絡するのに勇気がいったかもしれません。わが家の場合、フロムフォーさんを通じて高橋さんを紹介してもらいました。

どうして建築家にたどり着いたのかをお話しますと、まず、正月にログハウスの広告を見つけまして、展示場に行ってきました。そのとき、土地を探すサイトを紹介してもらい、今の土地を見つけました。「土地が見つかったから、家を建てよう!」というノリでしたね(笑)。

そもそもログハウスに興味があるくらいなので、人から与えられた家はいやだったんです。それでインターネットで様々な建築家を探している中で高橋さんのサイトと出会いました。私も嫁も出身が兵庫県なので、高校生のときに阪神淡路大震災を経験していて、地震に対する強度も重要事項でした。なので、地震に安全な住宅メーカーを選ぶか、建築家を選ぶかで悩んでいた、というのが正直なところでした。

佐藤 そこで、フロムフォーと出会うわけですね。

服部 はい。同じ掛川市内に建築家を紹介してくれるシステムがあると知り、近所なので行ってみようと軽いノリでした(笑)。そこでフロムフォーの鳥居さんと出会い、いろいろ話しているうちに、気が合うというか、この人と話していると面白いということを感じました。実は夜遅くフロムフォーにおじゃましたことがありまして、そこで2~3時間だったかな、じっくり話をして、建築家との家づくりを決心したんです。住宅メーカーか建築家で迷っていた時期で、そのとき吹っ切れた感じがしましたね。

佐藤 鳥居さんとはどんな話をしたんですか?

服部 趣味の話とか、家づくりとは関係のない話が主だったんですが、その中で鳥居さんが以前は大手住宅メーカーにいたことを知りました。住宅メーカーにいた人が、今は建築家と生活者のあいだを取り持つような仕事をしていることに、まずは「へえ」と思いました。そして、鳥居さんの言葉で印象に残っているのが、「住宅メーカーと建築家と同じ条件の土地で一斉に家を建てることはないのだから、住宅メーカーの耐震に強いというイメージや数字にだけ、惑わされない方がいい」ということでした。
実際、高橋さんからも、静岡県は全国の建築基準法よりさらに厳しい条例があるから、普通に建てても充分な強度はあるという話も聞きました。

佐藤 フロムフォーの紹介システムで、どんなふうに高橋さんに行き着いたのですか?

服部 私の話をじっくり聞いていただいた上で、まずは三人の建築家を紹介してもらいました。どんな家を建てる、という建築家としての特徴だけでなく、どんな性格なのか、どんな人と合うのか、どんなふうに家づくりを進めるのか、そんなところまで熟知しているからこそ、こうした紹介ができるのだと感じました。紹介された三人の中で、資料を見た上で、二人の方の建てた家を実際に見に行きました。ご本人にも会いました。その上で、やっぱり高橋さんに決めました。

佐藤 実際、建築家との住まいづくりはいかがでしたか? エネルギーがいるという印象がありますが。

服部 それが、一度も面倒くさいと感じたことはなかったんです(笑)。逆に「もうできちゃった」「もう打ち合わせをすることはないんだ」という寂しい気持ちになりましたね(笑)。鳥居さん、高橋さん、そして工務店の現場監督さんも含め、プロ意識のあるいいメンバーに恵まれました。

「わざわざ余分に設計料を払って、よく建築家に頼んだね」と言われることもありますが、実感として全然そうは思いませんでした。実際、仕様設定からコスト管理までしてくれますから、決して高くはないと思います。
建築家というと、人によっては曲線を多用するとか、思うようにされてしまうとか、言う人もいるけれど、全然そんなことはありませんでした。もし意見が対立するようなことがあれば、応戦しようと思っていたくらいです(笑)。

 

「服部くんちは、何LDL?」という質問もよくされますが、この家はそんな範疇で答えられない家だと思います。そもそもその質問自体、規格に自分の生活を合わせているということです。先ほどの高橋さんの話にもありましたが、ここ数十年の住宅メーカーの情報に影響されている、毒されている(笑)、ということなんだと思いました。

高橋 つきつめれば、「ありたい生活を形にする」ということなんですね。私の場合、一緒に住まいづくりをされるお施主さんには、「ラブレター」と呼んでいる要望書を書いてもらっています。服部さんのラブレターを、ちょっとご紹介してもいいですか?

 

服部 はい、大丈夫ですよ(笑)。

高橋 ご主人は、10年後、20年後、30年後、自分の家でどんなふうに何暮らしているのかを文章にしてくれました。例えば10年後、「玄関に入って『ただいま』というと、その気配を感じて子どもたちが飛んで来てくれる。疲れがふっとぶ瞬間だ」とか、「休日にしたいこと。土いじり、庭のかまどでピザづくり、庭で子どもたちとはしゃぐこと」といった感じです。

奥さんの方は、「この家、気持ちいいねと感じられるような家に住みたい」「面倒くさがりやなので、家は小さい方がいい」「お母さん、○○どこにあるの?と言わせない家」というような感じです。

「要望を吐き出す」というより、書いているうちに思いのたけや、どんな暮らしをしたいのかのイメージが膨らんできた、という感じですね。ハウスメーカーだと、要望を住まいにぶち込むという感じです。ある意味、足し算の建築です。
住まいづくりにおいて、すべての要望に応えられるわけではありません。建築家は、そうした細かな要望から全体の生活やライフスタイルをイメージし、細部のどこを削るのかを一緒に考え、一緒にそぎ落としていく引き算の住まいづくりです。「ハード」ではなく「ライフ」から考えるということでしょうね。

服部さんの場合、土地を買う前の時点から、フロムフォーの鳥居さんや私に相談してくれたのもよかったと思います。地域のコミュニティのこと、地盤のことなど、地元だからこそアドバイスできることもありますから。

佐藤 服部さんの住まいづくりは、決して特殊な事例ではないと思います。フロムフォーのようなところがあることで、自分にぴったりあった建築家と出会うことができ、ある意味、いろいろな面であいだに入ってもらうこともできますから。TOTOさんにも、フロムフォーのような機能があったらいいですね(笑)。
最後に、改めて建築家との住まいづくりを振り返って、いかがでしたか?

服部 住まいは何千万円も出して買うものだから、ただ買って終りではなく、お金の使い方として楽しまなければもったいないと思いました。家族全員、ものづくりの過程が楽しめたと思っています。先ほども言ったように、いいメンバーに恵まれたと思っています。

【次回予定】
次回(第8回・最終回)「ライフスタイル・リノベーション」は、8月25日(土)13:30~15:30に開催します。ゲストは掛川市在住の建築家小澤義一さん。テーマは「施主とともに住まいづくりを語る―生活とともにある建築―」です。どうぞお楽しみに!

【参加ご希望の方】
「ライフスタイル・リノベーションプロジェクト事務局」までご連絡下さい。
TOTO株式会社 浜松営業所内/担当:山本
kazuhiro.yamamoto@jp.toto.com
053-465-1010

※「建築家との住まいづくりレシピ館from/for(フロムフォー)」は、静岡県中西部を中心に様々なタイプの建築家を紹介できるシステムです。現在、登録建築家は14名。お客様のお話を伺い、ご希望や相性を考慮した上で、数名の建築家とお引き合わせいたします。(紹介料はいただいておりません)

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第6回「ライフスタイル・リノベーション」(ゲスト:建築家 藤田昌弘さん)

2012年07月07日 | ライフスタイル・リノベーション

■「ライフスタイル・リノベーション」とは
震災以降、一人一人の生き方や暮らし方が問われている今、では日々の暮らしの器である住まいはどうあるべきか。生活を変えようという生活者に対して、設計、デザイン、住宅設備等について、いま専門家たちは何を考え、何を語るのか――。
この「ライフスタイル・リノベーション」では、地域の建築家8名に出演いただき、全8回(1月~8月)にわたり「生活をデザインする」を考えます。

住まいづくりを検討している方、
近隣の建築家を知りたい方、
建築家との住まいづくりはどんな感じだろうと思っている方、
ぜひ足を運んでみてください。
(このブログでも8回にわたりレポートします)
※「ライフスタイル・リノベーション」はfrom/for(フロムフォー)とTOTOのコラボレーション企画です。

■6/30(土)第6回目の建築家は藤田昌弘さん(浜松市在住)
第6回のゲストは、有限会社住環境研究所を主宰する藤田昌弘さんです。施主であるIさんと共に「思いやる心の家づくり―施主直営・分離発注―」と題した講演(対談)を行っていただきました。
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の書籍を手に取り、「もし普通の主婦がドラッカーの『マネジメント』を読んだ設計士と家を建てたらどうなるのかを、ご紹介します」という藤田さんの言葉から始まった講演。家づくりとマネジメントの接点が非常に興味深い内容となりました。ぜひ、じっくりとお楽しみ下さい。

   

■「家づくり」を「マネジメント」すると…(藤田さん)
今回、「思いやる心の家づくり」と題した講演を行うわけですが、私は口下手なので、3月に竣工したばかりのIさんを助っ人にお願いして、家を建てられたお施主さんの言葉を通じて、私ども住環境研究所との家づくりを実感していただければと思っています。

まず、今回の講演タイトルにもあるように、私たちは「思いやる心の家づくり」を大切にしています。とはいえ、これは非常に抽象的な言葉であり、形として見えるようにするのはなかなか困難です。会話のキャッチボールを大事にし、記録をきちんと取って確認し合うなど、コミュニケーションが大切になりますが、こうした抽象的なことを形に表すため、2012年にISO9001(品質マネジメントの国際規格)を取得しました。
これは、地域都市の小さな設計事務所としてはとても珍しいことのようです。

皆さんの中にも「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を読まれた方が多くいらっしゃるかと思いますが、今回は「もし普通の主婦がドラッカーの『マネジメント』を読んだ設計士と家を建てたらどうなるのか」という視点でお話を進めていきたいと思っています(笑)。
ドラッカーの理論でいえば、家づくりの目標は「関わるすべての人と顧客に感動を与えること」です。顧客であるお施主さんが求めるのは感動であり、お施主さんをトップに、職人も設計士もスタッフも、関わる人みんがが感動できる組織でなければなりません。
そんなところを意識しながら、ぜひIさんのお話を聞いて下さい。

 

■藤田さんとの出会い ~最初「建築」ではなく「文章」でした~ (Iさん)
私たち家族が家づくりを考えるようになったのは、夫の転勤で、夫の故郷である浜松に帰ることになったことがきっかけでした。
結婚前、私は建築関係の仕事をしていました。そのとき思ったのは、図面の見方や建築用語など時間をかければわかることと、建物を建てるときの“軸”のような簡単に見つからないようなものがあるということでした。そして、施主と同じ気持ちになって、施主の想いを実現してくれる専門家が身近にいてほしいということも強く意識しました。それは、家づくりには高度な専門知識と複雑な工程を管理する能力が必要であり、また関わる大勢の人に気持ちよく仕事をしてもらうためのマネジメン能力が必要だと感じたからです。とはいえ、チームが同じ方向に向いて仕事をしていのは、本当に難しいとも実感もしました。

さて、結婚して「どんな家に住みたいか」をよく夫と話をしたのですが、住まいに対する考え方が変わったのはアメリカでの暮らしがあったからでした。南部の片田舎に住んでいたのですが、向こうの人たちは暮らしの意識そのものが違います。改めて、「自分たちはどう暮らしたいのか」を考えさせられました。そのとき、ダイニングルームのスペースが自分たちの気持ちをリフレッシュする大事な空間であり、私たちはこういう場所がほしかったのだと気づきました。

浜松に戻り、どこにどうやって誰にたのめばいいのか、どうすれば私たちの想いが実現できる家づくりができるのかを探し始めました。周囲は「ハウスメーカーに頼めば面倒くさくないし、すぐできるよ」と言いました。でも、私は違和感を覚えました。私たちがこれから子どもを育て、夫婦でずっと暮らしていく大切な場所を、面倒くさいからとあきらめて、ただの“箱”にしてしまっていいのか、それは私たちらしくないのではないかと思ったのです。

そこで私たちはアメリカでの暮らしを思い出し、たくさんの建物を見ることを始めました。「この家はここがいいね」「この家はさっきの家と似ているけれど、何か違和感があるね」といった印象は、そのまま自分たちの価値観や価値基準に気づくプロセスでもありました。感じた違和感を一つ一つ掘り下げることで、自分たちが何を大事にしているのかに気づいた、という感じでした。

そんなとき、藤田さんの言葉に出会ったんです。最初は何か他のことを検索していたのだと思います。藤田さんが日経ビジネスに書かれていた「スローライフの住宅術」という18回シリーズのコラムでした。
その文章に触れたとき、自分が仕事をしていたとき目指していた「みんなが同じ方向に向いて仕事をする」という仕事感を持ち、実際にそれをやっている人がいるんだということに驚きました。同時に勇気をもらったような気持ちになりました。
それですぐに藤田さんにメールを出し、押しかけ女房のように会いに行ったのです(笑)。
……ということで、出会いは「建築」ではなく「文章」だったんです(笑)。

 

◎コラム「スローライフの住宅術」
http://sumai.nikkei.co.jp/style/slowlife/

■たくさんの中から“唯一”のものを見つけていくプロセス(Iさん)
実際に藤田さんに会い、ご自宅を見せてもらって、文章で感じていた印象は間違いなかったと実感しました。藤田さんのおうちは五感が喜ぶ住まいでした。特に聴覚、ものすごく静かで、話をしている会話の音が一番いい音質で聞こえてくるんです。木の匂い、風の匂い、季節の匂いも感じました。
夫は建築のことは専門家ではないけれど、「先生の人柄と、妻である君を信じてやってみよう」と言ってくれました。本当に嬉しかったですね。

こんなふうに同じ価値観を共有できる建築家と出会えて幸せでした。「建築家は遠い存在だ」とか「自分などが頼むのは無理じゃないか」とか思われがちですが、断られてもいいから勇気を出して相談に言ったらいいと思います。自分と合う人にめぐり合える幸せは、何ものにもかえがたいと思います。これから何十年も暮らしていく“わが家”ですから。

設計事務所との家づくりを経験して思ったのは、ハウスメーカーの家づくりは“たくさんのひな形の中から選ぶ”感じだとすると、建築家との家づくりは“たくさんの中から唯一のものを見つけていく”感じです。
予算を考えながら、何を選び、何を削るのか、そうしたことを決めていくプロセスが、自分たちがこれから何を大事にしていきたいかを探すプロセスでもありました。いろいろな話をして、自分たちが思いもよらなかったプランが出てくることもあり、それはとても楽しみでした。「私たちにはこういう一面もあるのか!」とたくさんのことを気づかせてもらいました。ワクワクするような瞬間でした。

■「思いやりの心の家づくり」に家族全員が参加できたこと(Iさん)
家づくりは、日々動いている工程を大勢の人と一緒に進めていくので、小さなトラブルはよくあることでした。誰も悪くない場合だってあり、そんなときは「思いやりの心の家づくり」の気持ちを共有していることが大切だと思いました。みんなが同じベクトルで進んでいれば、ピンチを乗り越えることができるということです。家づくりは生き物なんだな、と実感する瞬間でもありました。
現場には、「この建物は『みんなの心』で造っています」の看板が立てられているのですが、実家の母が来たとき、「いい言葉だよね~」と二人で感動したのを思い出します(笑)。

「ハイ」という 素直な心
「ありがとう」という 感謝の心
「おかげさまで」という 謙虚な心
「させていただきます」という 奉仕の心
「いつも「ニコニコ」 明るい心

   

この「思いやりの心の家づくり」に、家族全員が参加できてことは幸せでした。床のワックスがけなど、夫は自分の仕事だと頑張ってくれましたし、幼稚園の娘も子どもなりに家づくりに加わり、楽しんでいたなと感じます。家の間取り図を絵に描いたり、それがけっこう正確なのでびっくりしました(笑)。今思えば、関係性を築ける時間でもあったのかなと思います。

■新しいのに懐かしい家(Iさん)
引渡しは、3月中旬でした。自分の家ができた喜びよりも、そのときは「ずっと関わってきた家づくりがもう終わってしまったんだな」とさみしい気持ちになりました。
でも、この家にいると、いろいろなことが思い起こされるんです。ここで職人さんたちと話をしたこと、スタッフの皆さんと打ち合わせしたことだけでなく、なぜかこれまで自分が歩んできた人生もここにあるような、そんな感じがしたのです。昔から知っているような、新しい家なのに懐かしい感じ。そのとき思ったのは、この家は私たちがこれまで育ってきた時間までも包み込んでくれる家なのかもしれないということでした。家は、自分自身をも表してしまうものなのかもしれませんね。藤田さんの家に行ったとき、藤田さんの人柄を感じたように。

藤田さんのご自宅で感じた風の匂いは、私たちの家でも感じます。引っ越してから、エアコンはほとんど使ったことがないんですよ。自然の風が吹き抜ける家です。
五感に優しく響く、そして私たちの想いや歴史までも包み込んでくれる空間を創って下さって、本当にありがとうございました。感動できる「幸せな家づくり」ができました。

■常にイノベーション!(藤田さん)
Iさん、ありがとうございました。
企業の目的は顧客の創造です。とかく我々は、企業の都合で家づくりを進めてしまいがちですが、そうではなく、常に「仕事をさせてもらっているのだ」という意識で顧客の創造を大切にしていかなければいけないと思います。
創造には「イノベーション」と「マーケティング」の二つの機能があります。常に「新しいもの」「違ったもの」を創造していく姿勢が大事です。顧客であるお施主様を満足させるだけでなく、関わるすべての人が幸せであるように、建てる途中も楽しく、そのあとの生活も幸せなことが重要です。我々は、お施主さんとは引渡し後も連絡を取り合い、その後の生活はどうなのかをブログで綴ってもらっています。単に建てて終わりではない、ということです。

さて、スタッフタから「ipad」が使えるよと提案されました。自分はついていくのがやっとなんですが(笑)、やってみるとすごいです。例えば、今までは現場にたくさんのカタログを持って行っていたのですが、スタッフが常に新しい情報を入れてくれるので、今は「ipad」ひとつでOKです。

また、最近は、日々の仕事の進み具合をオープンにしてお施主さんと共有しています。徹底的にオープンにしてみようと思ったんです。ですから、TOTOの見積もすぐ載せます(笑)。これが我々の「イノベーション」です。今さら隠してどうするよ、という感じです(笑)。
これからはいろいろなことをオープンにし、共有していく姿勢が大事だと思います。隠しごとをせず、プロとして胸を張って仕事する、顧客の創造のために。これからは、そういう時代です。

   

【次回予定】
次回(第7回)「ライフスタイル・リノベーション」は、7月21日(土)13:30~15:30に開催します。ゲストは掛川市在住の建築家高橋雅志さん。テーマは「施主とともに住まいづくりを語る―小さな住まいで大きなくらし―」です。どうぞお楽しみに!

【参加ご希望の方】
「ライフスタイル・リノベーションプロジェクト事務局」までご連絡下さい。
TOTO株式会社 浜松営業所内/担当:山本
kazuhiro.yamamoto@jp.toto.com
053-465-1010

※「建築家との住まいづくりレシピ館from/for(フロムフォー)」は、静岡県中西部を中心に様々なタイプの建築家を紹介できるシステムです。現在、登録建築家は14名。お客様のお話を伺い、ご希望や相性を考慮した上で、数名の建築家とお引き合わせいたします。(紹介料はいただいておりません)

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第5回「ライフスタイル・リノベーション」(ゲスト:建築家 村松篤さん)

2012年06月04日 | ライフスタイル・リノベーション

■「ライフスタイル・リノベーション」とは
震災以降、一人一人の生き方や暮らし方が問われている今、では日々の暮らしの器である住まいはどうあるべきか。生活を変えようという生活者に対して、設計、デザイン、住宅設備等について、いま専門家たちは何を考え、何を語るのか――。
この「ライフスタイル・リノベーション」では、地域の建築家8名に出演いただき、全8回(1月~8月)にわたり「生活をデザインする」を考えます。

住まいづくりを検討している方、
近隣の建築家を知りたい方、
建築家との住まいづくりはどんな感じだろうと思っている方、
ぜひ足を運んでみてください。
(このブログでも8回にわたりレポートします)
※「ライフスタイル・リノベーション」はフロムフォーとTOTOのコラボレーション企画です。

    

■5/26(土)第5回目の建築家は村松篤さん(浜松市在住)
第5回のゲストは、有限会社村松篤設計事務所を主宰する村松篤さんです。「建主との想いを共有した家づくり―予算を考慮しながら質の高い家を目指す―」と題した講演をいただきました。
村松さんの語る「住むほどに愛着の湧く家」がどのように作られていくのか、そのプロセスが垣間見えるようなお話でした。じっくりとお楽しみ下さい。

■どうして設計の仕事をはじめたのか?
簡単に自己紹介しますと、地元の工務店とOMソーラー協会勤務の後、16年前に独立し、112棟の建築を手がけています。ずっと設計の仕事に携わり、会社員時代も入れると35年で540棟、ほとんどが住宅の設計です。

このセミナーでは、参加者の方から「どうして設計の仕事をはじめたのか?」という質問がありますが、私の場合は浜松工業高校建築課の卒業設計がきっかけだったように思います。浜工では、課題テーマを自分で決めるのですが、私は何となくホテルを選びました。そのとき図書館で借りた「新建築」という雑誌に「ホテルフジタ」のプランがあり、その図面に仰天しました。間取りだけでなく、ソファーやスタンドなどの小物に至るまで様々なものに無駄がなく、「これしかない」というプランだったのです。このとき、設計の面白さとともに奥深さを感じ、「設計で飯を食っていけたらいいな」と思うようになりました。と同時に、ホテルのような高級感あふれる建築よりも、日常に即したものに自分は魅力を感じることも実感しました。

   

■影響を受けた建築家たち
それから社会に出て、様々な本を読み、建築を見ました。私は大学を出ていないので、日常の仕事の中で設計というものに関わってきたし、影響を与えてくれた建築家と出会ってきました。大学の授業で与えられるように出会うのではなく、自分で勉強していく中で出会えたのは幸せなことだと思っています。
順番に影響を受けた建築家を紹介していきますね。

①吉村順三
軽井沢の山荘は、三回訪れました。7.2×7.2の正方形、広さはたった16坪、32畳の建築です。この中に3LDKと水周りが収まっています。せまいのに広く感じます。プランを改めて見て、「魔法じゃないか」と思いました。

②奥村昭雄
星野山荘のポット式石油ストーブを利用した床暖房システムが、そのままOMソーラーへとつながっています。三分の二くらいの熱が逃げていることを計測した奥村は、何とか活かせないかと考案したといいます。今もお付き合いいただいています。

③村松藤吾
数寄屋建築の都ホテル佳水園は、薄い、軽い、細い、それでいて柔らかいという印象です。そして、幾重にも折り重なるような設計になのに、くどくないのが特徴的です。

④F.L.ライト
1936年のカウフマン邸(落水荘)は不思議な建築で、たくさんの要素があるのに破綻がない。自然と溶け込んでいて、流れるような印象です。
実際、この建築を見に行きましたが、建築は写真や模型ではなく、その場で感じることが大事だと改めて実感しました。その場に立って、建築家が何を訴えたかったのか考えること。音、匂い、空気感みたいなものは、行ってみなければわかりません。実際、この建築は音を巧みに建築に盛り込んだと感じました。

⑤ル・コルビュジエ
サヴォア邸は、80年前の建築ですが衝撃的でした。写真だとただの無機質な白い箱のように見えますが、実際に行くと無機質な感じはなく、上へ上へといざなうスロープが素晴らしいと感じました。

⑥アルヴァ・アールト
パリ近郊の住宅「Maison Louis Carre」は、「広大な敷地のどこに建てるのか」からスタートしている建築です。大きな家は破綻しやすいのに破綻がない。すごいと思いました。シンプルな屋根と流れるような空間があり、土地の傾斜を利用して、無理なく全体を構成しています。

こうした建築家との出会いが、今の私の設計思想に大きな影響を与えています。

    

■場のポテンシャル(潜在能力)を最大限に活かす
OMソーラーの仕事を通じて全国に行きました。まさか自分が北海道の家を設計するとは思ってもみませんでした。自分がその土地に行き、全国の工務店の方々と接する中で、その土地の気候だけでなく、厳しさ、大らかさ、温かさといった地域性や地域ならではのルールを大事にすることがいかに大事かを実感しました。

例えばそれは、浜松という温暖な土地でも同じことがいえます。浜松は全国的にも日照時間が長いのが特徴ですが、その陽の光をどう活かすのか。降水量が多いときの雨をどう活かすのか。また、遠州のからっ風といわれるように西風が強いのも特徴ですが、冬はその風をどう遮るのか、夏はその風をどう取り込むのか、そういうことを考えるのが必要だということです。

場のポテンシャル(潜在能力)を最大限に活かすことの大切さを、日本各地の建築に携わることで、また地元の工務店の方々と仕事をご一緒することで、改めて感じたように思います。

震災の前後に関わりなく、光を感じ、風の流れを感じ、雨の音に親しむそんな自然と共存した家、そのご家族にとって唯一無二の家を実現したいと考えています。

     

■私の建築手法
01.美しい屋根をつくる
自然に逆らわない形にしたい

02.雨を考え、くぼみをつくる
雨の日でも開けられる窓をつくる

03.暮らしを楽しむ
軒内空間、外でも安心できる空間をつくる

04.光をコントロールする
影を考える

05.周辺環境を読み込んだ風の道をつくる
欄間などの高窓、地窓で工夫する

06.将来の変化にも対応できる可変性のある家、構造体をつくる

07.換気を促すためのチムニーをつくる
風がない日でも風が流れる

08.穏やかな階段をつくる
上と下を隔てない、上下の一体化を考慮する

09.心地よく暮らすためのたまりをつくる
たとえば、リビングのソファーやデッキなど

10.広く見せるためのプランをつくる
大きい家がいい家ではない

■建築家との住まいづくり(セミナーの発言から村松さんの建築に対する言葉を拾います)
○まず敷地を読むこと。敷地を読むとは、周辺環境、生活動線、未来想定、測量、そうした全てが大切です。

○外からどう見えるかより、内からどう見えるかを重視します。

○好みを読むこと。今あるものの何を捨て、何を残すのか、考えていただきます。

○暮らしを読むこと。一日の平均的な生活パターンを記入してもらい、行動をひもときます。

○要望をすべて聞くと破綻するので、何が大事か優先順位を考えていきます。

○お施主さんからのヒアリングをみっちしりますので(笑)、基本設計に3ヶ月はかかります。施工会社の見積りには開きがあることが多いので、きちっとできるところ、なおかつ安いところを選びます。この差で設計報酬が出てしまうことも多いですね。

○スタート時からスタッフが張り付き、様々な点でチェックします。要所要所で施主さんにも確認してもらいます。

   

■建築家と出会う場を見つける
○先ほどから申し上げているように、建築は実際のものを見ることが大切です。気になった家があったら、個人ではなかなか行けなくても、フロムフォーのようなところに相談してぜひ見に行ってください。建築は見ないとわかりません。

○最近の業界情報として「地域型住宅ブランド化事業」というのがあり、120万円の補助金が出る制度があります。地元の材や地元工務店を使うなどいくつか応募要件ありますが、これはいつも我々がやっていることです。そうした補助金があることを、ぜひ頭の片隅に入れておいて下さい。

○要望を形にするだけが、我々の仕事ではありません。そこに付加価値をつけ、新たな魅力を加えてひとつのものとして提案することが建築家です。プロとして恥ずかしくないものをつくっていきたいですね。

○実際に建築家に会うことです。それぞれに特徴もありますし、フィーリングもあります。合った人に頼むのが理想ですし、きっちり噛み合うことが大切です。そのために、フロムフォーのようなところが存在していますからね(笑)。


【次回予定】
次回(第6回)「ライフスタイル・リノベーション」は、6月30日(土)13:30~15:30に開催します。ゲストは浜松市在住の建築家藤田昌弘さん。テーマは「思いやる心の家づくり―施主直営・分離発注―」です。どうぞお楽しみに!

【参加ご希望の方】
「ライフスタイル・リノベーションプロジェクト事務局」までご連絡下さい。
TOTO株式会社 浜松営業所内/担当:山本
kazuhiro.yamamoto@jp.toto.com
053-465-1010

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第4回「ライフスタイル・リノベーション」(ゲスト:建築家 長谷守保さん)

2012年05月07日 | ライフスタイル・リノベーション

■「ライフスタイル・リノベーション」とは
震災以降、一人一人の生き方や暮らし方が問われている今、では日々の暮らしの器である住まいはどうあるべきか。生活を変えようという生活者に対して、設計、デザイン、住宅設備等について、いま専門家たちは何を考え、何を語るのか――。
この「ライフスタイル・リノベーション」では、地域の建築家8名に出演いただき、全8回(1月~8月)にわたり「生活をデザインする」を考えます。

住まいづくりを検討している方、
近隣の建築家を知りたい方、
建築家との住まいづくりはどんな感じだろうと思っている方、
ぜひ足を運んでみてください。
(このブログでも8回にわたりレポートします)
※「ライフスタイル・リノベーション」はフロムフォーとTOTOのコラボレーション企画です。

■4/21(土)第4回目の建築家は長谷守保さん(浜松市在住)
第4回のゲストは、株式会社長谷守保建築計画代表取締役の長谷守保さん。講演タイトルを「丁寧につくり、美しく住まう ~日々が楽しくなる住まいへ~」から「ひと・意味・建築・住宅」へ急遽変更。「意味」「本質」ということを考えさせられる、長谷さんの思想やメッセージに満ちた講演となりました。どうぞお楽しみください。

      

■セミナーの発言から、長谷さんの“家づくり”に対する考え方を拾う
○多様な可能性の中から一つを選び出す思想
生命体の中で人間だけが特殊な存在だと私は思う。生まれて数年、親に守られなければ育たないのは人間だけだし、年を取って餌を見つけられなくても死なないのは人間だけ。
時間の意識があるのも人間だけだ。だから死と向き合い、神や宗教が自然発生的に生まれたのだろう。
そうした中から「自分の居場所を持つ」という意味での「建築」が始まり、美しいものを作りたいといった「選ぶ」発想が生まれたのだと思う。
逆にいえば、人間だけが本能のみに従ってはおらず「選択」するということ。せっかく選べる可能性があるのなら、それが人間らしさならば、選ばなければ損と私は思う。

○「家」の本質を考える
1926年、ル・コルビュジェとピエール・ジャンヌレが提唱した近代建築の五原則「ピロティ・屋上庭園・自由な平面・自由な立面・連続水平窓」は、石で作る重厚的な様式から軽く自由なもの、美しく機能的なものへの開放だった。そうした歴史を経て、今、美しくなくても機能的なものが作られ続けている。
家とはそもそも何か、その本質を考えると、「家はリビングがあってダイニングキッチンがあって……」ということではない。「食べるところ、寝るところ、遊ぶところ」という意味ならそれは家でなくてもできる。
では、家の本質は何か。ずっと変わらず、家族の記憶をとどめておいてくれる場所、待っていてくれるもの、季節ごとの移ろいを感じさせてくれるところ、それが家だと私は思う。

○生命を作るような気持ちで建築を作る
時間が経つほど美しくなる建物があった。今の建築は建てた瞬間から古くなるものもある。人間もそうだけれど、時間を重ねるごとに美しくありたいと思うし、そうした価値を認める社会でありたい。
私はイルカが好きです(笑)。本当に美しいと思う。そうした生命を作るような気持ちで、私は建築を作っている。

   

■「どう建てるのか」「どう暮らすのか」のヒント(発言より抜粋)
○自宅を建てた三つの理由
2010年に自宅兼事務所を建てた。
その理由として、まず環境のいいところで仕事をしたかった。一日のうち長い時間を過ごすオフィスを快適にしたかったし、オフィスの快適さは追求してしかるべきと思っている。
二つ目は、実験的なことをしてみたかった。たとえば自然素材を使って、どれだけメンテナンスが必要なのか実感したかった。自宅を木のおふろにした。多少手間がかかっても気持ちよさを優先したかった。実験的に作ってみたら、お客様の中にも「木のおふろにしたい」という人が出てきた。私が実験しなければ、そうした人も出てこなかったと思えば、実験の成果があったのかもしれない(笑)。
三つ目は、引渡しです。想いを込めてお客様の住まいを設計するわけだけど、引渡しをするのがいつもさみしいんです(笑)。それで自宅を設計しました(笑)。

 

○設計にはすべてに意味がある
地域に開かれた家が可能ならば「地域に開かれた家」を作りたい。
土地があるなら平屋がいい。庭も大事。庭を作れないなら、2階のデッキを広く取って、外とつながること。
周囲の環境を活かしたい。せっかく大きな窓をつけても昼間からカーテンをしなければならないような環境はおかしい。活かせる設計を考える。
魚にヒレがあるように、生命のすべては進化の過程で加わったりなくなったりするものがあり、それは必ず意味がある。同じように設計にもすべてに意味がある。思いつきで作ったものはすぐ飽きるんです。

 

○「炎」のようなあかり
私が設計する家は暗い家が多いですね(笑)。「炎」のあかりが人の目には一番自然だとすると、部屋の隅々まで明るく照らす必要があるのだろうかと思う。料理が美味しそうに見えるのも、人が美しく見えるのも、「炎」のようなあかりだとすると、極力、白熱灯を使いたいと思う。必要ならばスタンドを置けばいい。

■参加者からの質問に答える
Q:施主と意見が合わないときはどうされますか?
A:基本的に私のところに来るお客様は、ホームーページなどで私の考え方に共感してくれた人が来てくれているので、価値観が大きくブレることはありません。とはいえ、細かなところで意見が合わないときには、まず私はプロとして「長期的、また広い視点に立つとこういうことがいえる」ということを説明します。話すとだいたいわかってくれるけれど、それでも違うときにはお施主さんの意向を尊重します。場合によっては「面白いな」という試みもあるので、「やってみましょう」という選択をする場合もあります。その場合、プロからみた場合のリスク(たとえばメンテナンスに費用がかかるとか)等はきちんと伝えます。

Q:どうして建築家になられたんですか?
A:まず、私は自らを「建築家」と名乗ったり「先生」と呼ばれたくないと思っていますが、一方で「業者」や「設計屋」と扱われたくないと思っています。上下の構図は嫌ですね。建築家、建築士、設計や、設計士といろいろ呼ばれ方がありますが、あえていうなら「設計者」と呼んで下さい(笑)。

なぜこの仕事を選んだのか。私の父が建築関係の仕事をしていたので建築が身近であったのは確かです。大学で「設計」「施工」「設備」を勉強し、その中で特に「設計」に興味を持ちました。卒論でマルティン・ハイデッガーの現象学に触れたことも大きかったかもしれません。多様な可能性の中から一つを選び出す行為には思想が必要であり、建築でも和風とか南欧風とかいうスタイルではなく、意味を、魂を伝えたいと思いました。
たとえば、物事を捉えるにあたって色眼鏡を外して見ることで、物事の本質、魂といったものを素直に見ることができます。有名建築家の設計した建物であろうと、まずはありのままの建築を見る。自分の感性を信じて、感じたままを大切にすることです。
いいものを見ること、自分なりに目利き、腕利きになることが必要です。設計者を見る目も重要です(笑)。相性もありますからね。ですからフロムフォーのような第三者的な目で紹介してくれるところは大事です。選ぶのは設計者ではなく、施主なのですから。
建築家は敷居が高いと言われますが、何千万円もの買い物をするのに敷居を下げ過ぎるのはよくないと思います。よく「住宅メーカーの営業マンの笑顔が良かったから」という理由で決めたという話を聞くけれど、それでいいのかと思いますね。
家を建てるのは幸せになるためです。作ることは手段です。あまり聞こえてはきませんが、家を建てて不幸せになった例だってあると思います。「あれ、変だな」と思う違和感を大事にすることです。
坪単価という考え方は、建築の質を下げます(笑)。子孫が残したいと思える家を建てましょう(笑)。

   

Q:この地域に家を建てるということをどのように考えますか?
A:この遠州地方だからできるということがあると思います。
まず、比較的暖かいということ。土地が広いこと。そして、大らかさです。
この地域で高気密高断熱はそんなにやらなくていいと思います。私はそこに価値を置いていません(笑)。
もっと外に、地域に開いてもいい。気候的に許されるという意味で、内向的になる必要がないということです。

Q:建築の未来についてどのようにお考えですか? また、長谷さんがこれからやっていきたいことなどお聞かせ下さい。
A:1960年~70年代は高度経済成長という時代の中で、社会の膨張や人口の増加に合わせて有機的に成長するメタボリズム(新陳代謝)という建築運動が生まれました。しかし、これからはその反対です。人口が減っていく時代に「作ること」に対して疑問を呈する必要があると思います。高度成長期とは違います。ちょっと失敗したら誰も借りてくれないわけです。スラム化するかもしれないし、建物は凶器にもなるということです。本当に必要なものを慎重につくること、100年後にも健全に使えるものしか作らないという姿勢が求められると思います。

若い人の中には、建築をまちづくりとつなげ、人と人をつなげる取り組みをする建築家も多いし、それはもちろん大事な仕事だけれど、私はものづくりにこだわりたいと思います。丁寧な仕事、作り込む仕事をしていきたいし、設計職人、設計専業であり続けたいと考えています。

   

【次回予定】
次回(第5回)「ライフスタイル・リノベーション」は、5月26日(土)13:30~15:30に開催します。ゲストは浜松市在住の建築家村松篤さん。テーマは「建主との想いを共有した家づくり~予算を考慮しながら質の高い家を目指す~」です。どうぞお楽しみに!

【参加ご希望の方】
「ライフスタイル・リノベーションプロジェクト事務局」までご連絡下さい。
TOTO株式会社 浜松営業所内/担当:山本
kazuhiro.yamamoto@jp.toto.com
053-465-1010

 

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第3回「ライフスタイル・リノベーション」(ゲスト:建築家 久保剛司さん)

2012年04月07日 | ライフスタイル・リノベーション

■「ライフスタイル・リノベーション」とは
震災以降、一人一人の生き方や暮らし方が問われている今、では日々の暮らしの器である住まいはどうあるべきか。生活を変えようという生活者に対して、設計、デザイン、住宅設備等について、いま専門家たちは何を考え、何を語るのか――。
この「ライフスタイル・リノベーション」では、地域の建築家8名に出演いただき、全8回(1月~8月)にわたり「生活をデザインする」を考えます。

住まいづくりを検討している方、
近隣の建築家を知りたい方、
建築家との住まいづくりはどんな感じだろうと思っている方、
ぜひ足を運んでみてください。
(このブログでも8回にわたりレポートします)
※「ライフスタイル・リノベーション」はフロムフォーとTOTOのコラボレーション企画です。

■3/17(土)第3回目の建築家は久保剛司さん(掛川市在住)
第3回のゲストは、久保剛司建築研究室を主宰する久保剛司さん。久保さんは掛川市建築文化協会顧問で静岡県木造館の初代館長でもあります。「決して高くない建築家住宅―住宅に愛の手(設計力)を―」と題して講演をいただきました。
住宅づくりは、敷地・設計・お金・検査等、難解な連立方程式であり、他人任せにするにはあまりに大きな投資。メーカー任せでない個性と思想を持った住宅づくりが必要であるとともに、建築家の役割と消費者にとってのメリットを具体的に紹介しています。設計士からのお話なのに、非常に生活者よりの、お話を伺ったあとには「建築家との住宅づくりはお得かも」と思える講演となりました。

    

■セミナーの発言から、久保さんの“家づくり”に対する考え方を拾う
○建築家の仕事の現状
わが家は35年前に建てましたが、天井は剥き出しで「清貧の家」を呼んでいます。そのおかげか、三人の子どもたちは忍耐強く育ちました(笑)。六十歳を越えてさすがに寒いので外断熱をしようかと思っているのですが、このご時世でなかなかできないのが現状です。
私は一般の住宅以外も、旧豊岡村の「とれたて元気村」や掛川市の「掛川こども園」「掛川工房つつじ」など公共的福祉的な建築も多く手がけています。古民家再生などのリフォームもありますね。

私が事務所を開設した30年前は、まだまだ設計士という存在が世間に知られていませんでした。20年前くらいになりますと100件に1件くらいは設計士が関わるようになり、現在でも100軒に3件くらいですね。まだまだハウスメーカーと地元の工務店がほとんどを占めているというのが現状です。
私自身が設計した数を数えてみましたら、40年間で100件でした。ほとんど身内か同級生でした(笑)。建築関係者も多いですね。一級建築士の免許を持っていても、ペーパードライバーのような人もいますからね。あと官庁関係、木造館に来たお客様もありました。まったくのフリーで来られた方は3人だけでした。
家を建てるとき「設計事務所という選択肢がある」ことを知っていただければ嬉しいと思いまして、今日はお話をさせていただきます。

       

○実際の「建築家との住まいづくり」の流れ
今、建具を設計しても作れない大工さんが増えています。断る大工さんがいて、今後、技術を持った大工さんがいなくなるのではと心配しています。「人を育てる」「技術を継承する」という意味からも、設計事務所が地元の工務店とタイアップして家づくりをするのがいいと考えています。

私の場合、必ず3社以上の施工業者に見積りを依頼します。3千万円と4千万円というように1千万円以上差が出るときもありますが、では安いと心配かといえば、そんなことはありません。地元の信頼できる施工会社に見積もりを依頼していますし、技術力のある大工さんにお願いします。そして、設計士が施工管理するので大丈夫なのです。大抵いちばん安い業者で決まりますが、30年以上仕事をしてきて今まで一度もクレームはありません。

最初の見積もり合わせのとき、支払い回数などもきちんと書面にします。富士ハウスが破産したとき、一括払いをしたためほとんど返ってこなかったという方がいらっしゃったようですが、大きな買い物をするとき、しかもまだ形の出来ていないものを買うとき、一度に払うのはそもそもおかしいと思います。分割して支払うことに対応できないような施工会社は、2~3千万円の金額を融通できないということで、逆にやめた方がいいと思います。
そういうことも、設計士が設計監理の中で行なっていくわけです。

設計料は基本、総工事費の10%です。設計料が高いとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は見積もり合わせの値段でそのくらいのコストダウンはすぐできます。
設計士は大きな建物しかやらないと思ってらっしゃる方もいるかもしれませんが、3000平米の大きな公共建築から犬小屋まで何でもやります(笑)。頼みにくいことはありません。

よい設計者、相性の合う設計者を探すのは難しいかもしれませんが、お医者さんを探すのと一緒で評判を聞くことが大事です。昔は県の木造館のようなところがあり建築家と生活者をつなぐ役割を果たしてきましたが、今はフロムフォーがその役割を担ってくれています。
建築の場合、表現に必ず出てきますので、気に入った建物があったら誰の設計か聞くといいですね。そして、フロムフォーのようなところに間に入ってもらい、話を聞いてもらって何人かと会って相性を確認しながら進めていくのがいいように思います。「自分の感覚」プラス「設計士の個性を知っている第三者の意見を聞く」、この両方が大切なのだと思います。

○建築家に設計管理を頼むことのメリット
手前味噌になるかもしれませんが、設計士に頼むと安くていいものができます(笑)。「家なんてできればいい」という人は安いところで頼めばいい。しかし、県の住宅相談をしていて一番多いのはそうしたところに頼んだ人たちからのクレームです。表向き安い金額を提示しているハウスメーカーは、びっくりするくらいオプションが多いので本当の金額がわかりにくいという点があるんです。

家づくりは人海戦術です。大工さんはじめ、様々な職人さんとともにチームで家づくりに取り組みます。みんなの気持ちを上げながら、まとめあげ、管理していくのが設計士の仕事です。

障害を持つ方や高齢者の住宅ほど設計士に頼んだ方がいいと思います。それぞれに違う問題を抱える中、細かな要望まで表現できるのは建築家だけだと思います。そうした微妙な調整が必要な人ほど、設計士に頼んだ方がいいと思います。
聴覚障害を持った方の家づくりに携わりましたが、打ち合わせには通訳の方も入れていただいたり、筆談したりしました。時間はかかったけれど、感謝してもらえて建築家冥利につきると思いました。

建築家に頼むのはお金持ちの人だけ、と思っていたという人も多いですね。「希望は多く、でも予算は少ない庶民の私たちにぴったりでした」というお礼の手紙をいただいたこともあります。
変形敷地などはとくにハウスメーカーでは無理ですね。こういうときこそ、建築家を活用して下さい。

繰り返しになりますが、実力のある施工会社へ依頼しますし、支払い条件も提示させます。設計料がもったいないという人もいますが、コストダウンできた分と施工管理をする分を考えれば十分もとは取れると思います。
設計事務所に頼むのはけっこうお得なことが多いんです(笑)。いい設計事務所、相性のいい設計士に出会うことが肝心です。

     

○古民家再生
築150年のお茶農家のリフォームを手がけました。10年以上前から相談を受け、17ヵ月かけて完成しました。土間のキッチンは冬、1℃になります。奥さんは30年以上我慢していました。リフォームの目標は、民家の良さを生かしながら、水周りを良くして、暖かな家にする。もちろん耐震も、です。

見積りは3社にお願いしました。見積もりの差が5百万円~2千7百万円と出て、古民家再生の見積りのしにくさを改めて感じましたね。工事の途中で基礎が腐っていて追加になる場合もあります。このお宅の場合、「自分の山の木を使いたい」「古い建具を使いたい」という希望がありました。古民家再生には新築と同じくらいかかるのを実感しました。
竣工後、お礼の手紙をいただきました。
「建て替えた家に住み始めて、見上げる天井、見上げる梁、りっぱな柱、そして神棚が素晴らしい。これから100年は住めそうです。1864年に建てた家ですが、私たちにとってこれからが本当の家です」

   

○最小の投資で最大のよいものをつくろう
事務所を開設して30年以上経過します。大いなる哲学があって事務所を開いたわけではありませんが、家には設計力というものが必要だと思います。私の場合、プランを10くらい描くとまとまってきますね。設計の特徴は、階高です。無駄な高さは作りません。茶の間は高く、寝室は低く、メリハリをつけることが大切です。ハウスメーカーはどの部屋も2600cmくらいですが、資材の無駄ですね。

25坪の家も設計しました。極限の狭さでした(笑)。階段の壁は普通15cmほどですが、3cmの積層材を使用しました。作れる大工さんも限られていました。ぎりぎりに設計することがいいか悪いかはわかりませんが、そういう事例もあります。

人前でお話するのは全く苦手ですが、「設計事務所もけっこういいかも」「設計事務所も選択の一つに入れてもいいかも」と思っていただければ嬉しいなと思います。
コストパフォーマンスを作るのは設計事務所です。最小の投資で最大の良いものを作る努力をします。
ぜひ、設計事務所の門をたたいてほしいと思います。 

【次回予定】
次回(第4回)「ライフスタイル・リノベーション」は、4月21日(土)13:30~15:30に開催します。ゲストは浜松市在住の建築家長谷守保さん。テーマは「丁寧につくり、美しく住まう―日々が楽しくなる住まいへ―」です。どうぞお楽しみに!

【参加ご希望の方】
「ライフスタイル・リノベーションプロジェクト事務局」までご連絡下さい。
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第2回「ライフスタイル・リノベーション」(ゲスト:建築家 青島明弘さん)

2012年03月13日 | ライフスタイル・リノベーション

■「ライフスタイル・リノベーション」とは
震災以降、一人一人の生き方や暮らし方が問われている今、では日々の暮らしの器である住まいはどうあるべきか。生活を変えようという生活者に対して、設計、デザイン、住宅設備等について、いま専門家たちは何を考え、何を語るのか――。
この「ライフスタイル・リノベーション」では、地域の建築家8名に出演いただき、全8回(1月~8月)にわたり「生活をデザインする」を考えます。

住まいづくりを検討している方、
近隣の建築家を知りたい方、
建築家との住まいづくりはどんな感じだろうと思っている方、
ぜひ足を運んでみてください。
(このブログでも8回にわたりレポートします)
※「ライフスタイル・リノベーション」はフロムフォーとTOTOのコラボレーション企画です。

■2/25(土)第2回目の建築家は青島明弘さん(磐田市在住)
第2回のゲストは、青島工房代表で「森とすまいの会」を共同主宰する青島明弘さん。「住まいづくりを楽しむ~建築家との家づくり~」と題して講演をいただいた。
住まいづくりの担い手に「建築家」が選択肢として入るようになったとはいえ、建築家はまだまだ敷居が高い印象がある。実際のところ、どのように住まいづくりをするのか、建て主さんとの関係をどう築き上げているのか、具体的な事例を紹介していただいた。資金面も含め、かなりつっこんだお話をされています。必見です!

   

■セミナーの発言から、青島さんの“家づくり”に対する考え方を拾う
○なぜ「住まい塾」なのか
住まい塾スタッフとして東京で13年仕事をした後、98年に磐田で独立した。大工さんやハウスメーカーに頼むのが主流の時代、専門知識のない建て主が「お任せする」だけの家づくりに疑問を感じていた。専門家に全てを任せるのではなく、建て主自身も、木のこと、素材のこと、建築のことを勉強する必要があると思った。建て主と建築家は対等な関係で家づくりを進めていくべきとの想いがあるからだ。

○建築家に頼むと何が一番違うのか
建築家と、大工さん、工務店、ハウスメーカーの一番の違いは、「建築家は家を建てない」こと。建築家は図面を書き、設計管理を行う。「建築家が設計します」というキャッチコピーを前面に出している施工会社もあるが、そうした建築家は施工会社に在籍していたり、仕事をもらっている立場であり、独立した建築家とは違う存在だと知ってほしい。
施工会社に在籍する建築家は、どうしても作り手側に立たざるを得ない。しかし、独立した建築家は建て主さんの立場に立ち、図面通りに現場が進んでいるかチェックできる。独立しているからこそ、できることだ。
本来、作り手と住まい手は利害が相反する立場ともいえる。第三者の立場の人間が入ることで、それぞれに満足できる家づくりをチームで進めることができる。それが建築家の役割でもある。

○秩序を生み出すこと、それがデザイン
建築家は、建て主の希望、予算、工期、法的なことなど、様々な条件をクリアしながら図面を書いていく。何もないところに好きなように書けるわけではない。
重要なのはデザイン。デザインとは、要求や条件や想いなどたくさんの要素から秩序を生み出すこと。その中の一つでも外せば簡単なこともある。しかし、それら要素を全部含んで秩序だったものができるかどうか、それが設計力。私自身、それができなければ建築家ではないと思っている。

○これからの価値観、これからの家づくり
高度成長の時代と違い、今はがんばればどうにかなる時代ではない。閉塞感や行き詰まり感がある中で、東日本大震災が起こり、自由主義やグローバルな思想に違和感が出てきた。拡大、競争、消費、そうした仕組みで本当に良いのかとほとんどの人が考えている。これからはローカルが大切だと思う。小さな社会、支え合う社会、匿名ではなく顔の見える社会、消費ではなく循環する社会だ。そんな中で家づくりも、顔の見える関係の中で「この人のために」と気持ちが通じ合えるような家づくりをしたいと思う。

○本物、そして風景
今、日本の建築の寿命は26年と言われている。年間120万戸という建築戸数があって、建築業界は生きてきたわけだが、もうそれでは許されない時代になっている。そんな馬鹿げたことをしていいのか、循環型社会にとってそれは駄目じゃなんじゃないのか、ちゃんとした素材を使って長持ちする家を作るべきじゃないのか、私はそう思う。

毎晩冷凍食品しか食べていなかったら、本物の美味しさはわからないように、いいものの中に暮らさないと自分の中に尺度ができない。だから、本物を見て、本物を使って、本物を感じてもらいたい。思い入れを持てるような建築を作ることが大切だ。

風景となるような家を作ろう。地域や街並みにあった家を作ろう。どこに行っても同じでは、それは風景とは呼ばない。ここに来てよかった、素敵な風景だなと思えるものは、そこにしかないからだ。時間の積み重ねがあり、そこで人がイキイキ暮らす、そうして美しい風景ができるのだ。

■建築費から、家づくりを考える
○事例から建築費を考える
最近の例でいえば、図面から見積もりを出すとおおよそ2,500万円くらいからスタートし、「あれも欲しい、これも必要」とだんだん増えていくのが普通のパターン。どんな生活をしたいのか、本当に必要なものは何かを話し合いながら進め、折り合いをつけていく。私は施工会社の相見積もりはしない。その建築の特徴によって、信頼できる施工会社を決めている。

この事例の建て主さんの場合、建設会社の最初の見積もりは4,700万円だった。途中、ご主人の病気で1年くらい間があいたのち、「施工はこの人に変更してほしい」とある大工さんの見積もりを持ってきた。その見積りは3,800万円だった。900万円も違うので「これはヤバい大工さんではないのか(笑)」と思ったが、実際にその人に会い、評判も聞き、見積もりの詳細も確認すると、腕のいいきちんとした大工さんだとわかった。

 

○建築費に大きな差が出る理由
では何が違うのか。
項目を整理して比べてみると、900万円の差は木工事の差額480万円と諸経費の差額320万円が大きな要因であることがわかった。
①まず木工事では、材料費が大きく違った。大工さんは独自のルートがあり、天竜材を使うことはできないが安価な国産材を仕入れることができた。
②材料の拾い方も違う。建設会社は「ドアを何枚」というように部材ひとつずつで拾っているが、大工さんは「原材料が何枚」という拾い方。つまり、この大工さんは大きな材料を安く仕入れ、自分のところで加工している。自分の知恵と手間で値段を下げているということだ。とはいえ、建設会社が多く取っているかといえばそうではなく、これが普通。
③あと、造作棚類の見積もりが建築会社は「一式120万円」と高額だった。それは、この建設会社がすでに私の設計で家を建てていて(2軒)、造作棚類の製作に手間がかかることを知っているから。その手間に見合った費用を計上している。
④次が諸経費。この大工さんは個人経営の一人親方なので、会社と違って諸経費が少なくてすむ。人を使う場合も実際の手間賃だけを払えばいいので、会社組織のように給料という大きな経費がかからない。その差が出た。

○最後に、「人を育てること」「木のこと」「山のこと」を私たちはどう考えるべきか
とはいえ、私が思うに、この建設会社は次の世代のことを考え、若い職人にきちんと給料を払って育てようという気持ちがある。「諸経費がかかってダメじゃないか、企業努力が足りないんじゃないか」というのは簡単だが、安いだけでいいのか、という投げかけをしてくれていると思うんです。
今後、木の家を建てられる職人がいなくなってしまうかもしれない。木の家を建てようという建て主さんには、ぜひそうしたことも考えてほしいと思います。

木の話も同様です。
今、木が非常に安く、50年前に1立米(りゅうべい)15,000円だったのが、現在、13,000円です。(1立米は大黒柱が4本くらい。50年前の15,000円は初任給くらい)
山の木をチェーンソーで切って、葉がらしして、4mに刻んで、運んで、それで1立米8,000円の手間賃と2,500円の運賃、県信連に8%を払うから、経費で11,500円かかります。つまり、50年経ってお金の価値は10倍になっているのに、材木の値段は下がっている。経費が9割近くかかったら、補助金なしではやっていけないということです。

木は健全な山を作り、健全な山は治水にも水の問題にも関わっています。家を建てるとき、こうした木の問題、山の問題、環境問題まで頭の片隅に入れてほしいと思います。人が豊かに暮らすとはどういうことなのか、家づくりを通じて、ぜひ考えていただきたいと思います。

人を育てること、木のこと、未来のことまで考えて、家づくりの適正価格というものがあるんじゃないかと私は思うんです。このデフレの時代、建設会社はコストを抑えることだけ考え、建て主は安く建てることばかりを考えたら、この国、この地球は一体どうなってしまうのだろうかと考えてしまうんです。建設会社と建て主のあいだに入り、そうしたことまで含めて「本当の値段」を考えるのが建築家の仕事でもあると私は思うのです。

このようなセミナーでこうしたが言えるのも建築家だからだし(笑)、フロムフォーが主催しているからだと思います(笑)。木の家や自然素材は高価だから建てられないとか、建築家に頼むのは無理だとか、決してそんなことを思わず、ぜひ建築家に相談してください。そして、家づくりを通じて、一緒に未来のことを考えましょう。

   

【次回予定】
次回(第3回)「ライフスタイル・リノベーション」は、3月17日(土)13:30~15:30に開催します。ゲストは掛川市在住の建築家久保剛司さん。テーマは「決して高くない建築家住宅~住宅に愛の手(設計力)を~」です。どうぞお楽しみに!

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第1回「ライフスタイル・リノベーション」(ゲスト:建築家 坂田卓也さん)

2012年02月17日 | ライフスタイル・リノベーション
■「ライフスタイル・リノベーション」スタート!
フロムフォーとTOTOのコラボレーション企画「ライフスタイル・リノベーション」がスタートした。
震災以降、一人一人の生き方や暮らし方が問われている今、では日々の暮らしの器である住まいはどうあるべきかを考えようというものだ。
設計、デザイン、そして住宅設備。生活を変えようという生活者に対して、いま専門家たちは何を考え、何を語るのか――。
この「ライフスタイル・リノベーション」では、地域の建築家8名に出演いただき、全8回(1月~8月)にわたり「生活をデザインする」を考えます。

住まいづくりを検討している方、
近隣の建築家の考え方を知りたい方、
建築家との住まいづくりはどんな感じだろうと思っている方、
ぜひ足を運んでみてください。
(このブログでも8回にわたりレポートします)

      

■1/21(土)第1回目の建築家は坂田卓也さん(浜松市在住)
第1回のゲストは、一級建築士事務所アトリエ樫代表で「森とすまいの会」を共同主宰する坂田卓也さん。「施主とともに住まいづくりを語る~家具、暮らしについて~」と題して、施主で家具職人の日下部義昭さんと対談していただいた。
坂田さんからは住まいづくりに対する考え方を、日下部さんからは坂田さんとの出会いや「なぜ坂田さんに決めたのか」などのお話を伺った。

■日下部さん(施主)はなぜ坂田さんを選んだのか
日下部さんは家具職人。6年程前、家具屋として独立するとき家を建てようと考えていたという。
「家は、仕事ぶりに感銘を受けていた大工さんに建ててもらうことは決めていました。では設計を誰に頼むのか。旧浜松銀行協会で開催された建築展に行ったとき、『山の中に建てる』『自分の山の木で建てたい』『木は葉枯らし乾燥させたものを使いたい』と3つのキーワードを出したところ、10人中5人までが坂田さんを勧めてくれました。坂田さんってどんな人だろう、と会いに行ったのがはじまりです」
日下部さんは、坂田さんの自宅や奥様とのやりと、坂田さんそのものの雰囲気も心地よく、即決で決めていたという。「今思えば、第一印象で決めていたように思います(笑)」

■セミナーの発言から、坂田さんの“建築”に対する言葉を拾う
建築家を探すことは、食事をするとき「どこの店に入ろうかな」と店を探すことと似ている。パスタが得意な店もあれば、どんぶりものが上手な店も繊細な日本料理を出す店もいろいろある。今、自分が食べたいもの、食に関するこだわりなどを伝え、「この店が合うかもよ」と言ってくれるフロムフォーのような存在はとても大事。一度店に入ったら断りづらいし、注文したら食べなきゃいけないからね。

今まで様々な職業、様々な価値観の施主の方と出会ってきたけれど、私の場合、建築に対する確固たるポリシーがあり、それを建築に活かそうというより、お話を聞きながら右往左往して「こういう感じかな」と収まっていく感じ。

建て替えやリフォーム時には、前の家の建具やふすまの引手、夏障子のよし戸や雪見障子など、残したいと思うものはできるだけ活かそうと考えている。昔は季節ごとに建具を入れ替えていて、そうした暮らしに息づく文化があった。暮らしを通じて「文化をつなげる」「想いをつなげる」という気持ちがあるのかもしれない。

自分としては、古いもの、記憶に残しておきたいものが好き。人間は、目の前からなくなると記憶がどんどん消えていく。「旧住吉浄水場ポンプ室」の保存運動に関わったのも、そんな気持ちから。国登録有形文化財に登録されることが決まり、ほっとしている。

■「どう暮らすのか」のヒント(発言より抜粋)
寒ければ一枚着ればいい
私たちが暮らしているのは温暖な静岡県。寒いときは寒い、寒ければ一枚着ればいいじゃないか、とも思う。快適な室温に自動的になるような機能は本当に必要だろうか。人間が考えなくなる、人間が弱くなる、と思ってしまう。寒いからどうしよう、寒いから工夫しよう、というところから人の生きる知恵が生まれるのだと思う。

暮らしをやりくりするという発想
家族の希望を全て叶えようとすると、とても大きな家になってしまう。その大きな家をずっと維持していくことより、小さな家で暮らしていけるよう、みんなで折り合いをつけ、暮らしをやりくりしていく方がいい家になる。個々の希望ばかりを叶えていたら、それぞれが自分の部屋にこもり、それでは家族として一緒に生きる意味がないようにも思う。不都合を抱えているから、家族らしい。
小さな暮らしをすれば、材料も少なくてすむ。地球にも迷惑をかけない。そんなふうに考えている。

長所も欠点もひっくるめて自分の家
予算をしぼることで、自分たちがどう暮らしたいのかのポイントが見えてくる。シンプルな暮らしができる。
人というのは都合よくできていて、今の瞬間がずっと続くような気持ちでいる。たとえば自分は年を取らないとか、子どもたちはずっとここにいるとか。
家族構成は変わるし、自分の身体も衰える。変化に対応できる、長く愛される家をつくりたい。
建物には変わるところと変わらないところがある。水周りなどの変わるところは、変えやすいようにしておくことが大事。建物も人と同じで長所も欠点もある。ひっくるめて、自分の家だし、愛情を持って接すればいい。

■震災以降、暮らしの器である住まいはどうあるべきか
設計に関する考え方は、特別変わったとは思わない。自分の場合、今までと同じようにシンプルに、暮らしをやりくりする発想を大事にしていくだけ。
例えば、日下部さんが言っていたように、作り付けの家具には完成された美しさはあるけれど、模様替えする楽しさを味わえない。季節や気分や家族構成によって、家具もその都度変えられるように、気に入ったものを少しずつ買いたしていく発想も大事。結果としてその方が、長く、無駄なく、楽しく使える。

震災以降、様々なことを問われている。けれど、人はなかなか変われるものではない。一人の力で社会を変えることも難しい。それでも、一つでも自分にできることを見つけたら、それを継続すればいい。
季節によって建具を変え、涼や暖をとっていた日本人。そうした暮らしの知恵から歴史や文化は生まれている。高機能や完成形ばかりを求めるのではなく、暮らし方を見つめ直すことが問われていると思う。生き方と暮らしは、ちゃんとつながっているから。私の場合、朝の散歩を日課とすることから始めることにしました(笑)。

     



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プロセス紹介 A邸の場合(11)~家族とともに成長していく住まい~

2011年11月21日 | プロセス紹介(A邸)
今回の家づくりで施工を担当したのは、地元の工務店 株式会社S建設だ。
社長が大工から会社をおこした人だから、木の家づくりに強い。自然素材を活かした家づくりは、若い世代を中心に増えている。

さて、このS建設の社是は「引渡しを以って半ばとする」だ。引渡しでおしまいなのではなく、そこから長いおつきあいが始まるということだが、それはフロムフォーも同じだ。
建築家との住まいづくりレシピ館「フロムフォー」として、また住宅設備の「タツミガス」として、これから長いお付き合いになる。
「火がつかないよ~」
「お湯が出ないよ~」
生活していくうえで出てくる様々なハプニング。その都度、関わっていくことになるわけだが、実はそうして訪問できることをけっこう楽しみにしている。それは、子どもたちが大きくなっていくように、家も成長するからだ。人が暮らすことで、様々な味つけがされ、家も味わい深くなっていく。それを見るのが楽しみなのだ。

奥様同様、Aさんにも「この家に暮らす楽しみ」を聞いてみた。
「会社から家に帰るときが、楽しみかなあ~(笑)」
Aさんには最初から、まだ建築家の誰とも会っていないときから、「こうしたい」というイメージがあった。だから、お仕着せの、最初から形ありきの家づくりでは「何かが違う」と感じたのだ。
建築家との家づくりはエネルギーがいる。与えられるものをそのまま享受する方が楽(ラク)に決まっている。でもAさんは違った。だから、それぞれのプロフェッショナルな関係の中で幸福な家づくりが実現した。

自分の暮らし方は生き方そのもの。
Aさんに出会って、改めて感じたことだ。

さあ、引渡しも終わったことだし、ひとっ走りしてこうようかね。今日の気分はロードバイクかな(笑)。

  
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プロセス紹介 A邸の場合(10)~幸せな組み合わせによる家づくり~

2011年11月21日 | プロセス紹介(A邸)
幸せな組み合わせが実現した家づくりだったね、と振り返るのは建築家のTさん。
「施主、建築家、施行業者、そしてフロムフォー、みんなの波長が合ったんでしょうね」
この言葉は嬉しかった。みんなを結びつけたフロムフォーの存在意義そのもののような気がしたからだ。

「Aさんの漠然としたイメージを聞き、平面図をスケッチし、模型を作ったとき、ああ、この家はいい家になるなと思いました。平面のイメージが立体的に立ち上がった瞬間でした」
Tさんは、施主の「こんなふうに暮らしたい」を、生活の具体的な動作までも落とし込んで設計に反映させていくタイプの建築家だ。家事動線をいかにコンパクトにプランニングするのか、そのあたりは、たぶんTさん自身が家事をけっこうしているのにも関係していると思う。主婦感覚がわかるんだと、Tさんは普段から言っているから(笑)。

Tさんの発言で印象的だった言葉。
「三角形の土地を、どう料理しようか」
「この家はコンパクトだけど、家の中を子どもたちが走る距離はとっても長いね」
「設計とは、どうプランニングし、どう生活を作り上げていくかだ」
「生活って、きれいごとだけでは済まされないからね」

最後のひと言は、実感こもってたなあ(笑)。
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