今、半分空の上にいるから

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今、半分空の上にいるから 謎の輪 その2

2017-09-11 13:09:24 | 今、半分空の上にいるから②(完結)

 二日間様子を見て、禄郎は警察で事情聴取を受けに出掛けました。

 「えっ!?インフルエンザの検査受けなかったの?」
禄郎は警察で非難めいた口調で、文句を言われました。

 「熱が下がってから、丸二日間経過したので大丈夫ですよ。」
禄郎は説明しましたが、受付けた警察官はまだ疑う様な感じで禄郎を見ていました。

 「今日中に帰りたいので、事情聴取を進めて下さい。」
禄郎は心外だと思いながら言いました。

 事情聴取が済んでから、刑事が禄郎に伝えました。
「佐藤刑事と鈴木刑事が後で話を聞きたいと言っていたから、ちょっと待っててくれる?」

 「まだ東京なんですか?」

 「被疑者はどうも別の事件にも複数関わっているらしく、こちらで捜査に協力してもらっている。」

 そのまま椅子に座り、しばらく待っていたら、二人の刑事達が戻って来ました。

 「お待たせ。ちょっとこちらの調書で聞きたい事が…」
と、鈴木刑事がテーブルの上に調書を開きました。

 「何ですか?」

 「いや、その何て言うか…。」
言いにくそうな鈴木刑事に代わり、佐藤刑事が言いました。

 「全体的に証言が細かすぎるんだよ。」

 「はあ?細かい?」
禄郎は「何だそれ?」と言う顔で聞き返しました。

 「例えばここ。」
佐藤刑事は調書を指差しました。
「病院の会計のソファーに置き忘れた薬。色まで何色か証言しているだろ?」

 (あ…。)
と禄郎も気付きました。
「あー、でも、薬の名前なんて知らないし。自分がそう思っただけで。間違っているかも…。」

 「証言の裏全部取れたから。」
佐藤刑事が言いました。

 「ぜ、全部ですか?」
禄郎は(ヤバい…)と内心少し焦りました。

 「お前はあちこち抜け道を通れるだけじゃなくて、透視も出来るのか?」
佐藤刑事に冗談ぽく聞かれ、禄郎は困りました。

 「いや、透視は出来ないんだけど、時々変に勘が働くと言うか…。」

 「勘?」

 「まあ、霊感みたいなもんです。」
禄郎は誤魔化して適当に言いました。

 「幽霊とか見えるの?」
鈴木刑事も興味津々で尋ねました。

 「幽霊とか、何かよく知らないものとか…。」
禄郎も言い訳が段々苦しくなって来て困りました。

 「今も何か見える?」
鈴木刑事が真剣な顔で聞きました。

 「何も見えません。」

 禄郎がそう言うと、鈴木刑事がホッとした様子で言いました。
「良かったよー。後ろに幽霊がいるとか言われたらどうしようかと思った。」

 「勘が変に働く時は、大抵体調が悪い時です。事件の日はちょうどそういう時でした。夜に熱が出たから。」
禄郎は説明しました。
「体調が元に戻れば、特別勘も働かないし、体調の悪い時に見えたと証言したものは、今はよく分からないんです。」

 「成程。今一よく分からないけど。」
鈴木刑事が言いました。

 「持病みたいなもんです。」
禄郎が言いました。

 「えっ、それが持病なのか?」
佐藤刑事が聞き返しました。

 「まあ、そうです。」
禄郎は苦笑しながら答えました。


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