Even 言い分

風の向くまま、気の向くままに、今日は何を書こうかな~。

Vol.12 最後のチャンス

2006年05月23日 | 連載『Carry on』
続けることで生まれる力の強さを知ったんだ・・・。

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福岡でM君の出ていた舞台を見た半年後、僕の別の友達は自分の夢を叶えるため、懸命に頑張っていた。
その友達の名は、高橋君。

彼は日本体育大学のレスリング部に所属していた。
オリンピック選手を数多く世に送り出しているということで、高校時代に全国大会で活躍した選手がたくさん集まってくる名門クラブである。

彼は1~2年生の頃、レスリングを辞めたいと何度も思ったことがあったという。
自分と同級生との間に感じる実力の差、自分の思い描く試合展開が出来ないことへの歯がゆさ。

『ここで投げ出してしまったら今まで頑張ってきたことが水の泡と消えてしまう』
『大学進学を叶えてくれ、応援してくれている家族がいる』

こんな強い思いが、彼を支え、レスリングを続ける原動力となっていた。
不器用ながらも懸命に歯を食いしばり、頑張ってきた甲斐もあり、高橋君は3年生の頃から徐々に頭角を現し始めた。

2002年8月。
高橋君にとって、最後の「インカレ」が大阪で開催されていたので、僕は応援に行くことにした。
インカレの試合を生で見るのは初めてだったのだが、会場内に足を踏み入れるとスゴイ熱気に包まれていた。
試合時間までまだ余裕があったので、携帯へ電話すると観客席へ来てくれ、僕にこう言ってくれた。

「遠い所をわざわざ足を運んでいただいたので、絶対、勝つ姿をお見せします。」

遂に試合が始まった。
見ている僕の手にも力が入る。
高橋君は落ち着いた動きで試合を運び、そして、力強い技を展開していた。
これが今まで積み上げてきたものなんだと思いながら、僕は試合を見守った。

これまでの努力が実を結び、彼はなんと準決勝まで駒を進めた。
準決勝・決勝の試合は翌日に行われるため、他の予定が入っていた僕は残念ながら帰らなければならなかった。

帰り際、高橋君は僕を見送るため、会場のロビーまで出てきてくれた。
「ここまで来たんだから絶対、優勝してよ。」
「はい、絶対に優勝してみせます。」
「じゃあ、いい知らせを楽しみに待ってるから。」

翌日の夕方、僕の携帯電話のメール着信音が流れた。
送信者の名前を見ると高橋君だった・・・。

【次回へつづく】

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