気象予報士 村上繁郎のブログ

気象予報会社「ファインウェザー」の気象予報士です。身近な気象現象や季節の出来事などを気象予報士の目を通して綴ります。

特別警報におもう

2013-08-31 17:05:19 | 気候

31日昼過ぎの小田原から見る箱根。湿った南西からの気流が箱根で雲を発生させている。

小田原アメダスの12時20分の気温は34.7℃。 1分毎の記録では、最高気温は35℃に達して

いるかもしれない。内陸の海老名では35℃を越えたが、海沿いの三浦や辻堂では31~32℃の

最高気温だった。山越え気流によるフェーン現象が発生したと思われる。

31日昼過ぎ、気象庁発表の72時間先3日9時(日本時間)の予想天気図(数値予報図)。

上側の500hPa気圧の高度を予測した高層天気図では、朝鮮半島北部から沿海州に、

上空の寒気を伴った気圧の谷(寒冷渦)がある。この寒冷渦は30日頃からこの場所に現れ、

ゆっくり東へ移動している。寒冷渦の南東側では南からの暖湿気流が集まり(収束)し、

前線や低気圧が発生し、大気の状態は不安定となる。台風15号もこの前線に取り込まれた。

この寒冷渦は4日ごろにかけて日本海へとゆっくり移動する予想。それまでは寒冷渦の

南東側になる東日本は前線が停滞しやすく、不安定な大気の状態が続きそうだ。

  *   *   *

30日から、気象庁は『特別警報』を発表するようになった。

『特別警報は、これまでの警報の発表基準をはるかに超える現象が予想され、重大災害の

危険性が著しく高まっている場合に発表し、特別警報が発表されたら最大限の警戒が必要。

直ちに身を守るために最善を尽くしてください。(気象庁)』

危険な状況が迫っているときに、避難勧告や避難指示は自治体(警察、消防)によりだされる。

しかし、最終的に自らの安全確保を図るのは個人である。暴風雨の際、確実に住民に

情報伝えられるのか、また、暴風雨、冠水・浸水の際の避難行動がかえって危険ではないか、

などいろいろと課題はあるが、避難行動を遅らせる要因のひとつに、『リスクに対してかかる

バイアス』がある。バイアスとは「自らに都合の良いことは、自らに確率を高く思い込ませ、逆に

都合の悪いことやリスクはその発生確率を小さく評価してしまう」ことだが、ギャンブルでは、

勝てる確率を実際より高く思い込むというバイアスにより深みにはまってしまうことがある。逆に、

体の変調に気がついたとき、重い病の前兆であるにもかかわらず、『たいしたことはない、

疲れだ・・』と、症状を軽く思い込ませるバイアスが働き、治療が手遅れになる。

そして、警報が発表されたとき、「これまで警報が発表されても災害が発生したことはない。」

「このくらいならまだ大丈夫。」などリスクを小さく思い込む(思い込ませる)バイアスがかかり、

そのため、避難行動が遅れてしまうことが多くあるようだ。後で笑って済ませることのできる

リスクと、取り返しのつかないことになるリスクをしっかり区別し、行動を起こさなくてはならない。

カレー専門店で『特辛』のうえに『激辛』があると、かなり辛いはずの『特辛』の存在感が希薄になる。

『特別警報』が発表されるようになっても、『警報』発表の重みはこれまで通りに受け止め、早めの

『身の安全確保』を図らなくてはならない。

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潤う

2013-08-25 09:20:29 | 気候

小田原では6日に2mmの雨が降って以来、雨は無し。からからの渇水状態だったが、

23日には小田原アメダスで6.5mmの降水。小田原では雨を待ち望んでいた人も多い。

上の天気図は、25日未明気象庁発表の72時間先、27日21時(日本時間)の予想図。

上側は500hPaの気圧の高度を予想した高層天気図。太平洋高気圧の勢力の目安になる

5880hPaの高度線が黄海から西日本、そして本州の南にひかれている。

太平洋高気圧は西日本から華中に張り出しているが、東日本では後退傾向。

一週間先9月1日までの予想図では、さらにその張り出しが弱まる予想になっている。厳しい

残暑も収まってくるだろう。

しかし、偏西風が蛇行し、天気は周期的に変わる秋のパターンになる。秋の移動性高気圧で

爽やかな晴れもあるが、気圧の谷も通過する。次の気圧の谷は31日から1日頃になりそう。

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箱根のフェーン

2013-08-20 21:24:50 | 気候

20日朝、小田原は高い雲が秋を感じさせるきれいな朝焼け。爽やかそうだが、小田原アメダスの

気温は8時には30度を超える。

そして、小田原から15kmほど西にある箱根芦ノ湖には朝から低い雲が広がる。

11時過ぎの芦ノ湖付近の気温は25℃ぐらい、その頃、小田原では最高気温35.5℃が記録

されていた。同じ頃の神奈川県内の他のアメダスの気温は33℃前後。

北西から南西の風が箱根を滑昇し、水分は凝結し雲となり、乾いた空気が小田原に下り、

フェーン現象で小田原の気温を押し上げたようだ。芦ノ湖と小田原の標高差はおよそ700m。

空気が100m下降すると1℃気温が上昇する(断熱圧縮)。700m下降して10℃の気温上昇は

その差が大きすぎる。しかし、芦ノ湖付近と小田原の気温差が10℃近くなることはよくある。

仮説だが、空気が箱根を滑降してくるときの断熱圧縮による気温上昇のほかに、日射で上昇した

箱根の斜面の熱も加わると思われる。

 

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本来の七夕だけれども・・

2013-08-12 23:29:31 | 気候

里芋の葉にたまった夜露で墨をすり、七夕の短冊を書くと字が上手になる・・らしい。

13日は旧暦7月7日、本来の七夕。梅雨も終わり、立秋を過ぎて秋めき始め、次第に空気が澄み、

このころは星空もきれいに見える。太陽暦の7月7日は九州から東北は梅雨の真っ最中、『牽牛・

織女と天の川』を鑑賞するには少々無理がある。旧暦の行事はやはり旧暦で行われるのが良い。

しかし、今年は太平洋高気圧がその勢力の衰えを見せず、西日本から東日本は厳しい残暑が続く。

湿った空気が入り空気の透明度は悪く、神奈川県では、12日は『星降る・・』どころか『雨降る・・』に

なった。13日午前3時ごろ極大となるペルセウス座流星群も観測不能。

明日の旧暦の七夕も、星降る夜は期待できない。

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借景

2013-08-07 19:24:15 | 気候

6日は雨、夜は晴れて風が弱く、放射冷却で気温が下がる。箱根芦ノ湖や仙石原はカルデラ。

盆地なので雲海になることを期待し、7日朝はちょっと早起き。芦ノ湖は層状の雲に覆われていた。

朝日が当たり始めると雲海はまさに『雲散霧消』。芦ノ湖付近が雲海になることはさほど珍しいこと

ではないが、層状雲の形状は千変万化。雲海を見るたびにそれなりの感動がある。

 

大観山からの眺めだが、晴れた日のこのアングルは箱根の風景としては最も定番。絵葉書はもちろん、

旅番組、旅行案内などで使用頻度のきわめて高い見慣れた景色。しかし、雲海でイメージは大きく

変わる。

そして改めて認識させられる、世界遺産となった富士山の存在感。今は雪のないシルエットの富士山

ではあるが、もしもバックの富士山がなかったら、この風景はただの雲海の記録写真。空気の澄み切った

冬晴れのショットでも、感動はなさそう。

三保の松原、富士五湖、忍野八海、等々、富士山とセットの名勝地は多い。富士山は日本の庭園の

借景の原点かな・・

 

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夕焼け・・久しぶり

2013-08-06 21:38:35 | 気候

太平洋高気圧が東シナ海から西日本に張り出し、東日本には湿った空気が流れ込む気圧配置が

しばらく続いた。6日は東海から関東では大気の状態は不安定。小田原では夕方ごろ活発な雨雲が通過。

箱根で雨雲が弱まる傾向が続いたため、小田原アメダスの19時までの24時間雨量は僅かの2mmの

お湿り程度だが、湿度が高く、かなり蒸し暑い状態が続いた。

この湿った空気の流れは次第に東へと移り、西から比較的乾いた空気が入り、日没後の箱根山の稜線は

夕焼けに染まった。

次第に太平洋高気圧の張り出しが強まり、週末には東日本も太平洋高気圧に広く覆われる予想。

7日は立秋。厳しい残暑がしばらく続きそうだ。

 

 

 

 

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