「脂肪先生」

兄は医者ですけど、子供の頃から何に関しても文句を言うタイプで、特に研修期間はいつも「上司は人使いが荒い」と文句を言っていました。その上司はとても太っていて、名前は「アバニョ」でした。

そして、フィリピン語では「タバ」と言う言葉があって、意味は「脂肪」です。兄は上司のことにイライラしていたから「タバ」と「アバニョ」を組み合わせて、「タバニョ」・「ドクタータバニョ」と言う、「脂肪先生」のようなニックネームを作りました。

兄は上司に関して文句を言う時はいつも「アバニョ先生」じゃなくて、「ドクタータバニョ」と言っていて、私たちも「アバニョ」より「タバニョ」のほうが普通だと思うようになって来ました。

ある日兄はナースステーションでテレビを見ている知り合いの看護師や同僚を見かけて、話しかけました。
相変わらずその日の話題はアバニョ先生でした。皆もアバニョ先生の部下なので、兄の言うことには共感できて、次々と自分の文句を言い出し始めました。

話は三十分も続いていましたが、いきなり皆は静かになりました。空気を読めない兄は話を続けようとして「やっぱ、ドクタータバニョは最悪だね！」と言って、一人の看護師は神妙な声で「こんばんは、先生！」と言いました。

なんと、兄は文句を言っている間にアバニョ先生が、映画のシーンのように兄の後ろ側から現れて来ました。

「何か文句あるのか、○○○さん？」

「あっ！！ごめんなさい、ドクタータバニョ！！」と兄は口走ってしまいました。

その後何があったのかを直接兄に聞いたほうがいいと思います。（笑）