日々・戯言の叫び

感じた事とか色々、表に出せない事を吐き出す独り善がりで嘘つきな日記

寒さがだいぶマシになりました

2021-02-13 21:58:00 | 小ネタ
まぁ寒いものは寒いんですが。
でもストーブつける時間は減ったよ!!
はい、二次創作~。

ぎゃあああ、五月の大きなお祭りが去年に引き続き中止!!
ついでに来年も中止が決定!! ふざけんな、楽しみにしてたのにぃ!!!


ですまーく。
ご当主様を甘やかす探偵さんの話。


傍らのイリス 後

ふわりと水面に浮き上がるあぶくの様に意識が浮上した。
匂いがする。
とてもよく知っている匂いだ。
苦い、煙草の匂い。
この匂いは安心する。そしてこの匂いの元がとても暖かいものだと知っている。
だから、上手く働かない頭の代わりに体が動いた。
抱きついて、鼻先を押し付ける。
とても気分がよくなって、意識は再びまどろみへと沈んでいく。

ふにゃふにゃと寝言にもならない曖昧な音が男の口から漏れて、もそもそ動く体が擦り寄ってきてそれからまた満足げな寝息となる。
それを見届け真下はもう一度睡魔に身を任せた。
目が覚めたのは、時計の長針が二周り程度してからで。
「あれ? 真下、何でここに?」
「――さっさとシャワーを浴びてこい。その呆けた頭を働かせろ」
「え、あ、わかった・・・」
ぼやっとした表情で首を傾げる八敷に呆れ顔で着替えを押し付けてやる。
釈然としてないらしく、頭上に?マークを飛ばしながらよたよたと廊下を歩いていく背中を見送った。
戻ってくるまでに適当に散らかったままであった部屋を片付けておく。
積みあがったままの書物も資料も下手に触れないが、出しっぱなしだったペンや散乱する書類はまとめて脇に寄せておく。
それだけでも随分とましになる。
「真下、ええっと?」
ひょこりとドアから顔を覗かせた八敷はシャワーと睡眠のおかげである程度は頭が冴えたのだろう、後ろめたさを含んだ視線が下方をうろうろしている。
「腹は?」
「え?」
「どうせまともに飯も食ってないんだろう。来い、飯にするぞ」
「あ、待ってくれ。えと、作ってくれたのか? 真下が」
「俺以外の誰がいる」
「いや、その・・・・・・」
「それとも貴様は他人の手料理は食えん人種か?」
「いや! そんなことは!!」
さっさと足を動かす真下の後ろ、小走りについてくる八敷はおずおずと背中に向かって言葉を発する。
キッチンのテーブル、八敷に席に着くように促して真下はスープを温め直しついでにパンをトースターに突っ込み、火にかけたフライパンに卵を二つ落とす。
「ほら、食え」
「・・・・・・うわぁ」
目の前、湯気を立てる野菜スープと皿に乗った目玉焼きと狐色のパン。
ぐぅ、と。
美味しそうな匂いは空っぽだった腹をダイレクトに刺激して、八敷自身に数日振りの食欲を思い出させる。
目の前ですでに食べている真下に習い、八敷も手を合わせてからスプーンを手に取った。
一口、スープを口に運び。
「うまい」
野菜は口の中でほろほろと溶けるほど柔らかく、しっかりと味が染みているが濃いわけではない。
一口食べるごとに胃から全身に温もりや栄養が広がっていくような錯覚を覚える。
目玉焼きをパンに乗せて頬張り、ミネラルウォーターで流し込む。
久しぶりのまともな食事だ。
目の前の食事を綺麗に平らげて、ほうと息を付く。
自分は随分と飢えていたのかと今更自覚した。
「美味しかった。ありだとう、真下」
「・・・・・・ふん。礼を言う前に自分の身くらいちゃんと自分で面倒を見ろ」
睨まれて、苦笑する。
「何があったか知らんが、ちゃんと休め。食事を取れ。倒れても知らんぞ」
「う、そうだな。わかった」
見透かすような色の薄い双眸に射抜かれ身を縮める。
ここ数日の己を振り返り返す言葉も無い。
席を立つ真下の姿を無言でぼんやりと追った。
「ほら、行くぞ」
「へぁ? どこに?」
腕を掴まれ、裏返った声が出てしまう。
「部屋だ、戻るぞ。貴様はもう一度寝た方が良い」
「え、いや、でも・・・」
もごもごと口の中で反論するが、真下の強い目は拒絶を許さない。
「何なら無理やり寝かせてやってもいいんだぞ?」
「っ!? わかった部屋に戻る!」
慌てて立ち上がる八敷に真下は肩を震わせた。

先ほどまで寝ていたベッド。
もう一度身を横たえる。
ベッドのふちに腰をかけて優しく八敷の髪を梳き、此方を見下ろす真下の表情はそれに相応しく柔らかで。
恥ずかしくなって毛布にも潜り込みたくなったが、それは他ならぬ真下に阻止された。
「・・・・・・・・・」
「ん? なんだ、子守唄でも歌って欲しいか?」
「い、いらない!」
恨めしげにじぃっと見上げているとにやりと笑ってそんなことを言われたので、頭から毛布を被った。
「機嫌を直せよ、八敷」
毛布ごと抱きしめられてぽんぽんとあやすように叩かれる。
子供の扱いだ。
ふいに毛布をずらされて露になった顔をなぞるように真下は指先を滑らせ。
「寝ておけ」
小さく笑ってキスをされた。
もう一度毛布をかけ直されて、あついでに頭を撫でられる。
顔に熱が集まるのがはっきりわかった。それでもなんだか嬉しくなって安心と共にゆるゆると這い寄って来た睡魔に身を任せた。
次に目が覚めたときも、真下は隣にいてくれるだろうと確信を胸に抱いて。


傍にいるならいいのです。緩くたゆたう小船の上で、千年の歌を謳いましょう!!

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