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イタンデイコウ!

ひっそりたたずむ、設備たち

我が名は「サーキュラー」6

2021年01月05日 | 暖房
サーキュラー(円形放熱器)を採用した建物は
旧秋田銀行本店(現在の秋田市立赤れんが郷土館)しか
知らないが、函館にもあったようだ。

これが「函館某建築」とある鉄筋コンクリート造二階建の
壹階放熱器配置図。仕事室と書かれた部屋に9個も採用だ。




一階は女子休憩室、女子食堂、女子宿直室があり、
女子が活躍する場と想像できる。
二階には電力室、機械室、試験室、修繕室、事務室と
ともに、洗面所、便所、脱衣所、浴室が男女それぞれに
用意されている。




これが掲載されているのは昭和4年発行の
煖房換気工学。初版は大正15年である。
これらのデータから各地に遺る明治大正昭和の建物を調査した
「日本近代建築総覧」で調べると、建築年が大正14年の
電電公社西分室(旧函館郵便局電話分室)ではないかと
思われる。設計は逓信省。

なぜならば、公衆溜のカーブが足立区北千住にある
千住郵便局電話事務室と似ているからだ。
電話局ならば電話交換手として女子が働いているし、
24時間営業なので女子の宿直室があるのも納得できる。




あ、ここでヤベ―ことに気がついた。
図面に描かれた「壹階放熱器配置」と「貮階放熱器配置」は
階数が逆だろう。なぜならば、二階に「公衆溜」や
「暖房汽罐及びポンプ室」「薪炭置場」があるのが
おかしいし、何よりも階段が上ルしかないのである。

ちなみに著者は大澤一郎と櫻井省吾のゴールデンコンビ。
大先生!やっちまいましたか(笑)

我が名は「サーキュラー」5

2021年01月04日 | 暖房
築地本願寺は規模が大きい上にコンクリート造なので、
竣工当時の暖房はラジエーター暖房だと思われる。




思われる、というのは実物をこの目で確認できないからだ。
まずは建物用途が亡くなった人を弔う宗教施設なので、
不敬なことはできない。もうひとつは放熱器にカバーが
あるからだ。




グリルを上から目を凝らして見ると水盤がついており、
湿度管理の点で素晴らしいつくりである。
下部の本体はグリルの模様が細かくてこれまた見づらいが、
五細柱だろう。おそらく曲線に配列した
「カーブドラジエーター」
を採用しているのではないかと思うが、




カーブ半径が意外にきついので、
どんな形状の製品を採用したのか、謎である。

※ 書くことがこんな内容で(汗)「近代建築好き」カテゴリからは
異端になりますが、ブログのタイトル通り今年もあれこれ
悼んでまいります。

我が名は「サーキュラー」4

2021年01月03日 | 暖房
サーキュラーとは円形に組まれた放熱器であるが、



円形に組む理由は、柱の周りに設置するタイプだから
という仮説を立てていた。しかしこの写真(旧秋田銀行本店)の
ロビーにあったサーキュラーは単独設置だった。
この答えはアメリカからやってきた、ナイアガラの
1913年のカタログにあった。



初めて柱があるサーキュラーの画を見た!
サーキュラーが廃れていったのは、建物の構造から
細柱が消えていったせいなのではないか。

構造はその後、鉄筋コンクリートの時代を迎える。
木造が当たり前だった寺にもコンクリート造が誕生した。
それが築地本願寺。




中には丸柱が並んでいる。
これだけ太い柱なら、もうサーキュラーでは追いつかない。



我が名は「サーキュラー」3

2021年01月02日 | 暖房
外国のカタログに掲載された模様のないサーキュラー。

1913年 ユナイテッド・ステイツ・ラジエーター社


1922年 アメリカン・ラジエーター社


1297年 ナイアガラ・ラジエーター& ボイラー社


模様なしでサークルが大きいものもあった。

1920年 ユナイテッド・ステイツ・ラジエーター社


何かで読んだのか、想像したのか不明だが、サーキュラーは
細い柱の周りに設置するタイプなのだそうだ。ただしこれらの
カタログを見ても、それは証明されなかった。




我が名は「サーキュラー」2

2021年01月01日 | 暖房
一過性の技術・製品というのはどの業界にもあるようで、
需要がない=「ニッチ」となって廃れていく。
放熱器はカタログを見るとニッチの宝庫で、「標準型を
決めよう!」と言う流れになるのは、無理もないのである。
そんなニッチの代表は、サーキュラー(円形放熱器)。

日本で標準型が決定したのは昭和3年だが、サーキュラーは
当時の本にはもう登場しない。なのでサーキュラーを知るには
外国のカタログしかないのである。アメリカン・ラジエーター社の
1906年版に掲載されたのが、これ。



これは旧秋田銀行本店で採用されたロココだが、1912年の
カタログには下記の「デトロイト」が掲載されているので
サーキュラーとして模様は数種あった。



まさに「輪を以て貴しと為す」、
円形になっているからこそ貴重なのである。

相変わらずこんなブログでありますが、本年もよろしく
お願いいたします。

謎の「T」3

2020年11月29日 | 暖房
成城学園にある旧山田家住宅のラジエーターが
日本放熱器製作所製と判明したことから、カタログの
どの製品なのか特定するために採寸してきた。
カタログの表には放熱器の高さ・長さ・幅が掲載されており、




長さは「節」の数で変わる。そこで採寸。
ちょうど放熱器の端から端までが、長さである。








結果、旧山田家住宅のものは高さ600mmの13節なのでコレ。
青のイラストでは左から2番目。




カタログに「日本標準規格型」とあるが、
これは昭和3年に決定した規格。五細柱といえば
こういう2段のタイプが多い。




だから旧山田家住宅のラジエーターは、メーカーも
レアなら、その大きさもたぶんレアなのである。




川口の大泉工場

2020年11月24日 | 暖房
埼玉県川口市は鋳物工業で栄えた街であるが、
鋳物製品の一つが暖房用ラジエーター。
このOKSのマークは、川口にあった大泉工場の製品である。




鋳物製品の製造はしていないが、大泉工場は今でも残っており、





この工場跡では時折ファーマーズマーケットが開かれたり、
構内にはパン屋や昭和13年建築といわれる洋館も残っている。




残念ながらこの建物は一般公開しておらず、
撮影スタジオとして利用されている。
川口市長も輩出した名家、大泉家は川口市に美術作品などを
寄贈しており、現在川口市立アートギャラリー「アトリア」で
大泉家コレクション
が開催中。
美術品の他に洋館の間取り図や内部写真もあり、当時のモダンな
生活が垣間見えるのである。



謎の「T」2

2020年11月23日 | 暖房
成城学園前の旧山田家住宅に残るラジエーターは
1階広間と1階女中室の2台だけ。
女中室は入室禁止なので、ここのラジエーターの詳細は不明。




この住宅は間取りをみると、決して大きいわけじゃない。



しかし女中室にもラジエーターが設備されているところや
階段が2ヶ所あって、客と動線がからまないところが
素晴らしい。ステンドグラスも数ヶ所あり、気持ちのいい
住宅だった。

それにしても、このマーク。




何か見た覚えがあると思っていたら、





株式会社日本放熱器製作所ではないか?
五細柱も製造している。


以前に買ったこのカタログによると、
「昭和九年来鋳鐡製煖房用放熱器の製造に従事、爾来鋭意製品の
改良に研究努力の結果漸やく他品の追随を許さざる優良製品の
完成を見るに至りました」とあることから、時代的にも合っている。
日本放熱器製作所は東京市神田区豊島町に会社があり、埼玉県川口市
栄町に工場があった。川口といえばキューポラのある街として知られた
鋳物で栄えた街である。








謎の「T」

2020年11月22日 | 暖房
ネットで画像検索をかけていたら、成城学園前の旧山田家住宅には
ラジエーターがあるらしい。ということでGО!




この建物は昭和12年頃に建てられ、当初はアメリカで事業を成功させた
楢崎定吉という方の住宅だったそうだ。のちに山田盛隆氏が購入。
ラジエーターは2ヶ所に残っており、ボイラーは撤去している。






実は訪問するのを迷ったのは、「どうせTAKASAGOだろうな~」と思ったから。
しかし現地で五細柱を見ると(11/28 写真交換しました)








なんだ、この見たことのないTマークは?

しかも放熱器弁のバルブにも「打ち出の小槌」?のような謎のマーク。




コックにはメーカー名なし。


ラジエーターのマークからメーカーを推定するのは
あと数点のみで終わりだと思っていたが、まさか見たことがない
ものがでてくるとは思わなかった。




TAKASAGOの混乱

2020年09月23日 | 暖房
昭和鉄工さまより斎藤製作所(昭和鉄工の前身)が大正時代に
発行したカタログをいただいた。その中に掲載されたこの写真
(絵かも)から、斎藤製作所のマークを特定した。

このマークのついたラジエーターは、たまに見かける。
国立にあった高田邸




以前に見学した鎌倉の「西御門サローネ」もそのひとつだ。
その西御門サローネを再訪した。というのも、五細柱を
撮影していなかったからだ。
これがその五細柱。




マークは斎藤製作所のカタログにあるものと
酷似している。しかしその横にある文字はTAKASAGO。




TAKASAGOの文字といえば、このマーク。



風車型のマークは昭和鉄工の前身の斎藤なのか、高砂鉄工の
前身である高砂鉄工所なのか。
風車はクルクルと結論を出してくれないのである。