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イタンデイコウ!

ひっそりたたずむ、設備たち

ナイアガラとアメラジの差

2020年09月16日 | 暖房
このたび手に入れたのは1913年発行のナイアガラ社のカタログだが、
偶然にも同じ年に発行されたアメリカン・ラジエーター社のカタログも
買っていた。




ということで、掲載されたオーナメンタル(装飾的)タイプを見てみる。
まずは戦前の日本でシェアNо1だったアメラジから。

湯島の岩崎邸で採用されたイタリアン。




奈良ホテルで採用されたヴェロナ。



秋田市立赤れんが郷土館で採用されたロココ。



これらがこの1冊に収められているという、充実した内容。

対するこちらがナイアガラの「トリンプ」二柱、三柱、四柱。

 

  



「線画?」

ひなげしをモチーフにしていると思われる素朴なデザイン。
この差はデザイナーのセンスなのか、鋳造技術上の問題だったのか
わからないが、アメラジに見慣れた目には衝撃だった。



ナイアガラと言えば

2020年09月14日 | 暖房
「ナイアガラ」と聞いて連想するのは「滝」であるが、
箱根富士屋ホテルと日光金谷ホテルでみたナイアガラ社の
ナイアガラは何を指すのか不明だった。
このような形状がナイアガラの滝のようだから、社名にしたとも




考えられるが、そんな風流な名づけなのか?
2021年1月24日錯誤につき写真交換

もう出品されることはないと思っていたナイアガラのカタログだが、
金谷ホテルがラジエーター暖房を採用した年(大正3年)の前年、
1913年のカタログが出たので、即クリック(笑)
中表紙に描かれたのはナイアガラの滝。(右下のシミはもとから)




ナイアガラ ラジエーター アンド ボイラー 
カンパニーの住所はアメリカ・ニューヨーク州 ノーストナワンダ。
このノーストナワンダにはインディアンの居留地があるそうで、
だから表紙がこれなのか!




流行は発信から終焉まで、タイムラグが生じる。
それはラジエーターも同じだったようで、金谷ホテルのものとは
似つかぬものがページを埋めていた。

アメラジでした

2020年08月19日 | 暖房
横浜234番館には壁掛けのラジエーターが設置してあるが、
メーカーを示すマークはない、あるいは撮っていないと思っていた。




デジカメ写真の整理をしていたら、思いがけずメーカーが判明した。





このマークは、アメリカン・ラジエーター社。



ということは、



これが壁掛けを規格化する時に建築家が渋ったデザインなのである。

TAKASAGOは高砂

2020年08月18日 | 暖房
いまさらであるが、ラジエーターについたこのマーク。



逆転させてみる



これを今までTAKASAGOと読み解いていたが、実は
これがTAKASAGOであるという文献は見たことがない。
なのにTAKASAGOと書き続けていたのである。
この夏はコロナと酷暑で、これまで撮影したデジカメ写真を
整理していた。すると標準型の二柱に




TAKASAGOと陽刻してあるものが見つかった。
これでこのマークの製造者は、高砂鉄工と特定できた。

続テイテンさんのお仕事 3

2020年08月13日 | 暖房
ラジエーターの観点からとらえた日光金谷ホテルは、やはりナイアガラ社の
壁掛けが現役で稼働していることだろう。
昭和3年に決定した日本標準規格の壁掛けタイプが、このナイアガラ社の
製品を手本としているからだ。以降規格品が市場に出回ることになるが、
それは本家のナイアガラを駆逐することでもある。ラジエーター暖房は
アメリカン・ラジエーター社がシェアナンバーワンであったが、その
席捲はすさまじく、ナイアガラを採用した物件を探すのが困難なほどで
ある。そんな状況で交換されずに現役であることが、どれだけ貴重な
ことかおわかりいただけるだろうか。

今回も事前にホテル側とメールのやりとりをし、食堂室の壁掛けを拝見
させていただいた。






壁掛けと言っているが木造に取り付けるには自重が
重すぎて、「半床置き」になっているところが面白い。




ナイアガラのマークとともに、星のマークもついている。

  

今回のテーマはそんな貴重な壁掛けの採寸である。
寸法はカタログに掲載されているのだが、このラジエーターはスチームが
左上から入り右下に抜けていく。スチームの場合その構造から、管径は
往き管が太くて還り管が細い。ということは、水平に伸びている上下の
管径は違っているのではないか?

これを自宅でうんうん考えていたが、答えが出るわけない。
カタログの図を半分に分割して片方を上下逆さまにしてみたが、
上のほうがちょっと太いような、太くないような。(左が正、右が逆転)




そこで「ノギス」の登場である。
ホテルマンに帯同していただいたが、こりゃもう言ったほうがいいよね。


「クラシックホテルの間違った使い方をして、スミマセン」

こういう客を見て感情をおくびにも出さないところが、
一流ホテルのホテルマンである。

現地で2つの壁掛けにノギスを当てた結果、
往き管(上)76mm  71mm
還り管(下)74mm  75mm

やべっ!半端に測って結論が出なかった・・・




続テイテンさんのお仕事 2

2020年08月12日 | 暖房
ビジネスホテルの料金は「シングル」「ツイン」といった
部屋ごとに、ほぼ一律に設定されている。
これは部屋の大きさと部屋の中に設備されたものがだいたい
同じ、という理由だろう。しかしクラシックホテルと
いわれる戦前に開業したホテルの値段は、よくわからない。

調度品のグレードにもよるのだろうが、たぶん広さもある。
今回の本館の部屋を「狭い」と表現したが、個人の感想
じゃなくてホントに狭い部屋だったようだ。




12と書かれたのが泊まった部屋。デフォルメしているんじゃ
ないかと思わせる館内案内図だが、チェックアウト時に開いていた
部屋を覗いたら、こんなに広い部屋もあった。
ラジエーターは遠目でもナイアガラの壁掛け採用とわかる。




ちなみに今回部屋でできなかったのが、これ。廊下にあるものでやっている。
このまま一晩置くことも考えたが、回収されそうなのでやめた。
今まで缶コーヒーを買っていなかったので、一晩置いたら
どの程度の熱さになるのか見てみたかったんだよな~。




奈良ホテルには謎のツルハシが設置してあるが、金谷ホテルには
ハンマーが設置してある。どちらも火災時の破壊道具だと思っていたが、
はっきり「非常破壊用」と書かれたものがみつかった。



続テイテンさんのお仕事

2020年08月11日 | 暖房
新型コロナウィルスが広がり始めていた今年の3月。
不安ながらも、日光金谷ホテルを再訪した。やはり、であるが
駅からホテルへ向かう道に観光客はほとんど見なかった。

去年の別館のラジエーターが前田鉄工所製だったこともあり、
予定外で今年はツインしかない本館に宿泊することにした。
ツインの部屋はこんな感じ。




狭い。が、目的がそれじゃないからと言いつつ



狭いので、家具の移動がちょっと大変。移動した姿がこれ。



今年はナイアガラの壁掛けタイプ。よっしゃ~!





毎度おなじみのナイアガラマークであるが、反対側は見たことのない星マーク。

  

喜んでいたが、気がついてしまった。



壁掛けは「壁」に掛ける用。この取付が美しくないことに。
そして壁掛けではシウマイ弁当が温められない、缶コーヒーが、
朝食用のパンが温められないということに。今回の料金は素泊まりで
15,730円。なのにこのラジエーターは最後まで一度も暖かくならなかったのだ。
3月の宿泊は賭けだったが、最後の最後で外すとは。



テイテンさんのお仕事 5

2020年08月09日 | 暖房
日光金谷ホテルに初めて宿泊したが、朝夕食付だったので
チェックインから「純粋に」ホテル生活を楽しんだ。

・・・そんなわけはない(笑)
今回の宿泊テーマはラジエーターの「熱損失」だ。
このラジエーターの場合、スチームは左から入って右に抜ける。




その抜ける途中で潜熱を放出し、部屋を暖めるしくみだ。
ラジエーターは触ると熱いが、あれはいったい何℃あるのか。
以前から測りたかったが、何℃あるかわからないので普通の温度計では
測れない。そこでニトリで料理用の温度計を買ってきた。

幸いにも宿泊した別館は他の客と会うこともなかったので、
ゆっくり測ることができた。結果、


  

その差は約3℃。意外に熱損失は少ない。
つまり暖かさが持続しているのである。
別館のバスルームにはナイアガラ製のラジエーターが設備されている。






熱損失が少ないからこそ、なのか



往き管にはガードが取り付けられていた。

ナイアガラのカタログにはこの製品が掲載されている。。




金谷ホテルの本館の階段にはこれに似たものが設置されている。



カタログのような一体型ではなく、分割型で設置したのは
おそらく一体型が高価だったことと、故障した時のことを考慮して
なのだろう。ドイツ人のテイテンさんらしい堅実な設計である。
だけど直角ラジエーター、見てみたかったけどね!


ボイラーの時代がやってきた?

2020年07月19日 | 暖房
小学生の頃から見てきた近代建築であるが、その中には
ピカソではないが、〇〇の時代といった変遷がある。
最初は西洋館、文字通り異国情緒たっぷりな洋館を
楽しむことから始まった。次は煉瓦の時代になったが、
これが意外に早く終息した。東京駅や横浜の生糸検査所を
壊している時に煉瓦をもらってきたこともあったが、
のめりこんではいない。たぶん飽きたんだと思われる。
続いて鉄筋コンクリートの時代に移るが、この時期が
一番長く今も続いている。なぜならば、不燃建築には
当時最新の設備が導入されていたからだ。

その設備の分野で数十年にわたり、一人のエンジニアを
追っていた。彼は京都帝国大学の機械工学科を卒業後、
長きにわたり母校で教鞭をとった教授である。最後は
エレベーターメーカーに移り、その生涯を終えたので
あるが、この「機械工学」と「エレベーター」の語で
このエンジニアは「歯車系」の人だと思っていた。
ここにきて実はこれが認識誤りなのではないか、と
思い始めている。つまり入るドアを間違えた?

彼の専門分野は鉄道だったかも。当時の鉄道は機関車、
ボイラーで動く車両だ。というのも帝国大学教授なら
管轄は文部省だが、ドイツに視察に行く際は鉄道省が
金銭を負担したからだ。この公文書を見た時は、なぜ
鉄道省が?と疑問だったが、鉄道なら納得がいく。
ということで、今回のボーナスで買った本。




昭和15年に汽罐協会が発行した「汽罐士讀本」。
旧字体で書かれているので、読めない漢字も。




第4章の「缺陥」は調べると欠陥のこと。
こういった協会が発行した本は、その分野を俯瞰できるので
なかなか面白い。ボイラーは今まで追うことがなかったが、
教授のお導き?でボイラーの時代がやってくるのか?
やってきてしまうのか?

斎藤製作所とテーテンス

2020年06月08日 | 暖房
最近の暖房の話でたびたび登場するのが、斎藤製作所(現在の昭和鉄工)と
テーテンス(現在のテーテンス事務所)である。

この2社の設備が奇しくも2020年度の「建築設備技術遺産」に認定された。
建築設備技術遺産は一般社団法人建築設備技術者協会が2012年から制度を新設
したもので、空調、衛生、電気、搬送の建築設備について貴重なもの、意義ある
ものを認定するものである。認定件数は多い年で8件、少ない年で1件。
今年は4件の認定である。過去の認定にはパイロットの水栓金具の実物や
井上宇市先生の資料、柳町政之助の「暖房と換気」の書籍などがある。

今年の認定はテーテンスノートと明治村で展示保存している御料車、いわゆる
「天皇のお召列車」に設備された暖房用ラジエーターの他に2件。
このラジエーターの話は昭和鉄工の社史に掲載されているので知っていたが、
明治村に行けば見れるんだなぐらいに軽く考えていた。ははは。

明治天皇御料車のラジエーターが2020年度「建築設備技術遺産」に認定


この記事を読むとこの考えが相当甘いことがわかる。社史の写真でしか
みたことのない貴重なものが、ネットで(しかもカラーで!)詳細に
見ることができるのは素晴らしい。昭和鉄工は昨年の豊郷小学校に設置された
ボイラー
に引き続いて2年連続の認定となる。このボイラーはストーカー
(給炭機)がついている珍しいもので、各地で今に残るボイラーは見るけど
給炭機付きはないんだよね。

昭和鉄工さま おめでとうございます。
テーテンス事務所さま おめでとうございます。
そして、すべての建築設備の保存に尽力されている皆様、ありがとうございます。