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イタンデイコウ!

ひっそりたたずむ、設備たち

風車マークの二柱

2021年10月05日 | 暖房
大正時代に製作された斎藤製作所のカタログに
掲載された二柱ラジエーター。



節には「筋」が入っている。この線は昭和3年に決定された
日本標準規格第76号にも登場する。




国立の高田邸にあった風車マークは三柱だが、よそには
二柱が設置されていた。




この「よそには」とぼかすのは、どこだか覚えていないから。
北海道は間違いないが、そこが「札幌」「小樽」「函館」のどれかがはっきりしない。
ちなみにもう少し引きで撮ったのがこれ。




博物館・記念館・資料館といった系統の建物らしいが、
まったく覚えていない(汗)
今は動画サイトという便利なツールがあるので検索したが、どれも改修が
入ったようできれいになっており、モノが見当たらない。もっともこういう
ものを写す人がいないのかも。

見たことのないマークだからと撮影したが、数十年を経過して「おおっ!」と
なるとは思わなかった。

<追記>
鮮明とはいえないカタログの図版を見て、「似ている」というだけで
風車マークを斎藤製作所(高砂鐵工)と判断するのはいささか短絡、
と考えていた。何よりも決め手がなかったのである。ところがこれ
見て




確定できた。ただし、時代区分はお手上げである。





【結論】三機工業製、ではない 2

2021年10月04日 | 暖房
国立にあった高田邸のボイラーとラジエーターの製造業者が
斎藤製作所(高砂鐵工)らしい、と判明したので、ここから追ってみた。
当時の工場は大崎駅前にあり、この工場の見学記が雑誌「工業日本」に
掲載されている。この中で「会社は主として暖房用の各種鋳物が製作されて
いるが」として具体的に「ニューラジオボイラー」が挙げられている。
これはボイラーにNEW RADIOと陽刻されており、高田邸のもこれである。




昭和16年に日本機械学会が発行した「蒸気罐」という図面集には
外観図が載っていた!(嬉)




暖房用蒸気罐108号形 高砂鉄工株式会社とある図と現物を
比較してみよう。






その姿はほぼ同じ。同じ向きの側面は搬出時に見ることができた。





ここでようやく、もやーんが解決できた。
【結論】国立にあった高田邸のラジオボイラーは、三機工業製ではない。



【結論】三機工業製、ではない

2021年10月03日 | 暖房
かつて国立にあった高田邸(昭和4年築)にはラジオボイラーが設置されていた。
本体に  SANKI   KOGYO   K.K.  TOKYO と陽刻してあったことから




ラジエーターとともに三機工業に引き取られ、保存されることになった。
それは嬉しいことであるが、三機工業は元々商社である井物産の械部が
独立してできた会社。社名もこれに由来する。つまり当初から「商社」であり、
製造業者ではない。だから三機工業の名は、なんかもやーんとしていた。
そうかといって他に銘板等もなく、もやーんは続いていたのだ。

その突破口となったのが、昭和鉄工さんからいただいた復刻カタログ
この中にラジエーターの画像があり




プラグ部を拡大したものがコレ。



この絞り出したような模様は、のちに規格で「放熱器には製造所の名、
又は其の記号を鋳出すものとす」と定められたものであろう。
つまり、製造者名を確定するオリジナルな部分なのである。
高田邸にあったラジエーターはこれ。






JISマークがないので、戦前品と判断できる。
このマークはラジオボイラーにもついており、ラジエーターとボイラーが
同じ業者で製造されたことがわかる。ちなみにメーカーがお揃いなのは珍しい。




斎藤製作所はもともと福岡で斎藤一が創業したのであるが(現在の昭和鉄工)
甥の斎藤省三が東京に進出し、東京チームは高砂鐵工となった経緯がある。
この高田邸には高砂とわかるラジエーターも納品されていた。






写真が相変わらずブレててすまぬが、斎藤製作所時代のものと
高砂時代のものが混在していたのも、今となっては貴重だったなと
遠い目になる。


オーナメンタルの終わり

2021年06月27日 | 暖房
ボーナスが(いくらもらえるか)出た!
というか、出ることを前提として買ったカタログ。




ナショナル ラジエーター カンパニー社のNо33。



1924年の発行ということは、大正13年。
この翌年に高砂鐵工、前田鐵工所、東亜鐵工所が規格統一の
ための意見書を提出し、規格化がスタートした。
このカタログに掲載された最初のラジエーターはこれ。




三細柱である。以降五細柱、七細柱と続き、



最後は壁掛のオーナメンタルで終わっている。
全51ページのものが19ドルだった。水濡れもしたらしくシミも
残るが、同社の同じ年のカタログ(64ページ)が349ドルで
出品されていた。それと比べれば、まだ廉価である。それでも
全て込みで日本円で換算すると、8千円以上はするのである。

有効利用

2021年06月15日 | 暖房
温水でも蒸気でも、ラジエーター暖房は放熱器から発散される
熱を拡散して部屋を暖めるしくみ。
だからカバーと言えば聞こえがいいが、放熱器からすると
「障害物」があれば、当然熱効率は落ちる。




これは旧朝香宮邸(現在の東京都庭園美術館)に設置された
ラジエーターカバーのひとつ。宮家がデザインにこだわって
建てた自邸につき、熱効率は考えない方がいいのかも。

そんなこと言ったらボイラーが作り出した熱が、もったいない
じゃないか!と考えたのが、旧国立公衆衛生院。現在の
ゆかしの杜である。この部屋が旧院長室。




向かって左側のカバー。







全体は木製で、頂部と足元に金属製の格子がついている。
頂部の格子が一部ないが、これは隣のもここがないことから




放熱器弁を操作するために開いているのではないかと
思われる。だとしたら欠損に見えるので、デザインして
ほしかったな~

旧公衆衛生院には当時の作り付けの机も残されている。




この長い机の端には柱らしいものがあったと
推測できるのがこの部分。




そして窓側に設置してあったとわかるのがこれ。





ビニールカバーが反射して見づらいが(はずしてほしい・・)
この下に放熱器があり、熱を上に放出できるようにしてあるのだ。
開くように指をひっかける部分も作ってある。
ちなみに下から見ると




ちゃんと机の終わりの先に格子がついていて、
机と干渉しないようになっている。機能美と呼ぶにふさわしい
机は、弁当を温めるのにも便利だったのではないか(おいっ)

創建時のものは、見つからない?

2021年06月13日 | 暖房
東京都港区白金台にある旧国立公衆衛生院、現在のゆかしの杜は
港区立郷土歴史館や学童クラブなどを擁する複合施設である。
昭和13年に竣工した「建物」は無料で見学ができる。
2020年に発行された保存修理工事報告書を読んだら、
ちょっと気になることが書いてあったので、再訪した。

その気になることとは、機械設備の章に
「既存スチームも多く残されていた。創建時のスチームを
探したが、1949(昭和24年)に制定されたJISマークがついて
おり、創建時のものは見つからなかった」
と書いてあることだ。

うーん、納得いかね(笑)確かに中央ホールに設置して
あるのは前田鉄工所製のJIS品である。では講堂はどうか。




講堂は入口から壁掛の三柱が4台続き、演壇に一番近い所に
五細柱という構成で、すべてニップルエスがついた昭和鉄工製。






入口に近い、足がある床置用を壁掛として使用しているものは





おぼろげながらJISマークがついている。
中間の3台は足がなく、節のデザインが足つきとは異なる。






そこにJISマークはない。放熱器のJIS(日本工業規格)の前身は
昭和3年に決定したJES(日本標準規格)。
これが戦前の規格JES第76号。




こちらが戦後の規格JIS A4001




JISはJESを参考にしているので、形状はほとんど同じ。
結論すると、創建当時のものは講堂に現存している?

床置きを壁掛にしたのも五細柱も、左右両側とも同型のJISなので、
交換ではなく戦後に増設したのではないかと考えられるが、
どうなのだろう。







テイテンさんのお仕事、再び

2021年02月28日 | 暖房
新年早々の旅で希望していた部屋がとれていなかったのは、
日光金谷ホテル。ハンパない失望感で、どこかの温泉にでも
行ってくるかと計画したが、湯船につかりながら
「あ~、やっぱりラジエーター見てえ!」と思うんだろうなあ
と、金谷ホテルを再予約した。

そりゃないよ、金谷ホテル 2

2021年01月08日 | 暖房
部屋のスチーム暖房のメーカーをアメリカのメーカー
「ナイアガラ」で指定したのは去年の12月27日。
宿泊日まで一週間以上ある。それまでに手洗いうがいは
もちろんのこと、不要な外出は避け、万全な体制でその日を
待っていた。

当日は明治の館でおやつを買い、コンビニで酒を用意して
チェックインした。金谷ホテルの正面はこんな和洋折衷で
迎えてくれた。




正月の風景を見るのは初めてである。
気分高揚したままチェックインし、案内された部屋はこれ。




去年のコレとは、形がまったく違うよね?
(しかもメーカーは三大国産メーカーのひとつ、昭和鉄工だし)




ドアが開いて遠目に見た時点で
「ちょっと待って!」と声をかけたくらい違う。
部屋の案内人に説明すると違う部屋も用意してくれたが、
やはり目的のものではない。ちなみにこれも想定していた
のでチェックイン開始時間の15時ジャストに入館している。

人が入れ替わり立ち代わり説明してくれるが、結局は
最小限で最大の要望が受け入れられていない、という
ことはわかった。宿泊まで1週間以上あるので、設備に
聞くなりコンシェルジュに相談するなり、時間はあった
はずだ。かつ、申し込んだプランでは金額的に無理なら
連絡してきただろう。だから要望はかなっていると
現地まで来たのだ。

最終的に副支配人がきて、
「ホテルとしてはあの部屋に泊まって欲しい」
と言っていたが、それは無理。だって今回のプランは
安かったとはいえ1万8千円するし、目的が泊まること
じゃないから。最初に案内されたのは最上階角部屋の
部屋だったけど、ムダ金を使うことには変わりない。
金谷ホテルはダブルが一室しかないので、これに
泊まればもういいだろうと思っていたが、クラシック
ホテルの魔術(笑)にかかり、これで3年連続で
宿泊予定だったがもう終わりだ。さよなら金谷ホテル。

まったく話が違うので、往復の交通費を補填してもらい
帰路についたが、これでパワーチャージして今年を
乗り切ろう!と思っていただけに、失望感がハンパない。
ハァー


そりゃないよ、金谷ホテル

2021年01月07日 | 暖房
奈良ホテルから始まり、ここ10年以上、年に1回ラジエーター
暖房があるクラシックホテルに泊まるのを楽しみにしている。
理由は戦前に竣工した建物なので、ホテルそのものも楽しめる
からだ。
この冬はクラシックホテルのひとつ、蒲郡クラシックホテルに
予約していたが、コロナ禍でしかも遠距離になることもあって
とりやめた。蒲郡はラジエーター暖房を廃止しているので、
冬に限定しなくてもよいのだ。

ころころ変わる国家プロジェクトのGo Toは中止になったが、
金谷ホテルはその中止期間に、ディスカウントなプランを
出してきた。30歳以下を対象としたものは、敷居が高いと
思われているクラシックホテルを、リーズナブルな価格で
利用できるいい企画である。

以前に1泊2食付きで利用したが、今回約半額になっていた
こともあって、「ナイアガラ」をもう一度見ようと思ったのだ。
これが去年の部屋に設備された「ナイアガラ」。





ネットで予約後、電話で
・去年と違う部屋(料金グレード上げたけど念のため)
・スチーム暖房のいい部屋 を伝えた。
しかし「いい部屋」というのはあいまいで誤解を招くな・・と
再度電話し「メーカーがナイアガラのものにして下さい」と
お願いした。普通の客と違うのでオーダーが難しくて、すまん。

折り返し「わからない」と電話が来たので
「去年泊まった部屋〇号室と同じ形です」と答えると
「わかりました」と、予約は終わった・・・はずたった。

我が名は「サーキュラー」7

2021年01月06日 | 暖房
煖房換気工学に掲載された、函館の某建築に設置された
放熱器の種類は「凡例」としてまとめられている。




本には仕様書も掲載されており、
二柱型、三柱型、二柱丸型は
・アメリカン・ラジエーター社 ピアレス型
・ナショナル・ラジエーター社 アイデアル・プレーン
・東京大崎町 高砂鐵工株式会社 (無飾前記相当のもの)
となっている。

アメラジのピアレス型のサーキュラーがこれ。無装飾なのは
安いからだろうが、装飾アリは受注生産だったのかも。



大崎の高砂鐵工とはこのメーカー。高砂には触らないよ(笑)



サーキュラーは288個とあり、9か所に設置されていたこと
から、ひとつのサーキュラーは32節の二柱で構成されて
いたことがわかる。

ウオール型と書かれた壁掛も東京大崎町 高砂鐵工株式会社製
又は品質是と同等以上のものにして、形式も同会社製と同様の
ものたるべし、となっている。

コルト型はアメリカン・ラジエーター社製のものたるべし、と
これには代替品が示されていない。そのコルト型とはこれ。




コルト型は当時一番オシャレな放熱器だったらしい。
だからなのか、採用されたのは食堂・便所・応接室・
階段室など。一般人の目に触れるところには見栄をはり、
試験室・修繕室・小使室・電池室などは壁掛であった。
仕様書では二柱、三柱、コルトの節が20及び20以上は
足付きを3組とし、それ以下は2組と細かいところまで
指定されていた。

放熱器を製造していたのは高砂暖房工事か高砂鐵工か、
という問題は「鐵工」と結論付けたが、このように
具体例が出てきたので、改めて「鐵工」と結論づけたい。