連載「ちびジプちゃん」第８回

お正月にかかせないもの・・・しめ飾りや
鏡餅ももちろんだが、
やっぱり　おせち料理が一番ではないだろうか。


しかし、食い意地のはったジプちゃんでも
嫌いなものはある。
それは昆布巻きである。


　冬のある日、幼稚園から帰った後は暇を
もてあましているジプちゃんに
突然、友達が出来たのだった
お父さんが会社からフナを５匹も
もらってきたからである


たらいの中を元気に泳ぎまわるフナ君たちに
ジプちゃんと妹は親しみを感じた

　
たらいに手をつっこんで（フナにははた迷惑）
洗濯機のように渦巻きをおこして
フナたちがくるくる回っているのを喜ぶ、
なんとも残酷な姉妹であった
その夜、フナくんたちは、堀の中では
味わったことのない渦巻きに
目が回って眠れない夜を過ごしただろう


次の日も次の日も　
ジプちゃんは　幼稚園から早く帰ってきては
フナくんと渦巻き遊びをして楽しんだ
（楽しんだのはジプちゃんだけ）


もうフナくんは家族の一員だと
ジプちゃんは思い込んでいた


・・・しかし。
現実は　そう甘くなかったのである


いつものように　ジプちゃんが
たらいの中をのぞいたとき、
フナくんたちは姿を消していた


「お母さん！！！お魚がおらん！！！」


大声で叫んだジプちゃんに
お母さんが悲しく微笑んだ

　
ジプちゃんの、涙でうるんだ目に
映ったのは
大きなお鍋の中の、
ミイラのように昆布でグルグル巻きにされた
フナ君の変わり果てた姿だった