1985年 イギリス/アメリカ映画
テリー・ギリアム監督
70年代深夜テレビで観たモンティパイソンにはまった。
その後はテリー・ギリアムの作品が、フライングサーカスの世
界へと僕を導いてくれた。
ギリアムの映画はファンタジーだ。しかしそれは一筋縄ではな
いのは誰もが知っている。時に皮肉一杯で、時に抒情的で、時
にはグロテスクだ。
そして大体においてが不条理な夢で出来ている。そうです、
ギリアムは夢を描く作家なのです。
モンティパイソン時代の彼のアニメーション自体、明るい感じ
のものではなかった。
「スピルバーグはディズニーの陽の部分を受け継ぎ、自分は陰
の部分を受け継いだ」とギリアム本人も語るように、彼の夢は
一見コミカルに進むが、結局のところは暗く虚しいラストが待
っている。
この映画は情報化社会における真の自由について語られている。
完璧に情報統制された社会において、人間は如何に自由を守り、
それに立ち向かう事ができるのか。
そんな統制のシステムを壊す事は、どんな理由があろうと犯罪
であり、テロ行為と見なされる管理社会の恐怖が描かれている。
この映画のように管理する側の正義は非人間的なのは明らかで、
管理される一市民の自由は、何処にもない。
それでも主人公は愛に目覚め、自由を守るべく、そのシステムに
関わり続け、泥沼へと堕ちていく。
どこまでも諦めず戦う姿は、弱々しいがとても健気だ。
最後には愛も自由も手に入れるはずなのに、その結末は果てしな
く悲しい。
結局、自由を守れるのは頭の中だけという構図なのだろうが、そ
こにも未来は見えてこない。
それにしてもギリアムのイメージはユニークだ。
「バンデットQ」「バロン」「フィッシャーキング」「12モンキ
ーズ」など好むと好まざるもあろうが、くどい程見せつけてくる。
そしてこの映画にもやはり彼独特の映像表現が満載している。
主人公が夢の中にある大きな壁や、槍を持った武将、地を蠢く労
役に苦しむ民のイメージなど、ブラックなデザインはいつものご
とく健在だ。
それから劇中に「戦艦ポチョムキン」や「赤い靴」「ブレードラ
ンナー」などを想わせるイメージが観られる。
とくに光と影を巧みに駆使した表現主義的な絵造りは面白い。
公開当時、大好きなデニーロがギリアム作品に出るというので、
公開日を楽しみに待っていた。 デニーロ、おいしい役には
違いはなかったが、ほとんど忍者衣装で顔もチラリ程度。ギリ
アムの洒落に笑えた。
映画製作にあったってギリアムは度々、苦難の道を歩む事にな
るのは映画ファンならよく御存知でしょう。
スポンサーやプロデューサーとの関係もあるが、大体の原因は
彼自身にあるのは確かで、興業的にも評価的にも受け入れにく
い灰汁のきつい作品にはそういったトラブルは仕方ないものの
ようです。
その逆に観客側からすれば、一度はまれば彼の映画は癖になっ
てしまう事は間違いありません。
そんな訳でこの作品を気に入ったなら、どのギリアム映画も楽
しめます。是非、観てください。
テリー・ギリアム監督
70年代深夜テレビで観たモンティパイソンにはまった。
その後はテリー・ギリアムの作品が、フライングサーカスの世
界へと僕を導いてくれた。
ギリアムの映画はファンタジーだ。しかしそれは一筋縄ではな
いのは誰もが知っている。時に皮肉一杯で、時に抒情的で、時
にはグロテスクだ。
そして大体においてが不条理な夢で出来ている。そうです、
ギリアムは夢を描く作家なのです。
モンティパイソン時代の彼のアニメーション自体、明るい感じ
のものではなかった。
「スピルバーグはディズニーの陽の部分を受け継ぎ、自分は陰
の部分を受け継いだ」とギリアム本人も語るように、彼の夢は
一見コミカルに進むが、結局のところは暗く虚しいラストが待
っている。
この映画は情報化社会における真の自由について語られている。
完璧に情報統制された社会において、人間は如何に自由を守り、
それに立ち向かう事ができるのか。
そんな統制のシステムを壊す事は、どんな理由があろうと犯罪
であり、テロ行為と見なされる管理社会の恐怖が描かれている。
この映画のように管理する側の正義は非人間的なのは明らかで、
管理される一市民の自由は、何処にもない。
それでも主人公は愛に目覚め、自由を守るべく、そのシステムに
関わり続け、泥沼へと堕ちていく。
どこまでも諦めず戦う姿は、弱々しいがとても健気だ。
最後には愛も自由も手に入れるはずなのに、その結末は果てしな
く悲しい。
結局、自由を守れるのは頭の中だけという構図なのだろうが、そ
こにも未来は見えてこない。
それにしてもギリアムのイメージはユニークだ。
「バンデットQ」「バロン」「フィッシャーキング」「12モンキ
ーズ」など好むと好まざるもあろうが、くどい程見せつけてくる。
そしてこの映画にもやはり彼独特の映像表現が満載している。
主人公が夢の中にある大きな壁や、槍を持った武将、地を蠢く労
役に苦しむ民のイメージなど、ブラックなデザインはいつものご
とく健在だ。
それから劇中に「戦艦ポチョムキン」や「赤い靴」「ブレードラ
ンナー」などを想わせるイメージが観られる。
とくに光と影を巧みに駆使した表現主義的な絵造りは面白い。
公開当時、大好きなデニーロがギリアム作品に出るというので、
公開日を楽しみに待っていた。 デニーロ、おいしい役には
違いはなかったが、ほとんど忍者衣装で顔もチラリ程度。ギリ
アムの洒落に笑えた。
映画製作にあったってギリアムは度々、苦難の道を歩む事にな
るのは映画ファンならよく御存知でしょう。
スポンサーやプロデューサーとの関係もあるが、大体の原因は
彼自身にあるのは確かで、興業的にも評価的にも受け入れにく
い灰汁のきつい作品にはそういったトラブルは仕方ないものの
ようです。
その逆に観客側からすれば、一度はまれば彼の映画は癖になっ
てしまう事は間違いありません。
そんな訳でこの作品を気に入ったなら、どのギリアム映画も楽
しめます。是非、観てください。